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2025年9月13日土曜日

山力(ヤマヂカラ) 山の生活技術・番外編

山力(ヤマヂカラ)について、ここでボクは何度も書いてきた。

山力とは、体力・(登山)技術・生活技術の3要素の掛け算で表せる、山屋としての総合力評価のこと。ただ、「山の生活技術」といってもピンとこないかも知れない。

今はどうだか知らないけれど、昭和の時代に「山の生活技術が優れている」人たちは、だいたいが山岳部とかワンゲル上がりだった。

山岳部は口数が少ないが、いざ口を開くと声が太い。悪天候の岩場で視界が無くてもコールが届くようにだろうか、普段から腰が入った話し方をする。装備もなんというか独特で、巨大なバックパックザックは色褪せている。

テン場で彼らは早い時間に寝る。いきなりピタッと静かになって寝る。一般登山者がのんびり酒を飲み、声を落として会話を楽しんでいる中、彼らの大きなエスパーステントだけが静まり返っている。

そして…彼らは深夜2時くらいに起きるのだ。

彼らの実力は、撤収に要する時間と、その間に出す音、先輩が指示する声と内容で推し量ることができる。

夜間のテント撤収は重要な生活技術

ある日ボクがテン場で泊まっていた時、山岳部であろうグループと一緒になったことがある。

それは5人くらいのパーティで、ボクの隣に幕を張った。夕暮れにちょっと挨拶を交わして、彼らは誰よりも早く眠りについた。そしてボクが朝4時くらいに起きたら、キレイさっぱり撤収を済ませて居なくなっていた。

テントは単なる布なので、隣り合ったテント同士はなんとなく気配を感じるものだ。なのに、彼らが動く気配はまったく感じることがなかった。

クックキットをガチャガチャさせず、ビニール袋をガサガサさせず、5人の若者が静かに、横に寝ている僕を起こさずに早立ちしていったのだ。

テント、寝袋、マットをたたんでパッキングする。共同装備のどれを誰が持つ。食事はなにをどうやって済ます、そうしたすり合わせ一切合切を、パーティー内で会話せずにすませて去っていった。多分ヘッドライトの光量も控えめに、こちらのテントを無駄に照らさずにいてくれたのだろう。

彼らならば、吹雪で視界が無くても、風が吹きすさんいても、互いの声が通らなくても、テントの設営と撤収は問題なしにできることだろう。片付ける時に装備を無くしたり、変な場所にしまうこともないであろう。彼らならば、どんな状況であって確実に体を休め翌日に行動することができるのだろう。

その朝、彼らのテントがあった空間を見ながら改めて考えた。「山の生活技術」とは、山中の生活でムダ・ムラ・ムリを取り去る技術なのだろうなと。

テント泊、冬季、BC、数日以上の縦走になると荷物は増える。何も考えず、荷物の量が増えるに任せれば、背負える限界を超えてしまうことになる。生活技術を磨いてムダを取り去り、荷物を小さく軽くすることで、より挑戦的な山行が可能になる。それが彼らのような集団が求めている生活技術なのではないか。

振る舞いが洗練されていてムダが無い、そんな登山者をテン場や避難小屋で見かけると、ボクは思う。この人がこうなるまでには、どのような背景があったのだろうか。そしてボクはこうした存在に近づけているのであろうかと。

そして…年齢を重ねて体力がさらに落ちた時、ボクが登山を続けられるかどうかは、その辺りにヒントがありそうだ。そんなふうに感じている。

2025年8月27日水曜日

山屋のブルベ戦略・ペース配分と機材

ボクら「雪男山男兄弟舎」は基本的には山屋の集まりだ。

僕らは山屋としての強さを、「山力」があるとか、ないとかで表している。山力とは、「体力」「技術」「生活技術」の3要素の掛け算。ブルベを始めた時、ボクはこの考えをロングライドに活かせるんじゃないか?そう考えた。

ボクは体力的には凡人だ。というか、周囲の仲間には、ウルトラマラソン(100km)とか、トレラン(100キロとか100マイルとか)…走り回ってる人たちがいるので迂闊なことは言えない。そもそも、体力って人それぞれで、一朝一夕に向上するのは難しい。老境に入ったボクなんかは、この先ずっと下り坂…良くて現状維持…無理はできない、実感こもってるぅぅ

