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2025年8月27日水曜日

山屋のブルベ戦略・ペース配分と機材

ボクら「雪男山男兄弟舎」は基本的には山屋の集まりだ。

僕らは山屋としての強さを、「山力」があるとか、ないとかで表している。山力とは、「体力」「技術」「生活技術」の3要素の掛け算。ブルベを始めた時、ボクはこの考えをロングライドに活かせるんじゃないか?そう考えた。

ボクは体力的には凡人だ。というか、周囲の仲間には、ウルトラマラソン(100km)とか、トレラン(100キロとか100マイルとか)…走り回ってる人たちがいるので迂闊なことは言えない。そもそも、体力って人それぞれで、一朝一夕に向上するのは難しい。老境に入ったボクなんかは、この先ずっと下り坂…良くて現状維持…無理はできない、実感こもってるぅぅ

「体力はそこそこ」を現実として受け入れ、まずは「技術」を磨いて総合力を上げようと考えた。「サイクリストとしての技術」とは、走行に関わるものと、機材に関わるものがある。ブルベにおける走行技術とは、簡単に言えばペース配分だ。

ボクは心拍数とケイデンスを、サイコンの上部に表示させている。心拍数は110くらいから、145くらいまでで走る。頑張りすぎて心拍が上がったら、ペースを落としギアを軽くする。

登り坂になると、速度が落ちてケイデンスも下がる。ペダルに込める力を増やすと、心拍数が上がってしまう。これをボクはやらないのだ。心拍数をさほど上げずに、ケイデンスを無理なく維持できるまでギアを軽くしていく。

ケイデンスの維持は80〜95くらいにしている。負荷が上がってケイデンスが落ちて80を切ったら、一枚ギアを軽くする。速度は少し落ちるが、ケイデンスがレンジ内で落ち着くならそのまま。それでもさらにケイデンスが落ちるとか、心拍が上がるならば、もう一枚軽いギアにシフトする。

ここまでの話で気がついたと思う。

筋負荷を下げるためにギアを軽くしていくボクの走り方だと、普通のロードバイクだと軽い(低速より)のギアが足りなくなる。

ギア比変えました

そんなわけで、ボクのロードバイクは、マウンテンバイクのドライブトレインを入れた。なんと、フロント 38-28 リア 11-34t 過去の投稿はこちら。

遅いけど海だって行けちゃうぜ

で、TREK の Emonda を新しく買ったわけだけれど、これはオールラウンドのレーシングモデル。 50-34 に 11-30t なので、ボクの走り方にはギア比が全然合わない。なので、GRXを入れて軽いギア比を実現した。過去の投稿はこちら。

これで、フロント48-31にリア11-34になったわけだけれど、デメリットもあった。まず、フロントのチェーンウォッチャー(チェーンキーパー)が役にたたない。

純正チェーンキーパー

GRX クランクは、チェーンラインが外側に移動する。加えてインナーチェーンリングが小さくなる。この二つが合わさってチェーンラインは外・下方に離れてしまう。チェーンキーパーとの隙間が開くのでチェーン落ちが防げない。

ごめんよTREK

そもそもセッティングがちゃんと出れば、チェーン落ちはほとんど起こらないもの。でも、ボクはセッティング出しの途中で2度ほどチェーン落ちを経験し、うっかりクランクを回してしまった。とりあえず傷は清掃して、UV硬化型レジンで埋めたけれど、チェーンキーパーはなんとかしないとまずい。

そして、やっぱりもっと軽いギアが欲しい。そう思って探したら、GRX互換でこんなのがあった。こーゆーヘンタイというかマニアックな製品を作っているのは案の定のフランス人。メルシーボクー

Specialites TA X110 GRX-2 チェーンリング

評価も割と良いので、試してみることにした。これでフロントアウターは48から44へ、インナーは31から28に下げられる。

*4tとか3tの歯数差は僅かに見えるかもしれないが、4/48  3/31 で計算してみて欲しい。おおむね10%程度は低速寄りになることがわかるはずで、乗った感じは別物になる。

アウター比較

インナー比較

この28tインナーで、MTBのクランクつけていた今までのバイクと、インナーローは同じ軽さになった。

組み替え前

わかっていたことだけれど、Emondaのフロントディレーラー台座はフレーム直付け。ディレーラー位置を一番下に下げても、チェーンリングとの間には大きく隙間ができる。

ディレーラーケージの位置…

シマノのすごいところは、これでも変則性能はそこまで悪化しないこと…ただし、チェーン落ちのリスクは通常よりも高くなる。

見つけたのが、KCNCのこれ。

KCNCチェーンウォッチャー

これは、フロントディレーラーの取り付けボルトを利用して固定する。

純正のチェーンキーパーは外す

位置はこんな感じ。インナーチェーンリングとの距離が遠いように見える。



これよりもチェーンラインに近づけると、インナーローに入れた時にチェーンに擦ってしまう。その辺りのギリギリを狙って固定。

一安心

このセッティングにした後のチェーンドロップ頻度は、おおよそ100~150km走行に1度くらいかと思われる。走行中にチェーンが暴れて、落ちたような音がしたが、実際にはチェーンはインナーリングに乗っていた。とりあえず、これで様子を見ながら使ってみようと思う。

ペース配分についてつらつらと書いてきたが、ケイデンスと心拍数を一定にして走るということは、「走行速度」 は変化し続けるということだ。

斜度、向かい風、高温・低温、キツイ環境だと時速は6キロくらいまで下がることがある。逆にボーナスタイムなら速度は上がるし、借金を返済するチャンスも巡ってくる。

出走を繰り返していくうちに、焦らなくても時間には間に合うことが、だんだんとわかって来た。たとえ「押し歩き」するような坂が出て来ても、それが30分程度ですむのなら大丈夫。ゆっくりでも止まらなければ、時間には間に合うのだ。

こんな遅くて…完走できるのか?そんな不安に負けてペダルを踏み込むよりも、ペースを保ちながら消耗を防ぎ休憩の頻度と時間を減らす。そのほうが結果的には、安定した結果が出る。

ブルベに要求されるグロススピードは15km/h、これは休憩や信号停止など含んでの速度。対して、「走っている時間だけの記録」であるネット走行速度は、ボクの場合はだいたい20~22km/hくらいだ。「えっ?遅くない?」そう思うかも知れないけれど、前方の信号が赤になったら惰性で走るとか、歩行者がいるので減速するとか、そんなこんなで公道の平均時速はそんなレベルに落ち着いている。

その速度域で、消耗せず、動き続けられるように、ボクは心拍数と筋出力を一定にすることを考えて走っている。誰にでも当てはまる走り方ではないかもしれない。でも、これがボクにとって一番合理的な走り方と、機材のセッティング。