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2021年3月10日水曜日

「良い」ソールの定義 1/2 (素材)

僕はスノーボードの開発や生産に携わった経験はないんだけど…いろいろ見聞きした、コスト要件を満たしながら、商品価値をどうやって高めるか、みたいなことを書いてみます。

いつものことながらですが、このブログの内容は すべて フィクションです。

ソールは、ぶっちゃけ「良い素材」を「手間かけて」、「ハイスペックなファクトリーで製造」すれば良くなります。でもですね、割高になっちゃうんで、どこかで妥協や工夫をしなければならなくなります。

ソールの素材は、ほとんどP-TEXとか、化学製品。で、化学合成プロセスで製造する物って、「大量に仕入れるのが原則です」というか、ちょっとだったら売ってくれません。そりゃそうですよね、P-TEXって、原料の粒々を、添加剤を混ぜて、熱と圧力かけて整形して、それをカットして作るんです。で、成分を変えるごとに、製造設備をバラして、清掃して、メンテナンスしてって作業が入ります。ですから、一度に、大量に作る必要があります。で、できた製品は巨大なロールだったりします。

すみません、そこから、ちょっと切り売りしてくれませんか?

これは通らないっての、わかりますよね?バートンみたいに、トップシェアを誇るブランドならば、大量にボードを製造して売り切れれば、多少特殊な物も発注できます。しかし、ごく生産量がわずかな場合は、仕入れが難しくなるので、工夫をしなければなりません。例えば、

1 スキー部門と共同で調達する
 この点でスキーメーカーは有利です
2 グループ内の他のブランドと共同で調達する
 あそことここが、親会社でつながってるってこと、結構あります
3工場に調達と製造を任せちゃう(自社ではデザインとかだけ)
 アメリカだと、マー●ンが受託大手、そこにゼーンブ任せちゃう。
 日本だと、ほら、あそこですよ、あれ、オガ●カ。
 カザマとかYAMAHAとか西澤とか、いろいろな背景があって(略)
 ヨーロッパだと、もともとエ●ンが大規模にやってたファクトリーが、今は、
 キャ●タとか、バタ●オンとか、あそことか、これとか(略)
4 仕入れるソールの種類を絞る
 種類を絞って、一種類ごとの仕入れ量を増やす。

ここまでが調達の話です。で、4のソールの種類を絞るってことですが、一番簡単なのは色の種類を絞るってことです。ただ、ソールグラフィックスとの兼ね合いが…単色だと、つまんないですからね。で、どんな方法で色を絞るかですが、

もうね、ウチのソールは黒だけにするから!

これ、一番シンプルです。ただ、ちょっと寂しいので、先っぽに小さく赤いポッチを埋め込むとかね。小さいポッチなんで、滑走性に影響でませんから、一番安いやつで無問題。ずーっとそのやり方で行くって決めちゃえば、「赤いP-TEX」最初に仕入れたロールが10年分在庫w でも、まぁ、OK。だって、普段は仕入れるの黒いソールだけなんですから。んで、せっかくだから、もうさ、高いシンタードソールだけに絞る!えっ?そしたら、MSRP最低でも6マン超えるけど?いいの?

いいの!安いのはもう、作らないから!

くどいですけど、「フィクション」ですからね。

もうね、ウチのソールは透明なやつだけにしたから!

グラフィックスは、地肌に塗装かラミネートしておいて、その上から透明ソール貼れば、透けて見えるから無問題っしょ!まぁ、そうなんですけどね。でもね、発色が良くて、退色しなくて…P-TEXと接着できる素材ってあるの???
あるんでしょうね。やってるところありますから…

もうね、ウチのソールは色違いで2種類作るけど、基本アソートだから選べないからね!

YES. の PYL ピック・ユア・ラインというモデルのソールです。
黒い地肌の一部を切り取って、白を嵌め込んでます。こんなふうに、カットしてはめ込むのを「ダイカット・ソール」って言うんですが…生産量の半分が黒字に白丸。残りが、白地に黒丸です。理由はわかりますね?半分半分にすることで、黒いソールと、白いソールの仕入れ量が同じになるからです。


Jonesのホバークラフトです、初期モデル。
これも、白と黒の色違いパターンが半分半分に分かれます。理由は?上で書いたよね?

