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2021年4月15日木曜日

スプリットボードって正直どうよ? (2/2)

シュッッ…シュッッ…クライミングスキンが雪に擦れるリズミカルな音をさせながら、タカさんが 横に並んできた。

ブチョ、どうですか?スプリットボード?
うん、快適だよ…ちょっとキョロキョロする気もするけど(注1)
スノーシュー背負わなくていいのって、軽くて良さそうですね。
うん!なんか体が軽く感じるよ。

僕は高揚感と少しの不安を感じていた。スプリットボードを使うのは今回が2回目で、本格的なBCは今回が初めて。前回は草津シズカ山スキー場の跡地をハイクアップして、かってゲレンデだった斜面を滑っただけだしね。

今日は平標山へ登り、ヤカイ沢を滑走する計画だ。

Mt. Tairappyo, Yakaizawa area

この日のメンバーは、僕(スプリットボード)、タカさん(テレマークスキー)、ヨーイチ(ボード&スノーシュー)と、雪山宴会部ならではの乗り物博覧会(注2)。

Yohichi, snowboards with step-in binding & boots configuration. 

僕らは林道を途中までツボ足で歩き、雪のあるところで各々のハイクアップ装備をセットして登る。しばらくしたら、クライマーズライトの尾根に乗り上げる。そして、尾根伝いに山頂稜線に上り、平標山の山頂へと至るのだ。

Yohichi & Taka

rider: Taka

尾根の取り付きが急斜面になっていて、そこで僕の苦行が始まった。
ヨーイチは、スノーシューのトラクションを生かして斜面を直登していく。タカさんは斜登行とキックターンでジグを切って登っていく。スプリットの僕は…僕は…行き詰まった。

スプリットボードで直登できるのは、緩中斜面。ちょっと斜度が増したら、登行はものすごく微妙なバランスになってしまう。ペナペナのボードは、シールを斜面に効率よく押し付けてくれない。雪が硬かったり、凸凹していると、シールがグリップせずに後ろに下がってしまう。

それではと、斜登行に入ろうとするのだが、スプリットボードはエッジが食い込まない(注3)。そして、斜面に対して横向きになろうとすると、スプリットのテール側はダランと下がってしまって方向転換を妨げる。ここで僕は理解した、スキーで使える「斜登行」「階段登行」「開脚登行」「キックターン」がスプリットでは使えないことを。

で、僕は後ろ向きに5mくらいずり落ちてすっ転んだ。斜面上部では、とっくに登り終えたタカさんとヨーイチが心配そうにこちらを見ている。

このままではここを突破できないので、バックパックからクトー(スキーアイゼン)を出して、スプリットに取り付けた。これで、固いところを選んで行けば、登れるのでは無いか?

もう一度登り始めたのだが…スプリットが幅広すぎて、少しでも斜面に対して斜めになると、クトーの谷側の爪が斜面から浮いてしまって効かなくなる。そして、内側の爪だけでは、効きが不足して登行ができない。僕はまた行き詰まって、今度は10mくらい滑落した。その後はちょっと記憶が飛んでいるw

Taka at the peak of Mt. Tairappyo

どうやってこの急斜面を突破して、山頂稜線にでたのか、僕は覚えていない。多分、ツボ足で力づくで上がったのだろう。

山頂まで500mくらいのところで、僕は疲労困憊してしまった。

タカさん、ヨーイチ、俺はここで待ってるよ。
えっ?せっかくだから山頂で写真撮りましょうよ。
いや、もう平標はなんども登ってるからいいや。二人が戻って来るまでの間に、スプリットを合体させて滑る準備をしてるよ。

タカさんとヨーイチが山頂まで行って帰って来たとき、僕はスプリットボードを合体させることができずに悪戦苦闘していた。インターフェイスが氷結して、何かがどこかで邪魔をして合体ができない(注4)。