「体力はそこそこ」を現実として受け入れ、まずは「技術」を磨いて総合力を上げようと考えた。「サイクリストとしての技術」とは、走行に関わるものと、機材に関わるものがある。ブルベにおける走行技術とは、簡単に言えばペース配分だ。

ボクは心拍数とケイデンスを、サイコンの上部に表示させている。心拍数は110くらいから、145くらいまでで走る。頑張りすぎて心拍が上がったら、ペースを落としギアを軽くする。

登り坂になると、速度が落ちてケイデンスも下がる。ペダルに込める力を増やすと、心拍数が上がってしまう。これをボクはやらないのだ。心拍数をさほど上げずに、ケイデンスを無理なく維持できるまでギアを軽くしていく。

ケイデンスの維持は80〜95くらいにしている。負荷が上がってケイデンスが落ちて80を切ったら、一枚ギアを軽くする。速度は少し落ちるが、ケイデンスがレンジ内で落ち着くならそのまま。それでもさらにケイデンスが落ちるとか、心拍が上がるならば、もう一枚軽いギアにシフトする。

ここまでの話で気がついたと思う。

筋負荷を下げるためにギアを軽くしていくボクの走り方だと、普通のロードバイクだと軽い(低速より)のギアが足りなくなる。

ギア比変えました

そんなわけで、ボクのロードバイクは、マウンテンバイクのドライブトレインを入れた。なんと、フロント 38-28 リア 11-34t 過去の投稿はこちら。

遅いけど海だって行けちゃうぜ

で、TREK の Emonda を新しく買ったわけだけれど、これはオールラウンドのレーシングモデル。 50-34 に 11-30t なので、ボクの走り方にはギア比が全然合わない。なので、GRXを入れて軽いギア比を実現した。過去の投稿はこちら。

これで、フロント48-31にリア11-34になったわけだけれど、デメリットもあった。まず、フロントのチェーンウォッチャー(チェーンキーパー)が役にたたない。

純正チェーンキーパー

GRX クランクは、チェーンラインが外側に移動する。加えてインナーチェーンリングが小さくなる。この二つが合わさってチェーンラインは外・下方に離れてしまう。チェーンキーパーとの隙間が開くのでチェーン落ちが防げない。

ごめんよTREK

そもそもセッティングがちゃんと出れば、チェーン落ちはほとんど起こらないもの。でも、ボクはセッティング出しの途中で2度ほどチェーン落ちを経験し、うっかりクランクを回してしまった。とりあえず傷は清掃して、UV硬化型レジンで埋めたけれど、チェーンキーパーはなんとかしないとまずい。

そして、やっぱりもっと軽いギアが欲しい。そう思って探したら、GRX互換でこんなのがあった。こーゆーヘンタイというかマニアックな製品を作っているのは案の定のフランス人。メルシーボクー

Specialites TA X110 GRX-2 チェーンリング

評価も割と良いので、試してみることにした。これでフロントアウターは48から44へ、インナーは31から28に下げられる。

*4tとか3tの歯数差は僅かに見えるかもしれないが、4/48  3/31 で計算してみて欲しい。おおむね10%程度は低速寄りになることがわかるはずで、乗った感じは別物になる。

アウター比較

インナー比較

この28tインナーで、MTBのクランクつけていた今までのバイクと、インナーローは同じ軽さになった。

組み替え前

わかっていたことだけれど、Emondaのフロントディレーラー台座はフレーム直付け。ディレーラー位置を一番下に下げても、チェーンリングとの間には大きく隙間ができる。

ディレーラーケージの位置…

シマノのすごいところは、これでも変則性能はそこまで悪化しないこと…ただし、チェーン落ちのリスクは通常よりも高くなる。

見つけたのが、KCNCのこれ。

KCNCチェーンウォッチャー

これは、フロントディレーラーの取り付けボルトを利用して固定する。

純正のチェーンキーパーは外す

位置はこんな感じ。インナーチェーンリングとの距離が遠いように見える。



これよりもチェーンラインに近づけると、インナーローに入れた時にチェーンに擦ってしまう。その辺りのギリギリを狙って固定。

一安心

このセッティングにした後のチェーンドロップ頻度は、おおよそ100~150km走行に1度くらいかと思われる。走行中にチェーンが暴れて、落ちたような音がしたが、実際にはチェーンはインナーリングに乗っていた。とりあえず、これで様子を見ながら使ってみようと思う。

