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2021年2月27日土曜日

プラブーツがもたらしたこと、葬ったこと(2)

スキーブーツが革製からプラスチックに移行するタイミングで、スキーを辞めた人は多かった。特に上級者、指導員とか 1級持ってる人たちが辞めていった。(注1)


親戚のお姉さんが嫁いだ人が、指導員資格持ってる人で、天神平に連れて行ってもらったことがある。この人も革製ブーツの使い手で、田尻沢下山コースのコブ斜面を、その人は華麗に滑り降って行った。

リフトの上で喋った記憶が微かにあるので、ペアリフトが導入された(当時はロマンスリフトなんて呼ばれていた)ころ、僕が中学生のころだろうか。で、僕の小5から中学までのわずか数年で、プラスチックブーツがものすごい勢いで革製のブーツを駆逐していた。

 プラブーツにしないんですか?

 うーん、一度買ったんだけど、うまく滑れなくてね。
 それでまたこのブーツに戻したんだ。

 でも、革製ブーツってもう無いですよね?

 そうなんだよね。どうしようかなって思っているんだ。
 残念だけど、このブーツの寿命が来たら、スキーを引退する時なのかもね。

おじさんは確かまだ30代だった。30代で「引退」って言葉は、今ならすごいなんというか、違和感だと思う。しかし、当時の「50代」ってもう…老人だった。5x歳っておじいさんに会った少年の私は、「あぁ、もうすぐこの人…●ぬんだな」って思っていた(失礼)。だから、30代でも十分におじさんで、あ、そうなんだ、こんなに上手なのに、スキー辞めちゃうんだって残念に感じて…それだけだった。

そして、自分がスキーをやっている時に、もう一度革靴からプラブーツへの変換期というのをみた。当事者として。

 革靴で積み上げた自分の技術や経験が、ブラブーツで無になり
 昨日始めたばかりの初心者が、プラブーツで、あっという間に上達していく

なんというか、そんな不条理感。

プラブーツは強いエッジングを実現し、後傾を防いでくれる。その意味ではとても優れた進歩だ。ただし…合う人にとっては。
そして、プラブーツが合う、合わないというその要因は「カント角」だった。

つづく

立山

スキーヤーというのは、酒を美味しくするために体をうごかす人々
部長&タカさん

(注1)スキー検定1級は、今でこそ「ちょっと上手」くらいの扱いになってしまった。だけど、それはスキーバブルの時に、検定インフレみたいに、とにかく通えば取れるみたいに(一部のスキー場で)乱発しちゃったから。昔はそれこそ、単車で言えば限定解除して750乗れるくらいの名人、みたいな扱いだった。スキー1級を誇らしげにしていた加山雄三さんが、「1級持ってるって自慢するようなヘタじゃないんで」って、雑誌で語り始めたのを見て、時代の変化を感じた。