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2025年11月28日金曜日

リベンジ表妙義 後半: タルワキのコル〜相馬岳〜金洞山〜中間道下山

前回の記事の続き、表妙義稜線縦走の後半です。

天狗岳からタルワキのコルに下って縦走の前半が終わる。ここから相馬岳までは、割と平和な登り返し。振り返ると、天狗岳の東面が見える。

天狗岳を振り返る

木の根や灌木など手がかり足掛かりが豊富なので、さほど苦労せずに山頂へ到着。

相馬岳

山頂でタルワキから登ってきたというカップルの登山者に出会った。ここまではちょっと物足りなかったと言い、どうしようか相談しながらこちらを見た。迂闊なことは絶対に言えないので、タルワキまで戻ってから天狗岳ピストンが無難であることを伝える。

それ以上は言えないよね…そして、天狗岳から妙義神社までは難路なので、先には進まないほうがいいと言っておいた。

これから行く金洞山山塊

相馬岳から先は再び高度を大きく下げる。木の根や岩角を支えに下降するのだが、ここはスリップに要注意。妙義山は標高が低く、岩場以外は雑木や草の茂みで覆われる低山だ。低山独特の落ち葉や赤土で覆われた岩場は、うっかり足を置くといきなりズルッと来て肝が冷える。

ホッキリへの嫌な下り

いい加減うんざりする下降が終わると、茨尾根が始まりホッキリ(堀切)のコルに着く。

休憩をとり行動食を摂る

後ろからハイカーが近づいてきて、追い越して行った。岩慣れした人のようで、トラバースも安定していて速い。

鷹戻しの頭が近くなる

茨尾根もようやく終わり、岩壁の基部からいよいよ鷹戻しが始まる。

2連のハシゴ

国内一般登山道最難関とも言われる表妙義稜線縦走路、中でも核心とされるのがこの鷹戻し(一部では「鷹返し」とも)。

ただ…ハシゴが設置されていたりよく整備されており、ルートも分かりやすい。鎖の流れに沿って、しっかりと足場に体重をかけて登れば良い。

鎖場の抜け口を上から覗く

ボクがこの場所で気をつけているのは2つある。一つ目は「人的リスク」、二つ目は「疲労」だ。鷹戻しは怖いもの見たさの登山者を惹きつける。それもあって、「本来はココに来るべきでない」人たちも呼び寄せる。そうした人たちが岩場で行き詰まったり、通過に異常な時間をかけたりして渋滞を引き起こす。

並列にかかる鎖

すれ違いや追い抜きで使えるように、鎖が並列にかかっている場所もある。だが、岩場の1ピッチに入るのは1人だけの原則は守った方がいい。進退極まったハイカーがしがみついてくる、なんてこともありえないとは言い切れないからだ。

ボクがここに入る時は、必ずヘルメットを着用し、ハーネスにはセルフビレイ用のスリングとロッキングカラビナを装着する。それは、不意の落石や、すれ違い時の事故を防ぐためだ。

二つ目の「疲労」だが、妙義神社から縦走してくるとここから終盤になる。そして鷹戻しから中之岳までこそがこのルートの核心…ここで前腕がパンプしているようでは進退極まるので、冷静に自分の体調を観察することが求められる。


終盤のトラバース

鷹戻しの頭に抜けたところで、東海方面から来た2人組の女性ハイカーに出会った。一人は「いつか鷹戻しを登りたい」とずっと思っていて、「他の山でいろいろ練習」をして、「ついに今日来れた」、そんな話をしてくれた。

もう一人は…「まだ山を始めたばかりなのに、こんなところ連れてこられて、びっくりして笑いが止まりません」と言いながらケラケラ笑っていたw

二人は中之岳から中間道を降り、ホッキリに上がり、鷹戻しを登ったところだという。ここから中之岳へ戻るのは、ボクと同じ。ここから2箇所厳しい鎖場があることを説明したりしながら、下降に備えて休憩を取る。

そして、ボクが先行して鷹戻しの頭からの下降に入る。ここは二段ルンゼと呼ばれる難所で、個人的には鷹戻しよりも1グレード上に感じる。

正面岩塔中央のV字が二段ルンゼ

上段は左右からの圧迫感がある、ほぼ垂直のチムニー状。スタンスは豊富なのでよく見て下れば問題ない。

上段とテラスに女性2人ハイカーが見える

下段は降り口から先が見えない。しっかりと身を乗り出すと、大きなスタンスが見えるのだけれど、切り立った岩壁で虚空を見下ろす恐怖…

鎖を手に空中に乗り出してから身体を返して、出っ張ったスタンスに立つ。体勢を整えたら下降を始め、鎖の流れに逆らって右に逃げる。鎖の左側は傾斜がキツく、一部はハング状になっていて、スタンスも小さい。体のバランスをとり、振られないようにしながら、右側にルートを探す。