結局、何かのはずみで合体が完了して、無事に滑走して下山できたのだが…その後僕がスプリットをBCに持ち出すことは無かった。

タイトなツリー越しにヤカイ沢を見る

デメリットを整理してみる。
*エッジが効かない、スキーなら有効な登行技術が使えない
*思ったよりも軽量化できない。
スノーシューはいらなくなるけど、幅広のクライミングスキンはかさばるし、重い。クトーも必要だし、ナイフエッジみたいな場所があるなら、クランポンも必要。
*スノーシューやスキーとの行動に制約がある
スプリット+シールでは一緒のルートどりで行けない斜面がある。そこでバラけると、ガスが出たりして視界が悪化した場合、パーティがはぐれるリスクも生じる。それに、スキーのトレースは幅が狭すぎてスプリットは活用できない。特に斜面のトラバースで、スキーやスノーシューにはちょうどいい幅でもスプリットでは谷側の板を収めるスペースが不足する。こうなるとツボ足にせざるを得ない。

多分スプリットが向いている条件てのはこんな感じ。

◯穏やかな斜度で長いアプローチをスピーディーにハイクアップする。
◯スノーシューでは浮力が足りないくらいの深いラッセルがあるハイシーズンに入る。
◯パーティーが全員スプリットで、登るの大変なコンディションになったら降りるとか、コンセンサスができてる

北海道とか、東北とか、北米大陸みたいなスケール感には向いているんじゃないかな。


で、僕らが発見したスプリットボードのもっとも有効な使い道はこれ。

Yohichi & Taka

太めで長いスプリットボードは、カードゲームのテーブルに最適

クッソ、またDraw Four かよ!!!

スプリットボードの装備一式は結構なお値段。購入に踏み切る前に、僕は普通のリジッドボード+スノーシュー+クランポンで、BC経験を積むことをお勧めします。

では、皆様、ご安全に。

*最新のインターフェイスなら、欠点は改善されているかも。しかし、ボードの幅やブーツの剛性などに起因する、物理的な欠点は変わっていないと思われます*

注1 スプリットボードの滑り心地、フレックスとかトーションのバランスはノーマルボードと変わらなかった。その代わり、スキーポジションにすると、薄いベニヤ板を履いてるみたいにペランペランに柔らかい。足裏の前後20cmくらいしか、雪に密着していないように感じる。

注2 雪山宴会部は、登りも滑走もペースが同じくらいならば、乗り物に関係なく一緒に遊んでいた。これはわりと珍しかったようで、他のグループからも興味深く話しかけられた。さすがに、ソリとスノースクートのメンバーはいなかったけど…

注3 板は細ければ細いほどエッジは立てやすい。アイススケートみたいに細ければ、エッジング最強。ブーツはサイドが固ければ固いほど、エッジは立てやすい。そして、板のフレックスとトーションが固ければ、より強いエッジングができる。つまり、この要素が全部反対のスプリットは、エッジング能力ほぼ皆無…

注4 当時のバートンのスプリットインターフェイスは、氷結で分割と合体が著しく困難になることが知られていた。合体させられなければ帰ってこれないので、力づくで!ってやってレバーが折れる事案も頻発。対策部品がバートンからリリースされていた。僕はこの対策部品を手に入れて、なおかつ、凍結防止剤とシリコーンスプレーを吹きまくって、万全を期して行ったのだがダメだった。

2021年4月14日水曜日

スプリットボードって正直どうよ? (1/2)

僕はBurtonのCustom Split 166を一時期持っていた。

結局、BCでは2回だけしか使わなかった。というより、僕が遊ぶフィールドには向かないという結論になった。そして、スプリットとしてではなく、単にソリッドボードとして乗っていた。幅が太くてドラグしにくいので、シャバ雪の時だけ履く。そして、最近になって処分した。

スプリットのメリットはいくつかある。ハイクアップの時に、ボードを背中に背負う必要が無いので、風が強い時にあおられることがない。


with Yohichi, Mt. Tairappyo 



スキーもそうだけど、雪面をスライドさせて足を運べるので歩行が楽だ。スノーシューは足裏のスパイクを引きずらないように、軽く持ち上げなければならないから。

ゆるやかな斜面をストック滑走で下れることも、コースによっては大きなメリットになる。例えば、谷川岳芝倉沢からの下山で、湯檜曾川沿をダラダラと降るような時。はたまた、草津芳ヶ平からの下山とかね。雪が柔らかいと、スノーボード+ストック滑走だと推進力が足りずにスタックする。そうなると、結局ボードを脱いで、スノーシューでトボトボと歩くことになる。スプリットならスキーポジションで、歩行を組み合わせて降りることができる。

