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2021年4月11日日曜日

MSRスノーシューのトラブル事例と対策

 MSRのスノーシューを使っているBCスノーボーダーは多い。特に今から15年くらい前に発売された、ライトニングだっけ?アルミの枠に、布張りのデッキで軽量化されたモデル。

これが爆発的に売れた。

そして、MSRスノーシューのハーネスは、寿命が10年と言われている。だから、爆発的に売れたこのライトニングが、今どんどんトラブルメーカーと化している(個人の感想です)。

ハーネスの崩壊(加水分解)

シンヤーが、スノーシューをセットしようとストラップを引っ張ったらハーネスが粉々に崩壊。わずかな変色と硬化はあったけど、自宅でチェックした時は全然問題あるようには見えなかったらしい。

ガバガバというか、もうどうしようもない

このタイプのウレタン?ハーネスの加水分解は突然来る

シンヤの話によると、メーカーと輸入代理店の見解では、「ストラップの寿命がきたら、スノーシューそのものの寿命が来たと考えて、買い換えてください」だそうです。で、シンヤ、実は、この時のBC直前に、ストラップが切れて交換したんだそうです。使用年数はちょうど10年…


ストラップ固定金具の脱落&紛失

ユーヤのスノーシュー。足の甲を留めるストラップは、2つのアルミ金具でハーネスとつながっている。この金具には、抜けないように返しがついているのだが、ハーネスの穴に先を差し込むだけでつながっている。

写真右のストラップが紛失、予備のストラップがあってもどうしようもない。

この差し込むだけって構造は危ない気がする

新しいハーネスは柔軟で、金具を差し込む穴もピッタリと隙間が無いので、返しが引っかかるので抜けにくい(でも状況によっては抜けるヨ)。ストラップを引いて締め付けると、この金具がハーネスを引っ張ることになる。ってことは、このはめ込んでいる穴を引っ張って広げる動きがずっと続く。で、経年変化でハーネスが硬化していくと、どんどん抜けやすくなるのではないかと思うよ(個人の感想です)。ちなみに、この時点で使用年数は8〜9年くらい。


ヒールストラップのテンション不足でいきなり外れる

MSR(だけでなく多くのブランドも含めて)スノーシューは、つま先と甲のストラップで土踏まずから前を固定する。そして、ヒールストラップでかかとを斜め上から押さえつけて、しっかりと固定する。

ヒールストラップは結構しっかり締め付ける。テンションがかかると、ブーツのかかとは丸みがあるので、ストラップの位置が上にズレて、斜め上からかかとを押さえつけてくれるのだ。歩行を続けているに従い、つま先と甲のストラップがブーツと馴染んで、足全体がほんの少し(5mmくらいかな?)前に押し出される。そうすると、ヒールストラップのテンションが緩んで、位置が下がり、気がつくと外れるってことがある。

これが深雪とか、固くしまった斜面で起こると結構たいへんな騒ぎになる。

テンションかけて、いい位置にかかったヒールストラップ

旧来型は写真左のしゅっと尖った形、右が現行型

で、力を入れてギュって締めなければいけないので、現行型は握りやすいような形状の末端になっている。でも、一部のモデルでは、理由はわからないが、旧来型のままで販売されている。雪が付いた手袋でこれを締めるのは結構大変。

細引きを通して固定する

指のかかりが良くなってテンションを上げやすい

旧来型のストラップは、折り返しを作ってやると、指がかけやすくなるので試してみてください。


ストラップの紛失

僕が好んで使っているスノーシューのハーネスは、金具がリベットでガッチリ固定してある。リベットのカシメは、金具を「差し込むだけ」よりも信頼性が高い。これで金具紛失のリスクは減るけど、ストラップは単に金具に差し込んであるだけなのだ。で、ゴムと金属って濡れると滑りが良くなるので、フィールドでのストラップ紛失の恐れは解消されない。

それと…僕は加水分解の進行を遅らせるためと、凍結防止のためにシリコーンスプレーを吹いている。ツルツルですw

滑走中は、スノーシューはバックパックに固定しいている。スノーシューのストラップがどうなってるかなんて、自分では見えない。で、気がついたら無くなってたって時のために、いつでも必ず数本の予備は持つ。そして、僕は念のために抜け留めの固定もしている。