東岳直前で振り返る

無事に降りて、鞍部で単独行のハイカーとすれ違った。

東岳へ登り返す直前で、左に第4石門へのエスケープルートが降っている。そこをちょうど降り始めた3〜4人のグループが居た。そのうちの数人が、トレッキングポールを出していた。エスケープルートにはロープ辿る場所もあり、傾斜もあるのでポールは使わないほうがいいように思った。ただ、パーティそれぞれの判断もあるので、何も言わずに見送った。この人たちには、後で大砲岩あたりで再会する。

エスケープルート分岐を過ぎて東岳への登路が始まる。二段ハングの下降でアドレナリンが出ているせいか、恐怖感は薄れてサクサク登る。

拡大

後続の女性2人組は、二段ハングの途中にいた。先ほどの単独行ハイカーとのすれ違いで時間をとったのだろうか。

東岳頂上直前からコール

東岳のピーク直前で振り返ったら、ちょうどこの2人組が、二段ルンゼの基部に降りたところだった。間に遮るものがないので、声がよく通る。コールして、無事を喜び、またどこかで再会をと伝えて別れた。

東岳のピーク

東岳のピークからは最後の中之岳と、入山できない金洞山と星穴岳が見える。

左が中之岳

東岳のピークには短い鎖で登り、反対側を鎖で降る。そこから滑りやすい岩と土混じりを降ると…最後の難所の東岳からの下降。

東岳山頂の短い鎖

ここの東岳から降る長い鎖は、下部が少しオーバーハングしている。ここと二段ルンゼが表妙義最難関なんじゃないかな?と個人的には思う。

ここも鎖の流れに逆らって、左右に逃げて傾斜を逃す。そうでないと、壁から足が離れて宙吊りになるので、腕力の弱い人にはかなり厳しい下降になる。しかもここで落ちると止まらず、遥か下の沢まで吸い込まれてしまう。

基部に降り立って安心したせいか、ここの写真を撮るのを忘れた。もういい加減疲れていて、カメラを取り出すのも面倒くさくなるw

金鶏山とぐるりと回る車道

冠雪した浅間山

中之岳手前で浅間山の写真を撮り、山頂の祠にここまでの無事を感謝する。

中之岳山頂

星穴岳と浅間山

中之岳からの下降は、長い鎖場もあるが、ここまでのルートから比較すると難易度は低い。疲労で集中力が失われないように、手順を考え足場をしっかりと見ながら降る。

第4石門の広場に抜け、中間道に入る。

第4石門

大砲岩の岩場で、先ほど第4石門エスケープルートに入ったグループと出会った。メンバーの一人が、二段ルンゼ下降の最後の最後で足を滑らせ、アキレス腱を怪我したそうだ。

それで、トレッキングポールを出していたのか…

最後の最後で良かったですね、そう言ったら、「確かに!」と笑いが出た。

転落せずに基部まで降りてなによりだったし、そこからなら登り返しなしにエスケープルートに入れた。大砲岩からは自然歩道になるので、難場も無い。

中之岳神社の駐車場まで、どう降ったら良いか尋ねられた。登り返しの無い、最短ルートを考え、石門ルートから分岐する、「石門を通らない」下山道をお知らせした。児童の遠足などで石門ルートを登りに使った場合、下りに使われる程度の難易度で、道も整備されている。足を怪我した人が下山するには、一番良いと。

グループと分かれて、中間道の下山を続ける。思った通り、コースタイムよりもだいぶ早く、2時間程度で妙義神社に戻れた。今日の無事を感謝し、そこから道の駅を突っ切って、登山者専用駐車場に戻り荷物を下ろす。

稜線上では、もう2度と来るもんかと思っていたのだが…
今度はユーヤを誘ってみようかと考える自分がいて、思わず苦笑いしながらエンジンをかけて帰路についた。

2025年11月26日水曜日

リベンジ表妙義 前半: 妙義神社〜白雲山〜タルワキのコル

こないだ紅葉を見に表妙義に来たのだけれど、ルート間違えて撤退という不甲斐ない結果となった。

これで終わるのも悔しいので、丸一日時間をとって表妙義全山縦走をコンプしに出かけた。

写真がどうしても多くなるので、前半と後半に分けてみた。ちなみに、過去の記録にここがどんなコースか書いてあるので、よかったら見てほしい。

尚、このコース、普段ボクは自転車をデポしておいてBike&Hikeで周回する。中間道で戻ると、中間道だけの標準コースタイムが3時間半なのだ。表妙義の困難な縦走を終えた後に3時間も歩くのはシンドイな、そう考えていたから自転車で戻っていた。でも、こないだ中間道を途中まで歩いて引き返して、「3時間もかからないんじゃないか?」と思った。むしろ、整理運動っちゅうか、トレーニングとして中間道を歩いて帰るのもありかも?そんな風に感じて今回は自転車をデポせずに歩いてみた。