ま、そんな感じで、仕入れるソールの色を絞って調達コストを抑えるってわけですね。

個人的に好感が持てるのは、グラフィックスとかデザインとかはとりあえずちょっと我慢して、その代わり高品質なソールを使ってるブランドです。結構MSRP高いモデルなのに、ソールがエクストリューデッドとかのブランドもありますけど、これは売れないよねってモデルをうじゃうじゃ持ってたりして、、、もうちょっとモデル数絞って、コスト抑えてやればいいのになーって…(以下自粛)

ま、いいソールはですね、ファイル当てればわかります。硬くて粘りがあって、ファイルでカットした時にささくれない。そのあとホットワックスかければ、じわーーって染み込んでいく。滑った後に着いた汚れも、ワックスかけると奥から浮き出てくる(ワックスがストラクチャーの奥まで綺麗に循環してるってこと。

これはスゴイ!と思うくらい良いソール

「良い」ソールの定義 2/2 (加工技術)に つづく

生存者バイアスでスキーの発展条件を考えてみる(おおげさw)

あるスポーツを継続的にやるプレイヤーが、どこまで上達するかを調べたところ、次の様なことがわかったとします。

中級になれる人 10%
上級になれる人 5%
プロになれる人 1%
世界で戦える人 0.01%


母集団にばらつきがなければ、10,000人がそのスポーツに親しめば、世界クラスが一人生まれることになります。そう、

「母集団にばらつきがなければ」

機材スポーツの場合は、母集団にばらつきが発生します。まず、その機材を準備できる環境にあるかどうか?そして、スキーのように、機材と人とのインターフェイスの相性が、パフォーマンスを大きく左右する(例: カント角)スポーツは特殊な条件が発生します。体験した人がどれだけ継続的にやり続けるか?ここが問題です。

欧米人の場合、スキーに向いている体型(下肢の形)の出現率が 60%だったとします。

10,000がスキーを体験する
40%は、スキーが上手くならず、すぐに脱落し、残り6,000人がスキーを続ける。
中級600人、上級300人…プロ級が 60人生まれる
世界で戦える人が生まれる確率は 0.6人
体験者数を10万人(10倍)に増やせば、6人確保できるということになります。

日本人(昭和生まれの日本人体型)だと…20%だったとします。

10,000がスキーを体験する
80%は、スキーが上手くならずすぐに脱落し、残り2,000人がスキーを続ける。
中級は 200人、上級が 100人…プロ級が 20人生まれる
世界で戦える人が生まれる確率は 0.2人
体験者数を10万人(10倍)に増やしてもやっと1人…

日本で、ワールドカップ級のスキー競技者が、カント角の影響を受けにくいノルディック競技に多く、アルペン種目で極端に少ない理由はここだと思うんです。

「生存者バイアス」と一緒ですよね。どうやったら生き残れるかを調べるために、生き残りを調査しても無駄って話です。むしろ死んじゃった人たちが、なぜ死んだのかを調べないと。

今、スキーをやっている人たちを調べても無駄。(すごい運動能力を持っているのに)スキーをやめちゃった人たちを調べないと。スキーマーケットの発展のためには、この発想の転換が必要なんじゃないかな?そんなふうに思っています。

体型的に向いてないアルペンスキー
そこで戦い続けることに疲れたから…
テレマークスキーに移行した理由の一つはそれでした


2021年3月9日火曜日

FUN or DIE

ジェイクは問いかけた

なんでスノーボードがここまで成長したんだと思う?

いろいろな意見が出てくる。

クールだから?

シンプルだから?板、一枚だしね。

自由だから…かな?スタイルもね(注1)

道具の値段が安いよね、スキーに比べて

横ノリ!

スケーターやサーファーが、オフシーズンにライドするから!(注2)

FUNだから?

ジェイクがそこで入ってくる。

それだよFUN、スノーボードって、何の役にも立たないんだぜ。 

みんなが怪訝そうな顔をする。スノーボード って、役に立ってるよね?ジェイクがこう続ける。

スキーは、今はスポーツとしての面が大きいけど、もともとは道具だ。だから、スポーツとしての魅力を無くしても、道具として残る、便利だからね。

君たちが、ナショナルパークのレンジャーとか、天然ガスのパイプラインや送電線のメンテナンスマンで、積雪期にパトロールする必要があったとする。スノーボード を選ぶかい?それともスキー?

