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2024年8月16日金曜日

エッジングパワーの6要素まとめ: ボクのセッティング遍歴

エッジングパワーの6要素シリーズ」のまとめとは、ボクのセッティング遍歴。

赤線が過去のセッティングだ。ボクはずっと、少し長め(適正より+5センチくらい)の板を選んでいた。スピード出しても安定するし、バックパック背負ってちょうど「推奨ライダーウェイト」のレンジにはいるから、それでいいと思っていた。

ただ、オーバーサイズの板は、幅も適正より少し太め。太めの板はエッジが踏みにくい。それにボクは足が小さくい(25.0cm)。つま先も踵もエッジから遠くなるから、さらにエッジが踏みにくい。

オーバーサイズの板は、ボクにとって固めのボードになる。エッジグリップはいいけど、少し扱いずらくなるのは否定できない。

センタリングは目一杯の踵寄り、ヒールエッジの効きを最優先に考える。トウサイドは…気合いと筋力と固いブーツでなんとか押し込めるからねw

ハイバックは立たせ気味。前傾強いと疲れちゃう。ボクはバックカントリー・スノーボードが第1目的なので、疲れない、疲れていても乗れるセッティングが好き。

ブーツは固いやつ。トウサイドエッジを効かせるために、ブーツのレスポンスと剛性が必要になってくるから。

アングルはF30 R9くらいの前振り。元スキーヤーにありがちだけれど、腰と胸を前に向けないとしっくりこない。しかし、これだけ極端な前振りだとフロントの押さえが効かず、ノーズがフラフラする。

ま、そんなもんだ、そう思って20年くらい滑っていた。



3シーズンくらい前からセッティングをいじり始めた。

BCのメインボードは長めでいいだろう。でも、普段使いには張りが強すぎる、そんな気持ちになってきた。

セッティング見直しで一番大きいのがフロントのアングル。

F30 R9 → F27 R0 → F24 R0 → F21 R0 → F18 R0 → F9 R-3

もともとボクはワンフットが苦手で、リフトの乗り降りでよくすっ転んでいたw
センタリングを踵よりにすることで、バックサイドターンはだいぶマシになった。しかし、フロントサイドは相変わらず、しっかり踏み込めない感じだった。

で、試しにフロントを21度くらいまで横向きに戻したら、ワンフットが苦にならなくなったのだ。エッジングパワーが改善されてノーズがふらつかず、意図する方向へ進むようになった。

股関節の可動域が正面に矯正されてきたのも大きい。これは意図していたわけではない。ブルベやロングライドでビンディングペダルを履いてペダリングしているとき、つま先は強制的に真正面を向く。その状態で、脚の曲げ伸ばしを繰り返すことで、股関節の柔軟性が増して、つま先が正面を向くようになったのだと思う。

そんなわけで、フロントは12~9くらい、リアは0~-9くらいで滑っている。そう、ゆるいダックでスイッチスタンスにもトライを始めている。

横ノリスタンスにすると…エッジングに力がいらない。以前はフロントが流れた分を、リアで辻褄合わせてなんとかする、みたいな…余裕が少ない滑りになっていた気がするのだ。

楽に滑れるので、「硬いブーツでなくても大丈夫かも?」そう思うようになってきた。

ブーツのフィッティングも、以前はしっかり密着!隙間ダメ!が基本だった。今はわりと…緩めでもいいかなぁ、そんな感じで滑れるようになった。この2〜3シーズンで、それまでなんとなく感じていた壁を超えた、そんな気がしている。

未来は…もう少し短くて(適正サイズ)、柔らかい、細身のボードに乗り換えたら、もっといいんじゃないかな?そんな感じがしています。

おしまい

2024年7月27日土曜日

エッジングパワーの6要素 カービング向けセッティング

以前はスキーにハマっていて、今はスノーボードにハマっている。

そんなボクが、2つのスポーツに共通すると思うのは、「キレとズレをいかにコントロールするか」が大事ということ。

このブログ、「エッジングパワー」というキーワードで検索すると、スキーもボードも結構な数の投稿がヒットする。それは、ボクがエッジングを大事に考えているから。

今回は、スノーボードでカービングをグリグリやりたい人のセッティングについて。
レーダーチャートの上から、時計回りに説明してみよう。

「カービング向け」とされているボードは、標準より細身。細いとエッジの切り返しが速く、エッジプレッシャーも上げやすい。

カービング中は強い遠心力を受けるので、それに耐えるためにフレックスは硬めになる。限界スピードが上がって、急斜面でのカービングをやるようになると、さらに硬いボードが欲しくなるかもしれない。その代わり低速では曲がらないかも知れないけどな…

ボードの幅が狭いので、センタリングは調整する余地がない。ドラグしない範囲で、微調整をするだけ。それでもドラグするなら、プレートを噛ますか前振りにする。

ハイバックは深い前傾になる。板を履くにもコツが必要になってくる。

ブーツのタンを軽く押し潰して、前傾させた状態でないと、ブーツのかかとがバインの奥まで入らないはずだ。アンクルをしっかり絞めないと、ブーツは勝手に押し出されてくる感じ。

ブーツのふくらはぎはハイバックに密着し、わずかな動作に反応してヒールエッジを立ててくれる。それでも反応が遅いと感じるなら、固いハイバックとベースプレートを装備したバインディングを選ぶべきだろう。