スプリットモード

ファットスキーよりも面積があるので、浮力は圧倒的だ。雪が柔らかくて深い時のラッセル登坂は、無敵なんじゃなかろうか。荷物を大量に背負ってハイクするような時も、スキーモードで歩けるのは楽だろう。


Rider: Shinya


幅が広いので沈まない

メリットは以上です…

デメリットもある。というか、グンマー國エリアではデメリットしか無いって言ったらいいのかも。その辺のところは…

つづく

2021年4月13日火曜日

便利を選ぶか、信頼性を選ぶか

BCスノーボードのクランポンで代表的なものは、GrivelのG10 ワイドとか、幅広のブーツにも合うタイプ(注1)。で、ソフトブーツにフィットするテープ締めになる。G10は、グリベルの爪10本という意味で、2本の爪はつま先より前に飛び出している。この前爪は硬くしまった雪の壁を突破するためにある。

春のザラメ雪をのんびりとハイクアップするコンディションなら、6本爪のアイゼンを選ぶこともある。これは、トラクションはスノーシューと同じくらいで、ハードな状況にはまったく向かないけど、トレースがきちんとあるような場合にはなかなか快適。

そして、6本爪になると、ハーネスは従来型のテープ締めに加えて、ワンタッチ型の物も選択肢に入って来る。で、そもそも6本爪はハードなところで使わないという前提だから、どうでも良いと言えばいいのだが、ワンタッチ型には隠れた危険性があるよという話(注2)。


これが、クィックフィット式ハーネスを備えた6本爪のクランポン。僕はこれを5〜6シーズンくらい前に買ったのだが、あまり痛んではいない。というのも雪が柔らかければスノーシューだし、固くしまった急斜面が行程上に1箇所でもあれば、前爪付きのクランポンにする。つまり、6本を出すのは雪が安定した残雪期で、登山道の一部にだけ雪がある、そんなときにしか使わないからだ。

岩や土の上でも履いたまま歩くので、スノープレートは傷んでいる

クィックフィットのクランポンには、ひとつ欠点がある。つま先側のストラップとバックルが、ブーツの横に出っ張っている。雪の上を歩くと、ストラップとバックルが上に押し上げられて、緩む方向の力を加えるのだ。ストラップの余った部分を切れば少しはましになるのだが、あまり短く切りすぎると装着の時に手間取る。

このタイプのクランポンはボルト2本を緩めることで幅を調整できる。登山靴とスノーボードブーツで共用したいというユーザーにはありがたい機能なのだが、登山靴とブーツはボリュームが違う。登山靴に合わせて着るとブーツがはまらなくなるし、ブーツに合わせると登山靴では結局あまってしまう。

ストラップはまだしも、バックルの位置が低くてブーツよりもはみ出すと、岩にこすったりぶつけたりして、破損のリスクも当然高くなってしまう。

バックルは岩に擦れて白く変色している

僕の使っているMベルのクランポンは、よく考えられている。バックルを締め付ける黒いレバーは一本だが、バックルを緩める赤色のレバーは左右2分割式。これを「両方同時に」引かないと、緩むことはない。

左右が独立して動くので、片方のレバーが異物で持ち上がっても解放しない

だが、それはあくまでも1〜2時間なら緩みにくいということ。ガシガシ半日くらい、踏み抜きやらキックステップやらザラメラッセルやらを繰り返しているといつの間にか緩んでくる(注3)。さっき言った通り、余ったストラップが雪を集めて来て、バックルを押し上げ、その下に雪を押し込んで来るからなのだ。

で、僕は、そもそもバックルが甲の上にあればいいんじゃないかな?そんな風に考えて加工してみた(注4)。


この位置なら、雪がバックルの下に押し入ることも減る

以前使っていたバックパックのチェストストラップ
もともとのリベットカシメは3.5mmのドリルでセンターを揉むと取れる

ナイロンでできたストラップを切って、クランポン本体の取り付けポイントを通して2つ折りにする。ストラップを切った後は半田ごてで溶かして始末し、リベットが通る4mmの穴もコテで開ける。これで、バックルはもともとの取り付け位置から3cmくらい上に移動した。これで多分、今までよりは使いやすくなると思う。

