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2025年3月7日金曜日

DAY28 BC5日光白根山東面 中央ルンゼ…ソロ

どれくらい前だったろうか、日光白根山の山頂直下から滑降できるって知ったのは。

春から秋にかけて、何度も通った日光白根山。その東面に落ちるルンゼ…岩溝をそのまま滑りおりると五色沼に出る。考えただけで…かっちょいい!オレが

そこは、本来は山スキーのルートである。スキーの機動力があってこそ、楽しめるルート。ヘッポコBCボーダーのボクにはちょっと敷居が高い印象。

まだ死にたくないので、チャレンジングなルートに入る時、ボクは何度も下見をする。
そんなわけで、何回も、一人で、そして滑ってみたいと言ってくれたユーヤと、日光白根へ偵察山行に行っていた。

雪は充分
このルートの攻略には、いくつか大事なポイントがある。
まずは十分な積雪量。左右を岩壁に挟まれたルンゼ。そこにドロップしたら、エスケープルートは無い。途中で雪が切れてたりしたら、そこで行き詰まる。

無事を祈ります
そして寒気。

側壁は切り立っていて、風化した脆い火成岩でできている。
小さなものから大きなものまで、崩れそうな岩だらけ。
雪と氷で覆われていれば安定しているのだけれど、雪解けが進むと落石・落氷の攻撃にさらされる…はず。

地獄ナギが見える
寒気が大事な理由はもうひとつある。
このルート上には、何箇所も樹林帯や低木帯の通過がある。そこは雪が緩んでくると、踏み抜き地獄になりがちだ。ブレーカブルクラストの踏み抜き地獄とか、めまいがするくらいにきついから勘弁。

地獄ナギのトラバース
雪がたくさんあって、よく冷え込んで…雪崩のリスクが無い…というのは基本アイスバーンを狙うということ。

ということで、最後のポイントは滑落リスクの管理。

それはまぁ…シビアコンディションを想定した板を選択すること。エッジをしっかり研いでおくこと。ハードパックに強い山岳用のスノーシューを使うこと。そんな感じ?

アイスバーンに積雪2センチ
ボクが選んだのは、メインボードの Bataleon Thunder ではなく… Rossignol の Sushi
144cmで短いので、樹林帯の通過で背負ったボードが引っかかることが少ないし、軽い。

こんだけ短いのにサスガのロシニョール、エッジが良く効く。

唯一の欠点は、絶対的な浮力が足りないのと、60km を超えたスピードでの安定感…
欠点二つあったネ…

まもなく森林限界

ま今日の斜面はガリンガリンに凍ってると思うので、浮力なくても無問題。
そして、ヘッポコなボクは慎重に滑るので、スピードなんか出さないから大丈夫、一人だし。

山頂の肩に出る
そう、頼りにしていたユーヤが、今シーズンはどうしてもタイミングが合わずに来れない。
雪が多い今シーズン、チャンスを見送るのはどうしても惜しいので、ソロで入ったのだ。
老境の身…いつまで身体動くかわからんし、いつお迎えが来るかも知らんしな

上州武尊方面

森林限界を超えて山頂稜線に出ると、そこには雪が無い。

風の通り道、向こうは足尾

登山者の人と、先になり後になりしながら歩く。
ボードを背負ってるので、何人かは「どこ滑るんですか?」と、不思議そうに尋ねてくる。

蒼い空
午後から天気崩れる予報だけれど、今の所は快晴。

右の台地上に山頂
UFO基地も雪の下。旧噴火口から火口壁を上り、溶岩が積み重なった山頂の奥宮に着いた。

奥宮
先に着いていた登山者に、シャッターを押してもらう。

エビの尻尾
標識のエビの尻尾や、岩を覆ったベルグラの状態を観察する。
朝から暖気が入ってきていないし、日射もわずかなので溶けている気配は無い。

落石の恐れはないけれど、氷化したしたハードバーンが待っていそうだ。

山頂標識はパス
奥宮からもう少し上がると、山としての山頂。
そこはもう何度となく登っているのでパスして、ドロップポイントへ移動する。

ダイレクトドロップ…はパス
山頂からダイレクトに落ち込んでいる、広めのシュートは、一応のぞいてみたけどヤメた。だってこれだもん。

入り口からちょい先は、すこーし吹き寄せられた新雪が積もってる。でも、下地との密着程度や、弱層チェックもせずに入るのはイヤだ。足元が流れて滑落したら、その先は間違いなくアイスバーンの斜面が待っているのだから。

