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2025年11月25日火曜日

大人の工作教室: スノースコップのハンドルを短くしました


BCスキー・スノーボードを嗜むには、3種の神器を揃えなければならない。まずはアバランチ・トランシーバー(ビーコン)、プローブ(ゾンデ棒)、スノースコップがそれだ。

ぶっちゃけ人を救けるつもりがなく、自分だけ生き残ればいいのならばビーコンだけでいいのだが…一応揃えておかないと、友達がいなくなる。

どんな道具を選ぶかには、みなさんこだわりがある。単純な道具ではあるが、スコップにももちろんこだわりポイントはある。ボクのこだわりは「金属ブレード」「一体式ハンドル」「D型もしくはL型グリップ」がそれ。

春先の締まった雪やスノーブロックの切り出しには、ポリカブレードでは刃が立たない。ここはやはり金属ブレードでなければならない。

伸縮式ハンドルは、凍結で凍り付くことがある。ある時雪洞を掘っていたら、手で温められて溶けた雪がジョイント部分に入り込んで凍った。ハンドルが伸びたままになってしまい、仕方がないのでそのままバックパックに固定して下山したが、頭の上に飛び出したハンドルはそーとーマヌケだった。

グリップの形だが、オーバーミトン(ドラえもんの手みたいなやつ)で掴むには、真ん中に柄ががつながっているT型グリップだと困る。なので、雪洞泊とか、テント除雪がある場合はD型かL型を選ぶ。ま、5本指手袋前提ならT型でもいいのだけどね…

こやつ

んで、サブ用に買ったALVAのスコップなんだけど、ハンドルが微妙に長い。30L以下のバックパックに縦に収めると、生地が突っ張った感じになる。なので少し斜めに入れるのだけれど、そうすると横に入っているプローブと場所の取り合いになる。

これを3cmくらい切って縮めようというお話。

リベットの頭をドリルでモミモミ

グリップはブラインドリベットで止まっている。こーゆーリベットは頭を飛ばしてやれば固定が外れる。

リベット取れました

リベットの頭はアルミなので、切削油を使うまでもなく飛ばせた。グリップを抜いて、中に落ち込んだリベットを取り出して捨てる。


会社の工作室には、なぜか自転車のステアリングコラムをカットするためのソーガイドが転がっている。これでパイプを固定して、ノコ刃をスリットに入れて切ることで、パイプが綺麗に垂直にカットできる。

ソーガイド固定

ノコギリでギコギコ

ハンドルも柔らかいアルミなので、鉄工ノコで簡単にカットできた。カットした後のバリは怪我をしないうちにやすりで綺麗に丸める。

やすりでジョリジョリ

さて、ハンドルに開いている穴とピッタリ同じ位置に、リベット固定用の穴を開けなければならない。そこで、もともとの穴が、パイプの末端からどれくらいの位置にあったのかを写しとる。

末端に合わせて、幅広のマスキングテープを貼り、穴の中心の高さにマーカーの先端を固定し、パイプをクルリンパする。

末端から穴までの距離をマーク

マスキングテープを綺麗に剥がして、カットした後のハンドルに貼り直す。これで、ハンドル末端からの穴の中心が写し取れた。

ボール盤で垂直穴

楕円断面のパイプなので、楕円の頂点がしっかり真上を向くようにバイスに固定する。ドリル刃が逃げないように、垂直に穴が開くように、ボール盤を使って穴あけ。

穴位置ピッタシ

狙い通りの穴が開きました。

リベット打って完了!

会社にはリベッターがないので、自宅でリベット打って固定。これでこの冬は少しイライラが減りそうです。

おしまい

2025年10月22日水曜日

買い換えるべきか? スノーボードブーツのヘタリ

そろそろ25−26シーズンに向けて早割リフト券とか、シーズンパスをどうするか、ソワソワし始めている人もいるのではないだろうか。何を隠そうボクもです。

ギアを買い替えようか考えている人もいるだろう。ギアの中で、買い替えの判断が難しいのはスノーボードブーツではないだろうか?

板やバインなら、シーズン中でもなんとか納得のいくものを買えるだろう。でも、ブーツは、サイズとフィット(甲高とか)とフレックスと、組み合わせする要素が多い。

なによりも、「平均的なブーツサイズから外れる人」は、在庫のあるシーズン初めでないと希望のサイズが手に入らないことがある。

ボクなんか足のサイズが 25.0cm…  US7…

バートンとかの大手ブランドや、小柄な民族もいるヨーロッパ発のブランドはまだマシなんだけど、北米オンリーのブランドだと結構厳しい。北米の新興ブランドだと、メンズモデルのサイズ下限がUS9 なんてこともある。そうなると、もう最初っから選択肢に入らない。ウィメンズならサイズあるけど…もうサロモンでいいです

