ボクはもともとBurton SIバインディングを使っていた。そして、Accubrade で痛い目にあって、ストラップバインディングに乗り換えた。正直…Unionのストラップバインディングになんの不満もない(Union推しな理由はこちら)。
そんなボクだが、最近のクィックエントリー・バインディングの進化を見て、もう一度試したくなった。ゲレンデ用に、楽で便利で、多少ルーズなやつがあってもいい気がした。
もちろん、使えるならBCでも使いたい。脱いだり履いたりが必要なルート、川場のS沢、N沢、谷川の湯檜曽川沿い、岩鞍のK沢とかで楽ができたらいいなと。
ボクがFASEを選んだ一番大きな理由は固定方式だ。リリースレバーワンプッシュのシステムは、誤解放が怖い。さらにリリースレバーを「上から押す」仕組みだと、BCでの危険性がさらに高まる。
| Bataleon の FASEシステム |
ボクがFASEを選んだ一番大きな理由は固定方式だ。リリースレバーワンプッシュのシステムは、誤解放が怖い。さらにリリースレバーを「上から押す」仕組みだと、BCでの危険性がさらに高まる。
BCでは、デブリやアイスブロック、ブレーカブルクラストの破片が板の上に溜まることがある。特にブレーカブルクラストの破片が厄介で、コンクリート平板みたいなやつとか、エッジが立った棒みたいなやつは、引っかかりが多いのでお互いに絡み合い、なんらかのはずみでレバーを押してしまう。非常に稀ではあるけれど、実際に起こった事例をボクは知っている(その人はワンフット転倒で膝の靱帯断裂)。
これがわかっているBurtonとAccubradeのリリースレバーは、引き上げ開放。そしてBurton の Step On は、リリースレバーの位置を高くして、crud snow (腐れ雪)に覆われないようにしている。Accubradeはレバー位置が低いのだが、ノブを回転させるとロックがかけられた。
そんなこんなを観察していくと、Burton Step-Onはかなりイケてるように見えるのだが…ボクはSalomonのブーツがお気に入り。今更他のブランドで冒険するつもりもない。だから ブーツとバインがセットのシステムになる Step On はチョイスから外れた。
気に入っているブーツがそのまま使える、 Nidecker Supermatic はリリースレバーが押し下げなのと、後述するけどヒールカップがボリューミーなので選択肢から外れた。
年齢的に、怪我をしたら治りが遅いボクは誤解放が起こらない、ラチェット方式にこだわりたい。ラチェットは、何かのはずみでリリース用の爪が引かれても、一段、二段ずれて止まるだけ。「引き続けない限り」開放しないという信頼感はやはり大きいのだ。
で、FASE登場までは、ラチェット式のクィックエントリーは…SPとかFLOW。ユーヤパイセンもSPを好んで長く使っていた。だが、スリッパタイプは雪が詰まるとスリップインがとても困難になるみたいだし、SPは時々マイナートラブルの話を聞く。
普通のストラップバインは、少しぐらい雪がソールについていようが構わず履けるし、スペアパーツも携行しやすいし、山で応急修理もできるから…って考えると、SPやFlowに移行しようというモチベーションが湧きにくい。見た目も重そうだし
スペア・パーツと言えば、Bataleon は最初から消耗部品の予備が付いてきた。これは嬉しい。他社のスペアパーツは結構な値段がする。納期も遅かったり、廃盤になってたりもするし、バインのモデルチェンジがあると、買い置きの予備パーツが適合しなくなってゴミになったりもする。
| 最初からついてくるスペア・パーツ |
クィックエントリーのシステムは傍に置いて、Bataleon のバインディングとしての性能はどんな感じなのだろうか?その辺りを書いてみよう。
Bataleon のボードをボクは好んで乗りついでいる。その理由は、ちょうどいいホドホド感を感じるからだ。なんというか、雪面が荒れてきたり、コンディションが悪くなってきた時にイジワルをしない。コブとか入るとよくわかるけど、変なエッジの引っ掛かりが無い。
コブに脱力して入りボードを自由にしてあげると、ノーズがスルスル動いて一番いいポイントに適当に入っていく。乗り手は、ちょうどいいところでエッジを入れてやるだけで、スピードコントロールとバランスが取れる。コブで乗りやすいボードは大体がBCでも乗りやすい。スプーンカット、流水痕、ブレーカブル…BCでは斜面のコンディションもさまざまで、そんなところをうまくイナせる相棒がBataleonのボード。そんなブランドがチューニングしたバインに興味があったのだ。
