谷川岳馬蹄形縦走日帰りは、甲斐駒ケ岳黒戸尾根日帰りと同じように、ハイカーとしては割と誇れるルートだ。普通は1泊2日のコースを日帰りするためには、考えなければいけないことがたくさんある。
体力とか装備とか、行動中の時間配分とかはもちろんだし、安全のための装備をどこまで準備するか。そして、単独行の場合は人に頼れない。もしもの時の、対応すべき装備は無駄になっても携行しなければならない。つまり、ここを歩いたということは、ハイカーとしての総合力がそれなりのレベルに達している、そんな証明になっているのではないかなと思う。
今回は写真が多くなるので投稿は3つに分けた。その1は西黒尾根を登って谷川連峰最高峰の茂倉岳まで。
両膝に故障を持っている僕は、走ったりしてペースを上げることが難しい。だからロングコースを歩く時は朝早く出る。そして、日没までに下山できるかどうか検討して、必要があれば夜に歩き出す。
今回は朝3時半に、インフォメーションセンターの駐車場をスタートした。月は見えないが、その代わりに星空がよく見える。西黒尾根を暗闇の中ハイクアップして、樹林帯から出るころに日が差してくる。
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尾瀬の山々と上州武尊が浮かび上がる |
僕は何度も西黒尾根を日の出前に登っている。その理由の一つがこの景色だ。
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振り向くごとに変わりゆく光と陰 |
山頂方向を見ながら登るのが惜しくなるような景色。一歩一歩標高を上げ、景観が変わり、闇の濃度が薄くなり、陽光の色が暖かく丸くなり、そんな変化を味わいながら進む。
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上州武尊山からの日の出 |
夜明け前は風もなく、シンとした空間が広がっている。たまに茂みを揺らして去っていく音はシカだろう。ピーッという、警戒音の後に、尾根筋の脇からもゴソゴソ音がする。
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ラクダの背 |
やがて朝日が山頂を照らし、青空が広がり始め、スーッと風が吹き始める。
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トマ・オキの双耳峰 |
振り向くとちょうど朝日が昇るところだった。
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朝日に照らされる西黒尾根 |
右に目をやると、マチガ沢をの向こうに岩綾が横切るり、その裏側は一の倉沢。その向こうに、今日これから歩く山々が霞んで見える。
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氷河跡と呼ばれる岩場 |
氷河跡とそこから連続する岩場を登り、西黒ザンゲ岩を超える、下降点を示す鉄塔をすぎると道は肩の広場の縁に飛び出す。トラバース気味に標高を上げてケルンに着く。
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冬期になると、ケルンの基部はほとんど埋まる |
西に目をやると、肩の小屋から、5〜6人のグループが出立の準備をしていた。肩の小屋もしばらく無人だったけれど、数年前?から有人小屋になった。夏だけの限定だとは思うけれど、この場所にしっかりした山小屋があるのはとてもありがたいことだと思う。
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谷川岳主脈稜線と俎嵒への尾根 |
昼間には混雑する山頂も、6時前だと誰もいない。記録のためだけに写真を撮り、先へと進む。新潟方面にはしつこい雲が巻き上がっている。振り向いてみると、岩壁から捲き上る雲が、北西風に吹かれて渦をまいていた。
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一の倉沢から捲き上る雲 |
オキ耳からノゾキを過ぎて、一ノ倉岳への登りにかかる。ここの取り付きを少し登ったところに、崩れやすく足元が悪く、スリップしたらダイレクトに一ノ倉沢にダイブする嫌なポイントがある。道がクライマーズ・ライトに回り込みながら標高を上げるのだけれど、その回り込んでいる足元は一ノ倉沢の絶壁なのだ。
特に残雪期、夏道が一部出ていて、夏道通しで登ろうとするとどうしてもここに導かれてしまう。もちろん僕も同行者も、この場所の危険は知っているので回避するのだけれど、なんとかならないのかと思っていた。
幸い?というか、登山道が崩落して、笹薮の中に新しいトレースがつけられていた。やっぱり崩れやすい場所だったんじゃん…事故がなくてよかった。
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一ノ倉岳山頂から茂倉岳への稜線 |
一ノ倉岳登り返しを終え、ふと気がつく。「あれ?こんなに簡単に来れたっけ?」
オキからここまでは、意外と大変だった記憶が…
この春の、芝倉沢BCの記憶が蘇って来た。時期が遅れてしまって、稜線上は踏み抜き地獄だったんだ。数歩ごとに腿までズッポリ、そこから四つん這いで這い出して立ち上がるとまたズブズブと…
今日はもちろんそんなことはなく、穏やかな稜線を秋風に吹かれながら軽やかに進む。
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芝倉沢源頭 |
僕は何度か芝倉沢を滑走している。アプローチと、湯檜曾川沿いの下降が面倒くさいのだけれど、繰り返し来たいと思わせるだけの魅力に満ちた場所だ。そこのドロップインポイントから見下ろす。画面外左側が茂倉岳山頂、そこから尾根を降って、こちらに向いた岩壁が特徴的な武能岳に登り返す。横に長い山頂を左に横断し、反対側を降り、延々とつながる尾根を歩き、画面奥の尾根を右に登り返して帰るのだ。
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先が見えてるって、ある意味辛いw |
茂倉岳で証拠写真を撮り、下降路へと向かう。
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ここから先の笹薮とネトネトは登山靴ゴロシ |
写真も多く、記録が長くなりすぎるので、(1/3)は谷川連峰最高峰の茂倉岳までとします。