そんなわけで、シーズンが始まる前の今、ブーツを買い替えるべきか迷っている人に向けた投稿を書いてみた。

「ブーツのヘタリ」には、「アウターシェルの剛性低下」と、「インナーブーツのクッション性低下」の2つの面がある。

アウターシェルの剛性低下(フレックス・レスポンスの低下)

シェルがフニャフニャになってサポートが不足した状態がこれ。こうなると、トウサイドエッジがうまく抑えられなくなる。

トウサイドエッジを強く踏む時、ブーツのタンをスネで押し込む動きが出る。押されたタンがトウボックスを押し込み、ボックスが力をエッジに伝えてくれる。

ということで、プレッシャーが集中する、「タンとトウボックスの境目」にダメージが出る。
裂けちゃった…

ブーツメーカーもそれは分かっているので、この部分の素材を変えたりして補強する。でも、繰り返し繰り返し加わるプレッシャーは、ここにシワを作り、やがては縫い目から裂けたり、素材に折り目ができて崩壊する。

タンそのものにもシワや変形が起きる。
BOAやスピードレーシングのような、細い紐やワイヤーでタンを抑えるモデルは特に注意が必要だ。可能ならば、履くたびに、紐がかかるところを少しずつずらしてやるといい。閉める場所が1箇所だと、そこにクセがついてやがてそこから折り目ができる。

タンの足首にできる溝

ブーツのフレックスを固くする時、「変形しにくい・剛性の高いタン」を使う方法と、「アウターシェルの剛性を高くする」方法がある。もちろん、どちらかだけではなくて、両方を組み合わせて、狙ったフレックス(固さ)とレスポンス(反発のスピードと強さ)を出していく。

で、モデルによっては、タンやアウターシェルに嵌めて剛性を高めるパーツが付属している。

ボクがここ数シーズン履いている、サロモンのブーツにはアウターシェルに嵌め込むパワーバーが付属している。

サロモン・マラミュート

上の写真、左手で押さえているバーで「この辺りに収まる」というイメージがわかると思う。写真の下側に、アウターシェルの一部が写っている。ここに赤く見えるのが、この強化バー。アウターシェル内側の上下に、バーの端っこが収まるポケットがあって、そこにバーを嵌め込んで固定する。

ボクは剛性が高めのブーツを好んで履いてきた。今は、Salomon Malamute を履いている。以前は Burton Driver Xを履いてきた。

個人的な印象だけれど、Driver X はタンの剛性で、Malamuteはシェルの剛性で、それぞれフレックスとレスポンスを高めていると感じている。んで、ボクは、Malamute のほうが合う感覚があったので乗り換えた。

バートンとサロモン

インナーブーツのクッション性低下(フィット感の低下)

「ブーツのヘタリ」のもう一つの要素が、インナーブーツのヘタリだ。クッション性が低下して、足の一部が圧迫されたり、むくんだり、擦れたりといったトラブルが起こる。

ブーツのクッション素材には、可塑性のあるゴムやスポンジが使われている。素材の特性として、ヘタったり、加水分解を起こしたりするのは避けられない。

個人的な感想だけれど、クッション性が優れてソフトなインナーブーツのほうがヘタリが早い感じがする。熱成型方式のサーモインナーも同じで、初期のフィット感がどれくらい続くかというとなかなか難しい。

サーモインナーとクロックスっぽいインナー

上の写真右側の、グリーンが差し色に入っているインナーブーツは、BurtonのSLXで使われていたやつ。確か…2015年くらいだったかな…

昔のバートンには、クロックスみたいな素材でできたインナーブーツがあった。これは重いし蒸れる感じがするけれど、へたりにくく、変な圧迫もなく、とても気に入っていた。アウターシェルと足の間を隙間なく埋めてくれるので、ブーツをフレックスさせた時の反発の出方も自然だった。

バートンがこのインナー素材をやめて、サーモインナーに変わったのもブーツを乗り換えるきっかけになった。

タンが沈み込んでいく

上の写真は、処分する直前のDriverX
タンにスピードレースが擦れた跡がついているのがわかるだろう。そして、その位置が大きくずれているのも見て取れる。

ついている跡は、「インナーが生きていた時についた」跡だ。アウターシェルと足の間に、しっかりとクッションがあるインナーが「みっちり」詰まっていた。

ブーツを履き続けていると、インナーがだんだんと痩せてしまって、シェルと足の間に隙間が生まれてくる。その隙間を埋めるために、タンを上から押さえるので、過去についた跡とちがうところにシューレースがかかるようになる。


