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2021年9月30日木曜日

バイクメンテナンス トルク管理(その1)

この間、SNSで友人のポスト見ていてふと思った。

スポーツバイクのメンテナンスで、(締結)トルク管理が必要ってこと、あんまり知られていないのだろうか?

スポーツバイクを持っていると、そこここのボルトに、6Nm とか 7Nmとか マークがあることに気がつくだろう。
矢印の先が指定トルク値(注1)

これが、(最大)指定トルクのマークだ。単位はニュートンメートル。

「ネジとかボルトは、直径と素材によって締め付けトルクが設定されている」のだ。これを守らないと、危険だし、バイクを壊してしまうこともある。

いわゆるママチャリは話が違う。ママチャリは、誰がどんな風に乗るのかよくわからない。適切なメンテナンスをされるか、そもそも、手入れすらされないかもしれない。だから、雑に使われることを前提に、余裕を持たせた強度と耐久性を持たせてある。

ボルトも、基本的に「ギュッと」締めるくらいの感覚で大丈夫。なぜなら、多少強く締め付けても大丈夫なくらいの強度を持たせてあるから。その代わり…ママチャリは重い。

スポーツバイク(自転車)は話が違う。性能を高めるために、余裕を削り、その代わりサイクリストがメンテナンスを学んで、適切に管理することが求められる。

言ってみれば、乗りっぱなしでいいカローラなのか。常時気配りとメンテナンスが必要な、イタリアのスポーツカーなのかという話。

で、カーボンフレームとカーボンフォークのレーシングバイクは、言ってみればレーシングカー。一定距離を走るごとにピットインして、プロショップでオーバーホールする。もしくは、自分で丁寧にチェックしなければ、本来の性能は発揮できないどころか、危険ですらある。

前に紹介したメンテナンスマニュアルの appendix を見てみよう。
僕のバイブル
メンテナンスマニュアルで、どれだけのページが割かれているかで、その項目の重要度がある程度はわかる。
435-446ページがトルク一覧表

トルク一覧表は、10ページ以上が割かれている。それぐらいに、重要な情報であるということ。

一番最初はこれ「鋼鉄製のボルトを、アルミニウム製の部品にねじ止めするときの締結トルク」一覧表。
M(x) bolt は、直径(x)mmのボルトと言う意味 

厳密なことを言うと、ボルトもアルミニウムもいろいろな素材がある。だけど、自転車で使われるボルトはほとんどの場合はハイテンションスチール(鋼鉄)かステンレス。アルミも6xxx番台とか、7xxx番台とかの、昔風に言うとジュラルミン的な高強度合金なので、まぁ、気にしないでもいい。

くどいけれど、これはあくまでも「最大値」なので、どんな時でもこの強さで締めろというわけでは無い。

さて…ここまで読んで、疑問に思わないだろうか?

どうやったら「俺が今、このボルトを締め付けている力」がわかるのだろうか?

その、締め付けている強さがわかる工具を「トルクレンチ」と呼ぶ。本格的な物は、あらかじめ締め付ける目標トルクをセットしておく。

例えば、10Nm とかでセットして、ハンドルの指定の部分を持って、「反動をつけずに」じわっと押し込むと、「カチッ」とか、「コクン」とか、音と手応えで10Nmに達したことを教えてくれる。最近のモデルでは、デジタル表示でトルクを教えてくれて、指定数値になると電子音が鳴るようなものもある。

こうしたツールを適切に使用することで、作業にムラがなくなって、安全になる。

「このボルトをしっかり締めなさい」

という説明では、客観的な指標にならない。

「長さ20cmのハンドルの端を、4本の指で掴み、肘から先の筋肉で締めなさい」

これなら、ある程度の目安にはなるだろう。だが、人によって結果は異なる。

「20Nmで締めなさい」

これなら、トルクレンチを使えば、誰がやっても同じ結果になる。

だが、正直言って、一般的なサイクリストには、本格的なトルクレンチはあまりお勧めしない(注2)。

重整備はプロショップに任せるべきだと、僕は思う。

ただ、日常的に必要なメンテナンスとか、ポジション出し、ハンドルやサドルの高さや角度の修正くらいは、自分でやれるようになったほうがいい。

そして、こうした細かな部分のボルトは非常に繊細なものが多く、

締めすぎると壊れる

だから、小さいトルクの範囲で、目安が分かるものを一つ持っておけばいいだろう。例えばこんなの。
TOPEAK トピークのトルクレンチ
これは、締め付けると、レンチのシャフトがねじれる。そして、黄色のプラスチックパーツもそれにつれて動いていく。そして、どれだけよじれているかというのを、読み取りの針で確認することで、締め付けトルクがリアルタイムで理解できるのだ。