ブーツはもちろん固め。フロントサイド、バックサイド、両方のターンでエッジの効き具合が異なるとリズムが取りにくい。ハイバックのところで説明したように、ヒールエッジがパワフルなセットなので、バランスを取るために硬くて反応の速いブーツを選択する。

そもそもハイバックが強い前傾なので、常時膝を曲げた姿勢を強いられる。それは空気椅子状態なわけで、脚力だけで支えるのは辛すぎる。ブーツが固くてサポートしてくれれば、すこしだけモモが楽になるというわけ。痩せればいいんだけどね。

さて、最後の要素のアングルだけれども、これが問題だ。ボードの幅が狭いので、ドラグを避けるためにフロントを前振りにせざるを得ない。極端に細いボードを選ぶとこれが顕著になる。もっとも極端なのはスクォール(wikipedia)。そして、前振りにするとエッジングパワーは低下する。

前振りはエッジングパワー的にはマイナス要素だけれども、それ以外の要素でエッジングパワーを稼いでいる。トータルではエッジを効かせやすい、それがカービング向けのセッティング。

このセッティングは、デメリットも大きい。
  1. 空気椅子状態で、ターン中を含めて脱力する時間がないので疲れやすい
  2. 前振りスタンスは、ターン中に重心を前後させる必要がある(動作が複雑になる)
  3. 逆エッジを喰らいやすい(特に危険なバックサイド側)
  4. 上下動を使える範囲が限られるので、ギャップの吸収がやりにくい
  5. 姿勢が低くなるので、広い視界の確保が難しい
そんなわけで、広いリゾートを滑り倒すだとか、いろんな斜度、雪質、コブに柔軟に対応するとかは割と苦手だと思う。すごい上手い人は別かもしれないけどね…

まぁそれでも、スノーボードもスキーも、いろいろセッティングを変えてみるのは、自身の成長の糧にもなるからチャレンジするのがいいと思う。

グラトリ・初心者のセッティング」と見比べてみればわかると思うけれど、カービング向けセッティングとグラトリ向けセッティングはある意味正反対。道具を2セット用意するか、期間を決めてどちらかのセッティングで集中的に練習するか、ほどほどのセッティングで幅広く対応力を磨くか…それは自分で考えて決めてみてください。 Happy Riding!

2024年6月11日火曜日

エッジングパワーの6要素 グラトリ・初心者のセッティング

エッジングパワーを決定づける、6つの要素について前回説明をした。

6要素をどのように組み合わせて活用したらいいのか?そんな話をしてみよう。

僕はグラトリはしないというかできない、ジブもしない。

そんな僕がジブ・グラトリについて語るのはおこがましいのだけれど、「エッジが不意にひっかからないようなセッティング」だと理解してください。

エッジがひっかかると困るのは、初心者スノーボーダーも同様。友達に、「スノーボードを始めたい!」と相談されたら、このセットアップの話を思い出して欲しい。

レーダーチャートの上から、時計回りに説明してみよう。

ボードは標準よりちょっと太めが良いよね。。エッジの効き方がマイルドになるし、トリックの時に安定感が出るはず。

フレックス柔らかめのボードを選ぶことで、細かい操作がしやすくなる。カッチカチのボードはやめようね。

センタリングは標準でいい。「標準」とは、ワンフットで安定して真っ直ぐ滑れる位置。バインがトウ側かヒール側にずれていると、真っ直ぐ滑れない。ここで注意しなければいけないのは「見た目のセンター」ではないということ。それぞれの骨格とか、筋肉のつき方で重心位置は変わってくる。だから、見た目が踵よりとか、つま先よりに「見える」位置であったとしても、あなたがワンフットで真っ直ぐ滑れるのならそれが正解。


ハイバックは立たせ気味でいい。「立たせ気味」というのは、ブーツの前傾角度とほとんど同じくらいの角度ということ。ブーツを履かないで、そのままバインに嵌めてみよう。この時に、ブーツのふくらはぎ部分とハイバックが、上から下まで密着している状態。

実際にブーツを履いて、バインをセットしてみよう。リラックスしてちょっと膝を曲げた状態が、あなたにとって「自然な体勢」で、長時間滑っても疲れにくい姿勢。この時、ブーツの後ろは、ハイバックから微かに離れるはず。この隙間が、車のハンドルでいう「あそび」(不感ゾーン)にあたる。立ち気味にセットしたハイバックは、バックサイドターンのエッジングをマイルドにしてくれる。

ハンドルがクィックすぎる車は疲れる。逆にあそびが大きぎると、キビキビした感覚に欠ける。滑ってみて、ちょっとあそびが大きすぎるかな?そう思ったらハイバックを1ノッチずつ前傾させていくのだ。

ブーツの硬さはもちろん柔らかめがイイ。フロントサイド、バックサイド、両方のターンでエッジの効き具合が異なるとリズムが取りにくい。ハイバックのところで説明したように、バックサイドターンのエッジングがマイルドなセッティングになっているので、フロントサイドのエッジングもマイルドにしたい。そのバランスを取るために、柔らかめのブーツを選ぶのだ。そう、硬いブーツは、トウエッジの踏み込みがパワフルになる。

で、レーダーチャートを見てみよう。赤いノーマルセッティングに比較して、緑線で囲まれている面積がずいぶん小さいのが分かるよね?

このセッティングだと、エッジングパワーが小さい。ずらしやすいし、逆エッジのリスクが減るということ。

…でも…このセッティングだと…必要な時にエッジを効かせることすらできないということ?