ペース配分についてつらつらと書いてきたが、ケイデンスと心拍数を一定にして走るということは、「走行速度」 は変化し続けるということだ。

斜度、向かい風、高温・低温、キツイ環境だと時速は6キロくらいまで下がることがある。逆にボーナスタイムなら速度は上がるし、借金を返済するチャンスも巡ってくる。

出走を繰り返していくうちに、焦らなくても時間には間に合うことが、だんだんとわかって来た。たとえ「押し歩き」するような坂が出て来ても、それが30分程度ですむのなら大丈夫。ゆっくりでも止まらなければ、時間には間に合うのだ。

こんな遅くて…完走できるのか?そんな不安に負けてペダルを踏み込むよりも、ペースを保ちながら消耗を防ぎ休憩の頻度と時間を減らす。そのほうが結果的には、安定した結果が出る。

ブルベに要求されるグロススピードは15km/h、これは休憩や信号停止など含んでの速度。対して、「走っている時間だけの記録」であるネット走行速度は、ボクの場合はだいたい20~22km/hくらいだ。「えっ?遅くない?」そう思うかも知れないけれど、前方の信号が赤になったら惰性で走るとか、歩行者がいるので減速するとか、そんなこんなで公道の平均時速はそんなレベルに落ち着いている。

その速度域で、消耗せず、動き続けられるように、ボクは心拍数と筋出力を一定にすることを考えて走っている。誰にでも当てはまる走り方ではないかもしれない。でも、これがボクにとって一番合理的な走り方と、機材のセッティング。

2025年8月6日水曜日

BRM802東京 金太郎(夏)200km・ニューバイクで完走

2025年のブルベ、ここまでのレザルトを振り返ってみよう。

パーマネントブルベは SPR (Super Permanent Randonneur) を達成している。
通常のブルベ(BRM)は、最初に頑張る400km と やっぱ海600km を完走している。あと、200km と 300km を完走すれば、今年もSRの認定をいただける。

ブルベシーズンは年末まであるのだが、ボクの住んでいる北関東の冬は寒すぎるし、空っ風が吹くので冬はオフシーズンになる。そんなわけで、9月末くらいまでにBRM・SR認定に必要な、200km と 300km を完走しておきたい。

とりあえず9月開催の地元発着300kmにエントリーした。ただ…これは…ボクの走力では完走できるかどうかギリギリっぽい。なので、9月に行われる東京発着の300kmを追加でエントリーした。

両方完走できればSR認定はいただける。しかし、どちらかをDNSかDNFしたらSRに届かない。だったら、早めに…確実に完走できそうな200kmを走っておきたいな…と考えて出走した記録。

8月出走のブルベは少ない。あまりにも暑い日本国、猛暑と無縁の場所で開催するか…何かしらの工夫が必要になってくる。その工夫の一つが、ナイトブルベ。

ニューマシンでエントリー

日が暮れてからスタートして、夜通し走って、翌朝暑くなる前にゴールすれば、ずっと涼しいからいいんじゃね?そんな主催者の声が聞こえるようなナイトブルベ。

距離は短い200kmだし、コースプロファイルも優しめだし、都会を走るから補給にも困らないし…ニューバイクのチェックに丁度いいくらいの、ヌルさ? ←フラグ

集合場所

都会スタートなんで様子が分からない。コインパーキングが無くてDNSなんて悲しすぎるので、早めに現地に行った。迷惑にならないところで仮眠して、パーキングに入って、夕食済ませて集合場所へ移動する。

想像していたより、はるかに参加人数が多い。

考えてみれば、300kmから上のブルベには夜間走行がある。400と600ならオーバーナイトで夜通し走る必要もある。200kmしか走ったことがない人が、300km以上にチャレンジするには、ナイトブルベは経験を積む良い方法かもしれないね。

