明日は久しぶりに谷川岳の芝倉沢を滑る。
ひと昔前は、芝倉沢のトップシーズンと言えば3月末ごろ。それくらいになると、下地は落ち着いて、ちょっと重い雪だけど、それなりに柔らかくて、湯檜曽側沿いに滑って下山できた。
今は…3月末といえば残雪期も終わりに近づいて、前向きに考えれば雪崩のリスクは極端に減る。だがしかし、湯檜曽川沿いは雪が切れて、滑ることもできない。さりとて夏道を辿ろうにも、斜面から滑り降りてきた残雪で、灌木やら幼木がなぎ倒されて、登山道の上のちょうど膝上から腿くらいの高さに、密集したハードルみたいな感じでバリケードが築かれる(注1)。4月なんて、まず、苦行w
多分核心は、踏み抜き。天神尾根と一ノ倉岳のハイク、そして湯檜曽川沿いの下山路。雪があれば、湯檜曽川に沿って、ストック滑走で降りられるけど、明日は無理かな。
いろいろ考えて、明日はスノーシューは置いて行く。で、6本爪のクランポン+ポールでハイク。アックスは一応車に積んでおくけど、多分残置する。
そんでもって、持参する機材のチェックとメンテナンス。
正直、クランポンは前爪がないと意味がないと思っている。6本や8本は、アルパインスノーシューとほぼ同じくらいの突破力しか期待していない。
でも、軽量で、足場が狭い岩場の通過や、雪壁に幅15cmくらいのトラバースが続くような場所では有効。つまり、谷川なら、場合によっては使える。踏み抜きには我慢が必要だけどねw
前回は重登山靴と合わせて使ったので、幅を調整 |
で、爪の側面をファイル(波目やすり)で目立てしていく。ここで注意するのは、尖らせすぎないこと。このレベルのクランポンをギンギンに目立てしないと不安、そんな場所に行くなら、10本を出すべきだよね。
岩場の通過で丸まったポイントを波目ヤスリで研ぐ |
研ぎ直したときに、10本はマジで食い込みを追求するので、ポイントには白く光る部分は無い。ここはほとんどナイフみたいな感じ。それに対して、6本は、ピンポイントで白く光る、丸いチップが残るように研ぐ。
左はグリベルの10本、油断するといろんなものが切れたり穴があく |
グリベルの10本は絶対の安心感があるんだけど、逆に油断ができない。つま先やかかとにドカーンと伸びた鋭い爪は、頼れるけど、いろんなものを傷つける。そして、斜面に残った幅の狭いトレースを歩くようなとき、鋭すぎる前爪がウェアの裾にささったら、転倒するリスクが増える。残雪期の低山、クランポンの刃は鋭すぎないほうがいい、時もある。
メンテナンスが終わったら、サビの防止と、着雪・着氷を防ぐためにシリコーンスプレーを吹く。
左はスプレー、右はオイルの容器
僕は、スノーシュー(デッキ・ハーネス・ストラップと満遍なく)や、スノーボードやスキーのデッキには、定期的にシリコーンオイルを塗布したり、シリコーンスプレーを吹いている。意味があるのか?と言われれば、もちろん、あると考えているからやるのだが…
メンテナンスのコツというのは、自分の命がかかっているギアは、ちゃんと観察して、手入れして、状況の変化を繰り返し追いかけてみるってこと、なんじゃないかな。
注1 夏は暑すぎて、水場も限られる谷川連峰。ベストシーズンは残雪期だと思う(個人的な感想です)。だが、2つ注意点。まず、トラバースルートは通行不可。本文で書いたけど、豪雪地帯なんで、全ての樹木が斜面の下方向になぎ倒されている。トラバースということは、その樹木の上をまたぎ、下をくぐり、横にずれて、これを永遠に繰り返すことになる。だから、必ず尾根筋か、谷筋(落石とブロック雪崩要注意)をたどる必要がある。もう一つの注意点はコーヒーフィルターを何枚か持参すること。残雪期は、雪を溶かせば水が取れるのだが、黄砂や花粉、黒いタール状のものが浮かんでくる。他の山域でももちろん同じなんだけど、タール状のものは特に谷川で多い気がする。そんな奴らも、フィルターで濾せば、まぁ、気にならなくなるかな。
注2 シリコーン系のメリットは、樹脂、プラスチックやゴムの強度を落とさないこと。そして、水分や酸素を遮断するので、加水分解の進行を遅らせることができる。シリコーンオイルはそのまま塗布する。スプレーの場合は、シリコーンそのものには樹脂やゴムへの攻撃性がなくても、噴霧できるように薄めている溶剤が攻撃性を持つ場合がある。「プラスチックやゴムに使えます」と書いてある製品を選ぶと良いでしょう。