こうした簡易ツールは、往々にしてビット(レンチの先につけるパーツ)の精度が甘くて、なめやすかったりするのだけれど、これは非常に優秀。3~6mm のヘックスと、トルクスのビットが揃っていて、精度も硬度も非常に優れていて使いやすい。何よりも、手ごたえと、トルクをリアルタイムで確認できるのが良い。

で、こうしたツールを使って、マニュアルに出ている最大トルクを超えないように組み付けをしていけば良い。

サービスマニュアルが手に入るならば、そこを見れば適正トルクは書いてある。例に挙げたこのメンテナンスマニュアルにも、主だった物は記載がある。
サイドプル(リム)ブレーキ

このテーブルの下半分、1行目が非常に興味深い。

Caliper fixing bolt onto Trek, LeMond, or Klein carbon seatstays.          Min 6 Max 7 (Nm)

「後輪用のブレーキキャリパー本体を、TREK 他の、カーボンフレームのシートステイに取り付ける場合は、最低6Nm 最大7Nm のトルクで締め付けること」

カーボンフレームは軽量でしなやかで、強度が出せる。そのかわり、圧迫するような力を受けると、割れたり裂けたりしてしまう。リアのブレーキは、サドルのすぐ下から伸びているパイプの、指定されたポイントにボルトで締め付ける。このとき、パイプを前後から挟むのだ。

締め付けが弱ければ、ブレーキの固定が甘くて危険だけれども、締めすぎるとフレームが割れる可能性がある。その許容誤差は 1Nm…  そんなことが、この1行に表されている。

スポーツバイク初心者には、カーボンフレームのバイクはあまりお勧めできないと言われることがあるのだけれど、それはこうした事情も影響している。

許容誤差が1Nm というのは、トルクレンチがなければ管理できないレベルだと思っていい。プロのメカニックは別だけれども、一般人にとっては、4~7Nm の差というのは、非常に微妙で管理できないと考えて間違いでは無い。

なるほど!

と思ったならば、取り合えず、上に挙げたTOPEAKの簡易型で構わないので、トルクレンチを手に入れて使ってみることをお勧めする。

つづく

注1 6Nm と書いてある場合は、「最大」トルクが6Nm であって、これを超えてはならない。もし、止められるならば、4Nm でも 5Nm でも構わないということ。よっぽど体重が重いとか、ハードな競技者としてライドするので無い限り、最大トルクで締めることは無いはずだ。特にサドル周りの固定ボルトは締めすぎ厳禁なので要注意。ちなみに、範囲指定がある場合は、 3~6Nm といったサインになる。この場合は2Nm だと固定が甘くて危険という意味。

注2 本格的なトルクレンチは、非常に繊細なのだ。ハンドルを掴む位置によって、トルク数値が正確に測れない。反動をつけて使うとまったくあてにならない。そして、ホコリや水分、磁力などによって狂ってくるので、定期的に校正が必要になる。狂ったトルクレンチを使うくらいならば、ショップにお任せしたほうが間違いない。

2022年12月3日土曜日

トルクレンチの選び方

お友達から、「トルクレンチを買おうと思うのだけれど、オススメは?」という…ざっくりとした質問をいただいた。

目的は?と尋ねると、「車のタイヤ交換とか、バイク(スポーツサイクルのことを、自転車乗りはこう呼びます)のメンテナンスとか?」という話。

あーね…

締結トルク管理は大事!そう言われるけれども、いざ、そのためのトルクレンチを買おうとすると困る。自分が必要なのはどれか?そう考えるとわからなくなるよね。

そんな人に向けて、サービス投稿を投げ込んでみる。

まず、僕の持っているトルクレンチは、下の4本。左側の数字は「管理最小値」〜「最大値」で、単位は N m(ニュートンメートル)
上から3本目 21-105N mを追加購入 
元々は、バイクメンテナンス用に上の2本を使っていた。そして、夏冬のタイヤ交換用に、一番下のゴツいのを買い足した。そして、つい最近4本目を買い足したのだ。