パッと見てわかるのはミニディスク。ボクが初めて履いたストラップバインは、Genesis の Re-Flex だった。ボードのフレックスを活かすために、柔らかいセンターディスクを使っていた。ガチガチのAccubradeから乗り換えた時は、頼りないフラフラ感にめまいがしたが、慣れたらその自由さに目が醒めた。ミニディスクもボードのフレックスを活かすための仕組みで、Re-Flex特有のネガも無いから興味を持っていた。
| ミニディスク |
ミニディスクと言えば、UnionのContact Pro。買おうかと真剣に悩んだことがあった。結局はAtlasにしたのだけれど、ミニディスクはボードフレックスを活かせるのはいいがセンタリングができないのだ。
| センタリングはできない |
Bataleon のミニディスクもそうだけれど、ディスクのスリットを前後方向に向けるのがデフォルトだ。つまり、スタンス幅は変えられる。ディスクを90度回転されられないので、トウ・ヒール方向の調整(センタリング)は、ディスクではできない。
| スタンス幅の微調整はできる |
センタリングは、ヒールカップをスライドして前後させることで調整する。これは、Union、Drake、Rideなど、同様の構造をもっているバインに共通する考え方だ。
| 左右非対称のレール構造 |
Bataleonのこのバインは、左右非対称構造が特徴の一つ。その効果はよくわからなかった。ボクが鈍感だったせいもあるかもしれない。他のバインと比べて明らかなのは、前後のバインの間に重心を置くのがすごく楽ということ。これが非対称構造によるものか、後述のカントによるものかはよくわからない。
| 全面ブッシングで母指球下だけ固い |
このバインはベースプレートの裏側全面が厚いブッシングで覆われている。多分感覚はルーズになるのだろうけど、荒れた雪面ではとても有効だろうと期待していた。実際に履いてみると、ルーズさはほとんど感じない。エッジの噛みも普通に良いし、それでいながら不快な振動はカットしている感が強い。
| 2度のカント |
ベースプレートには2度のカントが入っている。そのせいか、ボードのノーズ〜テール方向のバランスが取りやすい。
ボクは重心を、前後バインディングのディスクセンター内側に維持して滑ろうとしている。前乗りしても、重心はフロントバインのディスクセンターを超えないし、後ろも同様だ。で、実際に滑っていると、外乱の影響で体の位置が想定よりも前後することがある。そんな時でも我慢して堪えていると、重心がなんとなくwセンターに戻ってくる。
| ブーツソールとのフィッティングはガスペダルで |
ガスペダルはなんの変哲もない。ただ、表面の溝が縦方向に切ってあるのが良い。ガスペダルに溜まった雪を、トウ側とヒール側に払う時に何の抵抗もない。ガスペダルのデザインが凝っていると、ここに微妙に雪が凍りついて不快な感覚になる。Genesisのガスペダルとか、もう
| フォワードリーンは2段階 |
Contact Pro を買わなかった理由にはもう一つあった。それは、フォワードリーン。調整が2段階しかなくて、あんまり前傾入れられそうに無かった。前述の通り、ミニディスクのバインはセンタリングの調整幅が少なくなる。それに加えてハイバックリーンが入れられないと、バックサイドでキレるターンを作れないような気がしてやめた。買ってから気がついたけど、Bataleonのこれも2段階しかなかったw
実際に履いてみて分かったけど、元々のハイバック角度が適切なら、調整は2段階で不満なかった。荒れてて固い人工雪バーンで、強いバックサイドターンを作ろうとすると、流石に工夫が必要になるけど、それ以外のシチュエーションでは、まったく不自由がない。
Bataleon のこのバインディングをまとめると、Union の Contact Pro をクィックエントリーにした感じ?で、このバインディングを履いてみて、Contact Proに持っていたネガティブなイメージは払拭された。で…ボクが次に買うBC用のバインは、きっと Union の Contact Proだなw