とどろきアリーナをスタートして、中原街道を西進する。もんのすごい…信号ストップの嵐我慢しながらジリジリと前進していくと、以前住んでいた、長津田周辺を通過する。

以前、キャンピングトレーラーを買った、Rocky という店の跡地を通りすぎる。老舗だったのに気がついたら閉店していたんだっけな。

長後にあった J-Wallというクライミングジムの跡地の脇を通って、長後街道をさらに西進。J-Wallの跡地はマンションになっていた…オーナーさんは元気なんだろうか…

今回のブルベ、ナイトブルベなので景色とか観光とかは無い。淡々と走り、2つちいさな峠を超えて、足柄峠の途中までヒルクライムがある。

標高は上がっているのだけれど、気温はなかなか下がらないし、蒸し蒸しするし、あんまり快適では無い。

標高上がっても気温下がらず

折り返し地点は、金太郎伝説の里。予定では、ここまでで貯金が1時間程度。それが割と余裕がない…暑さと信号峠と、向かい風が想定よりも厳しい状態を生み出している。

金太郎伝説の里…入口

折り返してダウンヒル…途中から広域農道に入る。
ここから小田原までの25キロくらいのアップダウンが、心を折ってくる核心だと聞いていた。

まぁ…その…南榛名山林道とか、赤城南面の空っ風街道とか、その辺りみたいな感じかな?と思っていたら、まさしくそんな感じでした…タイヘンダッタ

暑くて心拍が上がっちゃうので、夜景を撮るふりをして休んだりしながら小田原に抜ける。

小田原…かなぁ?

小田原に出たところで、貯金は30分ちょっとくらい。

ローリングスタートで、出発時間が一人一人個別に記録されているから、持ち時間管理を失敗するとDNFになりかねない。スマホ・ガーミン(eTrex)・サイコン(Bryton)のログを確認しながら時間配分を考える。

太平洋のすぐ脇を走り、藤沢に向かう。
潮風の匂いと、海の雰囲気は感じるのだが、すぐ右側を西湘バイパスが走っているので視界はまったくない、夜だしネ。

西湘バイパスが終わって、ようやく海のすぐ脇に出る。
江ノ島が見えてきて、通り過ぎて…写真を全然とっていないことに気がついて…振り向いて写真を撮る。

江ノ島〜〜

海沿いにある休憩施設でトイレとポカリの補給をして、山に入る手前の葉山で写真を撮る。
葉山の御用邸前とか、ビーチとか、いろいろ観光したいところはあったけれど…時間が無い…

海入りたい…

またね〜

海から離れて湘南国際村へのヒルクライムが始まる。
他の参加者の人と意見が一致したのは…

150km走ってきて…この…坂…登れってのは…
オニ!
悪魔!

ということでした。

最後のチェックポイントで貯金は45分…
ここから川崎までは、割と強めの向かい風予報、そして信号峠と暑さ…貯金を維持しながら走ることを目標に坂を下る。

予想通り、信号峠でペースが上がらず、横浜港周辺の写真も最低限になった。

赤煉瓦倉庫群

母方の祖父母が暮らしていた思い出の場所、すぐそばも通ったのだけれど立ち寄る余裕もなかった。

想定通り、ゴールまで貯金を作れるような場所は皆無。

日が出て気温も上がり、ストレスが上がる状況で、微妙なアップダウンと信号峠。気持ちよく走れる場所が皆無の30km程度をやり過ごしゴールへ。

後で確認したら、DNF比率が15%を超えていた…200km でこのDNF率は結構高いんじゃないかな、それくらい過酷なブルベでした。(フラグ回収w)

ニューバイクの TREK EMONDA は、いいバイクだった。ただ、乗り手のボクが考えるべきことが結構ある。

レーシングバイクだけあって、速度上げやすい…のだけれど、前半で飛ばしすぎると、後半にツケがくる。ちょっと怖いのは、飛ばしている感覚が無いのに平均ペースが上がっていて、体力が削られていることがあること。

