2夜目の仮眠は、3時間ほどぐっすりと寝ることができた。
道の駅くろほねの東屋は、ぐるりと巡らされた腰壁が風を遮って快適だ。内側には幅のある腰掛けがグルリとあり、中心には大きな木製のテーブルが2つ。
バイク乗りらしき人が仮眠中だったので、ボクは反対側のベンチにそのまま倒れ込む。出入りする車の音が気になったので、耳栓をする。浄化槽の臭いがしたけれど…あっという間に眠りに着いた。
1時間程して寒くなって目が覚めた。スリーピングバッグカバーを広げて潜り込み、もう一度眠って気がついたら携帯のアラームが鳴っていた。
長く厳しいSR600も、残り140km。朝5時再スタートで16時まで残り11時間…要求される平均速度は13キロ。通常のブルベの15キロよりは余裕がある…もしかして…時間内完走…なんとかなるんではないだろうか?キラキラ
そんな皮算用しながら、行動食で朝食を済ませて出発。渡瀬川に沿ってアップダウンのある国道を上流に向かって進む。丸美屋自販機コーナーでうどんでも食うかと思っていたが、先客もいたので先へ進む。
| 丸美屋自販機コーナー |
| CP14草木湖 |
しかし…この峠は土砂崩れ等で閉鎖されることが多く、その場合は代替ルートの選択が認められている。代替ルートは峠に行かず、ここから坂を下って西桐生駅が次のチェックポイントになる。峠越えが1箇所少なくなって獲得標高が減るから難易度も下がる。時間内完走の確率も上がるという訳だ。
臨時の通行止めだったことにして代替ルート走っちゃう?熊の気配がしたので代替ルート選びました!でイイじゃん
そんな、悪魔の囁きがボクの脳内をグルグルと回っていた…
直前に確認したところでは、三境峠の災害復旧工事は最近完了したようだし、すでに坤六峠とか野反湖とかも走ってきているのに、ここで熊に日和るのも変な話だ。そもそもここでズルみたいなことしたら後悔するのは自分だ…と心を決めて三狂…じゃない三境峠へ向かった。
| 崩壊・落石・落葉・湧水…そして熊の気配… |
| 三境トンネル工事看板 |
単なるパンクなら、チューブレスタイヤはシーラントで自己修復してくれる。しかし、カーカスがきれちゃうようなパンクとか、サイドカットとかだと時間のかかる修理になる。はやる気持ちを抑えながら、ゆっくりと坂を下っていく。避けきれずに踏んだ石が弾けて、左右に飛んでいく。坂を下り切ったところで、リアタイヤが底付きを始めた。視認が難しい小さい穴が開いて、スローパンクが起きていた。
とりあえず電動ポンプでエアを補充して先に進む。1キロ程走ったところで、また空気が抜けてきた。水たまりを通過したあとでタイヤが濡れていたので、パンク箇所から泡が出ていた。
トレッド面とサイドウォールとの境目で、耐パンク層の入っていないところに2mmほどの 「I」 形の傷があった。水たまりでシーラントが流れてしまうので穴が塞がらないようだ。この先の路面は乾いているので、シーラントは効いてくれそうだ。電動ポンプでエアを補充して再出発。ここまでで20分程度は時間をロスしたと思う。
CP15梅田湖を過ぎて坂を下って桐生に出る。コンビニで朝食をとりつつ、パンクの様子を確認したところなんとかエア漏れは止まっていた。パンク2回程度は塞がるように、シーラントは多めに入れているのでなんとかなるだろう。
| とりあえず朝ごはんを補給 |
ここから長いフラット区間が始まる。風向きは弱い追い風で、ルートは今まで何度も走って馴染みがある。ここで借金返済をするためにエネルギー補給、カップヌードルBigとおにぎり食べて再スタート。桐生の街中で累積走行距離が500km、残り100kmで時刻は8時20分…ゴールまで7時間半程度…ブルベペースのグロス平均時速15キロで届く計算だ。
| 桐生で500kmに到達 |
600kmのブルベで、走行距離550キロだと、残り50km…3時間ちょいでゴール…と思ってしまう。しかし、そもそもブルベは誤差を考えて実際の走行距離は数%長めに設定されている。600kmブルベとかだと、実際は610km とかもありえるし、その場合60kmが真の残り距離となる。
もう一つは、「コースミスや立ち寄り」の影響だ。ミスコース1kmすると、戻ってくるのにさらに1kmで2kmロスをする。これが細かく積み重なっていくと、サイコンの走行距離よりも実際の走行距離が少ない…なんてことは割とある。
200や300のブルベならまだいいのだが、600だと数%の誤差、例えば3%の誤差でも18km、ブルベペースで1時間の狂いが出てくる。これを防ぐために、ゴールが近くなったらサイコンの設定を「ゴールまでの距離」に切り替える。誤差が多くなる「スタートからの累積距離」よりも、確実な残り距離と残り時間がわかるというわけだ。
えぇぇええぇっ!なんで?ここでなんで30km近く増えんの??なんで?なんでぇぇ〜!