こんなん無理っす
北東に少し降り、コルからルンゼを覗き込む。入り口は40度を超える急斜面だが、その先は斜度が緩む。

ルンゼ上部と男体山
見た目美味しそうな斜面だけれど、ね。

正面の尾根乗り越えて左が北東ルンゼ
北東ルンゼと中央ルンゼを分ける、分岐が目の前に見える。

バインをしっかり締めて、ヘルメットの顎紐を再度確認してドロップ。
最初数メートルは、アイスバーンの上に10〜20cmの新雪。何度か強くエッジで蹴飛ばして、安定を見るたところ、大丈夫そうだ。

というより、マジでガリガリのアイスバーン。滑落停止用に、アックスが欲しくなる。

パウパウ終了ここからアイスバーン
3mくらい降りたら、吹き溜まりが終わり、アイスバーンの斜面が始まる。

そこから分岐点までは、ウネるような氷の斜面。木の葉多めで下る。
分岐点から上を振り返る
北東ルンゼ(僕は過去に、ここを東面ダイレクトと呼んでいた)との分岐点まで来た。
北東ルンゼのほうが斜度があるので、今日はそっちは危ない。そう考えて、中央ルンゼを選択してさらに下る。

ルンゼ分岐点
というより、この分岐の雪壁が硬すぎて、ツボ足では乗り越えられそうに無い。そこまでして北東ルンゼに行くよりも、スタンダードな中央ルンゼで良しとしましょうかね。ソロだし…

この雪壁裏が北東ルンゼ

側壁は凍っている

中央ルンゼ下部

ベルクシュルンド

側壁には大きなシュルンドが開いている。
積雪量が多く、よく冷えているせいで隙間は無いので、中に落ち込むリスクはあまりない。ただ、落ち込んでどっかぶつけたりしたらやばいので、滑落しないように慎重に下る。

滑走の醍醐味…は…まったくないw

側壁

まもなく出口
ルンゼの出口に、当てこんだら楽しそうな壁がある。

ナチュラルクオーターパイプ?
裏側がどうなってるかわからないので、距離を確保してゆっくり下る。

転落危険

最後のカーブ

出口
ルンゼ出口を過ぎると、樹林帯に入る。

タイトツリー
途中で見上げると、北東ルンゼが樹林の向こうに見えてきた。

北東ルンゼ出口
ここまで、想定していた時間を少し過ぎている。
戻る距離を短くできるように、トラバース気味に樹林帯を下り五色沼へ出る。

トラバース
斜度が落ちてきて、浮力に劣るSushiは沈む。
2〜3センチのブレーカブルクラスト。その下は粉雪というか、グラニュー糖のような氷の粒。
五色沼
クラスト踏み抜くと、シューを引き抜くのが面倒くさい。そんなラッセルが続く。

北東ルンゼ

弥陀が池への登り返しは樹林帯。粉雪が残っている。

樹林帯は新雪15cm
粉雪をラッセルして体重をかけると、クラストが割れる。なにこれw
うんざりしながら進んで、ようやく弥陀が池。計画より1時間程度遅れている。

弥陀が池
弥陀が池を過ぎて、コルを超えると夏道登山道が通る細くて急な沢筋。ここの雪は柔らかくて、結局ここが一番滑って楽しかった。あっという間に終わったけどw

沢をボトムまで落として、スノーシューにスイッチ。スキーヤーズ・レフトに進路を変え、等高線に沿って丸沼高原へと戻る。

途中何箇所か滑れそうなところもあったけれど、トレースを潰してしまうと明日登る人が可哀想。そしてここで怪我をすると、下山に難儀するの。時間はかかっても確実な、スノーシュー下山と割り切って淡々と進む。

御礼
こんな遠かったかな?そう何度も思いつつ、スキー場に戻ってきた。

帰ってきたでよ

下りゴンドラの最終に間に合った。
滑って下れるので、下り乗車は関係ないのだけれど、下山の時間が遅くなると心配かけるのでよかった。思ったよりも時間はかかったけれどね。

何度も、「2度と来ない」そう思ったけれど…

自分で登りたいと思って
自分で調べて
自分で偵察参考して計画して
自力で実行して
ほぼほぼ想定通りに無事に帰ってきた

間違いなく、今シーズンのというか、僕のBC経験の中で一生忘れられない山行になりました。

そう、僕のBCは…
スキーやスノーボードを道具として使っている、雪山登山なんだな。
滑りが楽しければ言うことないけど、僕は登山をしているんだよ。

うまく言えないけれど、そんなことを考えていた。

今回一緒に行けなかったユーヤが、行ってみたいと言ったら…
もう一回くらいは行ってもいいかな…何じゃそりゃ?w