それと、ギア比がやっぱり高い。平地巡行で、フロントアウターだけで停止からのスタートまでカバーできるようであるといいかな。そして、ヒルクライムではローギアがもう2枚くらいあると助かる。GRX純正では、これ以上軽いセッティングは無いのでちょっと考えてみようか。

TREKにして正解だったか?それは、これから400とか600走ってからでないと分からない。
ただ、今回のブルベは完走者中の、真ん中くらいの位置でゴールしている。今までの Ridgeback Ramble の200km 完走データでは、完走者の中で下位25%くらいでゴールしているので、平均速度は上がっているようだ。

平均時速が1km/h上がると、300kmブルベだと、だいたい1時間くらい時間が短縮できる計算だ。そうなるともうちょっとブルベの旅程も楽しめるのでは無いか?そんな気がしている。

天気予報はこんな感じで、実際もそんな感じだった。

風向・風速はほぼ予報通り

朝は晴れてゴール前は30度超えていた

200kmのナイトブルベは、景色も観光も無く、記録のためだけに走るような感じになってしまった。東京発着は信号峠も厳しいので、サイクリストのグンマー國民は恵まれているなぁ、そう実感する。

それにしても、これだけ暑い時期に、こんなに交通量の多いエリアで、ブルベを走りたい!というサイクリストのために頑張るR東京さんはすごいなとつくづく感じた。エントリーから出走、完走申請まで、クラウドを使ってシステマチックなプロセスなのも素晴らしかった。

ありがとうございました。

<おまけ>
朝ゴールなんで、仮眠したら一日有効に過ごせるかな?そんなふうに思っていたら、甘かった。帰りの渋滞がエグすぎる。環八ですでに渋滞していて、練馬入ったら大渋滞。

うんざり

北関東って渋滞もないし、本当に遊ぶ環境に恵まれてるんだな、そんな気持ちを新たにした遠征でした。

おしまい

2025年7月15日火曜日

山屋のブルベ戦略・装備を練る

もともとは山登りが趣味のボク、ブルベにもその経験を活用している。
ボクの装備品の紹介と、どんな考えでそのようにしているのか、そんな話をしてみよう。

無駄を省く

山登りとサイクリング装備は携行方法が異なる。丸2日間の行動を前提にしてみよう。登山なら、荷物は20〜30Lくらいのバックパックになるだろう。容量には余裕があるので、多少嵩張るものでも収まるし、「ひとまとめに」入れて背負うことができる。

ブルベの場合は、丸2日間なら600kmになる。それなりに荷物は多くなるが、1箇所にまとめるバッグはない。いろいろな場所に「小分けして」携行する。これが割と頭を使うし、個性が出るところだとボクは思う。

まずは自転車の、限られた収納スペースについて。

  1. サドルの後ろが サドルバッグ
  2. フレームの前三角、トップチューブ下がフレームバッグ
  3. ハンドルとステムに付いている、縦に長い筒状のものがステムバッグ
  4. ダウンチューブ下にぶら下がっている、黒い筒がツールケース

順に説明していこう、まずはサドルバッグ

ボクはオルトリーブをサイズ違いで2つ使っている。オルトリーブは、防水力が高く、丈夫で信頼できる。また、サドルのアタッチメントが別売りされてるので、バイクが複数台あっても、アタッチメントさえつけておけばバッグを共用できる。

バッグのサイズが変わっても、アタッチメントは共通だ。出走直前に天気予報が変わって装備(雨具とか防寒着とか)が増えたり減ったりした時、必要に応じてバッグを変更することも簡単にできる。

地味に好きなポイントがもう一つあって、アタッチメントの固定がしっかりしていて荷物が左右に振られないこと。滅多にやらないけど、ダンシングなどで車体を振ってもバッグが振られることが無く、走行性能を悪化させない。

ここに常備しているのは、「輪行袋」「インフレーター(空気入れ)」「雨具」だ。

完全防水・容量大きい

300km以下のブルベは小さいサイズを、400km以上や寒い時期には、カイロを含む防寒着、携行食、モバイルバッテリーなどが必要なので大きいサイズになる。

サドルバッグのデメリットは、荷物の出し入れが面倒なこと。そこをカバーするのが他のバッグになる。

フレームバッグは、容量は小さいけれど、アクセスがいい。

ボクの使っているやつは、左側は奥行きが無いサブポケット、右側がメインポケットになっている。左側は、薄くて小さいものしか入らないが、中のものを簡単に取り出すことができる。必要な時にパッと出したい物、小さい物はここに入れる。