リゾートのパトロールとか、レスキューとかだったらどう?スキーとスノーボードのどちらかを、仕事の道具として選ぶとなったら、間違い無くスキーだよね。

スノーボードって、歩けないし、登れないし、でかい荷物背負って滑れないし、道具としてはまったく便利なところないんだぜ?なのに、なぜここまで拡大したかって言ったら、単にFUNだからだよ。

なるほど… ね

 スノーボード のマーケットが、スキーよりも大きくなるかも?とか、考えてどうなるって言うんだ?

俺たちの役割は、スノーボード を作って売ることじゃない。それを使って、体験できるFUNを提供することが仕事なんだ。 

だから、俺たちがやるべきことは、それがFUNなのかを考えて、もしYESなら、それを全力でサポートすることなんだよ。FUNがなくなったら、このスポーツも、俺たちも、消えていってしまうんだからね。 

水上宝台樹の朝

Earn Your Turns

中尾根に向かう

注1 スノーボーディングで「スタイル」という時、ファッションとか、佇まいとかだけの話ではありません。あなたの周りに、もし、スノーボーディングにはまっている人がいたら、「スノボのスタイルってなに?」と聞いて見てください。「スノボ」ってところで、ちょっとイラっとした顔をしたとしたら、要注意です。そのあと、少なくとも30分くらいは話が止まらないはずですからね。

注2 サーフィンのトップシーズンは冬です。いい波が来て、いい風?が吹くんだそうです。なのに人がいないんだそうです。ウェットスーツとキャップ?と、タビみたいなの履けば、寒く無いんだそうです。そんなわけある??まぁとにかく、冬にサーフィンしないでスノーボードしに行くよって「コアな」人は、ほとんどいないんじゃないかな?少なくとも、僕の知ってるコアサーファーはスノーボードしないですね。スケーターは…どうだろうね?

2021年3月8日月曜日

DAY28 雪のあるうちは岩鞍でいいか…

 昨夜までは、神楽でプチBCか、日光白根登山(東面を滑って見たいので、偵察山行)って思っていた。しかし、よく考えて見たら、登山は土曜日でいいし、神楽もシーズンまだ長いし…

今行くなら、やっぱり岩鞍でしょうね?ということで出撃。記録はこんな感じでした。

後半はシャバ雪、平均速度低め。ゴンドラ回しで、距離は長め。

Salomon Malamute ブーツ、滑走5日
すでに快適レンジの柔らかめ寄りに到達した
これ以上ヘタリが進行しないように、パワーバーを投入!

今日はバタレオンのThunderで出撃
クラッシックスーパーモデルが正常進化したら、これ、みたいな板です。
やや太めのキャンバーボードなので浮力と安定感。
独自の3Dロッカーで、エッジの切り替えクィック

今日はゲレンデの食堂で早めのランチ。ガラガラ。
こうやって営業してくれているところを、もっと応援すべきだったかもね。

スキーブーツのカント角 簡易的な調整方法

前回のO脚かどうかを判断する方法から、どうやってカントを調整するかの話です。
まずは簡単なやり方で試してみましょう。

インナーを外したアウターブーツに足を入れると、スネの内側とアウターの間に隙間ができるといいました。その隙間を埋めてやれば、ブーツを締め込んでもブーツのソールはフラットに接地したままになるはずです。

そこで、まずはポケットティッシュを挟んでみましょう。
ポケットティッシュをガムテープで巻いてあげて、水がしみこんだり、パッケージが破れたりしないようにします。紙の梱包用テープはボロボロになりますから、布ガムテープがいいです。

*僕はスキーブーツをもう処分してしまったので、スノーボードブーツを参照用に使って写真を撮っています。実際はスキーブーツでの調整と考えてください。

あくまでもイメージなので、むき出しのままはさんでいます。
アウターとスネの間がポケットティッシュで埋められていることがわかるでしょう。


ポケットティッシュのガムテープ包みができたら、インナーブーツに貼り付けます。布ガムテープなどでずれないように固定するだけです。
インナーブーツとアウターの間に挟み込みます。
位置はこれくらい、下すぎると、くるぶしがこすれます。

僕がイントラをしていた時に、どれだけ練習してもパラレルターンができないと、お悩みのお客さんを担当した。で、案の定O脚の人だった。で、リフトに乗っている時に、僕のスキーがフラットになっていることと、お客さんのスキーは外側に傾いていることを説明した。で、ちょっと調整してみますか?と、お尋ねして、午前と午後の間の休憩時間にこれをやってみた。