そう、そのデメリットの一部を相殺するために、横向きのスタンスアングルを取るのだ。

前6度、後ろ-6度位のアングルを試してみてほしい。スイッチで滑りやすいのは、スピンなどのトリックを練習するのにいいだろう。初心者・初級者が、自分のやりたい滑りを探すのにもいい。

そんでもって、隠れたメリットは、「立たせたい時にはエッジがしっかり立つ」のが横向きセッティング。なんとなくしっくりこないようなら、前足を9度か12度にしてみるのもいいと思う。

特にちょい太めのボード(ノーズが太いパウボードも同様)で、前足のアングルが21度を超えてくると、エッジの踏み込みが効きにくくなる。

まぁその、全体的にルーズなのだけれど、スタンスが横向きなことでバランスが取れているのがこのセッティングということでした。

2024年6月1日土曜日

エッジングパワーの6要素

スノーボードの面白いところは、ボードとバインディングのセッティングを変えられるところ。

セッティングの自由度が高いのは、スノーボーディングの楽しみでもある。だけれど、自由な反面…セッティングの何が正しいのか訳がわからなくなって、迷路にハマることも出てくる。

そんな人のために、セッティングで重要な要素を整理してみよう、そんなシリーズを始めます。

楽に「カービング・ターン」をしたい人、「圧雪でパウダーボードに乗れない」人、そして「ワンフットが苦手」な人たちです。全てに共通するのは、エッジをうまく使えない人たちです。

エッジングパワーを左右するのは6つの要素があります(下図参照)。


レーダーチャートの上から時計回りに、

  1. ボードが細い方が
  2. ボードが硬い(フレックスとトーション)ほうが
  3. バインディングが踵寄りセットのほうが
  4. ハイバックが前傾しているほうが
  5. ブーツが硬いほうが
  6. フロントのアングルが横向きのほうが

エッジングパワーが強くなります。(3と5については、いずれ詳しく説明します)

サンプルとして、ノーマルボード、パウボード、カービング(アルペン)ボードのレーダーチャートを入れてあります。6角形の面積が大きいほうが、エッジングパワーが大きくなります。

ほとんどのパウボード、ノーズがノーマルボードよりも太い。だから、特に前足のエッジが効きにくくなります。パウダーだと面で滑るので気が付きにくいけれど、圧雪バーンだと上手く滑れなかったり、疲れやすかったりするのはこのせいです。ノーマルボードと同じバインとブーツで、パウボードに乗るとエッジがうまく効かないのはこのチャートで見ればわかります。

カービングボードは、締まったバーンで強いエッジングを可能にするために、細く、硬く(というより張りが強い)セットアップになります。細いボードはドラグしやすくなるので、アングルは前振り、センタリングも踵に寄せられません。硬くて反応の早いバインを使い、ハイバックの前傾は強く、それとバランスを取るためにブーツも硬くなります。

現在の滑りで何が不満で、どう改善したいのか考えて、この6要素をどう変化させるかが上達の早道だと、ボクは思います。

え?そんなボクはさぞかし早く上達したんでしょうね?ですって?

嫌だなぁ…さんざ迷って遠回りして、もっと早く知っていれば良かったなぁ、そんな話をしようということですよwww

まぁ…こーゆーシリーズってトラフィック全然上がらないのですが、一人でも参考になる人がいればいいなぁ、ということで… つづく

2023年1月16日月曜日

スタンスアングルとエッジングパワー

少し前の投稿で、センタリングについて書いた。というか、僕のブログで「センタリング」って見ると、「またか…」って人もいるだろう、ごめんね。

センタリングの 2.5~3mm が滑りに与える影響は大きいと言っても、ピンとくる人と、そうでもない人に分かれるんだろうなとも思う。ピンとこない人は、ここで終了が吉です。

で、スタンスアングルとセンタリングは、相互に連携している。だけれども、それを考えてセットアップしている人って割と少ない…と思うから書いてみる。

僕は先シーズンの途中から、フロントのアングルを変更した。
養生シートにバインのアウトラインを写し取る
今までのセッティングはF30 R0 という、左足前振りで右足は真横。左足が前振りなことで、「上半身を前方に向けやすく、斜面変化を両目で、高い位置から見られる」 = 「遠近感がはっきりして安全」 これがBCでの安全確保に有利だからこうしていた。

ただ、左足が前振りだと、どうしてもターン前半でエッジの捉えが甘くて反応が遅くなる。ターン中もフロントのエッジングパワーが足りないので、ノーズがフラフラと動いていく。それはあきらめて、ターンの途中から後半にかけて後ろ足を強く締めてターンを仕上げる。そんなイメージだった。

で、だんだんと…ターン前半の、フラフラキョロキョロ安定しない感覚が嫌になってきた。そこでフロントを21度に引いて、横向きのセッティングにした。
母指球の延長線上に線を引いておく
これが大正解で、ハードバーンでもノーズの捉えが確実に素早くなり、結果として安定した滑りにつながった。で、なぜ横ノリだとエッジが良く効くのか、理由をビジュアル化してみよう。

バインのアウトラインと、母指球の延長線がどこに向くかを、養生シートに書き写したのがこれ。
横方向で3mm程度の変化
21度にすると、エッジへの距離が3mm 近くなる。エッジへの距離3mm というのは、センタリングで言えば、センターディスクで1ノッチの距離と同じ。それだけエッジへ近く乗れれば、エッジングパワーが大きく増えるのも当然だ。