長くなったのでそろそろまとめよう。

「今シーズンいっぱいブーツが保つかどうか?」を、今の時期に見極めるとしたら…

アウターシェルのトウボックス周辺に、「シワ」「変形」「縫い目の裂け」がないかどうか。そして、「タンに付いたレースの擦れ跡」を良く観察してほしい。

そして…
自分が小足族か大足族であるという自覚があるならば…在庫がある今のうちに…目星をつけておくことをお勧めしたい。








2025年9月13日土曜日

山力(ヤマヂカラ) 山の生活技術・番外編

山力(ヤマヂカラ)について、ここでボクは何度も書いてきた。

山力とは、体力・(登山)技術・生活技術の3要素の掛け算で表せる、山屋としての総合力評価のこと。ただ、「山の生活技術」といってもピンとこないかも知れない。

今はどうだか知らないけれど、昭和の時代に「山の生活技術が優れている」人たちは、だいたいが山岳部とかワンゲル上がりだった。

山岳部は口数が少ないが、いざ口を開くと声が太い。悪天候の岩場で視界が無くてもコールが届くようにだろうか、普段から腰が入った話し方をする。装備もなんというか独特で、巨大なバックパックザックは色褪せている。

テン場で彼らは早い時間に寝る。いきなりピタッと静かになって寝る。一般登山者がのんびり酒を飲み、声を落として会話を楽しんでいる中、彼らの大きなエスパーステントだけが静まり返っている。

そして…彼らは深夜2時くらいに起きるのだ。

彼らの実力は、撤収に要する時間と、その間に出す音、先輩が指示する声と内容で推し量ることができる。

夜間のテント撤収は重要な生活技術

ある日ボクがテン場で泊まっていた時、山岳部であろうグループと一緒になったことがある。

それは5人くらいのパーティで、ボクの隣に幕を張った。夕暮れにちょっと挨拶を交わして、彼らは誰よりも早く眠りについた。そしてボクが朝4時くらいに起きたら、キレイさっぱり撤収を済ませて居なくなっていた。

テントは単なる布なので、隣り合ったテント同士はなんとなく気配を感じるものだ。なのに、彼らが動く気配はまったく感じることがなかった。

クックキットをガチャガチャさせず、ビニール袋をガサガサさせず、5人の若者が静かに、横に寝ている僕を起こさずに早立ちしていったのだ。

テント、寝袋、マットをたたんでパッキングする。共同装備のどれを誰が持つ。食事はなにをどうやって済ます、そうしたすり合わせ一切合切を、パーティー内で会話せずにすませて去っていった。多分ヘッドライトの光量も控えめに、こちらのテントを無駄に照らさずにいてくれたのだろう。

彼らならば、吹雪で視界が無くても、風が吹きすさんいても、互いの声が通らなくても、テントの設営と撤収は問題なしにできることだろう。片付ける時に装備を無くしたり、変な場所にしまうこともないであろう。彼らならば、どんな状況であって確実に体を休め翌日に行動することができるのだろう。

その朝、彼らのテントがあった空間を見ながら改めて考えた。「山の生活技術」とは、山中の生活でムダ・ムラ・ムリを取り去る技術なのだろうなと。

テント泊、冬季、BC、数日以上の縦走になると荷物は増える。何も考えず、荷物の量が増えるに任せれば、背負える限界を超えてしまうことになる。生活技術を磨いてムダを取り去り、荷物を小さく軽くすることで、より挑戦的な山行が可能になる。それが彼らのような集団が求めている生活技術なのではないか。

振る舞いが洗練されていてムダが無い、そんな登山者をテン場や避難小屋で見かけると、ボクは思う。この人がこうなるまでには、どのような背景があったのだろうか。そしてボクはこうした存在に近づけているのであろうかと。

そして…年齢を重ねて体力がさらに落ちた時、ボクが登山を続けられるかどうかは、その辺りにヒントがありそうだ。そんなふうに感じている。

2025年8月27日水曜日

山屋のブルベ戦略・ペース配分と機材

ボクら「雪男山男兄弟舎」は基本的には山屋の集まりだ。

僕らは山屋としての強さを、「山力」があるとか、ないとかで表している。山力とは、「体力」「技術」「生活技術」の3要素の掛け算。ブルベを始めた時、ボクはこの考えをロングライドに活かせるんじゃないか?そう考えた。

ボクは体力的には凡人だ。というか、周囲の仲間には、ウルトラマラソン(100km)とか、トレラン(100キロとか100マイルとか)…走り回ってる人たちがいるので迂闊なことは言えない。そもそも、体力って人それぞれで、一朝一夕に向上するのは難しい。老境に入ったボクなんかは、この先ずっと下り坂…良くて現状維持…無理はできない、実感こもってるぅぅ