インシュロックで留めて、余りはキレイに切る


クレビスピンの紛失

MSRのスノーシューは、デッキとハーネスを二本のクレビスピンで固定している。スプリングリングが、ピンの先端にある穴を通っていて、抜け留めの役割を果たしている。このリングが何かの弾みで抜けてしまうと、クレビスピンを紛失してしまう。これは僕も実際に経験があるのだが、積雪量の多い時期だったり、ツアーの最後に長いハイクがあるような場合には本当に困る。

なので、僕はそんな時のために、ステンレスの先割れピンをレスキューセットに数本入れてある。それに加えて、ストラップの穴に予備のクレビスピンをセットしてある。

余っている穴にクレビスピンをセット

随分とトラブルが多いみたいだけど、だったら他のメーカーのスノーシューにすればいいんじゃない?だって?

僕はMSRのスノーシューを20年以上前から使っている。最初のはデナリアセントというモデルで、デッキは一体整形のエンジニアリングプラスチック製。で、そのモデルのハーネスを入れ替えたりしながら15年以上使って、割れのリスクを考えて最近買い換えた。買い換えたモデルもプラスチックデッキ。プラデッキは古臭いって言われることもあるけれど、僕はこれに絶対の信頼を置いている。

ハーネスの金具はリベットのカシメ
デッキはエンジニアリングプラスチック
裏面には、横滑り防止のレール状スパイク

この3つを満たすモデルがあるかぎり、僕はMSRのスノーシューを使い続けるだろう。

みつまたロープウェイ1便を待つ、タカヤンの前が僕のギア

なぜ、そんなにプラデッキのMSRスノーシューが良いのかって?
それを話し始めたら、収集がつかなくなるから、今日はこの辺で。

では皆様、どうぞご安全に。

2022年12月19日月曜日

ニコイチ補修 MSRスノーシュー

怪我をして遊びに行けないので、壊れているモノをぼちぼち直すかシリーズ…
20-21シーズンの終盤に、ユーヤのMSRスノーシューがぶっ壊れた。

その時の記録はこちら

で、ユーヤがAtlasの新型スノーシューに買い替えた時に、壊れたスノーシューを引き取っておいたのだ。
ハーネス(バインディング崩壊)
MSRの布デッキ(ハイパロン?とリップストップの高強度メッシュのラミネート)の、このタイプが登場した時は、随分と話題になった。

**注: 以下で行っている作業は、MSRならびに輸入代理店が認めているものではありません。修理やメンテナンスは、正式に修理作業を行うことを認められた専門家に依頼して行いましょう。**

MSRのスノーシューは、布デッキもプラデッキも、ハーネスの接続部分の幅が一緒。モデルや年式によって、デッキが回転しすぎないように止める爪の形とかは微妙に違うけれども、流用は可能。
ハーネスだけを交換
クレビスピン(取り付けピン)などのパーツも、基本的に同じもの。メーカーに尋ねたわけではないけれども、フィールドで万が一破損した場合のことを考えての配慮だと思う。パーティで予備パーツを持っておけば、流用できるわけだからね。



すっぽんピンセット
こうした細かい作業で役に立つのは、すっぽんピンセット。逆作動ピンセットとも呼ばれる。ピンセットから手を離すと、普通のやつだと持ってる物が離れちゃう。こいつは逆に、ピンセットを握って対象物を挟んだところで手を離すと固定される。

上の写真にある、リングが抜け止めになるわけだけれど、一度つけ外しするとリングが微妙に変形する。そうなると、ふとした拍子に脱落することも、「稀」ではあるものの起こりうる。

実際、自分もそれを経験しています。BCに入る時は、必ず予備のクレビスピンと、割ピンを持参すること(重要)。
ドナーとなったEVOスノーシュー
EVOスノーシューからハーネスを外してドナーとする。このEVOはヒールエレベーターがついていないので、その分「ちょっとだけ軽い」そして、使い方がシンプル。その代わり登坂がちょっと苦手。