前後方向の荷重ポイントが移動するのも見逃せない。
2cm くらい踏むポイントが後ろになる

前振りにすると、つま先の位置が前に出るので、フロントサイドターンの時の荷重ポイントは前に移動する。逆にかかとの位置は後ろに下がるから、バックサイドターンの荷重ポイントは後ろになる。ということは、毎回毎回ターンの時に、積極的に前後に体を移動させる必要がある、というのが前振り。

で、僕みたいに、フロントだけ前振りにしていて、ターンの仕上げはド横乗りの後ろ足で仕上げる、みたいな人は、前後の荷重ポイント移動はさほど起こらない。ただ、前足が前振りで後ろ足が 0度の横向きだと、トウ側はワイドスタンスになり、ヒール側はナロウスタンスになるということ。

で、スタンス幅を広くするとボードがしなりにくくなるかわりに、安定する。スタンス幅を狭くするとその逆ということは聞いたことがあると思う。僕の今までのセッティングは、フロントは安定する代わりに反応が鈍く、ヒール側は動きがクィックになるということ。

で、僕は、フロント前振りを長く推奨してきたわけだけれど…アングル変更によって、エッジングパワーとスタンス幅がどのように変化するかを考えると…極端な前振りはしないほうが、ボードの性能を活かしやすいだろうなと思うようになった。で、今の僕のベストは F21 R0 というわけ。

いや、でも、カーバー(カービングをする人)は前振りですよね?だって?

アルペンボーダーもカーバーも前振りだけど、彼らが生息するのは、ハードパックバーン。固いバーンには細いボードが必然だし、細いボードでドラグしないギリギリの前振りスタンスで…カント角を入れられるバインやプレート入れたりする。

で、アルペンボードとかカービング専用ボードを履いていないならば、ドラグするからという理由で前振りするのはお勧めしない。

初心者、初級者の時は、「どうやってエッジを深く立てるか」が課題になる。しかし、中級レベルになってくると、「エッジは立てられて当たり前」になる。そんでもって、ターンのキレとか、後半の加速とか、次のターンへの連続性を考えると、エッジを立てすぎても意味がないことに気がつくようになる。

ボードの太さに合わせたスタンスアングルを取ると、それに合わせた上体の向きができる。できるだけエッジに近い位置で踏めるようになっている状態、それが、ボードを設計した人の意図しているポイントなわけ。で、乗る時には、「ドラグしないようにコントロールしながらエッジにプレッシャーを入れる」のが大事だ、そう僕は思う。

ただまぁ、ターンに何を求めるかも人それぞれ。僕はターンの加速、キレ、スピードのコントロールを大事にしたい。そして、ターンにスタイルを求めるとかも全然ありだとは思う。

どんなスタンスアングルでも、乗ってれば慣れる。実際、「えっ?そんなんで良く乗れるよね?」って上手い人もいる。ド前乗りなのにスイッチが超上手い人とかね。

僕は凡人なので、できるだけラクで確実に乗れる方法を考えて生きていこう、そんな風に思っています。

2021年4月15日木曜日

スプリットボードって正直どうよ? (2/2)

シュッッ…シュッッ…クライミングスキンが雪に擦れるリズミカルな音をさせながら、タカさんが 横に並んできた。

ブチョ、どうですか?スプリットボード?
うん、快適だよ…ちょっとキョロキョロする気もするけど(注1)
スノーシュー背負わなくていいのって、軽くて良さそうですね。
うん!なんか体が軽く感じるよ。

僕は高揚感と少しの不安を感じていた。スプリットボードを使うのは今回が2回目で、本格的なBCは今回が初めて。前回は草津シズカ山スキー場の跡地をハイクアップして、かってゲレンデだった斜面を滑っただけだしね。

今日は平標山へ登り、ヤカイ沢を滑走する計画だ。

Mt. Tairappyo, Yakaizawa area

この日のメンバーは、僕(スプリットボード)、タカさん(テレマークスキー)、ヨーイチ(ボード&スノーシュー)と、雪山宴会部ならではの乗り物博覧会(注2)。

Yohichi, snowboards with step-in binding & boots configuration. 

僕らは林道を途中までツボ足で歩き、雪のあるところで各々のハイクアップ装備をセットして登る。しばらくしたら、クライマーズライトの尾根に乗り上げる。そして、尾根伝いに山頂稜線に上り、平標山の山頂へと至るのだ。

Yohichi & Taka

rider: Taka

尾根の取り付きが急斜面になっていて、そこで僕の苦行が始まった。
ヨーイチは、スノーシューのトラクションを生かして斜面を直登していく。タカさんは斜登行とキックターンでジグを切って登っていく。スプリットの僕は…僕は…行き詰まった。

スプリットボードで直登できるのは、緩中斜面。ちょっと斜度が増したら、登行はものすごく微妙なバランスになってしまう。ペナペナのボードは、シールを斜面に効率よく押し付けてくれない。雪が硬かったり、凸凹していると、シールがグリップせずに後ろに下がってしまう。

それではと、斜登行に入ろうとするのだが、スプリットボードはエッジが食い込まない(注3)。そして、斜面に対して横向きになろうとすると、スプリットのテール側はダランと下がってしまって方向転換を妨げる。ここで僕は理解した、スキーで使える「斜登行」「階段登行」「開脚登行」「キックターン」がスプリットでは使えないことを。

で、僕は後ろ向きに5mくらいずり落ちてすっ転んだ。斜面上部では、とっくに登り終えたタカさんとヨーイチが心配そうにこちらを見ている。

このままではここを突破できないので、バックパックからクトー(スキーアイゼン)を出して、スプリットに取り付けた。これで、固いところを選んで行けば、登れるのでは無いか?