この投稿で僕が言いたいことは、クイックフィットがダメということではない。そもそも、簡易的に使用する物としては、とてもよくできているし、数時間の使用ならトラブルこともまず無いだろう。もちろん、厳しいコンディションに差し掛かったら、念のためにバックルが締まっているか確認するべきだし、帰宅したらプラスチックパーツの消耗具合ももちろんチェックすること。

僕は、このクランポンがダメになったら、次はテープ締めを選ぼうかなって考えている。不器用で面倒臭くて、華やかさに欠け、でも、絶対の信頼が置ける。そんな奴のほうが、僕は好きなんだよね、道具だけじゃなくて、交友関係もそんな感じがする。

注1 クランポンと言うと、ハードブーツとか重登山靴のコバに、ワンタッチで付けられるタイプのものをイメージする。僕にとって、ワンタッチでないテープ締めのは、アイゼンと呼ぶほうがしっくりくるのだが… 

注2 ここでは、Mベルのクランポンを例にとっているが、Mベルに問題があると言うわけではない。というよりも、ほとんどのワンタッチ(クィックフィット)型の6本爪クランポンに共通する問題であることに留意してください。

注3 8本爪以下は「簡易アイゼン」の扱いなので、そもそも半日とかガンガン使うってのはおかしいと言われたらそれはその通りです。

注4 どんな製品でも、加工・改造したら、すべての結果はあなたが負うことになります。軽はずみな改造は慎むこと。

乗鞍岳BCの動画をタクジがアップしてくれました。

ドローン使い

最高! 持つべきモノは、ドローン使いの友達。

このリンク送ってくれたので、僕はすぐに再生してみた。家に一人なのに、「あっ!これ俺!俺が滑ってる!」って、声に出ちゃうのはなんでなんだろうね?

乗鞍岳BC(Youtube)

2021年4月12日月曜日

「雪洞」と書いて "Heaven" と読み、「芳ヶ平」と書いて "a promised land" と読む

今日は丸沼高原スキー場で滑ろうと思っていた。しかし、昨日の早朝、僕が寝返りうったのに驚いて、足元で寝ていたHouse Dogのマメ君がベッドから落下…

彼は12歳の高齢犬で、トイプードルにありがちだけど、脚の関節が弱い。で、右股関節脱臼…初めての脱臼はかなり痛かったようだ、ごめんね。

今はこうやって、冷静に書けるけど、かなり焦った。負担のかからないポジショニングとらせて、落ち着かせて…動物病院の開院前にスタンバイ。とにかく早く診断してもらって、整復してもらうのが重要。

僕がいままで散々捻挫とか、靭帯とか、脱臼(僕の場合は肩だったけど)とか、怪我した経験を生かすことができた。

先生がマメをレントゲン室に連れてって、一回キャンという声が聞こえた。このとき、関節が良く写るように、足を少し引いて伸ばしたら、関節が嵌まって整復完了…あー、良かった。

んで、1週間の安静が確定診断。

そんなこんなで、昨日の僕は午前中半休取った。奥様は今日はお休みだけど、マメの面倒をみながら車を運転してって考えたら、一人では無理だしね。んで今日の月曜日は僕たち夫婦は仕事お休みの日。僕は在宅休日で、奥様は外出休日とすることに決定。マメを一人で置いておくのも可哀想だし、奥様は僕と違って、この数ヶ月間全然外出できていないから。

マメはこれから1週間安静。旅行用のサークルで過ごすことになる。Dog Year は人間の7年て言われてるので、1週間の安静は人間なら7週間、ほぼ2ヶ月。もし僕がマメだったら、2ヶ月間安静って言われたら、どんなところで過ごしたいか?

ビーチ?いいね!

