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2021年10月13日水曜日

DNF(Do not Finish)

 僕が最後に馬蹄形ワンデイにトライしたのは、反時計回りだった。30代の時だから、かれこれ20年以上前の話だ。

僕はずっと痩せ型体型で、「多分一生太らないんだろうな」なって思っていたのだけれど、30代になったらそんなこともなさそうだ、35になったら、絶対そんなことないな、と確信を持って感じるようになった。

ややポチャ体型になったにも関わらず、痩せていた時の感覚が残っている僕は、白毛門から登って朝日岳に来て、走り出した。朝日からジャンクションピークまでは穏やかな道が続く。ここでスピードを上げて時間を稼ごうとしたのだ。

朝日岳からジャンクションピークを見る
そして、その勢いで、ジャンクションピークから清水峠最低鞍部までも、歩いたり走ったりを続けた。そして、この景色を見た。
左前から右を回って先へ…
反時計回りで、最低鞍部あたりならまだ1/4くらいだ。それはわかっているのだけれども、これから登る山々を見た。一番奥のガスがかかっている山塊を右から左に歩いて、そこから西黒尾根の下降が待っている。行けるのだろうか?僕は焦った。

反対側から、グループハイカーがやって来て、言葉を交わす。

あっ!さっき朝日からの下りを走ってた人よね!?
私たちは蓬ヒュッテに泊まったのよ〜あなた馬蹄形日帰り?
すごいわねー、トレランってやつかしら?

まだトレランが今ほど一般的でなかった当時、山で走る人を見かけることは滅多になかった。で、お調子者の僕は、「頑張ってねー」という、お姉様達の声援を背中で聞きながら走り出した。

で、7つ小屋山あたりまで、走ったり、歩いたりして…気がついた。

やばい、膝やっちゃった…

僕の膝は無理が効かない。単なる負荷、まっすぐあげておろす、最大筋力まで行かないレベルの負荷なら、僕の膝は耐える。自転車のペダルを一定の負荷と速度で踏み続けるような動きはどちらかと言えば得意なのだ。だが、衝撃や捻るような負荷がかかって、あるレベルを超えると痛みが出て、それは数日間引かなくなる。

で、膝の痛みが出た僕は、騙し騙し蓬峠まで行った。そこでギブアップして湯檜曾川沿いに帰るか、馬蹄形を継続するか悩んだ。結局、ヒュッテでソフトドリンクを買って飲んで、少し元気を取り戻して馬蹄形を継続した。

谷川岳本峰にたどり着いて時間を見ると、天神平ロープウェイの最終には間に合いそうだった。膝の踏ん張りが効かなくなり、深くしゃがむと強い痛みが出る僕の膝、天神尾根を下る以外の選択肢は僕には無くなっていた。

なんとか…無事に帰宅して、翌日、膝をカクカクさせながら出勤した。ヨーイチ、シンヤ、タクジその他の面々に、最後ロープウェイで下山したと言うと…

あーそれダメですね、ノーカン 
だせぇwwwなんのために行ったんすか?
やり直し!
ロープウェイ使えないように時計回りで!明日もう一度! 

と、鬼のようなDNF宣告を喰らった。

この借りはいつか返すぞ、そう思いつつ20年経ってしまっていた。