もう一度登り始めたのだが…スプリットが幅広すぎて、少しでも斜面に対して斜めになると、クトーの谷側の爪が斜面から浮いてしまって効かなくなる。そして、内側の爪だけでは、効きが不足して登行ができない。僕はまた行き詰まって、今度は10mくらい滑落した。その後はちょっと記憶が飛んでいるw

Taka at the peak of Mt. Tairappyo

どうやってこの急斜面を突破して、山頂稜線にでたのか、僕は覚えていない。多分、ツボ足で力づくで上がったのだろう。

山頂まで500mくらいのところで、僕は疲労困憊してしまった。

タカさん、ヨーイチ、俺はここで待ってるよ。
えっ?せっかくだから山頂で写真撮りましょうよ。
いや、もう平標はなんども登ってるからいいや。二人が戻って来るまでの間に、スプリットを合体させて滑る準備をしてるよ。

タカさんとヨーイチが山頂まで行って帰って来たとき、僕はスプリットボードを合体させることができずに悪戦苦闘していた。インターフェイスが氷結して、何かがどこかで邪魔をして合体ができない(注4)。

結局、何かのはずみで合体が完了して、無事に滑走して下山できたのだが…その後僕がスプリットをBCに持ち出すことは無かった。

タイトなツリー越しにヤカイ沢を見る

デメリットを整理してみる。
*エッジが効かない、スキーなら有効な登行技術が使えない
*思ったよりも軽量化できない。
スノーシューはいらなくなるけど、幅広のクライミングスキンはかさばるし、重い。クトーも必要だし、ナイフエッジみたいな場所があるなら、クランポンも必要。
*スノーシューやスキーとの行動に制約がある
スプリット+シールでは一緒のルートどりで行けない斜面がある。そこでバラけると、ガスが出たりして視界が悪化した場合、パーティがはぐれるリスクも生じる。それに、スキーのトレースは幅が狭すぎてスプリットは活用できない。特に斜面のトラバースで、スキーやスノーシューにはちょうどいい幅でもスプリットでは谷側の板を収めるスペースが不足する。こうなるとツボ足にせざるを得ない。

多分スプリットが向いている条件てのはこんな感じ。

◯穏やかな斜度で長いアプローチをスピーディーにハイクアップする。
◯スノーシューでは浮力が足りないくらいの深いラッセルがあるハイシーズンに入る。
◯パーティーが全員スプリットで、登るの大変なコンディションになったら降りるとか、コンセンサスができてる

北海道とか、東北とか、北米大陸みたいなスケール感には向いているんじゃないかな。


で、僕らが発見したスプリットボードのもっとも有効な使い道はこれ。

Yohichi & Taka

太めで長いスプリットボードは、カードゲームのテーブルに最適

クッソ、またDraw Four かよ!!!

スプリットボードの装備一式は結構なお値段。購入に踏み切る前に、僕は普通のリジッドボード+スノーシュー+クランポンで、BC経験を積むことをお勧めします。

では、皆様、ご安全に。

*最新のインターフェイスなら、欠点は改善されているかも。しかし、ボードの幅やブーツの剛性などに起因する、物理的な欠点は変わっていないと思われます*

注1 スプリットボードの滑り心地、フレックスとかトーションのバランスはノーマルボードと変わらなかった。その代わり、スキーポジションにすると、薄いベニヤ板を履いてるみたいにペランペランに柔らかい。足裏の前後20cmくらいしか、雪に密着していないように感じる。

注2 雪山宴会部は、登りも滑走もペースが同じくらいならば、乗り物に関係なく一緒に遊んでいた。これはわりと珍しかったようで、他のグループからも興味深く話しかけられた。さすがに、ソリとスノースクートのメンバーはいなかったけど…

注3 板は細ければ細いほどエッジは立てやすい。アイススケートみたいに細ければ、エッジング最強。ブーツはサイドが固ければ固いほど、エッジは立てやすい。そして、板のフレックスとトーションが固ければ、より強いエッジングができる。つまり、この要素が全部反対のスプリットは、エッジング能力ほぼ皆無…

注4 当時のバートンのスプリットインターフェイスは、氷結で分割と合体が著しく困難になることが知られていた。合体させられなければ帰ってこれないので、力づくで!ってやってレバーが折れる事案も頻発。対策部品がバートンからリリースされていた。僕はこの対策部品を手に入れて、なおかつ、凍結防止剤とシリコーンスプレーを吹きまくって、万全を期して行ったのだがダメだった。

2021年3月17日水曜日

革ブーツとともに去ったスキーヤー達(テレマークスキー)

30年少々スキーをやっていて、ブーツが革からプラスチックに変わったのは2回あります。1回目は、小学生のころ。2回目は、テレマークブーツが、革からプラスチックに変わった時です。近代テレマークスキーは、革靴と細板で始まり(注1)、プラブーツになり、技術と滑走スタイルも大きく変化しました。そして、次のことがまたも起こったのです。