今から考えれば、キューシートを確認すれば済む話だ。しかし、500km走った頭はうまく働かないまぁその普段だって働いていないのだが。
「あーあそこのミスコースと、こことそこの寄り道が原因かぁ」って思い込んだボクは、残り97kmで計算してみる。今の疲れきったボクだと、届かない走行ペースが必要だった。
もう…ランドヌール部門でなくてもいい、ツーリスト部門での完走でいい。諦めの気持ちを抱えつつ、残りの平坦路のペースを下げないように走り、最後のヒルクライムへ。
蛇喰峡(じゃばみきょう)あたりで、疲労と睡魔で大幅にペースダウンした。計算すると、時間内ゴールは絶望的だった。ボクは休憩スペースにあったベンチに倒れ込んで仮眠した。
30分程度仮眠して、痛むアキレス腱をストレッチして、最後のCPへのヒルクライムを再開した。
| CP17大山祇神社… |
…どうでしたか?んーーーーーーー微妙っしたぁ 笑
ということだったので、「まぁそうだよね」という感じで進むことにした。
| 次こそは…寄るかも…w |
| 中山峠超え前に最後の補給 |
で…中山峠を登っている時に…ふと気がついたのだ
ん?まてよ?中山峠から高崎駅まで…20kmなんてないよな??
せいぜい10kmくらいしかないはず…
今は15時20分だから…リミットまで40分…
残り10キロなら間に合うよな?
あっ!と気がついたボクは、サイコンのルートを確認した。すると、「間違えてゴールを設定してトータル距離が625kmになったルート」をナビゲーションさせていたのだ。画面のゴールは高崎駅をはるか越えて、赤城山の裾野に設定されていた。
「スタートしてからの距離」に切り替えると、走行距離は592km…誤差があっても残りは…だいたい10kmで間違いない!間に合う!
これで数分とかオーバーでゴールだったらネタになるな…なんであそこでカップラーメン食べてんだオレ?みたいな…
そんな気持ちがグルグルと回る。
峠から坂を下ると信号にひっかかった。
焦る気持ちでジリジリする。実は…この辺りは、子供の頃に自転車で何度も走ったことがあって、裏道をゴニョゴニョすると信号がホニャララなコースが頭に浮かんでくる。そっちを使えば数分は短縮できるかも…
ここでズルして時間内完走しても意味ないだろ!
ボクは頭の中で「慌てふためいて走り回る、ダークモードのボクの横っ面」を思いっきり引っ叩いた。
ブルベは審判のいない自己完結の遊び、だからこそ自分が後悔しない走りをしよう。ルール通り交通規則遵守、右折交差点は2段階右折をきちんと守り、高崎駅に着いたのは12分前。歩道で降車して自転車を押し、小走りでゴールのローソンに向かうと目の前に奥様が!
| 奥様撮影… |
| タイムアウトまで8分w |
| しばしの放心w |
なんか残り1時間切ったタイミングで、トムヤムクンカップラーメンの写真↑が送られて来て、ビビった。パパ!なにやってんの?これどこ?カップラーメン食べてる場合じゃないよね?トラブル?大丈夫?とかいろいろ考えちゃった〜
どーもすみませんでしたw
| ブレーキダスト |
翌日は休みをとっていて、片付けとか洗車とかを済ませる。車体のあちこちに残る、普段とは違う痕跡にSR600の過酷さを見た。
こうしてボクのSR600上毛三山は、最後のドタバタはあったものの…時間内で完走できた。今年の自転車シーズンは、思うようにいかないことが多かったけれど、終わりよければすべてヨシ。充実した気持ちで終えることができた。
そして、1000kmブルベと今回のSR600は、オーバーナイト2回以上するなど共通するところがあるように感じている。そのあたりも、今後このブログでまとめていきたい、そんなふうに感じている。
ヒルクライムが苦手なデブだって、諦めずに押して歩けば…なんとかなることもある…
高齢者デブの希望の星…そんな存在に私はなりたい
おしまい
