そもそもサイクリングの「ロングライド」とは、どれくらいの距離を言うのだろうか。普通の人にとって、丸一日10時間走れば相当頑張ったと言えるだろう。ブルベペースの時速15kmで10時間走れば、走行距離は150kmになる。そう考えると、150kmを超えるくらいの距離になれば「ロングライド」と言って良いのではないだろうか。
まぁ、強い人ならその距離は半日で走ってしまうのだが…そーゆー人はこんなヘボサイクリストのブログなんか来ないからいいのだ。
さて、ボクはブルベを初めて2シーズンをRidgeback Ramble (ツーリングバイク)で走ってきた。このバイクで600kmとか400kmのブルベを3本ずつ完走できたので、ロングライド向きのバイクではある。
そしてこの夏に、Trek Emonda SL(オールラウンドタイプのレーシングバイク)を増車した。増車した背景については
ココを参照。Trekで数本の短めブルベ(200と300ね)を走って、Ridgebackと比較することで見えてきたことがある。
簡単に言えば、ツーリングバイクは姿勢が立っていて、風の抵抗が大きくスピードが出ない代わりに身体がラク。レーシングバイクはその逆であるという…当たり前の結果だった。
もう少し具体的な話をすると、ツーリングバイクとレーシングバイクの速度差は、「グロス時速で1km程度」だった。
それしか変わらないの??って思うかも知れないが…ロングライドとかブルベだとこの違いは地味に大きい。グロス15時間走行すると、走行距離が15km違ってくる。距離15kmは、ブルベペースの時速15kmだと1時間。感覚的には、丸一日ちょい走ると、1時間の短縮になる計算で、300km20時間のブルベなら、1時間半程度の短縮になる。
それでは、身体への負荷はどんな違いがあるのだろうか?
レーシングバイクとツーリングバイクの一番の違いは、「速さ」へのこだわりだ。(ブルベに比べると)短時間・高強度のペダリングを強いられ、想定する速度域が速いレーシングバイクは、空気抵抗を下げる工夫がいろいろ施されている。
そして、走行時の空気抵抗を左右する要素として、車体そのものよりもサイクリストの体によるもののほうが大きくなる。速く走るために前傾を強いることで、前面投影面積を減らして「空力」を改善する。この体勢はどうしても負荷が高くなり、快適性は犠牲になる。
ポジションの違いは、ハンドルバー(ブラケット)とサドル、そしてペダルの位置によって生み出される。具体的にどうなのかを見てみよう。
 |
| 左右2cmくらい狭くなる |
ツーリングバイクのハンドルは幅が広い。
グラベル、落ち葉や枯れ木などの障害物や、深い轍の外乱もある。荷物が多いので、フレームジオメトリは安定優先。なのに低速でタイトターンを切ることもある。そんなわけで、しっかり車体を抑えられるように、幅の広いハンドルバーが付いている。
レーシングバイクは、空気抵抗を減らすために両腕を絞った体勢を作れる狭いハンドルバーが使われる。ブラケットの位置も絞りぎみになる。ステムもハンドルも、サイクリストの強い入力に耐えられる剛性が高いものだし…振動やショックを和らげるなんらかの工夫がないと、上半身の疲労は早めにやってくる。
 |
| BB下りはほとんど一緒 |
Ridgeback とTrekのBB下りはほとんど一緒だった。ヒラヒラ感や、反応性に影響するここが同じなのはちょっと意外だった。
フレームの中心であるBBが同じなので、リーチの違いがそのままフロント三角の大きさの違いになる。
ツーリングバイクのリッジバックはリーチが長く、フロントタイヤとシューズのつま先には十分なクリアランスがある。ただし、32c対応のフルマッドガードを付けると、切り返しの時につま先が当たる。
 |
| 泥除けにつま先が当たる |
レーシングバイクのTrekは、リーチが短いので、泥除けがなくてもつま先があたる。
 |
| 泥除け無くても当たる |
タイトターンでシューズのつま先が当たるのは怖い、確かにそうなのだが、実際に乗ってみると問題にはならない。一つの理由は、ターンの作り方がハンドルなのか、車体の傾きなのかの違いだ。
Ridgebackは「真っ直ぐ行こうとする車体をハンドルで曲げる」。対してTrekは「視線を向けて体を傾けるだけで曲がる」。Trekは、停止寸前の速度を除いて、ハンドルを大きく切る必要が無いのだ。
ちなみに、どちらのバイクもペダルとサドルは同じモデルを付けてある。
 |
| 信頼のXTR・ショートスピンドル |
 |
信頼のFabric Scoop Radius
|
ここを共通化することで、バイクを乗り換えた時に調整が不要で、単に乗り味の違いだけを楽しむことができる。
ただし、サドルの角度だけは微調整が必要で、Trekのほうが前下がりになっている。
理由は、ハンドルバーとブラケットの位置が違うから。
 |
| ブラケットの高さ・遠さ |
 |
| ブラケット位置を上から見る |
前傾が深いTrekの場合、尿道の下がサドルの先端で圧迫されて、痛みが出やすい。そこの圧迫を逃すために、ほんの少しサドルのノーズを下げてある。
ツラツラと書いてきたが、300kmまでのブルベならばツーリングバイクでもレーシングバイクでもどちらでも完走はできるだろう。そして…そこまでの距離ならば、レーシングバイクの方が速く走れると思う。
時速1kmの速度差は、ブルベ走行中はどんな感じになるかイメージできるだろうか。
信号ストップがない、平坦な河川敷のサイクリングロードなどがわかりやすい。Ridgebackで走っていると、後方から他の参加者がジリジリと迫ってくる。そしてパスされて、ジリジリと離されていく。この、「ほとんど同じ速度なんだけれど、ジリジリと差が開いてく」のが1kmの速度差と考えて良い。
今までのボクの走り方は、他の参加者よりもペースが遅い。ジリジリと離されて遅れるのだけれど、補給や休憩の取り方を工夫して挽回する感じだ。で、完走者の中では下位10%くらいだが、Trekで走ると中位ちょい下あたりでゴールできる感じになる。
300km超え、400kmや600kmのブルベはどうだろうか。正直ボクはTrekで400km は走れると思うが…600kmはまだ確信がない。
300kmを走り終えた後の消耗は、Trekのほうが大きいのだ。サドルとペダルの位置関係は両方とも揃えているので、下半身の消耗度合いは同じようなものなのだが、上半身に違いが出る。
特に肩と、首のこわばりが激しく、完走後2〜3日程度は肩こり・偏頭痛が出る。こうした痛みやこわばりはRidgebackでは起きないので、400km超のブルベでどうなるかは来年走ってみないとなんとも言えない。
Trek ならば Emonda を持っていて Domaneを買おうか、またはその逆かで悩んでいる人がいたら、参考になれば嬉しいな。