雪洞…かな

ま、怪我で安静って状況なら、自分では掘れないんで、誰かに頼んで掘ってもらおう。

diggers are gatekeepers to a heaven

中は広めで、背中を伸ばして座れるほうがいいね。
鍋料理ができるように、通気口も2つくらい欲しい。
壁にはキャンドルランタンを置いて明かりが取れるようなくぼみも欲しい。

湿気は確かに問題だが、問題の無い場所なんてない、たとえそこが天国でも

コロナが収束していれば、友達を呼んだりもしたい。
来たい人は来たいときに来る。滑りたいときに滑る。そして、帰りたいときに帰る。

ちょっと滑ってきますね Rider: Aokki

天国で過ごすことの問題点は少ない(だから「天国」なわけだけど)。あえて言えば、下々の生活というか、下界というか、周囲の環境がよくわからないこと。雪洞にいると、昼でも暗いし、周囲の音は雪に吸収されてほとんど聞こえない(注1)

ふと気がついて外を見たら、こんな絶好の天気だったりして。

Mt. Kusatsu Shirane

そんな天国だったら、2ヶ月間居ても良いかも。
しかも、雪洞を掘る場所が芳ヶ平なら、お隣のヒュッテで生ビールを飲めるし(注2)。

問題が無いわけではない…

まず、マメがここで1週間過ごせって言われても、楽しくないだろうね。

マメのことはさておき、僕がここで7週間過ごせって言われたとして…

怪我しててビール飲めないってなったら、天国感半減だろうね。
しかも、怪我してるってことは滑りに行けないってこと。
なんで、僕、ここにいるのって感じがするのかも。

そして、一番大きい問題というのは…

天国への門は、いつだって狭くて、通り抜けるのが大変ということ。
特にけが人には。

出入り口から暖気が抜けないように、開口部は低い位置に小さく設ける

ここを、お●っこしたくなるたんびに出て、トイレ行って、帰って来て、ニジリ入る。

うーん、まぁ、その、天国というのは、「場所」という概念ではないのかもしれない。健康で好きなことができる。嫌なことをしなくていい。というかそもそも嫌なことが少ないって「状態」を指すのかもしれないね。

なら、今、僕はきっと天国にいるに違いない。

ありがとう


注1 外が猛吹雪でも、雪洞の中はシーンとしていて静か。だが、吹雪に気がつかないと、入り口が雪で埋もれて塞がって慌てる場合もある。また、天候が急速に回復して、絶好のBC日和になっているのに気がつかずに昼寝をしていたなんてことも。

注2 芳ヶ平ヒュッテは通年営業。で、その脇には指定テント泊エリアが設定してある。僕らは、そのエリアをちょっとだけ外れた場所に雪洞を掘らせてもらったけど、それはヒュッテの好意によるものであり、今もそれができるかどうかはわからない。当たり前だけど、所定のテント泊料金と、トイレ使用料はちゃんと払うこと。そして、生ビールや、ランチパスタ(これが美味しい)はどんどん食べて、美味しいコーヒーもジャンジャン飲んでパラダイス感をブーストしてください。

2021年4月11日日曜日

MSRスノーシューのトラブル事例と対策

 MSRのスノーシューを使っているBCスノーボーダーは多い。特に今から15年くらい前に発売された、ライトニングだっけ?アルミの枠に、布張りのデッキで軽量化されたモデル。

これが爆発的に売れた。

そして、MSRスノーシューのハーネスは、寿命が10年と言われている。だから、爆発的に売れたこのライトニングが、今どんどんトラブルメーカーと化している(個人の感想です)。

ハーネスの崩壊(加水分解)

シンヤーが、スノーシューをセットしようとストラップを引っ張ったらハーネスが粉々に崩壊。わずかな変色と硬化はあったけど、自宅でチェックした時は全然問題あるようには見えなかったらしい。

ガバガバというか、もうどうしようもない

このタイプのウレタン?ハーネスの加水分解は突然来る

シンヤの話によると、メーカーと輸入代理店の見解では、「ストラップの寿命がきたら、スノーシューそのものの寿命が来たと考えて、買い換えてください」だそうです。で、シンヤ、実は、この時のBC直前に、ストラップが切れて交換したんだそうです。使用年数はちょうど10年…


ストラップ固定金具の脱落&紛失

ユーヤのスノーシュー。足の甲を留めるストラップは、2つのアルミ金具でハーネスとつながっている。この金具には、抜けないように返しがついているのだが、ハーネスの穴に先を差し込むだけでつながっている。