理由なんだけど、バイクのトルク管理って最小1〜最大はせいぜい12とか15くらい。だから、上の2本でほとんどカバーできる。

ところが、僕のバイクのシートポストは、サドルを固定するヤグラのボルトは1本締め。そのせいもあって、指定トルクが20N m。

20N m というのは、手持ちのレンジから外れてしまうし、来年あたりにディスクブレーキローターとか、BBとかの交換も考えていて、その辺りの指定は 20~40N mくらいなので… 21-105N mのを買い足した。
赤字のところをカバーするために購入
一番下のごついトルクレンチのレンジは 28-210 N m なんでそんなにハイトルクなのか?自動車のホイールナットの指定トルクは、(メーカーや車種によって異なるけれど)大体100N m を超えてるからなんだ。
自分が必要とするトルクレンジをよく考えよう
これが一つ目のポイント。自分が管理したいトルクレンジにあったレンチを買う必要があるということ。つまり、僕の友達が聞いてきた、バイクのメンテナンスと、自動車のタイヤ交換を一本でというのは、かなり無理があるってこと。

もう一つ「ヘッドの大きさ」もポイント。レンチの先端のヘッドには、歯車とラチェットがついている。ハイトルクに耐えられるラチェット機構はどうしても大きくなり、それを納めるヘッドだって大きくなる。

そんな大きなヘッドだと、バイクのメンテナンスで狭い場所にアクセスしようとした時に入らなかったりする。

バイク(くどいけど自転車ね)に使うなら、コンパクトなヘッドのレンチをお勧めする。

左側のTopeakの先端は 6.3mm角の六角メスになっている。ハンドルに収納された、ドライバーとか、ヘックスやトルクスの「ビット」をそこに差し替えて使うのだ。

先端を差し替えて使う工具類があるよね。あの先端を「ビット」と呼ぶんだけれど、根本はほとんど6.3mm なんだ。
6.3mmは市販のビットを流用できる
右側一番上のPWT(台湾メーカーで安いのに銘品多数)トルクレンチのヘッドは、 6.3mm 四角オス。そこに差し込むアダプタ(ビットアダプターソケット)が付属していて、アダプタ先端には6.3mm 六角メスの穴が空いている。ということは、このアダプタを介することで、Topeak 付属のビットも、他社の差し替え式ビットも、PWTのトルクレンチで使うことができるということ。

ここで 6.3mm ? なんでそんな半端な数字?と思ったでしょ。ソケットレンチが発展したアメリカの規格がインチサイズで、それをミリに置き換えて表現しているから、微妙な端数が出てくるのだ。
インパクトドライバに刺して使うアダプタ
*ホワイトボードに 1 1/4 と書いてあるのは、 1/4 の書き間違いです*

トルクレンチの差し込みはこの3種類の四角形。ここに、四角穴の空いたソケットを差し込んで使うようにできている。

言うまでもないけれど、太い方がハイトルクに耐えられる。逆に考えると、トルクレンチの測定レンジに合わせて、ヘッドのサイズと、差し込みのサイズは決められているということ。

100N mで締められるレンチのヘッドが…細い 6.3mm というのはあり得ないということ、折れるかねじ切れちゃうからね…

自動車のホイールナットを締め付ける、 120N m で… ということなら、測定レンジ、ラチェットの耐久性、ヘッドの強度、もろもろを考えると、12.7mm がベストな選択であるということ。
長さもまったく違う
ハイトルクをかけるためには、てこを効かせるハンドルの長さも重要だ。ハンドルが長いと、全長も当然に長くなる。長くて巨大なレンチは、細かい場所での作業も苦手になる。

ここまでをまとめると、「測定可能レンジ」「ヘッドの大きさ」「差し込み角」「全長」…この4要素によって、選ぶべきトルクレンチが変わるということ。

こうした理由で、トルクレンチを一本で済ませようとするよりも、必要な作業に合わせて複数持った方が幸せになれると言うわけ(注)。

個人的に、大事にしたいなと最近思っているのは、設定数字の見やすさだ。
キラキラは見えないんじゃ〜!(怒)
左側のPWTは半艶消し黒にくっきり白文字。これはグンバツ(死語)に見やすい!
しかも差し込み6.3mm のコンパクトヘッド。1-15 N m と、低すぎるwレンジが、むしろバイクメンテナンスにピッタリと言うことで買ったわけです。右は…死ね、見えん 
タイヤ交換セット
この投稿を書くために、トルクレンチ一式を出してきたので、ついでに奥様のタイヤ交換を済ませる。