「体力はそこそこ」を現実として受け入れ、まずは「技術」を磨いて総合力を上げようと考えた。「サイクリストとしての技術」とは、走行に関わるものと、機材に関わるものがある。ブルベにおける走行技術とは、簡単に言えばペース配分だ。

ボクは心拍数とケイデンスを、サイコンの上部に表示させている。心拍数は110くらいから、145くらいまでで走る。頑張りすぎて心拍が上がったら、ペースを落としギアを軽くする。

登り坂になると、速度が落ちてケイデンスも下がる。ペダルに込める力を増やすと、心拍数が上がってしまう。これをボクはやらないのだ。心拍数をさほど上げずに、ケイデンスを無理なく維持できるまでギアを軽くしていく。

ケイデンスの維持は80〜95くらいにしている。負荷が上がってケイデンスが落ちて80を切ったら、一枚ギアを軽くする。速度は少し落ちるが、ケイデンスがレンジ内で落ち着くならそのまま。それでもさらにケイデンスが落ちるとか、心拍が上がるならば、もう一枚軽いギアにシフトする。

ここまでの話で気がついたと思う。

筋負荷を下げるためにギアを軽くしていくボクの走り方だと、普通のロードバイクだと軽い(低速より)のギアが足りなくなる。

ギア比変えました

そんなわけで、ボクのロードバイクは、マウンテンバイクのドライブトレインを入れた。なんと、フロント 38-28 リア 11-34t 過去の投稿はこちら。

遅いけど海だって行けちゃうぜ

で、TREK の Emonda を新しく買ったわけだけれど、これはオールラウンドのレーシングモデル。 50-34 に 11-30t なので、ボクの走り方にはギア比が全然合わない。なので、GRXを入れて軽いギア比を実現した。過去の投稿はこちら。

これで、フロント48-31にリア11-34になったわけだけれど、デメリットもあった。まず、フロントのチェーンウォッチャー(チェーンキーパー)が役にたたない。

純正チェーンキーパー

GRX クランクは、チェーンラインが外側に移動する。加えてインナーチェーンリングが小さくなる。この二つが合わさってチェーンラインは外・下方に離れてしまう。チェーンキーパーとの隙間が開くのでチェーン落ちが防げない。

ごめんよTREK

そもそもセッティングがちゃんと出れば、チェーン落ちはほとんど起こらないもの。でも、ボクはセッティング出しの途中で2度ほどチェーン落ちを経験し、うっかりクランクを回してしまった。とりあえず傷は清掃して、UV硬化型レジンで埋めたけれど、チェーンキーパーはなんとかしないとまずい。

そして、やっぱりもっと軽いギアが欲しい。そう思って探したら、GRX互換でこんなのがあった。こーゆーヘンタイというかマニアックな製品を作っているのは案の定のフランス人。メルシーボクー

Specialites TA X110 GRX-2 チェーンリング

評価も割と良いので、試してみることにした。これでフロントアウターは48から44へ、インナーは31から28に下げられる。

*4tとか3tの歯数差は僅かに見えるかもしれないが、4/48  3/31 で計算してみて欲しい。おおむね10%程度は低速寄りになることがわかるはずで、乗った感じは別物になる。

アウター比較

インナー比較

この28tインナーで、MTBのクランクつけていた今までのバイクと、インナーローは同じ軽さになった。

組み替え前

わかっていたことだけれど、Emondaのフロントディレーラー台座はフレーム直付け。ディレーラー位置を一番下に下げても、チェーンリングとの間には大きく隙間ができる。

ディレーラーケージの位置…

シマノのすごいところは、これでも変則性能はそこまで悪化しないこと…ただし、チェーン落ちのリスクは通常よりも高くなる。

見つけたのが、KCNCのこれ。

KCNCチェーンウォッチャー

これは、フロントディレーラーの取り付けボルトを利用して固定する。

純正のチェーンキーパーは外す

位置はこんな感じ。インナーチェーンリングとの距離が遠いように見える。



これよりもチェーンラインに近づけると、インナーローに入れた時にチェーンに擦ってしまう。その辺りのギリギリを狙って固定。

一安心

このセッティングにした後のチェーンドロップ頻度は、おおよそ100~150km走行に1度くらいかと思われる。走行中にチェーンが暴れて、落ちたような音がしたが、実際にはチェーンはインナーリングに乗っていた。とりあえず、これで様子を見ながら使ってみようと思う。

ペース配分についてつらつらと書いてきたが、ケイデンスと心拍数を一定にして走るということは、「走行速度」 は変化し続けるということだ。

斜度、向かい風、高温・低温、キツイ環境だと時速は6キロくらいまで下がることがある。逆にボーナスタイムなら速度は上がるし、借金を返済するチャンスも巡ってくる。

出走を繰り返していくうちに、焦らなくても時間には間に合うことが、だんだんとわかって来た。たとえ「押し歩き」するような坂が出て来ても、それが30分程度ですむのなら大丈夫。ゆっくりでも止まらなければ、時間には間に合うのだ。