まとめると、バインディングの基本性能ではなんの不満もない。バックサイドターンはハイバックで倒すというよりは、踵で押し込む感じになる。トウサイドも面で踏み込むのだが、アンクルストラップのサポート力が強くてレバレッジが効く。だからアンクルストラップをあんまり締め込まなくても済む。ベースプレートのカントのためかセンターに乗りやすい。ブッシングとミニディスクのおかげか、ジャガイモ畑やアイスバーンでも振動がカットされて疲れにくい。期待以上に、滑走性能のバランスが良かった。
クィックエントリー・バインディングとしてみると、ちょっと微妙ではある。トウストラップの位置が一発で決まらないので、微調整が必要になる。そして、踏み込んだだけではロックされない仕組みなので、エントリーして、アンクルストラップのラチェットをスライドさせて、2アクションくらい巻き上げ操作する必要がある。踏み込んでからラチェット操作するまでの間、後ろ足の荷重はカカトになるから、滑りながらの装着はチョット難易度が高い。でも、普通のバインに比べると、装着のスピードは確実に速い。
そんなわけで、ゲレンデで使うにはかなりおすすめできる。
BCではどうか?ちょっと微妙なところがある。
ハイバックを畳んだ時、ヒールカップからジョイントバーが突き出すのだ。ヒール側で蹴ってスケーティングする人(ボク)にとっては、このバーがスネに刺さりそうで怖い。実際は面取りがされていて、スネは無事なのだがあまりいい感じはしない。
BCではワンフットでの移動がわりと発生する。そんな時に、ヒール側に転倒したら、このバーは雪面にブッ刺さる。そこが、ちょうどバーが刺さるくらいのブレーカブルクラストだったらどうだろうか。何かしら壊れそうな予感がする。
ドラグしやすさについても書いておこう。BCで良くあるのが、高度を下げたくないトラバースだ。高度を維持するために、速度を維持する必要があるのだが、このとき表面が柔らかい crud snow だと問題がおこる。FASEのトウストラップは、表面形状(深いメッシュ状ラバーパネル)がドラグしやいので、湿雪やブレーカブルクラストでは強いブレーキになる。
ヒール側のドラグはヒールカップに左右される。装着状態ならば、FASEのヒールカップはノーマルバインと大差がない。トラバースの途中で失速して、後ろ足を外す必要が無ければ問題は無い…が、そんなことが得てしてありうるのがBCの辛いところだ。
BCで遭遇する、「距離は短いけど強烈な傾斜」についても書いておこう。ボクらシロートは、そこをダイレクトに落とすなんてことは無いのだが…そこをトラバースしたり、木の葉で降りないと帰れないみたいなことはある。ゲレンデで超急斜面というとだいたい40度くらい。45度というのが、営業しているリゾートでありうる最大傾斜ってところだろうか。で、バインの設計もだいたい…40度くらいでドラグしないって、そんな目安になっている気がする。
BCでやばい傾斜というのは、40度+α の傾斜で、そこが凍結してたりすると独特のノウハウが必要になる。無造作にヒールサイドエッジでトラバースに入ると、ヒールカップが引っかかってエッジが外れて滑落…こうなると最悪死ぬ。この点で非常に危険なのが Supermatic のボリューミーなヒールカップ。これも大きな理由で、ボクの選択肢から外れた(繰り返すけど、ゲレンデで滑るなら問題はない)。
ちなみに、ボクが経験したやばい斜面というのは、谷川岳西黒沢本谷の落ち込み、谷川岳赤谷川本谷のドウドウノセン・マワットノセンの側壁、上州武尊山剣ヶ峰西方シュート、といったところだろうか。そのあたりだと、斜度で言うと45度前後。滑落防止のアックス持って、トウサイドエッジを使って通過するか、ダブルストック使って早い切り返し(西黒沢本谷の記録に飛びます)でクリアするのが基本になる。
ヒールサイドのドラグ防止に有効なのは、そもそもヒールカップのないFlowやSPだと思う。しかしこの2つについて、ボクには語れるほどの知見が無い。
つらつら書いてきたが、やはりシビアな状況のBCでボクが連れ出すのは、Union の Atlasになるだろう。そして、Atlasを温存するために、Bataleonはゲレンデを中心にフル活躍してもらう。ただ、BCではどうかという視点は、やらない人にはまったく関係がない。なので、ここで書いていることは、参考にしてくれたら嬉しいが、好きなのを選んで使えばいいと思う。
そんな感じで、ボクのクィックエントリーバインディングへの回帰行が始まった。
あ、そうそう、このFASEシステム、履いてみたいという舎員にはどんどん試してもらいたい。ユーヤみたいに、雪面と喧嘩せず、繊細にエッジ角と圧を調整していく…バカっ速なライダーには特に向いているんじゃないかなーとか妄想してます。 オシマイ