前半のボスはこんな感じ…

東岳から、奥が白雲山山塊手前の岩頭が鷹戻しの頭

時間に追われて焦ると危ないし、紅葉目当てのハイカーで混雑すると鎖場で順番待ちになったりする。なのでこのルートは早立ちが基本。

道の駅妙義から少し下にある、登山者専用駐車場に車を止めて準備する。うっすら日が出てきた6時半ちょい過ぎに出発。

白雲山どーん

この岩壁は東向きなので、朝日を浴びて輝く。それがボクがこちらから登るのが好きな理由の一つ。

妙義神社

写真を撮っている人がいた。「そろそろ終わりですね、先週は盛りでした」と、余計なことを言ったら、笑いながら「これはこれでイイんですよ」と言ってくれた、大人❤️。

おごそか

石段を一番上まで上がって、奥宮の右に行くと大の字。左に行くと見晴らし。いつも大の字から上がっているので、今日は初めて見晴らしから上がってみる。

あっちは金洞山

木立から先が見えた。割と果てしない距離に感じるし、実際はアップダウンが激しいので距離以上に消耗する。

奥の院

奥の院の奥の院

奥の院についた。鉄梯を登って石像にお参りし、写真を撮る。ここ、照度が足りないので気をつけないと手ブレする。今日も案の定手ブレした。

手ブレしちゃった…

鉄梯を降りて、落ち葉が積もって滑りやすい(そして踏み外したらタダでは済まない傾斜の)石段を降り、鎖がある岩溝を上に向かう。岩溝の左横の小さなテラスから、奥の院が覗ける。奥の院からここを見上げると、明かり取りになっている穴がこれだ。

上から覗ける奥の院

奥の院の上に出ると、いよいよマジな岩場の始まり。まずは易しいけど斜度があって長い鎖。

◯の右横に鎖

クライミングをやるとわかるけど、感覚的な傾斜と実際の傾斜は違いがある。普通の人が「絶壁!」って腰が引けるのはだいたい45度くらい。垂直に見える壁は、だいたい70−80度くらい。オーバーハングしてる!ってのがほぼ垂直。

一般登山道で垂直の岩場ってほぼ無くて、スラブ壁の80度以下がほとんどだ。それぐらいの傾斜だと、足に体重を乗せて腕の力を温存できる。岩場が連続するコースで腕が消耗するようであれば、フットワークの練習をクライミングジムでするのがオススメです、楽しいし。

長い鎖を抜けた後…
鎖が無いのが不思議な岩場がいくつか続いて見晴らしに出た。

見晴らし…とても先には行けません…

この前後には、3〜5mくらいで短いけど切り立った岩場が連続する。他の山域だったら間違いなく鎖が設置されるはずだけれど、そこに鎖はない。多分、ここはあえて鎖を設置していなんじゃないかと思う。ここを通り過ぎて先に行ってしまうと、もう逃げ道が無いし…「ここで厳しいなら帰りなさい」ということなんじゃないかと、思う。

切り立った岩壁の基部につくとそこは「ビビリ岩」

ビビリ岩…マジでビビる

見上げると青空がキレイ…

鎖…

後ろから早いハイカーが近づく気配がする。ビビリ岩の途中で、自己確保して振り向いて写真を撮った。

スケール感

トップアウトして、しばらく行くと背ビレ岩。ゴジラの背中登るような感じ…

ホールドはたくさんある

後続のハイカーにここで先行してもらう。話してみたら、ボクと同じルートを歩くらしい。他にも数人、妙義神社→中之岳神社縦走の人がいた。

先行者が空に溶けていく

いきなり視界が開けると、大ノゾキのピーク。ここからガーンと下がって、登り上げる次のピークが天狗岳。天狗岳にはいくつかのピークがあって、どれが本物かよくわからないw

天狗岳、東のピーク

大ノゾキからの下降に入る。

ピークの石板

ここの下降は傾斜はゆるいけれど長い。そして、スタンスが丸まっているので、霜とか朝露で濡れていると滑る。

長い鎖が3何本も連続する

下降路は左右に屈曲しながら続く。

上部の鎖

白いのが鎖で磨かれた岩

最後の長鎖

さっき見えたピークがどんどん高くなり、いつまで降るんだよとうんざりするとコルに出る。そこから岩や木の根っこを掴んで登り返すと天狗岳。

天狗岳?