ものぐさな僕は、ジャッキアップとか、ホイールナットの締め込み・緩めは、最初と最後をのぞいて電動ドリルドライバでやっちゃう。

ビャーんと、あっという間に終わります。
空気入れは手作業でw
その後の空気圧調整は、シュコシュコと地道にやるわけですがね…

注 デジタルトルクレンチというのがある。力をかけると、測定素子が変形して電気抵抗が変化する。これを利用してトルクを計測するので、「カバーするレンジが広い」「可動部が少ないので耐久性が高い」のが売り。だが、レンジが広いからってデジタルなら万能というのは間違いです。バイクメンテなら、短くてヘッドの小さいのがいいし、車ならその逆。要は、「レンチとしての物理的な能力」は、大きさに依存するので、デジタルで解決できないところもあるということです。

2021年9月3日金曜日

バイクメンテナンスのヒント ディレーラーハンガー(1/2)

スポーツバイクでシフト(変速)が決まらないのは、嫌なものだ。

新車の時にはスパスパ決まっていたシフトが、少しずつダルになっていく。チェーンやスプロケット、チェーンリングは消耗品。摩耗して隙間が増えてしまうと、シフトがもたつくようになる。

そうした、経年変化による問題はもちろんあるのだけれど、「ある日急にシフトが決まらなくなる」ような問題もある。落車や、駐輪しておいたバイクが横倒しになって、その時を境にシフトが決まらなくなる。そんなトラブルで困っている人向けの tips を書いてみよう。

ここで例にあげるのは、次の3つのような症状だ。
  1. リアの変速がどうも決まらない
  2. ペダルを逆回転させると、スプロケットの上でチェーンが暴れる
  3. プーリーケージが微妙にスポークに当たっている
**3の症状は深刻な問題に直結するので、今すぐ乗るのをやめましょう**

バイクメンテナンスを、ある程度自分でやろうと思うならば、信頼できるガイドブックは1冊持っておいたほうがいい。僕がお勧めするのは、 "The art of ROAD BIKE MAINTENANCE" 英語アレルギーでなければ…ネ
図解が多くてわかりやすい

今回のポストは、下の図で、 "derailleur hanger" と書いてある部分の話。ディレーラー・ハンガーは、フレームにディレーラーを「吊り下げている」部分。ここが歪んでしまうとリアのシフトが決まらなくなってしまう。

説明は英文だけど平易な表現

そもそも、なぜハンガーが歪むのだろうか?

ロードバイクでもマウンテンバイクでも、「普通に乗っている」限りにおいては、十分な耐久性を持たせてある。平均的なアジア人体型の僕らが使っている限り、自転車は壊れない(注1)。

ただ、人間が動力であるスポーツバイクは、どうしても軽さを優先して丈夫さが犠牲になる。軽さと耐久性は、普通はトレードオフの関係にあるからだ。

上級者向けで値段が高いスポーツバイクは、思いのほか扱いがデリケートだったりする。また、ユーザーが適切なメンテナンスをすることを「前提」として作られていたりする。だから手入れをしないと、壊れたり、あっという間に寿命がきたりする。だから、初心者ライダーが、あんまり値段が高いバイクに手を出すと、すぐにぶっ壊れて泣きをみたりすることになる(注2)。

横倒しに落車したり、フレームを尖った物で叩いたり、こじったり、そんなプレイにスポーツサイクルは極端に弱い。さらにショックなのは、落車でフレームがオシャカになったら、ほぼ間違いなく補償の対象外なのだ。自己責任、落車したら、あなたがヘタ悪いってこと。

仕方ないのでフレームだけ購入して、パーツを載せ替えするとしよう。30万円の完成車のフレームってだいたい20万円する。フレームだけで20万円で、パーツ代が15万円、完成車で30万円?計算が合わない?そうだね。

完成車はもともとお得な値付けになっていて、フレーム+パーツで最初から揃えると値段が高くなるのだ。

まぁ、そんな感じで、プロショップでパーツを入れ替えてもらう工賃を考えると…よっぽど掘り出し物のフレームが見つからない限り、新車を買った方が安くつくということになる。

で、まぁ、落車とかならまだしも、バイクを横倒しにしただけで、フレームがオシャカになるようなトラブルが頻発すると、あまりにもアレだ。

バイクを倒した時、ヒットしやすいのがリアディレーラー。フレームとディレーラーを繋いでいる部分がぶっ壊れて、フレームがお釈迦になるとまずい。

そこで、考え出されたのがリプレーサブル(交換式)ディレーラーハンガー。そこの部分を、交換可能にして、あえて柔らかいアルミニウムで作って、いざというときにはそこが壊れることで、フレームを救おうという理屈だ。