革靴で積み上げた技術や経験が無になったように感じ
始めてすぐにあっという間に上達していくニューカマーを見て
テレマークスキーから離れる人が上級者の中に多くみられた

テレマークをやめたある人は、「メジャーになったテレマークに魅力を感じなくなった」と言い。ある人は、「パイオニア的な雰囲気がなくなったから」と言い。そして、「ソリッドで重くダイレクトになった道具になじめない」と言い、去っていきました。でも、僕は、多分、プラブーツではそれまでの滑りができなくなって、つまらなかったのではと思うのです。

革のブーツは高さがくるぶしの上までしかありません。O脚でも、スネの形に影響されることがなく、足首の先でエッジの角度を微調整できます。そして、テレマークブーツは母指球のところで曲がりますから、ブーツが変形して乗り手にあった形に変わってくれます。そうやって馴染んで、インエッジを踏みやすくなった革ブーツから、融通の効かない、ダイレクトなプラブーツに履き替えたら…うまく滑れなくても当たり前です。

そんな時期に、僕はある山の会で末席を汚していました。その会には、テレマーク黎明期から活躍していたテレマーカーが何人もいらっしゃいました。そして、皆さん嬉々としてプラブーツを試し…細板との相性が悪いと考えてファット(と言っても今の感覚ではライトツーリング的な)カービング板を買い…また革ブーツを物置から出し…ということを繰り返しながら、多くの人がテレマークをやめてしまったのです。

3cm のブレーカブルクラストを慎重に
photo by Fumihiro-san

この投稿で使っている写真は、そのうちの一人、フミヒロさんが撮影してくれました。彼はとっても個性的で、人懐っこく、適当な人ですが、あるポスターのライダーになったくらいの映えるテレマークスキーヤーでした。

ちょっとスプレーあげてよ、スピード感がでないから
いや、ムリ、ムリですよw

僕が草津のBCで遊んでいた時、フミヒロさんが2回ほど遊びに来ました。僕が雪洞とか、テントとか、ビビィサックで寝ている近くには、立派なヒュッテがあります(そこで泊れよ、俺w)。で、スキー場からツアーコースに入る人がいると、パトロールからヒュッテに無線で連絡が入ります。すると、ヒュッテのお母さんが大きな声で知らせてくれます。

「ブチョーーーー! フミヒロさんが、今入山したってーーー!」

僕はテントか、棺桶みたいな雪洞から「ありがとうございまーーーす!」と叫びます。
荷物減らしたかったんでテント無し
夜露と風避けだけの棺桶雪洞 荒れそうならちゃんとしたの掘るけどね

やがて斜面の向こうから、一人のテレマークスキーヤーが現れます。バックパックが尋常で無い位にデカいので、フミヒロさんであることは間違いありません。彼は僕のテントサイトというか、単に雪を踏み固めたところに滑り込んできて…

悪条件なので、ダブルストックで確実にエッジを切り替える

息も切らさず、いつも通りニコニコしながら、

ママ〜!酒持ってきたよ沢山!今夜は飲もう!(注2) 

と言って、バックパックから、マル(日本酒)の2Lパックやら、ビールやら、焼酎やらを取り出し、デカい一眼のデジカメと交換レンズを取り出し、秒でテントを立てると…

さ、日が暮れる前に何本か滑るか?
えっと、もう、その、日は暮れかけてますよね???wwwww

フミヒロさんに追い立てられ、表面がガリガリに凍って、強く踏むと壊れるクラスト斜面をハイクアップします。で、彼は先にヒラヒラと滑り降り、カメラを構えて待ってくれています。この投稿の写真がちょっと妙に暗いのは、そんなワケなのです。

確かこの時、フミヒロさんは定年後だったので6x歳くらい?なのに技術も体力も30代の僕たちを軽く上回っていました。というより、僕は3泊くらいの予定で70Lパック。入山時は汗ダラダラ。彼は一泊なのに、差し入れや写真機材で満タンの80Lパックで息切れさえしていない。

フミヒロさんがテレマークをやめた理由は聞けていないけど、プラブーツに違和感を感じるとは言っていました。

僕はアルペンスキーで、カント調整をやり続けるのに疲れて、細板&革靴のテレマークスキーにスイッチしました。高さのない革靴なら、足首周りが馴染んでくれば、ここまで微妙な調整をしないでいいのかも?と思ったのです。ブーツが馴染むまで2シーズン程度はかかりましたが、思っていた通り、細板と革靴はいい意味でルーズで、軽快で、なかなか快適でした。

で、やがて革のブーツが生産中止になり、プラブーツにスイッチして…アルペンスキーでやったようなカント調整が再開し、それに疲れてスノーボードにスイッチして今があるのです。

今、ふと思います。プラブーツとファットスキーが主流になったテレマークは本当に正常進化なのだろうか?あれほどテレマークスキーを愛していた、僕もフミヒロさんも、テレマークをヤメてしまったんだから、ネ。

スプレーではなく…
クラスト踏み抜いて飛び散る氷の粒々、コワイw
「いやーマルの2Lはやばいっしょ」と苦笑いする Yohichi

(注1) ブーツのエッジングパワーとスキーの板幅には相性がある。板は細いほどエッジが立てやすく、切り返しが容易なので、革ブーツとの相性がいい。だが、細板は深雪で浮力に欠け、軽いせいで悪条件に弱い。プラブーツになってエッジングパワーが強化されたことで、それまで履けなかった太くて重い板と、頑丈なバインディングが使いこなせるようになった。

(注2) 奥さんをキャンプに連れて行くと、食事からなにから全部僕が担当する。で、ある時、奥さんと奥さんの友達を連れて一緒にキャンプした。僕が「夕飯ができるのは5時ごろだから、それまでに帰ってくるんだよ」と言ったら、「ママみた〜い!」で、その日から僕の呼び名はママになった。山の会でそんなことを話したら、会での僕の呼び名はママになった。

2021年3月8日月曜日

スキーブーツのカント角・原則

なぜプラブーツではカント角が重要なのか?