こんな遅くて…完走できるのか?そんな不安に負けてペダルを踏み込むよりも、ペースを保ちながら消耗を防ぎ休憩の頻度と時間を減らす。そのほうが結果的には、安定した結果が出る。

ブルベに要求されるグロススピードは15km/h、これは休憩や信号停止など含んでの速度。対して、「走っている時間だけの記録」であるネット走行速度は、ボクの場合はだいたい20~22km/hくらいだ。「えっ?遅くない?」そう思うかも知れないけれど、前方の信号が赤になったら惰性で走るとか、歩行者がいるので減速するとか、そんなこんなで公道の平均時速はそんなレベルに落ち着いている。

その速度域で、消耗せず、動き続けられるように、ボクは心拍数と筋出力を一定にすることを考えて走っている。誰にでも当てはまる走り方ではないかもしれない。でも、これがボクにとって一番合理的な走り方と、機材のセッティング。

2025年8月12日火曜日

真夏のロングライド・暑さ対策 3/3 氷冷却編

草稿を書いていたらあまりにも長くなりすぎたので、3部作にしました…

サイクリングは、自然とともに過ごす遊びだ。

自然と闘う必要は無い…のだけれど、自然が目の前に置いてくる障害はうまくマネジメントしなければならない。それは、冬の寒さだったり、真夏の暑さだったりする。ちなみに、真冬の寒さをどうやってマネジメントするかこの投稿を参照してほしい。

ボクの考える、自転車乗りの暑さ対策は3つに分けられる。
  1. 遮熱
  2. 気化熱冷却
  3. 氷冷却

今回は3部作最終回、「氷冷却」について書いてみる。

氷冷却とは…コンビニ氷で体を冷やす戦法だ

グビグビっと中から冷やす

そもそも日本はコンビニ王国。街道を走れば、必ずコンビニがあり、氷や冷たい物を補給できる。登山とかではありえない、サイクリングならではのメリットがコンビニ補給。

第一の戦略は、「冷たい飲み物で体の中から冷やす」

熱風の中を走り続けるには、氷入りの冷たい飲み物が欠かせない。

でもねぇ、35度超えるような気温だと、ドリンクがあっという間に温くなっちゃうんだよね。下の写真真ん中が、通常のソフトタイプボトルの保冷強化版。「断熱材」が仕込んであって、保冷効果がある…のだが…あまりにも非力。氷を半分くらい入れておいても、35度前後の外気温で1〜2時間も走れば氷は溶けて無くなってしまう。

保冷ボトルと言えるのは、真空断熱の魔法瓶的な奴だと思えばいい。左側は、ステンレスの真空断熱ボトル。魔法瓶なので、保冷効果は段違い。氷を半分くらい入れておけば、半日程度は冷たい…けどずっしり重い。

右側は、Thermos の保温・保冷ボトルで、こちらはホットドリンクにも対応。さすがは魔法瓶メーカーだけあって、保冷効果はピカイチ。丸一日は冷たさをキープできるし軽い。

保冷ボトル3種

保冷効果はThermos が一番良いし、ボタンでパカンって開くカバーがあるおかげで飲み口が汚れない。カバーは保温・保冷効果を強化している感もある。じゃぁThermosでいいじゃん?となるのがだ…この飲み口は、飲み方にちょっとコツがあるのだ。

キャップを開いて、飲み物を口の中に注ぎ込むのだが、この時おとがいを上に向ける必要がある。前傾姿勢の強いロードバイクだと、一瞬視界が路面から外れて地味に怖い。

Thermosのボトルは、クロスバイクやMTB、ツーリング・キャンピングバイクなど、上体が起きたライディングポジションには一番良いチョイスだと思う。

ロードバイクに向いているのは吸うタイプの飲み口。顔は前を向いたまま、飲み口を咥え、ボトルを顔の横に持ち上げてくる。必要なら、目線を前に向けたまま、顔をちょっと斜めにすれば、飲み物が口の中に入ってくる。

吸うタイプと流し込むタイプ

そんなわけで、夏は吸うタイプのキャメルバッグ・ステンレスボトルがオススメ。冬は、保温でも使える Thermos がいい。

そもそも熱い飲み物は、吸い込むと危ない。それが Thermos タイプの飲み口が保温・保冷対応の理由なのだ。寒い時期、信号待ちでほっと一息、少しずつ啜るみたいな飲み方で Thermos の魅力が生きてくる。