写真右のストラップが紛失、予備のストラップがあってもどうしようもない。

この差し込むだけって構造は危ない気がする

新しいハーネスは柔軟で、金具を差し込む穴もピッタリと隙間が無いので、返しが引っかかるので抜けにくい(でも状況によっては抜けるヨ)。ストラップを引いて締め付けると、この金具がハーネスを引っ張ることになる。ってことは、このはめ込んでいる穴を引っ張って広げる動きがずっと続く。で、経年変化でハーネスが硬化していくと、どんどん抜けやすくなるのではないかと思うよ(個人の感想です)。ちなみに、この時点で使用年数は8〜9年くらい。


ヒールストラップのテンション不足でいきなり外れる

MSR(だけでなく多くのブランドも含めて)スノーシューは、つま先と甲のストラップで土踏まずから前を固定する。そして、ヒールストラップでかかとを斜め上から押さえつけて、しっかりと固定する。

ヒールストラップは結構しっかり締め付ける。テンションがかかると、ブーツのかかとは丸みがあるので、ストラップの位置が上にズレて、斜め上からかかとを押さえつけてくれるのだ。歩行を続けているに従い、つま先と甲のストラップがブーツと馴染んで、足全体がほんの少し(5mmくらいかな?)前に押し出される。そうすると、ヒールストラップのテンションが緩んで、位置が下がり、気がつくと外れるってことがある。

これが深雪とか、固くしまった斜面で起こると結構たいへんな騒ぎになる。

テンションかけて、いい位置にかかったヒールストラップ

旧来型は写真左のしゅっと尖った形、右が現行型

で、力を入れてギュって締めなければいけないので、現行型は握りやすいような形状の末端になっている。でも、一部のモデルでは、理由はわからないが、旧来型のままで販売されている。雪が付いた手袋でこれを締めるのは結構大変。

細引きを通して固定する

指のかかりが良くなってテンションを上げやすい

旧来型のストラップは、折り返しを作ってやると、指がかけやすくなるので試してみてください。


ストラップの紛失

僕が好んで使っているスノーシューのハーネスは、金具がリベットでガッチリ固定してある。リベットのカシメは、金具を「差し込むだけ」よりも信頼性が高い。これで金具紛失のリスクは減るけど、ストラップは単に金具に差し込んであるだけなのだ。で、ゴムと金属って濡れると滑りが良くなるので、フィールドでのストラップ紛失の恐れは解消されない。

それと…僕は加水分解の進行を遅らせるためと、凍結防止のためにシリコーンスプレーを吹いている。ツルツルですw

滑走中は、スノーシューはバックパックに固定しいている。スノーシューのストラップがどうなってるかなんて、自分では見えない。で、気がついたら無くなってたって時のために、いつでも必ず数本の予備は持つ。そして、僕は念のために抜け留めの固定もしている。

インシュロックで留めて、余りはキレイに切る


クレビスピンの紛失

MSRのスノーシューは、デッキとハーネスを二本のクレビスピンで固定している。スプリングリングが、ピンの先端にある穴を通っていて、抜け留めの役割を果たしている。このリングが何かの弾みで抜けてしまうと、クレビスピンを紛失してしまう。これは僕も実際に経験があるのだが、積雪量の多い時期だったり、ツアーの最後に長いハイクがあるような場合には本当に困る。

なので、僕はそんな時のために、ステンレスの先割れピンをレスキューセットに数本入れてある。それに加えて、ストラップの穴に予備のクレビスピンをセットしてある。

余っている穴にクレビスピンをセット

随分とトラブルが多いみたいだけど、だったら他のメーカーのスノーシューにすればいいんじゃない?だって?