フルサスマウンテンバイクの、GT はこんな感じのパーツがついている。フレームの後端の一部とハンガーが一体化していて、奥がオリジナル。
手前が改良型で太い

どうやらハンガーが曲がるトラブルが多かったようだ。手前が交換用パーツなのだが、肉厚になって強度が上がっている。フレームとは、ボルト2本で結合される。

MTB用ディレーラーはぶつけにくいように引っ込んでいる

変形の度合いが少なければ、歪みをチェックして修正する工具を使うことはできる。ただ、柔らかいアルミでできているハンガーを、力技で変形させるという…荒技なので、お勧めはしない。

テコの応用でグイッとな

最初に書いた3つのトラブルのうち、典型的な症状は2番。

2. ペダルを逆回転させると、スプロケットの上でチェーンが暴れる

こうなったら、ディレーラーハンガーを取り寄せして交換するべき。それでも治らなければ、信頼できるプロショップでフレームそのものの芯がずれていないかチェックしてもらうのがいいだろう。

つづく

注1 マジな競技用のバイクは、ライダー+装備で何キロまで耐えられるかという制限重量が設定されている。気になるようならば、マニュアルや、メーカーのHPを確認してください。

注2 普通の人が最初に買うスポーツバイクの値段は、多分20万円くらいが限度なんじゃないかなぁ。あんなエンジンもついてない奴に、そんな値段がついてるのがおかしいって思うでしょ?でもまぁ、スポーツバイクの裾ものは、ロードなら8万円、MTBのハードテイルなら10万円、ロードの中級グレードとMTBフルサスのボトムラインが30万円くらいですかね。だんだんと感覚が麻痺しますので、注意ねw

2025年7月11日金曜日

ロードバイク増車しました: TREK EMONDA SL4 購入

ボクのロードバイクはRidgebackのRambleという英国車。

英国は歴史のある自転車大国、一般車、ツーリング車を得意とするブランドが「リッジバック」。モデル名の「ランブル」は、「ブラブラ出かける」「放浪する」という意味で、長期ツーリングを目的とした車体だ。

クロモリの特注フレームは、キャンピング装備をつけて丁度いいくらいの剛性がある。持つとちょっとびっくりするくらい重いのだけれど、ペダルを踏むと不思議なくらいに「スゥウーーー」と走る、そんなバイク。

で、目標だったSRとSPRを達成したので、Ridgeback とキャラが違うバイクを買い足したという話。

先輩と後輩

次に買うバイクは TREK と決めていた。
…買うお店も、Bike Plus と決めていた

理由を書くと、うざいくらいに長くなる。簡単にまとめると…絶対的な信頼感が、このブランドとお店にはあったから。

ローラー台使ってフィッティング

Rigeback のジオメトリ表をベースに、TREKのラインナップを見てみると、ほぼほぼ Domane と同じ。ロングライド向けの車体がブルベに向いていると言われているし、常識的な選択なら Domane。でも、ボクの希望は…

シートアングル立てる
ホイールベース短く
チェーンステイ(リアバック)小さく
リーチ短く
スタック短く

要するに、もうちょっとキビキビ軽快に走れるバイクが欲しかった。
で、お店の人とジオメトリ表を見て、Emonda が一番希望に近いのが分かった。ローラー台で回してみたら、希望したポジションが出せそうだったのでそれにした。

Trek white & Quicksilver

色は思い切って白を選択。

白は黄ばむし、褪色するし、汚れは目立つけど…
もう歳も歳だし、そんな長い期間ロードバイク乗らないだろうし…
好きな色に乗ることにした…

2台そのまま積載できる愛車

入荷したという連絡があったので、Ridgeback 持ち込んで、それを基準にしてTREKのポジションを合わせて貰った。

BB位置から色々違う

キラキラりん

保管場所のバイクフックにハンギングしたら、リアホイールの当たる位置が全然違う。
ホイールベース(特にリアバック)短くしたかったので当然なんだけど、ここまで違うのか…

ホイールベース短っ!