  • 左から、「塩タブ」「梅干し純」は熱中症対策。
  • 次が「使い切りの目薬」と「アレルギー鼻炎薬」ボクは鼻炎持ち…
  • 次が小銭入れ。ボクはドリンク補給でコンビニは使わない。コンビニだと、ヘルメットとアイウェアを脱いで入店してお会計で、10分程度はすぐに経ってしまう。自販機なら、停車・ドリンク買う・ボトルに入れる・空き容器捨てる…5分で十分。新札・新500円に未対応の自販機がまだまだ多いので、旧札・旧硬貨を入れておく。
  • その横は、魚の目パッドと、カフェイン錠剤。

ちなみに、登山の場合はファーストエイドに痛み止めを入れる。痛みを堪えてでも動かなければならない状況があるし、山で痛み止めは手に入らない。ブルベの場合はその逆で、痛みがあるならDNFすればいい。それに…必要ならば、薬局やドラッグストアで買えばいい。

ボクは弱い人間なので、痛み止めや、薬を持つと…それに頼ってムリをしてしまうようで怖いのだ。

アクセス最高の場所

フレームバッグのメインポケットは、ちょっと嵩張るものを入れる。

赤いのは防水バッグ、フレームバッグは雨が降ると浸水する。不運にも雨が降ったら、濡らしたくないものはここに格納する。

他は、汗拭きのパックタオルと、アイウェアを拭うマイクロファイバークロス、そしてショップタオル(作業用の使い捨てペーパータオル)。

ショップタオルは…基本的に…鼻かみ用…

欧米の人は、鼻をかむ時にハンカチを使う。そのハンカチを洗濯機に放り込むのだから、家庭内不和が起こりそうだけれどどうなっているのだろう。

ハンカチを使うのも抵抗があるので、ショップタオルを使っている。丈夫で吸水性の高いショップタオルは、一枚でポケットティッシュ2パックくらいの吸水力がある。以前はここにポケットティッシュを3パック入れてたけど、今はその代わりにショップタオルを2枚。

まだ少し余裕がある

これ以外に、キューシートを丸めたものと、モバイルバッテリーを入れる。フレームバッグにはケーブルアウトレットがあるので、iPhone とか、サイコンの充電はここからできる。ガバガバの穴なので、シリコングリスを塗って防水している。気休めだけどね…

ケーブルアウトレット

ステムバッグは防水性皆無で、容量も少ない。けれどもアクセスしやすい。

ここには、ジプロックで防水したブルベカード、記入用ボールペン、補給食を入れている。オレンジの輪っかはケーブルタイ。鼻をかんだショップタオルを、次のゴミ箱まで一時的にここにはさんだり、濡れたパックタオルやグローブを乾かしたりする。

ケーブルタイは何かと便利

ツールケースの中身はこれ。

左上から、ショップタオルとニトリル手袋にポケットナイフ。
タイヤブートと、パンク修理パッチ、タイヤレバー。
黒い筒のようなものは、チューブレスタイヤのパンク修理プラグ

下段左から右へ、ポケットツール、スペアチューブ、小分けにしたムヒと虫除けだ。オーバーナイトのある400km以上は、ここにガーミン eTrex用の予備電池(単三2本)を追加する。

使用頻度は低いけど必要なものはココ

600kmブルベ中に、チューブレスタイヤのパンクに遭遇した。その時わかったのは、かなり酷いパンクトラブルに複数回見舞われても、これで十分対応できると言うこと。これで足りないようなら、そもそも完走自体が困難だと思う

ムヒと虫除けは、春から秋に入れておく。寒くなったら捨てて、代わりに防寒用品(ホッカイロとかね)を入れる。

ポケットツールは、銘品国産ブランドの TONE 。精度と強度は申し分なく、ボルト穴を舐めるような恐れがまったくない。また、表面のメッキがしっかりしているせいか、汗で濡れた手で触ってもサビ皆無。

