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2021年3月16日火曜日

ボールを活用して安全に滑る 2/2 (退避行動)

ポールを活用して安全に滑る 1/2 で、僕の技術的な背景はスキーなことをお伝えしました。スキーやったことないライダーにとって、あまり馴染みがない話だったかもしれません。

で、今回はBCスノーボードでのストック滑走(注1)について、もう少し深堀します。

前回、「動かざるをえない時、動いたほうがリスクを回避できる場合もあります」と、書きました。「そこが狭い沢筋で、周囲の岩壁からいつ落石があるか分からない場合は、安全地帯まで退避するべきです」とも書きました。

しかし…スノーボード の一番の弱点は…斜度がなければ動けないのです。
つまり、退避したいけど、動けない。こんな時にストックを使えば推進力を得られて、脱出できます。ただし、要注意なのは、どハマりしてからストックを出そうとしても遅いということ。先の状況をよく見て、必要になりそうなら、先に出して準備してスタートするということが重要です。

僕が谷川岳の西黒沢本谷を、スノーボードで下降した時のことを例にとって説明します。
この日、僕は肩の広場からずっとストック滑走でした。

肩の小屋 快晴だが低温で暴風

理由はいくつかあるのですが、まずは、上部の急斜面で確実にターンを決めたかったこと。西黒沢は、下降路の途中が狭くなっています。両サイドから岩壁が迫っていて、シュルンドがある可能性もあり、ワンターンごとに確実に減速したかったのです。

場合によっては、斜面の途中で水平に横移動が必要になるかもしれません。クラックに気がついて手前で停止。そのまま横移動しないと先に進めなかったら?雪崩の走路から逃げなければならなかったら?(注2)

次に考えたのは、ボトムの処理です。本谷には、夏は滝になっているところがいくつもあります。この時期はまだ氷結しているでしょうが、降り切ったところの雪が薄いと滝壺に落ちるかも。で、降り切る手前で十分に減速し、状況によっては下り切る手前でトラバースに入ります。この場合、速度が落ちているし、トラバースで停止しないためにはストックが有効です。

本谷を下りきって、熊穴沢との合流点から振り返る

下りきって沢床に立つと、そこは雪崩のリスクが一番高いところ。できるだけ速やかに通過したいところです。しかし、上の写真でわかる通り、すでにデブリが出てます。デブリは新雪の下にも隠れていますから、安全のためにはスピードを出せません。

状態の良いところでは加速して、早く危険地帯から脱出するためにも、ポールが有効です。

田尻沢合流点の少し上から熊穴沢上部を振り返る

標高が下がってくると、雪が腐ってスピードが出なくなります。状態が良ければ、勢いをつけてクリアできるはずのギャップ(夏道や堰堤など)も、止まってしまうことも。ストック滑走ができれば、ほぼ平坦の下降路もボードを外さずに降りることができるでしょう。

田尻沢出合に無事下山 肩の広場からここまで30分弱のアドベンチャー

まとめます。

狭くて急な斜面や、不整地で、低速で細かいターンを確実に続ける場合。
ボトムから速やかに退避したり、斜度のないトラバースが予見できる場合。
こうした場合は積極的にストック滑走を検討してください。

もたもたしていると、あなたが危険な目にあうかもしれません。が、同時に、同行しているパーティ全員も危険にさらされます。(注3)

それでは、皆様もどうぞご安全に。

(注1)「ストック滑走」はずっと昔からある技術です。最近では、ストックのことをポールと呼ぶのが一般化していますが、歴史に敬意を評してこう呼ぶことにしましょうか。

(注2)当日のコンディションは適度に締まった春のザラメ。その上に10~15cm位の、結晶が風で砕けてパックされた、人工雪のような新雪で弱層無し。雪崩の恐れはなさそうですが、急斜面では小規模な雪崩でも危険です。雪崩から逃げるには、尾根状地形の上に上がること。つまり、推進力が必要です。

(注3)上に挙げたような危険、スキーならほとんど問題になりません。機動力の優れたスキーと、不便だけれど楽しいスノーボードが同時にBCを楽しむには、お互いに譲り合うことも必要かなと個人的には思っています。