BC初級者が同行する時とか、万が一のバックアップ用にと思って買ったやつなのだ。
ハーネスの分解
加水分解が進んだハーネスは、もうどうしようもない。リベットの頭をドリルで飛ばして外す。メタル部分だけは、何かで流用できるかもしれないので、ジャンクボックスに保管。
ブラインドリベットでなんかやってみようかなぁ
多分だけど、スノーボードバインディングつけてあげたら、ラチェットで締められるし便利なんじゃないかなぁ、重くなるけどネ

2021年4月15日木曜日

スプリットボードって正直どうよ? (2/2)

シュッッ…シュッッ…クライミングスキンが雪に擦れるリズミカルな音をさせながら、タカさんが 横に並んできた。

ブチョ、どうですか?スプリットボード?
うん、快適だよ…ちょっとキョロキョロする気もするけど(注1)
スノーシュー背負わなくていいのって、軽くて良さそうですね。
うん!なんか体が軽く感じるよ。

僕は高揚感と少しの不安を感じていた。スプリットボードを使うのは今回が2回目で、本格的なBCは今回が初めて。前回は草津シズカ山スキー場の跡地をハイクアップして、かってゲレンデだった斜面を滑っただけだしね。

今日は平標山へ登り、ヤカイ沢を滑走する計画だ。

Mt. Tairappyo, Yakaizawa area

この日のメンバーは、僕(スプリットボード)、タカさん(テレマークスキー)、ヨーイチ(ボード&スノーシュー)と、雪山宴会部ならではの乗り物博覧会(注2)。

Yohichi, snowboards with step-in binding & boots configuration. 

僕らは林道を途中までツボ足で歩き、雪のあるところで各々のハイクアップ装備をセットして登る。しばらくしたら、クライマーズライトの尾根に乗り上げる。そして、尾根伝いに山頂稜線に上り、平標山の山頂へと至るのだ。

Yohichi & Taka

rider: Taka

尾根の取り付きが急斜面になっていて、そこで僕の苦行が始まった。
ヨーイチは、スノーシューのトラクションを生かして斜面を直登していく。タカさんは斜登行とキックターンでジグを切って登っていく。スプリットの僕は…僕は…行き詰まった。

スプリットボードで直登できるのは、緩中斜面。ちょっと斜度が増したら、登行はものすごく微妙なバランスになってしまう。ペナペナのボードは、シールを斜面に効率よく押し付けてくれない。雪が硬かったり、凸凹していると、シールがグリップせずに後ろに下がってしまう。

それではと、斜登行に入ろうとするのだが、スプリットボードはエッジが食い込まない(注3)。そして、斜面に対して横向きになろうとすると、スプリットのテール側はダランと下がってしまって方向転換を妨げる。ここで僕は理解した、スキーで使える「斜登行」「階段登行」「開脚登行」「キックターン」がスプリットでは使えないことを。

で、僕は後ろ向きに5mくらいずり落ちてすっ転んだ。斜面上部では、とっくに登り終えたタカさんとヨーイチが心配そうにこちらを見ている。

このままではここを突破できないので、バックパックからクトー(スキーアイゼン)を出して、スプリットに取り付けた。これで、固いところを選んで行けば、登れるのでは無いか?

もう一度登り始めたのだが…スプリットが幅広すぎて、少しでも斜面に対して斜めになると、クトーの谷側の爪が斜面から浮いてしまって効かなくなる。そして、内側の爪だけでは、効きが不足して登行ができない。僕はまた行き詰まって、今度は10mくらい滑落した。その後はちょっと記憶が飛んでいるw

Taka at the peak of Mt. Tairappyo

どうやってこの急斜面を突破して、山頂稜線にでたのか、僕は覚えていない。多分、ツボ足で力づくで上がったのだろう。

山頂まで500mくらいのところで、僕は疲労困憊してしまった。

タカさん、ヨーイチ、俺はここで待ってるよ。
えっ?せっかくだから山頂で写真撮りましょうよ。
いや、もう平標はなんども登ってるからいいや。二人が戻って来るまでの間に、スプリットを合体させて滑る準備をしてるよ。