チェーン切りは、「チェーンを交換してすぐ出走する場合だけ」携行する。チェーンが切れるのは、交換した直後がほとんどだと思う(個人の感覚です)。程よく馴染みが出て、落ち着いたチェーンが切れるようなことがあったら、それは運がなかったということ。

自宅のブルベ装備品ボックスで出番を待つ

300km以上のブルベは、サイコンなどの電池切れに備えた予備ケーブルを追加する。iPhone の充電ケーブルは、フレームバッグに付いているものとは別に予備を持つ。

長さは最低限

同じく300km以上だが、小分けしたシャモアクリームも携行する。

出走前にクリームは塗るのだが、発汗・降雨などによって流れる。ボクの場合、300km くらいで擦れによる違和感が出て、そこで塗り足しをしないと400km くらいで痛みが出る。

ちゃんと手を洗ったりできない環境で、塗り足しせざるをえない場合もあるから手袋を持つ。手袋をはめて、ささっとチョメチョメゾーンに塗り塗りして、使用済みの手袋は裏返してゴミ袋にする。

チョメチョメガーディアン

雨予報の300kmと、400km以上は小分けしたチェーンルブを持つ。チェーンルブはこの量で3回分くらい。他の参加者にお裾分けだってできちゃうよ?

ルブはAZのロードレースSP

携行品はこんな感じだ。

登山とブルベで共通するのは、「必要なものは必ず持ち、不要なものは絶対に持たない」こと。

必要性の見極めにはちょっと違いがある。

ブルベは行動中の補給ができるので、コンビニで買えるものとかは持たなくてもすむ。ただし、サイクリングは機材スポーツだ。簡単に手に入らないけど、不具合があると走れない物もある。

例えば、自転車の消耗部品、タイヤ、チェーン、ワイヤー、ブレーキパッドとかね。こうした物を全部持っていったら大変なことになる。

ボクの場合は、消耗部品は早め早めに交換するようにしている。今までのバイクは9速コンポを使ってきたけれど、その一つの理由は、惜しみなく交換できる値段であること。各ブランドのトップラインを長く使うよりも、セカンドラインを選び、予防保全の考え方で交換する。そのほうが心穏やかに走ることができる、ボクはそんなふうに考えてブルベを走っている。

2025年5月29日木曜日

バックカントリーへの扉 祈りを込めて強く叩け (2/2)

バックカントリーへの扉 (1/2)では、一般的なBCへの扉を説明した。

…その一般的な扉がボクには開いていなかった。仕方なく他の扉を見つけてこじ開けた、そんな話をしてみたい。

連休が取れず、単発休みですら直前になっての出勤に変わるなんてことが良くある…そんなブラック企業がボクの職場だった。普通の社会人団体に加入することはまず不可能だった。

1990年代の初期、BCツアーを催行しているガイドさんはほとんどいなかった。白馬や北海道にはいたのかもしれないけれど、ボクが日帰りで行けるエリアには見当たらなかった。

んでボクは…単独でバックカントリーを始めることを決めた。

単独のバックカントリーはリスクが高い、それくらいは初心者のボクにもわかっていた。そこで、ボクなりに「これをやる」「これはやらない」という線を最初に引いた。

残雪期の水ノ塔山周辺

「これをやる」ということは、死なないためにどんなことをやるかということ。

具体的には、冬山の基本訓練(耐寒・ビバーク、ラッセル技術)、残雪期登山(アックス・クランポン、滑落停止、グリセード)、生活技術(衣服・糧食・燃料計画)、夏山登山(基礎体力向上と偵察山行)、BCギア理解(貼り付けシール、スキーリーシュ、3ピンバイン、凍結防止、メンテナンスなど)だ。

偵察兼ねて谷川岳

「これはやらない」というのは、ドツボにハマるような山行はしないということ。具体的には、厳冬期、高所、パウダー狙いのBCはやらない。連休取れないボク、山行の翌日は仕事がある。翌日出勤できなければ即誰かに皺寄せがいくから、必ず日帰りで帰ってこれないとまずい。

パウダー時期にBCに入らなというのは、単独で深いラッセルはものすごい時間がかかるから。スキー履いてても膝上まで潜るような深雪だと、500m 前進するのに数時間かかるようなこともある。