プラブーツはカフの高さがあるので、スネを内側に絞り込むことで強いエッジングができます。革のブーツとは比べ物にならないくらいに。

ただし…それは、スネの角度とブーツの角度が適切にマッチングしていれば…の話です。

スキーの板が回転するメカニズムをイメージしてみる。誰も乗っていないスキーの板を、そのまま斜面においたらどうなるでしょうか?(スキーブレーキや流れどめは外していると考える)すると、スキーは最大傾斜線に向かって滑り出し、「まっすぐ滑り降りていく」筈です。

では、本来、最大傾斜線に向かって滑り降るスキーを「ターンさせる」にはどうしたらいいでしょうか?スキーヤーならわかる筈ですが、ターンさせたい方向にスキーを傾けて、荷重させれば良い。スキーを傾けると、そのサイドカーブの働きによって、スキーは傾いた方向にターンを始める。

ということは、両足を並行にして直滑降し、重心をどちらかに移動させ、そちらに膝を曲げてスキーを傾けてやれば、両方のスキーは並行のままターンを始める。これがパラレルターンであり、ごくごくシンプルな技術だ…カント角があっていれば。

そもそもスキーブーツを作るメーカーは、主要顧客であるヨーロッパと北米を見ている。そしてそこで滑る人たちは大多数がコーケイジャンであり、スネは細くまっすぐ。靴のかかとは、真ん中からすり減っていく。ところが、モンゴロイドである私たちのスネは太く(というか脹脛が発達し)、外側に湾曲している。いわゆるO脚で、靴のかかとをみると外側がすり減っていく。

私たちがスキーブーツを履くと、外側に傾いたスネは、スキーを外側に傾ける。スキーは傾いた方向にターンしていくと言った。つまり、外側に傾けられたスキーは、いつ、どんな時でも、隙さえあれば、外に向かって突進しようとしているのだ。

なかなかこれに気がつかないのも不思議だが、インナーを抜いたてブーツに足を入れてみると、いかにスネが変な位置にあるかびっくりすることだろう。

ブーツのインナーを抜いて足を直接入れたところ。
スネの外側はアウターに密着し、内側には隙間ができる。

で、あなたがO脚かどうかはどうやって判断すればいいのだろうか?

下のチェックリストでぜひ、一度考えてみてください。

日常生活でのチェック
  • 靴のかかとが外側から減っていく
  • O脚であることを自覚している
スキー場でのチェック
  • 脱力して直滑降できない、苦手、(油断すると両スキーが外側に暴走)
  • プルークしたとき、内側のエッジが立たずスピードコントロールができない
  • 階段登行をするとき、山側のスキーはエッジが効くのだが、谷側のスキーが流れて登れない
  • スケーティングすると、蹴り足がずれてしまってうまく加速できない
  • リフトに乗って、スキーの前側を交差させると、上のスキーのソールと、下のスキーのトップシートがぴったり密着しない
  • どれだけ練習を続けても、パラレルターンができない
で、それなりに滑れていても、実はカントがあっていないって人はたくさんいます。というか、ほとんど全員と言ってもいいくらいに。

日本人がスキーで冬季オリンピックに出て、メダル取った競技を考えて見てください。クロスカントリー、ジャンプ、複合とか…全部…くるぶしの上までしか高さが無いブーツを履いてやる競技ですよね。なぜなのか?ということです。

どうやって調整すればいいのか?
まずは簡単なやり方を次に紹介します。

つづく

注: ブログ主は、今はスキーを休止しています。そのため、ブログの中ではスノーボード ブーツを見本に使っています。スキーブーツだと思ってみてください。

2021年3月3日水曜日

プラブーツがもたらしたこと、葬ったこと(3)

スキーブーツが革からプラに変わると、何が変わるのか?

まず、転倒が減る。革のブーツはくるぶしの上までしか高さがないので、重心が前後にずれると即転倒となる。ところがプラブーツはスネの途中まで高さがあり、前も後ろも、シェルがしなりながら体重を受け止めてくれるので、リカバリーできる幅が格段に広いのだ。

転ばなければ、より長い時間、板と対話しながら滑る余裕ができる。初心者は転ぶことが恐怖なわけで、転ばないで済むことで、よりリラックスしてスキーに親しむことができる。

もう一つ、強いエッジングができることもプラブーツのメリットだ。高さがあるプラブーツは、エッジを立てるのにスネの力が使える。スネを内側に絞り込むことで、スネからブーツのアッパーシエル、ロワーシェルと力が伝わり、エッジを効かせることができる。強いエッジングができれば、アイスバーンでもエッジを効かせられるし、より素早くアグレッシブなターンをすることも可能になる。そして、革ブーツではとてもエッジを立てられない、太くて反発の強い、ハリのある板も履けるようになる。(注1)

こうしたプラブーツのメリットを使いこなしてあっという間に上達していく人が現れる。

そして、プラブーツのメリットが明らかになると、革ブーツからプラに乗り換える人が続出する。だが、プラブーツとの相性次第で、レベルアップする人と、かえって…下手になる人とに分かれていく。そして、プラブーツでうまく滑れない人は、革靴で積み上げた自分の技術や経験が無になるように感じて…スキーそのものをやめてしまうことも多かった。

プラブーツに変えると、あっという間に上達する、らしい。
変えてみたら、上達するどころか、うまく滑れない。
そんなはずはない、プラのほうがいいはずだ。
だって、この前まで同じレベルだったあの人も、この人も、
いや、ついこの間始めたその人も…ほとんど俺と遜色ないくらいに、
いや、もしかしてもう抜き去られてる?俺の今までの努力はなんだったんだ?