さて…

外気温が35度を超えて体温レベルになると、常識的な対策では間に合わなくなってくる。

第二の戦略は、「氷で直接体温を下げる」

35度超の気温では、少しバランスを崩すだけで熱中症一直線。ボクが頼るのは、コンビニのロックアイス。

真夏の恋人ロックアイス

ボクのブルベベストは、背中にポケットが付いている。ここに、ジプロックに入れた氷を詰め込んで走る。
アイスポケット付きのR250ブルベベスト

ただ、このポケットに入るくらいの量(500mlペットボトル2本が押し込んで入る)、1リットルくらいのロックアイスだと、せいぜい持って2時間程度。なので、38度とかの日は、ロックアイスの袋から空気だけ抜いて、そのまま背中に押し込んで走る。ジャージと背中の間に、プラスチックバッグに入った氷を押し込んで走るのだ。これはかなり効果がある。心肺が一気に楽になるし、手足や頭の熱が取れていく感じがする。

なお、ロックアイスの袋そのまんまだと、肌触りがあんまり良くない。ツルツルするから、ふと気がつくと位置がずれて、変なところに移動してたりする。それが嫌なら、登山用品店で、防水のスタッフバッグか、アイスバッグ(氷嚢)を手に入れるといい。

ハイドレーション機能のあるバックパックを使って、氷を入れたウォーターバッグを密着させるのも良いだろう。いずれにしても、この「氷冷却」を使う必要があるくらいの気温は、事故と紙一重であることを忘れないようにしてほしい。

ちょっと大きめ麦茶ボトル

コンビニで手に入る、凍らせたドリンクボトルも有効だ。

アクエリアスのアイスボトルを背中に入れて走れば、ドリンクボトルがカラになったタイミングぐらいでアイスボトルが溶ける。アイスボトルの中身をドリンクボトルに移せば、補給回数を一回減らすことができる。

凍ったアクエリアス

パウチで凍らせたドリンクを複数持つのもいい。ただし、これくらいの小ささだと、あっという間に溶けることは知っておいたほうがいい。

氷の冷却は、散水と組み合わせるとさらに効果がある(散水冷却は 暑さ対策2/3気化熱冷却を参照)。使える手立ては全部使う、それが、真夏と真冬のロングライド。

それでは、今日も1日ご安全に。

おしまい

2025年8月1日金曜日

真夏のロングライド・暑さ対策 2/3 気化熱冷却編

草稿を書いていたらあまりにも長くなりすぎたので、3部作にしました…

サイクリングは、自然とともに過ごす遊びだ。

自然と闘う必要は無い…のだけれど、自然が目の前に置いてくる障害はうまくマネジメントしなければならない。それは、冬の寒さだったり、真夏の暑さだったりする。ちなみに、真冬の寒さをどうやってマネジメントするかこの投稿を参照してほしい。

ボクの考える、自転車乗りの暑さ対策は3つに分けられる。
  1. 遮熱
  2. 気化熱冷却
  3. 氷冷却

今回は2の、気化熱冷却について書いてみる。

シャーっとな

気化熱による冷却は、水分を蒸発させて熱を下げること

暑い時に汗が出る理由はまさしくこれで、体表面で汗が蒸発することで、気化熱冷却が起こり体温が下がる。

ただし、発汗とそれに伴う気化熱冷却にはメカニズム上の問題が2つある。

まず、最初の問題について説明しよう。

発汗のメカニズムは、人間が「動物として」、「普通の環境」で、「普通の行動」ができるように発達した機能だということ。

でねぇ…動物はね…
35度以上の気温で、10時間とか、心拍上げた状態で動かないからね?
暑い時は昼寝してるからね?彼ら

つまり、「動物としての普通」を超えていくスポーツでは、発汗機能の限界を超えるので、何かしらの対策は当然に必要になるということなのだ。

もう一つの問題は、汗をかくと体力が削られて消耗するということ。汗の元になる水分は、経口摂取する。この水が、

胃腸(大部分は腸)から「吸収される」
血液・リンパ液内を通じて「全身を巡る」
発汗組織を通じて「皮膚表面に出る」

この全てのプロセスで、体力を消費するのが「発汗」だ。で、このサイクルが早すぎると、際限なく吸収と放出を回さなければならないので、早く消耗してしまう。

消耗すれば、当然エネルギー補給が必要になる(「食事と補給について」参照)。

発汗に伴いミネラルが不足すれば、水中毒のリスクも高まる(「ミネラル補給について」参照)。暑い時期に1日サイクリングすると、こんな感じで汗染みができる。

塩ですが何か?

このキモい模様は発汗で失われた塩分。補給しなければ、当然体調は崩れていく。

で、栄養分やミネラルを経口で補給すると、消化吸収で消耗する…無限ループやんか
そんなわけで、発汗機能をなんらかの方法でサポートしてやる必要があるのだ。

シンプルなのは、汗の代わりにボトルの水を被ること。

プシャー!