タカさんとヨーイチが山頂まで行って帰って来たとき、僕はスプリットボードを合体させることができずに悪戦苦闘していた。インターフェイスが氷結して、何かがどこかで邪魔をして合体ができない(注4)。

結局、何かのはずみで合体が完了して、無事に滑走して下山できたのだが…その後僕がスプリットをBCに持ち出すことは無かった。

タイトなツリー越しにヤカイ沢を見る

デメリットを整理してみる。
*エッジが効かない、スキーなら有効な登行技術が使えない
*思ったよりも軽量化できない。
スノーシューはいらなくなるけど、幅広のクライミングスキンはかさばるし、重い。クトーも必要だし、ナイフエッジみたいな場所があるなら、クランポンも必要。
*スノーシューやスキーとの行動に制約がある
スプリット+シールでは一緒のルートどりで行けない斜面がある。そこでバラけると、ガスが出たりして視界が悪化した場合、パーティがはぐれるリスクも生じる。それに、スキーのトレースは幅が狭すぎてスプリットは活用できない。特に斜面のトラバースで、スキーやスノーシューにはちょうどいい幅でもスプリットでは谷側の板を収めるスペースが不足する。こうなるとツボ足にせざるを得ない。

多分スプリットが向いている条件てのはこんな感じ。

◯穏やかな斜度で長いアプローチをスピーディーにハイクアップする。
◯スノーシューでは浮力が足りないくらいの深いラッセルがあるハイシーズンに入る。
◯パーティーが全員スプリットで、登るの大変なコンディションになったら降りるとか、コンセンサスができてる

北海道とか、東北とか、北米大陸みたいなスケール感には向いているんじゃないかな。


で、僕らが発見したスプリットボードのもっとも有効な使い道はこれ。

Yohichi & Taka

太めで長いスプリットボードは、カードゲームのテーブルに最適

クッソ、またDraw Four かよ!!!

スプリットボードの装備一式は結構なお値段。購入に踏み切る前に、僕は普通のリジッドボード+スノーシュー+クランポンで、BC経験を積むことをお勧めします。

では、皆様、ご安全に。

*最新のインターフェイスなら、欠点は改善されているかも。しかし、ボードの幅やブーツの剛性などに起因する、物理的な欠点は変わっていないと思われます*

注1 スプリットボードの滑り心地、フレックスとかトーションのバランスはノーマルボードと変わらなかった。その代わり、スキーポジションにすると、薄いベニヤ板を履いてるみたいにペランペランに柔らかい。足裏の前後20cmくらいしか、雪に密着していないように感じる。

注2 雪山宴会部は、登りも滑走もペースが同じくらいならば、乗り物に関係なく一緒に遊んでいた。これはわりと珍しかったようで、他のグループからも興味深く話しかけられた。さすがに、ソリとスノースクートのメンバーはいなかったけど…

注3 板は細ければ細いほどエッジは立てやすい。アイススケートみたいに細ければ、エッジング最強。ブーツはサイドが固ければ固いほど、エッジは立てやすい。そして、板のフレックスとトーションが固ければ、より強いエッジングができる。つまり、この要素が全部反対のスプリットは、エッジング能力ほぼ皆無…

注4 当時のバートンのスプリットインターフェイスは、氷結で分割と合体が著しく困難になることが知られていた。合体させられなければ帰ってこれないので、力づくで!ってやってレバーが折れる事案も頻発。対策部品がバートンからリリースされていた。僕はこの対策部品を手に入れて、なおかつ、凍結防止剤とシリコーンスプレーを吹きまくって、万全を期して行ったのだがダメだった。

2021年4月10日土曜日

DAY(38)BC(5) ブログネタ探しの乗鞍岳

先日の乗鞍岳本峰BCに参加できず、悔しがっていたユーヤを誘って残雪期ラストの乗鞍岳へ。スキー場は4月4日でクローズなので、リフトを使って標高を稼ぐことはできない。だから前回の行程ではリフトでスーーーっと登ったゲレンデトップまでは、ハイクアップとなる。