午後のレッスンで、いきなりお客さんのスキーがキレイに揃って、パラレルターンができるようになった。で、リフトの上で、こんな風におっしゃった。

今まで、どれだけ練習してもパラレルができず、半分あきらめていました。一生パラレルができないままに終わるんだろうなと。それが、こんなにすぐに解決するなんて…今までどれだけ時間を無駄にして来たかと思うと、悔しくて悲しくて、でも、すごく嬉しくて感動しています。

で、ポケットティッシュはだんだん痩せてくるし、耐久性がないので、別の素材を積層させたほうがいいことや、自分もO脚で悩んで、これを発見してパラレルターンができるようになったことをお話しした。

信じるも信じないもあなた次第だけれども、一度試してみても損はしませんよ。

FootWedge(フットウェッジ) カントスポイラー FP3

アマゾンで、カントスポイラー・フットウェッジという商品名で売っています

実用新案でも取っておけば良かったかなw

スキーブーツのカント角・原則

なぜプラブーツではカント角が重要なのか?

プラブーツはカフの高さがあるので、スネを内側に絞り込むことで強いエッジングができます。革のブーツとは比べ物にならないくらいに。

ただし…それは、スネの角度とブーツの角度が適切にマッチングしていれば…の話です。

スキーの板が回転するメカニズムをイメージしてみる。誰も乗っていないスキーの板を、そのまま斜面においたらどうなるでしょうか?(スキーブレーキや流れどめは外していると考える)すると、スキーは最大傾斜線に向かって滑り出し、「まっすぐ滑り降りていく」筈です。

では、本来、最大傾斜線に向かって滑り降るスキーを「ターンさせる」にはどうしたらいいでしょうか?スキーヤーならわかる筈ですが、ターンさせたい方向にスキーを傾けて、荷重させれば良い。スキーを傾けると、そのサイドカーブの働きによって、スキーは傾いた方向にターンを始める。

ということは、両足を並行にして直滑降し、重心をどちらかに移動させ、そちらに膝を曲げてスキーを傾けてやれば、両方のスキーは並行のままターンを始める。これがパラレルターンであり、ごくごくシンプルな技術だ…カント角があっていれば。

そもそもスキーブーツを作るメーカーは、主要顧客であるヨーロッパと北米を見ている。そしてそこで滑る人たちは大多数がコーケイジャンであり、スネは細くまっすぐ。靴のかかとは、真ん中からすり減っていく。ところが、モンゴロイドである私たちのスネは太く(というか脹脛が発達し)、外側に湾曲している。いわゆるO脚で、靴のかかとをみると外側がすり減っていく。

私たちがスキーブーツを履くと、外側に傾いたスネは、スキーを外側に傾ける。スキーは傾いた方向にターンしていくと言った。つまり、外側に傾けられたスキーは、いつ、どんな時でも、隙さえあれば、外に向かって突進しようとしているのだ。

なかなかこれに気がつかないのも不思議だが、インナーを抜いたてブーツに足を入れてみると、いかにスネが変な位置にあるかびっくりすることだろう。

ブーツのインナーを抜いて足を直接入れたところ。
スネの外側はアウターに密着し、内側には隙間ができる。

で、あなたがO脚かどうかはどうやって判断すればいいのだろうか?

下のチェックリストでぜひ、一度考えてみてください。

日常生活でのチェック
  • 靴のかかとが外側から減っていく
  • O脚であることを自覚している
スキー場でのチェック
  • 脱力して直滑降できない、苦手、(油断すると両スキーが外側に暴走)
  • プルークしたとき、内側のエッジが立たずスピードコントロールができない
  • 階段登行をするとき、山側のスキーはエッジが効くのだが、谷側のスキーが流れて登れない
  • スケーティングすると、蹴り足がずれてしまってうまく加速できない
  • リフトに乗って、スキーの前側を交差させると、上のスキーのソールと、下のスキーのトップシートがぴったり密着しない
  • どれだけ練習を続けても、パラレルターンができない
で、それなりに滑れていても、実はカントがあっていないって人はたくさんいます。というか、ほとんど全員と言ってもいいくらいに。

日本人がスキーで冬季オリンピックに出て、メダル取った競技を考えて見てください。クロスカントリー、ジャンプ、複合とか…全部…くるぶしの上までしか高さが無いブーツを履いてやる競技ですよね。なぜなのか?ということです。