それに、当時のテレマークバインディングは、ビス抜けトラブルとかがありえた。ビスが抜けちゃうと、バインはブーツに残ったまま、スキーは流れてどっかに行ってしまう。そんなことになると、スキーが無いのでツボ足ラッセル…場所によっては夜通しラッセルしてもゲレンデまで帰れない。

そんなわけで、雪が落ち着いた残雪期、3月中旬以降を中心にBCに入るようになった。

ビバーク訓練も良くやった。日帰りなのだけれど、とりあえずツェルト張ってみたり、被ってみたり…

高峰山斜面

そうやって、「このくらいまでなら死なない」というのを理解してから、活動範囲を広げていった。ごく短いルートのBCとか、登ったところをそのまま滑る、シンプルなピストンコース。当時は山頂まで入れた浅間山とかね。

浅間山山頂
峰の茶屋から左に巻いて登って、偽ピークに上がり、そこから2段くらい段差を上がると山頂。

浅間山カルデラ

猛烈な北風が吹いていて、それが外輪山で火口への吹き戻しに変わり、吸い込まれそうになった。恐々とカルデラを見下ろしてから下降したが、風で磨かれ氷化したスロープの上に、畑の畔のような風紋が20cm…滑れたもんではなかったが、それも経験と割り切った。

テレマークスキーでの滑りはどうだったのかって?それは大丈夫だった。

ボクはスキーにどハマりしていて、ポールもコブも好きだったし、すべてのゲレンデがクローズしてからは、谷川岳のマチガ沢をハイクアップして7月ごろまで滑ったりもしていた(バカ)。

ポール練習

テレマークスキーは前傾過多だとすっ転ぶ。テレマークターンで転ばないように、前後のポジショニングを見直したら、普通のスキーも上達した。ポールのタイムも速くなったくらいだ。

ブレーカブルクラスト蹴散らす

ただ、あんまりテレマークっぽくない滑りだとは言われていたw

ダブルストック

コンディション悪くなると、ダブルストック(両方のポールを同時に突く)でリカバリーしたり。

サンクラスト 5mm

とりあえず…滑りで困ることはほとんど無かった。

娘背負ってトレーニング

背負子に娘を入れて、「大事な荷物を背負って滑る」練習もした。

至仏山オヤマ沢田代近辺

そんな感じで一つ一つ積み上げて、谷川岳や至仏山にも入れるようになった。

調子に乗ってた頃(日付は間違いです)

そうやって、ボクはバックカントリーへの扉を無理やり押し開けた。

そんなボクに大きな転機が訪れた、会社をクビになったのだw。

ボクは仕事は仕事、遊びは遊びできっちり分けようと考えていた。でも、誠心誠意頑張っていた仕事をクビになって、気持ちを切り替えた。むしろ、思いっきり自分の好きなことをやれる仕事はないか?そんなふうに考えて探したら…そんな会社に入ることができたのだ。その後の数年間は、ボクの人生のハイライトだった。そこの話は本筋から外れるので省略。

長くなったので、話を整理する。

もし、BCスキー・スノーボードに憧れているならば、できる準備をするべきだ。「山力」とボクらは呼ぶけれど、「体力」「生活技術」「滑走技術」を磨くこと。そうすれば、BCやっている奴らの視界に入ってくる。

一緒にBC入ってみる?

そんなふうに誘ってもらうためには、準備をしておくこと。準備していれば、チャンスは来るかもしれないし、準備していなければ、声すらかからない。

繰り返しになるけど、ボクにとってBCはずっと憧れの対象だった。そして、BCへの扉を、同じようにこじ開けようとしている人を、ボクは応援したいと思っている。BCへの扉、開けたいと思うならば、祈りを込めて強く叩き、叩き続けていればいつかは開くとボクは信じている。

忘れるところだった。

BCはそれなりにお金がかかる趣味だし、家族の理解と応援も必要だ。だから、良き家庭人であり、強き職業人(クビになってもなんとかなるような)であることも、ぜひぜひお忘れ無く。

なんか説教くさくなっちゃったな、まぁいいか

おしまい