とりあえず、ブルベ装備をセットしてみる。
ハンドルバーが狭くなったので、ライトとサイクルコンピューターなどの場所争い発生。
フロント三角がコンパクトになったので、ボトルとフレームバックが干渉。ボトルケージを横抜きに変更する。

ブルベ装備を仮セット

ダウンチューブ下にボトルケージが付けられず、ツールボトルの行き場を考えなければならない。そんなもろもろを見直す。

職場のフリースペースを借りて組み替え

どんどんバラします

それと…貧脚のボクにとって、フロント50-34、リア11-30はギアが重すぎた。 
なので、フロントはGRXの48-31、リアは11-34に組み替える。

クランク抜いた

ブリーディング準備

ボクが今まで乗ってきたバイクは、メンテナンス性を重視したケーブル外装式。EMONDAはレーシングバイクなので、ほぼ完全内装式。調子にのってカーボンハンドルバー買ったらそれも内装式…

ワイヤールーティングツールを買ったけど、素人には限界がありました…

こんな穴通せないヨ

ハンドルバーのケーブル内装は…左右1本通したところで諦めた。

Jagwire のニードルインサーションツール

油圧ブレーキのホーシング・ブリーディングは、以前MTB乗ってたので無問題。
ホースのカッターから、ブリードキットまで、久しぶりの出番。

ということで、とりあえず設定は終わったので…あとは走って煮詰めようと思います。
フロント 46-28 にする予感がしてる…

2021年10月14日木曜日

バイクメンテナンス トルク管理(その2)

「ネジとかボルトは、直径と素材によって締め付けトルクが設定されている」。トルク管理(その1)で、そう書いた。

と言うことは、(限られた素材が使われているスポーツサイクルなら)ボルトの直径が分かれば、設定されているトルクはわかるはずだ。

例えば、ツーリング中にボルトが緩んだとする。マニュアルがないので、適正トルクがわからないし、トルクレンチも無い。でも、ボルトのサイズが分かれば、大体の最大トルクはわかる。

前に紹介したメンテナンスマニュアル appendix のトルク管理では、M5の最大トルクは 7Nmと書いてある。

M(x) bolt は、直径(x)mmのボルトと言う意味 
スポーツバイクに使われているボルトはほとんどがM6以下で、大部分はM5かM4だ。つまり、Max 5Nm でトルク管理すれば、「ほぼ」なんとかなる。

一般的なサイクリストにとっては、「この締め方ならば、ほぼ間違いなく5Nm 未満」というやり方を把握しておけば、トルクレンチが無くても応急的な処置はできるということだ。

さて、前回紹介したTOPEAKのトルクレンチだけれど、これは、レンチの軸の「歪み具合」を可視化することで、掛けているトルクを測れるようになっている。これの応用を使うと、トルクレンチがなくても大体のトルクを知ることができる。
TOPEAK トピークのトルクレンチ
下の銀色の6角棒レンチ(アーレンキーとも呼ぶ)セットは「エイト社(EIGHT)」製(注1)。セットの一番上はM6 で、順番に、M5、M4、M3、M2と径が細くなっていく。径が細くなっていくということは、「少しの力でも撓みやすくなる」ということ。

ボルトを本締めするときは、短いほうの軸をボルトの穴に差し込む。そして、軸の真ん中あたりを持って締めて、ほんの少し軸がしなった時というのが、ほぼ最大トルクになるはずだ。間違っても、軸が曲がるんじゃないかみたいな力で締めてはいけない。

ボルトの穴径によって軸の太さが違う。で、このエイトのレンチみたいに、高品質・高精度のレンチは、ボルトに適切なトルクがかかった時、ボルトサイズに関わらず、同じような感覚のフィードバックを指先に与えてくれる。

弾みをつけずに、体重をかけたりせず、大きくて強い筋肉(背筋とかね)を使わず、手首から先だけでゆっくりと締めていく。そして、指先にわずかなシナリを感じた時、そこが適正トルクになっている筈だ。
指先と会話できる良品
もう一つ知っておくべきことは、レンチの軸の長さが順番に短くなっているということ。M3とかM2のボルトは、耐えられるトルクが低い。そんなボルトの場合、レンチの軸が長すぎると簡単にオーバートルクになってしまうので、「あえて短く」作ってあるのだ。先端の太さによって、軸の長さが違うことがわかるだろう。

これを応用すると、ハンドツールの持ち方によってトルクを管理できる。まず、下の持ち方だけれど、これはレンチの軸とハンドルを垂直に開いている。この持ち方だと力が入れやすいので、軽く回すだけで5Nmくらいには達してしまう。
軽く持って5Nm、しっかり持つと10Nm
ドライバーのように、軸とハンドルを真っ直ぐにしてみよう。この持ち方で、しかも指先でハンドルをつまむようにして回すと、大体3Nm前後になる(注2)。
オーバートルク厳禁なところはこうやって持つ
ステムキャップとか、クランクのキャップみたいに、部品に圧力を与えてガタを取るためのボルトとかは指定トルクが本当に低い。キャップのボルトは M5とかなのに、締め付け指定はせいぜい 3Nmくらい。そんな時は、レンチの長い方の軸をボルト穴に入れて締めよう。