どうやって調整すればいいのか?
まずは簡単なやり方を次に紹介します。

つづく

注: ブログ主は、今はスキーを休止しています。そのため、ブログの中ではスノーボード ブーツを見本に使っています。スキーブーツだと思ってみてください。

2021年3月7日日曜日

スーパーモデルは二重人格

スノーボードの仲間から、伝説の名機、クラッシックスーパーモデル158を預かった。
バートンスノーボードのスーパーモデルは、もともとはクレイグ・ケリーという伝説的なライダーが開発したフリーライド・オールマウンテンボードだった。クレイグはコンペティションでも強かったけれど、だんだんとパウダーライドやバックカントリースノーボーディングにシフトして行った。そして、不幸なことに、クレイグはアラスカの山中で巨大な雪崩に巻き込まれて亡くなり、スーパーモデルは廃盤になった。

その後随分たってから、スーパーモデルというモデルは復活したのだが、バックカントリーやパウダーライドに向いているという「方向性」は一緒だが、それを実現するための手段、ボードのディメンションはまったく違っていた。

そんなわけで、スキモノは、クレイグのスーパーモデルを指す時は、「クラッシック(古典的なという意味よりはむしろ、永遠のとか、普遍的なという意味を含めて)スーパーモデル」と呼んだりするのだ。

クレイグは水が流れるようにスムーズなライディングをして、誰よりも速く安定したターンを刻むと言われていた。そんなライダーが設計した彼女の乗り味は素晴らしい。しなやかだけれども張りを感じさせるフレックス。パウダーで浮くようにやや柔らかめで大きめの反りを持つノーズ。操作性のいい適度なトーション。そして、何よりもスリムなアウトライン。スパッと、瞬間的に切り替わるエッジ。そして一度雪面にエッジが噛むと、スルスルスルと加速し続ける、張りのあるテール。まさにレーシングカーのようで速い。

本当に、素晴らしい乗り味だ、コンディションにさえ恵まれれば…

つまり、面ツルのパウダーならば、あっといまに加速して表面に浮かび、足首のひねりだけでターンを仕上げることができる。

つまり、かっちりと締まったピステンならば、切るもズラすも自由自在で、ターン弧の調整も容易だ。

つまり、朝一番のコーンスノーならば、ドラグギリギリまでエッジを効かせながら面で乗る楽しさを実現できる。

だがしかし…
荒れ気味の深雪やら、硬いバーンとエッジで削られた氷の粉がまだらに溜まった状態とか、コーンスノーがシャバリ始めた状態とかでは、絶望的に敏感。いきなり前に走る、横に飛ぶ、柔らかいノーズが暴れて次の瞬間にどちらに飛び出すのかわからないじゃじゃ馬に変身する。

普段はとても上品な…例えば、ちょっと洒落たバーでデートしたら、

優雅で手入れのいい指先でグラスステムを摘み、シャンディガフで唇を潤しながら、彼女は小さい声で歌を口ずさんでいる。BGMで流れているシャンソンを正確に追いながら、小鳥のさえずりのようにフランス語が紡ぎ出される。で、見つめている僕に気がついて、ちょっと照れ臭そうに言う。

ちゃんと歌えるわけじゃないの。好きなのよこの曲。聴き続けていたら、耳で覚えちゃったの。

そんな上品な彼女が、クラブで、ある種の音楽が流れた瞬間にいきなり踊り出す。彼女のイメージとはまったくそぐわない、ヒョウ柄のショーツがあらわになるくらいに激しく腰を振り踊り続ける。そんな二重人格性も、恋愛のうちなら、いい刺激になるかもしれない。隠された激しさがあらわれるのが、年に数回くらいなら、続けられるかもしれない。

だが、ある種の音楽が流れれば、いつでも、必ず、すぐに、周囲が引いてしまうような激しさを見せつけるようであれば、、、よっぽどの包容力と、強力な体幹が無ければ、彼女と付き合っていくことはムズカシイ

僕は以前、持っていた彼女を手放した。そして、僕の手元にある彼女は、仲間が手放した物だ。僕も僕の仲間も、彼女のことを心から愛していたし、手放したいまだって懐かしく思い出す。

なのに、なんで手放すのか?だって?

だって、僕も僕の仲間も、クレイグじゃないんだからさ、仕方ないよね?

正規品を表すホログラムステッカー

トップシートとソールのグラフィックは時代感

先端にはメタルインレー、トップモデルらしい趣味性