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2021年5月23日日曜日

備えよ常に: ツェルトとかシェルターとか

それなりに登山に親しむ人なら、ツェルト(ザック)を知っているだろう。簡単に言えば、簡易的なテントだ。

フォーカスト・ビバーク

普通のテントと違うことはいろいろあるけれど、いちばん大きな違いは、底布が割れていること。底が長辺方向に割れているので、そこから中に潜り込んで、シェルターとして使うことができる、こんな感じで。

外は暴風雪だけど中はポカポカ

低温下でも、行動中は暑くなる。汗をかくくらい暑くなるようだと、汗冷えから低体温症になる危険がある。だから、ラッセルとか強度の高い運動をする時には、肌寒いくらいの薄着が基本。

しかし、休憩とか、停滞する時に薄着のままでは、あっというまに冷えてしまう。そこで、フリースとかダウンジャケットとかを着ようと思うのだが、雪とか雨が降ってたりすると、「濡らしてしまったら命に関わる保温着」を出すのは躊躇する。それに、ジャケットを羽織るには、手袋を脱いだりとか、いろいろやることがあるし、下半身の保温はできない。

そんな時に、ツェルトをさっと出して被れば快適に過ごすことができる。メンバー全員が出す必要も無い。3人パーティなら、一人が出せばいいし、4人なら2張り出せば快適に過ごせる。

メーカーとモデルによって違うけど、一人が泊まれて、2〜3人が並んで座って休憩できるやつなら重さはこんな感じ。

500ml ペットボトルくらいの重さ

で、僕はツェルトを数年前にシェルターに切り替えた。だって…ツェルトをテントがわりにして泊まるってこと、随分してないし。シェルターとしてしか使わないなら、それ専用のヤツが良いんじゃ無いかって考えたんだ。

透明窓があって、外の様子が確認できる

エマージェンシーオレンジのシェルと透明窓のおかげで、中はとても明るい。二人が向かい合わせに座って荷物は外に置けば、中でお湯くらいは沸かせる。単に暖を取るだけなら、横並びで3人入れる。

二人並んで快適に過ごせる

テッペンにチョコンと筒状の出っ張りがある。ここにスキーポールのグリップを入れると、内部のスペースを広く確保できる。

これは Rab というブランドの一人用で、重さはこれくらい。ツェルトとは違って、そもそも床面の布地が省略されているので、ツェルトよりもさらに軽い。

カバーは一体化されている

ただ、嵩はツェルトよりも2回りくらい大きい。
透明窓とかのギミックでかさばる

太さも2回りくらい大きい。これは生地の厚みのせいもあって、ツェルトは超薄手、シェルターはやや厚みを感じる。

収納カバーのこちら側がメッシュなのは、ベンチレーションになるから

ちょっとしか重さが変わらないのに、こんなにパッキングサイズが違うならツェルトのほうがいいよね?って?それはそうかもしれない。

でも、実は盲点があって、ツェルトをこのサイズにパッキングするには、熟練の技が必要になるんだ。どこからどんな手順で丸めていくと、うまく空気が抜けるか考えながら、緩まないように小さく丸めていく。そしてスタッフバックに収めて、体重を乗せてギューーーって締め付けてこのサイズ。

で、そうやってパックすると、スタッフバックから出すのも大変。冬用のグローブしてたら、イライラするくらい大変w

そして、しまうのが面倒だから、「できるだけ使わない」ようにしてしまう。

で、僕は、発想を転換した。きちんと丸めてバッグに入れるってことをやめた。

冬用装備って、スノースコップとか、アバランチプローブとか、形が決まっているものが多い。バックパックにそれらを詰めていくと、隙間ができてしまってパッキングの形が決まらない。そこで、それらの隙間、スコップのブレードと、ハンドルの間とか、プローブの横とかに押し込んできれいな形を作ってあげる。

バックパック全体を、スタッフバッグとみなしてしまう

こうやっておけば、スタッフバッグにきちんと収める必要もないし、片付けが苦にならないから、ちょっと寒い時にサッと出して使うことができる。

過去の遭難事例とか見ていると、こうしたシェルターをうまく使いこなせていればってケースも結構ある。ツェルト持ってるのに使わないで、低体温症で亡くなってたりもある。夏山でも、高山帯とか、北海道・東北とかではいつでも低体温症のリスクがあると考えて、やばくなる前にサッと出して使えるように備えることをお勧めします。

ツェルトとシェルターのどちらを選ぶかだけど、簡易的なテントとして泊まることがありえるならツェルトがいいと思う。そして、シェルターとしてしか使わないなら、それ用のやつ。Rab には、これ以外にも4〜6人用というサイズのもあるし、他のメーカーからも、いろいろ出ている。

で、買ったらコンディションが悪い時に試してみようね。スキー場とか、安全が確保された状態で、風雪が厳しい時とかに被ってみる。風で持ってかれないように、バックパックから出して潜り込む手順とか、実際のところ何人まで快適なのかとかね。

皆さんもどうかご安全に。

おしまい