ただ、通常のボトルだと、水流が細くて広がらず、広い範囲を濡らすことが難しい。

それと…真夏は、ボトルを2本運用する人が多いと思うのだが、「ドリンク用(スポドリ)」と「真水(掛け水用)」を取り違えると悲惨なことになる。

実際…自分はくっそ暑い日に頭からポカリスェット被ってしまったことがある…次に見つけた児童公園の水飲み場で沐浴するまではベトベトに悩まされた。

沐浴は沐浴で、気持ちよかったがな…

そんなわけで、掛水用のボトルは「シャワーキャップ」に交換してある。ボトルのトップキャップに切り替えレバーがついていて、これを捻ることで「直流」「閉まる」「シャワー」のモード切り替えができるのだ。

切り替え付きキャップ

キャップの裏側はこんな感じで、基本的に分解清掃ができないから、真水のみの運用になる。

キャップ裏側

「直流」モードにすれば、もちろんドリンクボトルとして使える。口をつけずに、ボトルを潰して口の中に水を流し込むような飲み方になる。

直流

走行中は、レバーをシャワーモードにしておく。体温が上がってきたと感じたら、前回の「暑さ対策・遮熱編」で書いた、ヘルメットキャップの後ろ垂れや、アームカーバーにシャワーを振りかけて気化熱で冷却してあげる。

シャワー

もちろん、頭から被ったり、アイウェアを外して顔を洗ったり、腕、腿、ふくらはぎや胸背中を濡らすこともお勧めだ。

ボクの実感だと、25度〜35度くらいまでの気温帯なら、このシャワーボトルによる気化熱冷却が大変に効果的だ。

ふくらはぎが攣りそうになった時、水をかけると回復する場合もある。眠くなった時に顔を洗ったり、信号で停止した時に胸や背中を濡らしたりする。

初めてこの方法をとった時、水分があっという間に蒸発していくのに驚くことだろう。それだけ、気づかない間に発汗していたということだし、発汗による体力の消耗もまた侮れない。

掛け水をすることで、人為的に体温を下げることができ発汗量が減る。いわば、汗を水で代替することで、真夏のロングライドでの消耗を防げるというわけなのだ。

走行中に公園を見かけたら、水飲み場で体を濡らさせてもらう。自動販売機でスポドリと真水を買い、スポドリはドリンクボトルへ、真水は掛け水ボトルから散水する。そんな頻度を上げながら走ることが大事だ。

なお、35度前後まで気温が上がると、ボトルの水だけでは冷却が間に合わなくなってくる。

そして…関東平野や新潟平野などの平地で起こりがちなのが…フェーン現象

フェーン現象下の平野部は、熱風が吹く。走っている時に追い風を受けている時は、要注意だ。相対速度がゼロに近く、走行風が受けられない時は体温が上がりがちになる。追い風なのにペースが上がらない、そんな時は気化熱冷却がうまく働いていない可能性がある。

気温が体温レベルに達した時は、無理せずにその後のコースプロファイルやモロモロを検討すべきだ。そこから先に、アップダウンやヒルクライムがある、そんな時は気化熱冷却の限界と判断したほうがいい。

公道で走るサイクリングのメリットは、コンビニにがあること。次のコンビニでピットインして、次の投稿で説明する「暑さ対策3部作のその3 氷による冷却」を参考にしてくれれば、ボクも嬉しいです。

今日も一日、どうぞご安全に。
つづく






2025年7月28日月曜日

真夏のロングライド・暑さ対策 1/3 遮熱編

草稿を書いていたらあまりにも長くなりすぎたので、3部作にしました…

サイクリングは、自然とともに過ごす遊びだ。

自然と闘う必要は無い…のだけれど、自然が目の前に置いてくる障害はうまくマネジメントしなければならない。それは、冬の寒さだったり、真夏の暑さだったりする。ちなみに、真冬の寒さをどうやってマネジメントするかこの投稿を参照してほしい。

ボクの考える、自転車乗りの暑さ対策は3つに分けられる。
  1. 遮熱
  2. 気化熱冷却
  3. 氷冷却
今回は1の遮熱について書いてみる。

 効果は限定的なアームカバー

遮熱は、光や熱気を遮ること

最初に残念なお知らせだが、「遮熱」は真夏のロングライドにおいて、効果は限定的だ。

日傘による遮熱を例に取ろう。日傘の表面は日射を反射してくれるのだが、熱吸収がゼロになるわけではない。どんなに熱線反射率の高い素材を使ったとしても、日傘の裏面は熱を持つ。日傘の裏面と体の間に空間があって、そこに風が通っているので涼しく感じるのだ。