こうやると、締め付ける力は短い軸を「つまんで」回すようになるので、そもそもトルクがかけられない。この締め方なら、せいぜい1~2Nm くらいのトルクになるはずだ。 
長軸の先はボールポイント、仮締め用
他に要注意なポイントは、ボトルケージをフレームに固定するボルト。肉厚の薄いスポーツバイクのフレームに、直接(注3)ねじ止めするこのポイントは、緩まない限りそっと締める。
優しく締めて、時々固定具合をチェックする
トルク一覧表でみると、ここの指定トルクはこんな感じだ。
ボトルケージは 2-3Nm
スポーツサイクルのメンテナンスをしていると、時として特殊工具が必要なポイントが現れる。例えば、シマノの2ピース型クランクセットのキャップを締めるには専用工具が必要だ。
キャップの星形の穴にはめて回す
プラスチックの薄い円盤
これは、「物理的に強い力で締められないように」設計されている。ボトムブラケット(BB)をフレームにはめ込んだ時、フレームの個体差によって、BBの幅はほんのわずかな違いが出る。この個体は幅が少し広く、これは少し狭い。その誤差(交差)は、正確には知らないけれど、せいぜい0.0(x)mmくらいだと思われる。

で、左右のクランクは、ここのキャップの締め付け具合で位置決めをしているのだ。つまり、ゆるいとガタが出てくるけど、締めすぎると回転がゴリゴリしたり、ベアリングが傷んだりする。

ここの指定トルクも、役割が同じようなステムキャップとおんなじで 1~3Nm
「位置決め、ガタ取り」そんな場所の指定トルクは低く設定されている。

では、下の、多くの爪が切られている特殊工具はどう考えたらいいだろうか?

なぜ、爪が多いかというと、パーツと工具が噛み合う、爪や溝や平面、1箇所あたりにかけられるトルクには限界があるからだ。マイナスドライバーとネジなら、トルクは2箇所にかかる。プラスドライバーなら4箇所。6角穴付きボルトなら6箇所。接触点が多ければ、それだけトルクを掛けられる。
スチール製の爪で確実に締め付ける
ハイトルクが必要とされるところに、通常の6角とかでは耐えられない。角が舐める、爪が歪む、工具がカムアウトして外れるなど、危険が生じてしまう。これらの工具は、ボトムブラケットパーツをねじ込んだり、スプロケットや、ディスクブレーキローターの締め付けリングを締め付け、緩めるための工具だ。これらのパーツの指定トルクは、40Nm程度。メーカーなどによって違いはあるものの、自転車のパーツとしては例外的に高いトルクが求められるところに使われる。もちろん、工具の素材は強度と剛性に優れた炭素鋼(スチール)が使われている。

メンテナンスの場数を踏んでいるうちに、特殊な工具やパーツを見た時、「これはなんでこうなっているんだろう?」と思うようになる。

ボトルケージのボルトで、ヘッドが薄いものがある。アルミとかプラスチックのボルトがあったりする。2mmとかの細い6角ボルトが使われていたりする。これらは、「ガッチガチに締めないでね!」と、ボルトが叫んでいるのだ。

手に持って、なんか普通と違うな?と思ったら、マニュアルを参照してみる。なぜそうなっているのか、理由を調べてみる。そして合点がいった時、それらを設計したエンジニアの人と、なんとなく通じ合えたような気がする。

そんなことが、僕がバイクメンテナンスを楽しむようになったきっかけの一つでもある。

おしまい


注1 エイトは日本製。日本には、世界に誇る棒鋼材の生産拠点がある。そのため、実は、日本の6角棒レンチの品質は世界でもトップクラス。エイトのは特におすすめです。先端が摩耗したり舐めたりするおそれはまったくないくらいに固く、軸は粘りがあって、トルクのかかり具合を掴みやすい。

注2 あくまでも、僕の場合は、ということです。試しにこのやり方で締めてみて、その後にTOPEAKのトルクレンチなどで締めてみる。そして、ネジがドライブし始める直前が、手で締めた時のトルクということになる。例えば、手で3Nm狙って締めて、トルクレンチでしめて3NMに達した時に「クッ」と動けば正解。動かなければ、締めすぎている。こうした感覚は回数をこなしているうちにわかってくる。