僕は仕事の後夜入りして車上泊、ユーヤは朝合流。深夜到着したら、駐車場も道路にもまったく雪がない…車の向きを変えてゲレンデをヘッドライトで照らしてみても、まったく雪が無いざんすw

これはまずい…www

んで、もうちょっと上の乗鞍休暇村まで偵察したけど、そこでも雪はない。最悪…車道を三本滝までハイクすればいいか、就寝してユーヤを待つ。

朝起きてみたら、意外と、ゲレンデの道路から見えないところに雪がついてた。これなら、この駐車場からダイレクトにスノーシューで登って、ここまで滑って降りてこれるかな。

右のピークが剣ヶ峰(本峰)、左側稜線手前を前回滑った

明るくなってみると、かろうじて、雪がつながっている

6時に駐車場集合予定なのに、ユーヤは5時前に到着。なんで気がついたのかって?ワクワクしすぎて眠りが浅かったんだ(子供かw)

さ、出発の準備をしよう。

ルーフトップテント+内張は氷点下でも快適

それぞれの車から荷物を出して、準備を進める。

バックパックのショルダーストラップがもうダメかも…
と、ぼやくユーヤ

ゴソゴソ
ゴソゴソ

ぶ、部長、、、
スノーシューのストラップが、1箇所ありません!

ハッツハッツハッツ!
MSRのスノーシュー用のストラップなら予備があるのだ。
売ってやろう、一本五千円だ!

ご、五千円?鬼ですね…足元見てますね?スノーシューだけに?

しかたないんで、じゃぁ、一本売ってください…

ほら、いつもニコニコ現金払いだからな!

ありがとうございます!

予備のストラップ(手前のポリ袋入りが登場)

写真右側シューの、足首を止めるストラップが無い

あっ、そーゆー問題じゃなくて…
ストラップを取り付ける金具ごと無くなってます…

ウレタン?のハーネスに、差し込むだけの金具…

てか、MSRのスノーシュートラブル多いな…それにしても、この設計は無いんじゃ?ウレタンハーネスが柔軟で、しっかり金具に密着してれば、金具の返しが効いて抜けないかも。でも、経年変化で隙間が大きくなったりしたら、結構簡単に抜けそうな気がする。

で、車の中を隅から隅まで探して、無い。多分この間、谷川岳BCの下山時に紛失したのだろうと結論。せめてシンヤみたいに、予備のクランポンでもあれば良かったんだけど、それも無い。

僕の手持ちの緊急用装備の、ステンレス針金とかインシュロックを組み合わせれば、応急処置はできそうだった。だけど、そもそも装備の不具合があるのに入山するのもどうかな?と思った。それに、ハーネスとストラップの硬化具合を見ると、シンヤのみたいに崩壊するかもしれないし。

チーーン

登山口敗退、決定〜
とりあえず、記念写真〜

本当はココに立つはずだったんですよ…

やけ酒、やると帰れなくなるので、ノンアルで乾杯。

下山して飲むために用意したゼロで乾杯

かいさーんw

そんで、ユーヤは帰宅して速攻で近所の山専門店行ったらしい、が、すでにスノーシューは展示すらなかったらしい。春だもんね。

僕もそのまま帰宅して、2ヶ月ぶりにボルダリングをして…
ブログネタもできたし、いい休日でした。


では、皆さん、装備のチェックはしっかりねw

2021年3月12日金曜日

滑落したらどうなるか、常に考える

厳冬期のBC(Backcountry)スノーボーディングは、敷居が高すぎる。春からがBCシーズンだ、そんな風に思う人も多いでしょう。何を隠そう僕もですw。
ただ、春特有のリスクもあるよなって思うんですよね… 滑落リスク