そんな不条理感を抱いて、スキーから離れるスキーヤーがいたのだ。

プラブーツによって葬られる、スキーを愛し、しかし、プラブーツに愛されなかったスキーヤーたち。彼ら彼女らが、そのままスキーを楽しんでいたら、きっと日本のスキー文化はもっともっと豊かになっていたのに違いない。

なんでこんなことが起こるのかということは、カント角の問題なのだ。

プラブーツは強いエッジングを実現し、後傾を防いでくれる。その意味ではとても優れた進歩だ。ただし、強いエッジングを可能にするということは、よりセッティングがシビアになるということ。そして、プラブーツが合う、合わないというその要因は、下肢の骨格(スネ)の形と、それによって決まる「カント角」が問題だったのだ。

くるぶしまでしか高さがない革のスキーブーツは、スネを使ったパワフルなエッジングはできない。だが、くるぶしまでしか高さがないから、上のスネの形がどうであろうとも、足首のひねりで、どのような角度エッジングするのかを操作することができたのだ。

プラブーツではなぜカント角が重要なのか、合っている、合っていないはどうやって見極めるのか、合わない場合はどうやって調整すればいいのかということを、少しづつ書き記していこうと思います。

つづく


樹林帯から出る

稜線直下はクランポンで

空へ向かう

耐えるダケカンバを見て 自らを省みるタカさん

クスミックス 信頼のおける本格的山屋


(注1) ブーツの持つエッジングパワーとスキーの板幅には相性がある。板は細いほどエッジが立てやすく、切り返しが容易だが、深雪では浮きにくい。太くなればその反対。で、ブーツフレックスが硬いと、エッジが立てやすく、パワフルな荷重が可能で、前後のバランスも取りやすいので、スピードや荒れた斜面に強くなる。フレックスが柔らかいということは、すべてこの逆。

2021年2月27日土曜日

プラブーツがもたらしたこと、葬ったこと(2)

スキーブーツが革製からプラスチックに移行するタイミングで、スキーを辞めた人は多かった。特に上級者、指導員とか 1級持ってる人たちが辞めていった。(注1)


親戚のお姉さんが嫁いだ人が、指導員資格持ってる人で、天神平に連れて行ってもらったことがある。この人も革製ブーツの使い手で、田尻沢下山コースのコブ斜面を、その人は華麗に滑り降って行った。

リフトの上で喋った記憶が微かにあるので、ペアリフトが導入された(当時はロマンスリフトなんて呼ばれていた)ころ、僕が中学生のころだろうか。で、僕の小5から中学までのわずか数年で、プラスチックブーツがものすごい勢いで革製のブーツを駆逐していた。

 プラブーツにしないんですか?

 うーん、一度買ったんだけど、うまく滑れなくてね。
 それでまたこのブーツに戻したんだ。

 でも、革製ブーツってもう無いですよね?

 そうなんだよね。どうしようかなって思っているんだ。
 残念だけど、このブーツの寿命が来たら、スキーを引退する時なのかもね。

おじさんは確かまだ30代だった。30代で「引退」って言葉は、今ならすごいなんというか、違和感だと思う。しかし、当時の「50代」ってもう…老人だった。5x歳っておじいさんに会った少年の私は、「あぁ、もうすぐこの人…●ぬんだな」って思っていた(失礼)。だから、30代でも十分におじさんで、あ、そうなんだ、こんなに上手なのに、スキー辞めちゃうんだって残念に感じて…それだけだった。

そして、自分がスキーをやっている時に、もう一度革靴からプラブーツへの変換期というのをみた。当事者として。

 革靴で積み上げた自分の技術や経験が、ブラブーツで無になり
 昨日始めたばかりの初心者が、プラブーツで、あっという間に上達していく

なんというか、そんな不条理感。

プラブーツは強いエッジングを実現し、後傾を防いでくれる。その意味ではとても優れた進歩だ。ただし…合う人にとっては。
そして、プラブーツが合う、合わないというその要因は「カント角」だった。

つづく

立山

スキーヤーというのは、酒を美味しくするために体をうごかす人々
部長&タカさん

(注1)スキー検定1級は、今でこそ「ちょっと上手」くらいの扱いになってしまった。だけど、それはスキーバブルの時に、検定インフレみたいに、とにかく通えば取れるみたいに(一部のスキー場で)乱発しちゃったから。昔はそれこそ、単車で言えば限定解除して750乗れるくらいの名人、みたいな扱いだった。スキー1級を誇らしげにしていた加山雄三さんが、「1級持ってるって自慢するようなヘタじゃないんで」って、雑誌で語り始めたのを見て、時代の変化を感じた。