注3 金属フレームの場合と、カーボンやアルミの場合で、ネジが直接フレームに切ってあるか、そこに打ち込んだリベットに切ってあるかは違う。ただ、いずれにしてもネジ山はせいぜい3~5くらいしか無いはず。

2021年5月28日金曜日

「廃人」は、梅雨の季語

あるハードコアBCスキーヤーがポツリと言った

スキーシーズンが終わると…
普通の人には春が来ますよね。
僕の場合は廃人期が来るんです。

一瞬「ハイジンキ」の漢字が思い浮かんでこなくて、黙っていると、彼は続けた。

時々、あ、これが春なのか?って年もありますけどネ
スキーを、片付けなくちゃって、ふと外を見るとすでに夏なんですよね。
シャ◯中の人が正気に戻るってこーゆー感じなのかな?って思いませんか?

いろいろと大丈夫か?という言葉を飲み込みながら、僕は尋ねた。

「廃棄物」の「廃」に「人」の「廃人」になる季節ってこと?

そーです そーです。
で、少しでも正気でいようって、いろいろ手を出すんですよね、自転車とかクライミングとか。でもですね、廃人期ってちょうど梅雨時と重なって、外遊びが難しいじゃないですか。だから、最近はカヤックとか、沢登とかに逃げてますね。濡れてもできる遊び。

梅雨時になると、あーそろそろ、彼の廃人期が始まる頃だなぁと思う。

僕は彼とは違って、段階的に、シ◯ブを抜き白い粉の魔力から離れて行きつつ、夏を迎える。シーパスとか、リフト券ホルダーとか、無料の駐車許可証とかを車から降ろす。

パウダー4のシーズン券特典の駐車許可証

ボードをワクシングし、ウェアを洗って良く乾燥させ、傷んだ小物は補修するか断捨離し、来シーズンに備えて保管する。

ポイントは、心のどこかで自分に言い聞かせながら、片付けをすること。

俺のシーズンはまだ終わってない
締めは富士山だ
なんならマチガ沢をハイクすれば、近場でも6月末ごろまでは滑れる

そう、あくまでも、まだスノーシーズンは続いているのだと、自分に言い聞かせながら片付けをする。ブーツとボードのワンセット、そしてBCの春用ウェア一式は最後の最後まで片付けない。そうやって、まだ冬は終わってないのだと、気を緩めないようにしながら、自転車の準備を並行で進める。

冬の間は、ローラー台でエアロバイクとして使っているグラベルロードバイクをメンテナンスするのだ。ローラー台用のホイールは普通のクリンチャータイヤなのだが、メインの軽量ホイールはチューブレス。シーラントを補充し、エア漏れをチェクする。

交換するものと関連するケミカルなどは出しておく

ディレーラーのプーリーがすり減って入れば交換する。今回はブッシングプーリーから、純正外のローラーベアリングプーリーを試してみる。

上が純正のブッシングタイプ、下が社外品

チェーンも伸びてきているので、チェーンチェッカーで確認して早めに交換する。新品は余裕を持った長さになっているので、適正な長さに合わせてリンクをカットする。

新旧のチェーンを並べて固定する

手前側の旧チェーンに合わせて新品チェーンの長さを揃える

スプロケットを外し、ついでにフリーボディを外す。ラチェットの当たり面を確認し、清掃し、専用の柔らかいグリスを付け、ベアリングにはオイルを補給して組み直す。 

金属同士が擦れる部分特有の汚れ

昔の機材に比べると、清掃や調整は格段にやりやすくなっている。オイルやグリス、ディグリーザーや洗剤、ウェスやペーパータオル、ニトリル手袋など、メンテナンス用品も進歩を感じる。

消耗品を十分に用意しておくことで、作業が快適になる

というか、僕にとって、バイクメンテナンスって…廃人予防キャンペーン活動…だよね。

晴れてれば、サイクリングか登山に出かける。

整備が済んで、手入れが行き届いた自転車はに乗るのは楽しい。ちょっとした下り坂で、チーーーーーーーっと、小気味良いラチェット音だけを残して、バイクは速度を増し、思う通りにコーナーをクリアして行く。

そして、明らかに冬とは違う日差しを感じ、体全体で空気を押し分けて進んで行くと、「この季節も…これはこれでいいよね」みたいな気持ちがやってくる。

そうやってBCスキー&スノーボーダーは、震える手と、虚ろな目と、力が抜けた膝を、整えながら次の季節へと歩いていく。

面倒臭いな、俺たちってw