天狗岳から相馬岳までの岩場は、難易度がだいぶ下がる。しかし、落ち葉のせいで足元が悪い。足の下に入り込んだ落ち葉で滑る。落ち葉に隠れた木の根や岩角にけつまづく。枝と落ち葉で隠れた穴ボコに落ち込む…どのパターンでも簡単にサヨウナラしちゃうので慎重に。

相馬岳が見える

表妙義最高峰の相馬岳…ほぼ水平に見通していたのに…ドンドコ下って下って下って…

見上げて「またあそこまで登るのかよ」そうウンザリしはじめたところでタルワキのコル。

一般ルートへのエスケープ

表妙義のエッセンスを味わいたいけれど、岩場がそこまで得意じゃ無い。そんな人は、中間道のタルワキ沢から、ここのコルまで上がってくるといい。このコルから相馬岳や天狗岳へ登るのなら、そこまで難易度は高くない。ただし…相馬岳も天狗岳も、そのピークを越えていくなら、装備と覚悟をお忘れ無く。

後半に続く、

2025年11月25日火曜日

大人の工作教室: スノースコップのハンドルを短くしました


BCスキー・スノーボードを嗜むには、3種の神器を揃えなければならない。まずはアバランチ・トランシーバー(ビーコン)、プローブ(ゾンデ棒)、スノースコップがそれだ。

ぶっちゃけ人を救けるつもりがなく、自分だけ生き残ればいいのならばビーコンだけでいいのだが…一応揃えておかないと、友達がいなくなる。

どんな道具を選ぶかには、みなさんこだわりがある。単純な道具ではあるが、スコップにももちろんこだわりポイントはある。ボクのこだわりは「金属ブレード」「一体式ハンドル」「D型もしくはL型グリップ」がそれ。

春先の締まった雪やスノーブロックの切り出しには、ポリカブレードでは刃が立たない。ここはやはり金属ブレードでなければならない。

伸縮式ハンドルは、凍結で凍り付くことがある。ある時雪洞を掘っていたら、手で温められて溶けた雪がジョイント部分に入り込んで凍った。ハンドルが伸びたままになってしまい、仕方がないのでそのままバックパックに固定して下山したが、頭の上に飛び出したハンドルはそーとーマヌケだった。

グリップの形だが、オーバーミトン(ドラえもんの手みたいなやつ)で掴むには、真ん中に柄ががつながっているT型グリップだと困る。なので、雪洞泊とか、テント除雪がある場合はD型かL型を選ぶ。ま、5本指手袋前提ならT型でもいいのだけどね…

こやつ

んで、サブ用に買ったALVAのスコップなんだけど、ハンドルが微妙に長い。30L以下のバックパックに縦に収めると、生地が突っ張った感じになる。なので少し斜めに入れるのだけれど、そうすると横に入っているプローブと場所の取り合いになる。

これを3cmくらい切って縮めようというお話。

リベットの頭をドリルでモミモミ

グリップはブラインドリベットで止まっている。こーゆーリベットは頭を飛ばしてやれば固定が外れる。

リベット取れました

リベットの頭はアルミなので、切削油を使うまでもなく飛ばせた。グリップを抜いて、中に落ち込んだリベットを取り出して捨てる。


会社の工作室には、なぜか自転車のステアリングコラムをカットするためのソーガイドが転がっている。これでパイプを固定して、ノコ刃をスリットに入れて切ることで、パイプが綺麗に垂直にカットできる。

ソーガイド固定

ノコギリでギコギコ

ハンドルも柔らかいアルミなので、鉄工ノコで簡単にカットできた。カットした後のバリは怪我をしないうちにやすりで綺麗に丸める。

やすりでジョリジョリ

さて、ハンドルに開いている穴とピッタリ同じ位置に、リベット固定用の穴を開けなければならない。そこで、もともとの穴が、パイプの末端からどれくらいの位置にあったのかを写しとる。

末端に合わせて、幅広のマスキングテープを貼り、穴の中心の高さにマーカーの先端を固定し、パイプをクルリンパする。

末端から穴までの距離をマーク

マスキングテープを綺麗に剥がして、カットした後のハンドルに貼り直す。これで、ハンドル末端からの穴の中心が写し取れた。

ボール盤で垂直穴

楕円断面のパイプなので、楕円の頂点がしっかり真上を向くようにバイスに固定する。ドリル刃が逃げないように、垂直に穴が開くように、ボール盤を使って穴あけ。

穴位置ピッタシ

狙い通りの穴が開きました。

リベット打って完了!

会社にはリベッターがないので、自宅でリベット打って固定。これでこの冬は少しイライラが減りそうです。

おしまい