最近、クランポンとかアックス(注1)とかの装備は随分良くなりました。でも、ちょっとそれどうなの?って思うことがあるので注意喚起を。

BCは大抵の場合ハイクアップから始まります。次のような組み合わせが一般的かな。

スノーボードの場合
アルパインスノーシュー(注2) + ポール

 スキーの場合

ツボ足+ポール (キックステップが効く堅雪で、階段状のトレースがある)
クライミングスキン + ポール

しかし、下の写真のようなコンディションが待ち構えているなら、どこかのタイミングで滑落防止対策が必要です。稜線直下は風に磨かれたスケートリンクみたいになってるからです。

乗鞍岳本峰 テランテランに蒼く光るアイスバーン

言うまでもなく、滑落防止でベストなのは アックス&クランポンです
ただ、スタート時点がポール+スノーシューかシールなんで、こんな風に迷うわけです。

「クランポンが先か、アックスが先か?」

「ポールをアックスに変える」または、「スノーシューやスキーから、クランポンに変える」このどちらが安全で快適なのでしょうか?

わりとよく見るのが、まずクランポンを履くけど、手元はポールのまま。

ちょっと考えて欲しいんですが…足元が硬くなって「登りにくなるから」クランポンを履くんですよね?登るのに苦労する氷結した斜面で転倒したら…どうやって滑落停止するの??

ポールとアックスって、どちらも手に持ってますけど、役割が全然違います。

ポール = バランス保持、登高・前進の推進力を得る
アックス = バランス保持、ステップカット確保支点滑落停止

滑落停止に使えるのは、アックスです

だから、まずアックスを出すべきだし、これから進む斜面の状況次第ではアックス+クランポンに早めに変更するべきです。

で、そこで考えて欲しいんですよね。
アックス+クランポンでなければ登れないような斜面で、滑って楽しいの?

春富士の5月なら、八合か八合五尺までしか上がらないことって普通じゃないですか?その辺まで登ると、雪が硬くなりますから。山頂まで行きたいなら、6月まで待てば良いのです。
八合で早めにアックスとクランポンに変更

谷川岳BCも年ごとに人気が増えているようです。しかし、天神尾根〜茂倉岳までの稜線を例に取ると、東側は雪庇&絶壁の連続で、そちら側に落ちたら助かりません。

熊穴小屋から先の傾斜が上がるところ、肩の広場も要注意。滑落したら、西黒沢本谷の急斜面に吸い込まれて、シュルンドに突っ込むか岩壁でズタズタになっておしまいです。

意外と盲点なのが、なだらかな一ノ倉岳への取り付き点。ぱっと見、夏道通しで問題ないように見えるんです。しかし、夏道は一度右にカーブしています。夏なら一ノ倉沢を覗き見ることができる、展望台。しかし、そこで滑落すると一ノ倉沢にダイレクトダイブ…左に巻いて登るのが正解かと。

地形を良く見て、万が一スリップしても大事にならないように考える。そして、絶対にスリップできない状況なら、滑落停止できる装備を出す、自信がなければ引き返す。それやらないと、いつか死にます。

下の写真は雪山宴会部のクスミックス 。
稜線直下で、クランポンにポールじゃないか!?滑落停止は!?

ここは僕んちの裏山なんですよ BY: KUSUMIX

クスミックス のスキーポールには、滑落停止のできる、ピックが付いています。ピックは鋭利な刃物ですから、登高スタートした時はカバーが付いています。足元は山スキーにクライミングスキン。雪が硬めなら、クトー(スキーアイゼン)もつけます。

で、そろそろアックスを出すようにみんなに言おうかな、そんなタイミングで彼を見ると、ピックカバーが外されています。そして、彼と視線が合う。

彼は、周囲を良く観察して何がリスクか判断しています。そして、どんな対策が必要なのかを常に考えています。稜線に出るか止めるか、出るなら直登か巻くか、巻くならどこからか。アックス出すか、クランポン出すか。

僕は彼を見て、ピックカバーが外されていることと、その意味を理解します。「このまま直登するならアックスですね?」彼は僕の様子を観察して、彼の意図を僕が理解していることを確認します。

「右かね?」
「左がいいかな、昨夜は風が強かったんで」

短いやり取りですが…
 
「直登なら確かにアックス&クランポン。でも、稜線まで標高差50m くらいで、そこから先は岩混じりの平坦だから滑落のリスクなし。巻いて行けるならこのまま行きたい、斜度の落ちる右からはどう?」