僕はMSRのスノーシューを20年以上前から使っている。最初のはデナリアセントというモデルで、デッキは一体整形のエンジニアリングプラスチック製。で、そのモデルのハーネスを入れ替えたりしながら15年以上使って、割れのリスクを考えて最近買い換えた。買い換えたモデルもプラスチックデッキ。プラデッキは古臭いって言われることもあるけれど、僕はこれに絶対の信頼を置いている。

ハーネスの金具はリベットのカシメ
デッキはエンジニアリングプラスチック
裏面には、横滑り防止のレール状スパイク

この3つを満たすモデルがあるかぎり、僕はMSRのスノーシューを使い続けるだろう。

みつまたロープウェイ1便を待つ、タカヤンの前が僕のギア

なぜ、そんなにプラデッキのMSRスノーシューが良いのかって?
それを話し始めたら、収集がつかなくなるから、今日はこの辺で。

では皆様、どうぞご安全に。

2021年4月10日土曜日

DAY(38)BC(5) ブログネタ探しの乗鞍岳

先日の乗鞍岳本峰BCに参加できず、悔しがっていたユーヤを誘って残雪期ラストの乗鞍岳へ。スキー場は4月4日でクローズなので、リフトを使って標高を稼ぐことはできない。だから前回の行程ではリフトでスーーーっと登ったゲレンデトップまでは、ハイクアップとなる。

僕は仕事の後夜入りして車上泊、ユーヤは朝合流。深夜到着したら、駐車場も道路にもまったく雪がない…車の向きを変えてゲレンデをヘッドライトで照らしてみても、まったく雪が無いざんすw

これはまずい…www

んで、もうちょっと上の乗鞍休暇村まで偵察したけど、そこでも雪はない。最悪…車道を三本滝までハイクすればいいか、就寝してユーヤを待つ。

朝起きてみたら、意外と、ゲレンデの道路から見えないところに雪がついてた。これなら、この駐車場からダイレクトにスノーシューで登って、ここまで滑って降りてこれるかな。

右のピークが剣ヶ峰(本峰)、左側稜線手前を前回滑った

明るくなってみると、かろうじて、雪がつながっている

6時に駐車場集合予定なのに、ユーヤは5時前に到着。なんで気がついたのかって?ワクワクしすぎて眠りが浅かったんだ(子供かw)

さ、出発の準備をしよう。

ルーフトップテント+内張は氷点下でも快適

それぞれの車から荷物を出して、準備を進める。

バックパックのショルダーストラップがもうダメかも…
と、ぼやくユーヤ

ゴソゴソ
ゴソゴソ

ぶ、部長、、、
スノーシューのストラップが、1箇所ありません!

ハッツハッツハッツ!
MSRのスノーシュー用のストラップなら予備があるのだ。
売ってやろう、一本五千円だ!

ご、五千円?鬼ですね…足元見てますね?スノーシューだけに?

しかたないんで、じゃぁ、一本売ってください…

ほら、いつもニコニコ現金払いだからな!

ありがとうございます!

予備のストラップ(手前のポリ袋入りが登場)

写真右側シューの、足首を止めるストラップが無い

あっ、そーゆー問題じゃなくて…
ストラップを取り付ける金具ごと無くなってます…

ウレタン?のハーネスに、差し込むだけの金具…

てか、MSRのスノーシュートラブル多いな…それにしても、この設計は無いんじゃ?ウレタンハーネスが柔軟で、しっかり金具に密着してれば、金具の返しが効いて抜けないかも。でも、経年変化で隙間が大きくなったりしたら、結構簡単に抜けそうな気がする。

で、車の中を隅から隅まで探して、無い。多分この間、谷川岳BCの下山時に紛失したのだろうと結論。せめてシンヤみたいに、予備のクランポンでもあれば良かったんだけど、それも無い。

僕の手持ちの緊急用装備の、ステンレス針金とかインシュロックを組み合わせれば、応急処置はできそうだった。だけど、そもそも装備の不具合があるのに入山するのもどうかな?と思った。それに、ハーネスとストラップの硬化具合を見ると、シンヤのみたいに崩壊するかもしれないし。

チーーン

登山口敗退、決定〜
とりあえず、記念写真〜

本当はココに立つはずだったんですよ…

やけ酒、やると帰れなくなるので、ノンアルで乾杯。

下山して飲むために用意したゼロで乾杯

かいさーんw

そんで、ユーヤは帰宅して速攻で近所の山専門店行ったらしい、が、すでにスノーシューは展示すらなかったらしい。春だもんね。

僕もそのまま帰宅して、2ヶ月ぶりにボルダリングをして…
ブログネタもできたし、いい休日でした。


では、皆さん、装備のチェックはしっかりねw