僕は尾瀬の燧ヶ岳をツェルト泊で往復して、生活技術の幅を広げることができた(注1)。そして次のステップを考えて、僕はスキーの板を買い足した。
最初に買った板は、Black Diamond のシンクロXというステップソール。馴染みがない人に説明すると、オリンピックで萩原兄弟がジャンプした後に、違う種目で走ってたでしょ?あれがクロスカントリー競技なんだけど、それ用のスキーは細い。で、クロカン板は滑りが苦手なんで、ちょっと太くしてメタルエッジつけて(注2)硬い斜面でもターンできるようにした。そんな板がシンクロX。あれはあれで、歩き中心なら、いい板だった。
斜度が増してくると、さすがにシンクロXでは怖い(注 3)。そこで、Dynastar のちょっと太めの板を買い足したのだ。バインディングは、新しくでたモノワイヤー。テンションスプリングはトウピースの前で、そこから一本のワイヤーが出て分岐して、ヒールピースに繋がる構造。このモデルははっきり言って失敗作で、あっという間に廃盤になった。
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Komperdell のポール、Dynaster の板、BD?のバインディング、全部処分セール品 |
で、僕は処分品セットでゲレンデで練習した後、谷川岳芝倉沢を目指した、一人で。
谷川岳の芝倉沢は、一般的には中級者以上向けのルートだとは思う。でも、僕はこのエリアの一般登山道は随分と歩いていた。僕のやり方は、ここに入りたいと思ったところは、夏山にでかけた。地形や特徴的な目標物の見え方を記憶しながら、地形図で尾根筋・沢筋とその方向を確認しておく。今は廃道になったらしい?けど、芝倉沢の南側尾根を辿る、中芝新道とかも歩いていた(芝倉沢そのものはほとんど見えなかったのだけれどネ)。そして、地形図でみる限り、斜度が一定で、急斜面がなさそうなところの一つがここだった。
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Mountain Daxのツアーパックも処分セール品 |
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芝倉沢へのドロップポイント |
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コンディションがいいときの芝倉沢はまさに天国 |
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幅も広く、斜度も一定で滑りやすい |
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幽の沢、一ノ倉沢、マチが沢の岩壁をみながら帰る |
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無事に下山して、谷川岳遭難慰霊碑にお参りする |
そんなことをやりながら、同時にイロモノ系にも手を出して、浅間山も滑った。
3月頃だったか、ドカ雪が降って浅間山が真っ白になった。で、周辺スキー場の積雪増加量をチェックして、どうやら行けそうだと判断した。
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あるアウトドアショップに写真を送ったらパネルになったw |
今の浅間山は積雪量が減ってしまい、火山噴火による立ち入り制限もあって、同じような挑戦は多分無理だろう。幸運が重なって、山頂直下から滑降できたのは本当に幸運だった。
至仏山にもこの時期からなんどか行った。あるときは、ゲートが開くのが待ち切れずに、戸倉から徒歩で入山して、鳩待峠周辺でビバークして至仏山を滑ったりした。
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Skiier: Yu-ta |
そんなふうに、できる範囲で行動範囲を広げつつあった僕だけれど、単独で受け入れられるリスクと、やりたいこととのギャップはあった。
雪崩の対策とか、単独であることとか、クライミング(登攀)の経験が無いこととかが足かせになっていることを感じていた。
そんな時に、僕にとって大きな人生の転機が訪れた。
注1 積雪期登山って言うと、大体はアックス&クランポンとかの話になる。でも僕は、厳冬期の雪山なら、「どうやってそこで生活するか」が、大事だと思っている。
注2 クロスカントリー競技でエッジを使うことって無い。だから、そもそもエッジが無かった。エッジを使う可能性がある場合でも、メタルではなくて細いプラスチックエッジだったりとか、滑走面の角に熱を入れて硬化させてエッジの代わりにする。そんなレベルで戦っているのがクロスカントリースキー。
注3 僕が所属していたスクールの、上部組織の上級イントラ認定試験にはクロカンスキーの技術検定があったらしい。僕はそんな試験受けるレベルじゃ無いので詳しくは知らない。先輩イントラ(超上手い人)がクロカンスキー買ってきて、七転八倒しながら練習していた。
ちなみに、「歩いたり走ったりするためのクロカンスキー」で、「華麗に滑れること」がイントラの条件だったらしい。んで、あまりにもクロカンに苦戦していた先輩イントラが、「校長ってほんとにこれで滑れるんですか?」って言っちゃったw
で、カチンと来たのか、背中で教訓を与えたかったのかw、校長は、どこかに仕舞っていたクロカンスキー出してきて、そのスキー場の一番急な斜面(しかも人工雪の固いところw)を、ウェーデルンで降りて来たと聞いた。