「昨夜は北風が吹いて冷えたので、右側の北面は氷結してますよ。むしろ左から巻いたほうが、吹き溜りになってるので、万一滑落してもクッションがありますよ。」

こんなふうな確認をしています。

この時は、私とクスミックスがちょっと先行して、他のメンバーが追いつくのを待ちながらコンディションのチェックをしていたのでした。で、南側から巻いて、風裏になるドロップインポイントに着き、無事にBCを楽しんで帰りました。

皆様もどうぞご安全に。

富士山のお釜(噴火口)を滑る、この登り返しがキツイ

(注1)山屋さんが言うピッケルとアイゼン、BCスノーボードでは、アックスとクランポンと呼ぶことが最近増えているようです。どっちでもいいんですが、ネ

(注2)スキーブーツなら、キックステップが使えますが、スノーボードブーツはあまりにも無防備。なので、何かしらの滑り止めをつけないと行動が困難です、特に春雪では。中途半端なクランポンや平地用のスノーシューを買うぐらいなら、山岳対応タイプのスノーシューを選んでください。10本以上の、前爪がある本格的なクランポンは必要ですかって?そんな質問をするあなたは、シビアなコンディションで行動する資格が無いと思います。そんな状況になったら引き返すこと。

2021年3月27日土曜日

DAY34 BC3乗鞍岳本峰より南東斜面

 タクジ、Shinya、KASSEに声かけてもらって乗鞍岳BC

山頂の祠の前で Top of Mt. Norikura

現地集合なのだけど、朝出発では寝坊する自信ありありなので、前夜入りして2階で就寝。ワクワクしすぎて1時間くらい晩酌しながらウダウダ(子供かw)

今シーズン初かも?

しっかり冷え込んで、良く晴れた朝。みんな8時くらい到着の予定なのに、6時に起きちゃった。

朝ごはん

とりあえずリフト3本乗ってゲレンデトップに向かう。
後方がこれからハイクする乗鞍岳

ところが、ハイク開始しようとしたところで、Shinyaのスノーシューが崩壊。
ええっ?っと声がしたので見てみると…

ハーネス部分が加水分解でこなごなに砕けてしまった。使用頻度は低いけど、購入後結構年数たつとダメみたい。
これではどうしようもない。

でも、まぁ、入山するまえで良かったね。
んで、Shinyaだけ車に戻って丁度積んであったクランポンを持ってきて再スタート。

例の場所

位ヶ原下部の斜面を観察しながら進む。
良く晴れて暑いくらい

今日は気温が上がって雪面もゆるんできているので、本峰に登頂してからカール状を落とすことに決定。残雪期登山で本峰には登頂したことあるけど、BCは初めてだな。だって、いつもガリンガリンのアイスバーンなんだもんね。

肩の小屋に向かう

肩から本峰までは、アックス+クランポンならトラバースが早い。でも、僕はスノーボードブーツ+スノーシュー。もし、スノーシューにトラブルが起きたら、雪と氷の斜面ではどうすることもできない。キックステップもできないからね。なので、岩交じりの斜面を選んで登る。ここなら、万一の場合でも、岩と雪のくぼみの平らなところに荷物をおろせる。それに岩の上ならスノーボードブーツのラバーソールもグリップするので、ある程度安全なところまで移動できるしね。



山頂の祠が見えてきた。今シーズンはやけに雪が少ない気がする。


御嶽山が綺麗に見えた。これ以外にも、槍穂焼岳、常念蝶、黒部五郎や水晶、甲斐駒千丈など、素晴らしいパノラマだった。


滑走距離とかは大したことないけど、今年初めての3,000m超えが地味に嬉しい。標高2,800mを超えてからの200m は、それまでとはちょっと違う気がする。


無事に下山して思うけど、やっぱりBCは楽しい。仲間と馬鹿な話しながら、笑いながら、息を切らしながらハイクアップして…ガリガリの洗濯板みたいな斜面を滑るのでも、やっぱりBCは楽しい。