砂漠の民が身につける装束も、ゆとりがある。あれも同じで、熱反射させる素材と体表面の間の空間が、断熱層として働いている。

サイクリングウェアは、空気抵抗が少ないほうが有利なので、ウェアと体の間は密着している。だが、さきほど書いた通り、「遮熱」には、熱反射層と体の間に十分な空間が必要…

そんなわけで遮熱は、サイクリングにおいて暑さ対策のメインにはなりにくい。

ただ、光を反射する遮熱層と、体の間に空間が取れれば効果はある。

1番のお勧めは、「うなじを覆えるヘルメットライナー」だ。ヘルメットの内側に被るヘルメットライナーの後ろ側に、長い垂れ布を付けてある。これでうなじの部分をカバーすることができる。


帽体の後ろに垂れ幕が付く

うなじや首筋が熱を持つと、血液の循環によって脳の内部温度が上がってしまう。そうなると、意識障害とか、頭痛とか、めまいの原因になりうる。

このタイプのヘルメットライナー、うなじの日射を遮る効果は想像より大きい。垂れ幕とうなじの間に風が通っていることも、遮熱効果を感じやすい要因だ。

垂れ幕の形は様々

垂れ幕の覆う面積や形は様々で、布地の素材もいろいろある。高い物ではないので、何種類か買って試してみるのをお勧めする。

全面を覆うバラクラバ

ヘルメットライナーよりも広い範囲を覆う、目出し帽(バラクラバ)はどうだろうか?バラクラバは保温を目的とした冬季用と、接触冷感素材などの夏季用がある。バラクラバのほうがカバーする範囲が広いので、熱線・紫外線防御には優れているのではないか?

僕はあまりお勧めしない。

バラクラバを使うと、前面からの風を遮ってしまうからだ。サイクリングで体が受ける走行風をいかに活かすかが、暑さ対策でもっとも重要だと僕は思っている。バラクラバは、その風を遮ってしまうので熱がこもりやすい。

暑さ対策のバラクラバが生きるのは、「外気温が割と低く」「運動量が少なく(発熱が少ない)」「紫外線が強い」環境。春先のゲレンデスキー・スノーボードが一番活躍できる。

他の具体的な遮熱対策には、熱反射率の高い色を着用すること。ウェアやヘルメット、シューズを白系統にすると、まぁまぁの効果がある。

ちなみに、接触冷感素材のウェアは、暑さ対策には…あまり効果が無い。あたりまえだが、「接触冷感」とは、あくまでも「冷たいような感じがする」だけのものなのだ。

新型コロナが流行し始めた時に、「熱さまシート」が話題になった。実際に効果があるのかどうなのかという議論だった。あれも、「スーッと冷えたような気がする」だけなので、冷却する効果は限定的…というか…発熱時に体温を下げる効果は、ほぼ無いという結論だった。

接触冷感素材のものも同じと考えて、過度な期待は禁物だ。接触冷感を謳った、織り方が密で風を通さないウェアよりも、メッシュパネルを配置して通気を確保したウェアのほうが、暑さ対策では断然有利になる。

ボクは、春から秋に参加する、300km以上のブルベではモンベルの半袖ジャージを基本としている。200kmなら、極論を言えばジャージはなんでもいい。だが、走行時間が20時間設定の300km以上のブルベだと、昼と夜の異なる温度域で行動し続ける必要がある。そんなハードな環境では、「山岳」で鍛えられたノウハウを持つモンベルとかのウェアのほうが安心だし、実際に快適だ。

話を戻そう。

接触冷感素材にはあまり期待するべきではない。だが、熱反射率の高い白色のカバーならば、熱の吸収を減らす・日焼けを防ぐ効果はある。また、次の項目で説明するが「水で濡らす」ことで、気化熱冷却の有効な装備にはなりえる。使うなら、素材の特性を理解して使って欲しい。

熱反射率の高い白が基本

アームカバーもレッグカバーも、どうしても熱がこもりやすい。下り坂ならまだしも、ヒルクライムが続くエリアでは暑くて体力が消耗する。

ヒルクライムが始まる前に、アームカバーは手首側に丸めておく。こうすれば、前腕・上腕が風を受けて冷やされる。手首に丸まったカバーは、汗どめのリストバンド代わりになる。ハンドルバーが滑るのを防げるし、顔の汗を拭き取ることもできる。

リストバンドモード

ヒルクライムのピークを過ぎたら、アームカバーを一度伸ばしてダウンヒルに入る。染み込んだ汗が蒸発するので、気化熱冷却が起こるし、日焼けの防止も期待できる。

アームカバーはこんなふうに、上げたり下げたりがやりやすい。レッグカバーはそんなわけにいかないので、僕はアームカバーだけを使う…こともある。

次回、暑さ対策3部作、その二 気過熱冷却編…に続く