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2021年4月9日金曜日

落ちてくるモノたち

BCにはゲレンデとは違う特有のリスクがある。危険度の高いのが雪崩と落石(注1)。一般的に注目されやすいのは雪崩のリスクで、いろんなところで注意喚起をされていて、情報も手に入れやすいですね。

この投稿では、あまり紹介されない、落石の危険性について書いてみます。

BCで落石がないのは、自分たちより上に斜面がない稜線だけです。下の写真は、谷川岳芝倉沢。一ノ倉岳へ登り返した先にある、こんな心躍るドロップインポイントなら、落石はありません。思う存分これから滑る斜面を見下ろしてください。

芝倉沢下降点、正面は谷川連峰最高峰の茂倉岳


下降を始める前に、メンバーとは打ち合わせておきましょう。途中で停止する場合は、どこにするかです。下の写真は八方のBCで「砂時計」と言われている場所です。落ち口からボトムまで、危険エリアなので基本はノンストップ。ただ、もし、停止するとしたらどこが適当かわかりますか?その判断ができない人を先頭に行かせてはなりません。

白馬八方砂時計

落石には、動いているモノと、すでに落ちて斜面で障害となっているモノがあります。便宜的に、動いているモノを「落石」と呼び、斜面で隠れているモノを「地雷」と、呼ぶことにしましょうか。

BCの落石が厄介なのは、雪の上を転がってくる時にはほぼ無音、音もなしに降ってくる。

「ボスッ」と、鈍い音がして、振り向いてみたら、さっきまでなかったホヤホヤの落石が雪に突き刺さってた。そんなの見ちゃうと、オシ●コ漏れそうになっちゃいますよね、冷えてるし。落石の直撃弾を避けるためには、上を良く見て、「尾根状の岩場」の下を選んで停止します。まずは雪の上に真新しい落石(注2)が転がっていないかを良く見ること。

Shibakurasawa, Mt. Tangigawa

ここの真ん中は岩場の尾根状(凸状)ここで落石が出ると、音がするのでわかりやすい。そして、出た落石は、尾根の左右に弾かれて行くはずなので、尾根の真下は比較的安全。ほんでもって、この尾根筋は北東に伸びてて、ここは北向きなんです。日射を受けると凍結が緩むので、南向き斜面からはドッカンドッカンいろんなモノが落ちていきます。だから、止まるのはできるだけ北側を選びましょうね。

停止する時は必ず上を向いて

ま、そこがどんなにローリスクに思えても、落石は跳ねて方向を変えたり、ブチ砕けて散弾銃みたいに、かけらを飛散させたりして、思ってもみないところから攻撃してきます。だから長居は無用です。

次に地雷についてです。

下の写真は芝倉沢のデブリです。デブリは、土砂崩れみたいに、いろんなモノ(木の枝や幹、土砂や岩石)が一緒に押し流された跡…そう、いろんなモノを…

ある時、谷川岳マチが沢で夏スキーしてたら、デブリの下からボロボロになったウインドブレーカーが出ていて…

おっかなびっくり確認したら、中身は入っていませんでした、あー良かった。

地雷の供給源、ブロック雪崩の跡(デブリ)

そうやって流れ出た岩石は、最初は雪の表面にあります。

大きめアイスブロック

しかし、岩石は黒っぽい色をしているので、日射を受けると熱を吸収します。そんで、周囲の雪を溶かして、雪の下にだんだんと沈み込んでいきます。そこの上に、ちょっと新雪が降っちゃうと、地雷原の完成。

最悪なのは春の嵐が来た後の富士山。

富士山の表面はスコリア(軽石みたいな多孔質の石)で覆われています。こいつらは普通の石と比べて軽いんで、強風が吹くと飛ばされるんです。あるシーズン、猛烈な春の嵐が来たんですよ。で、その後チョロっと降雪があって、斜面が真っ白になったと。んで、イソイソと富士山BC行ったら…見た目はまっさらな新雪なのに、雪の下3〜5cm に、ほんと満遍なくって言いたいくらいスコリア地雷原www

こうなっちゃうと、もう、人間の努力ではどうしようもないので、雪はたっぷりあるのにシーズン終了ってなっちゃいました。

脱線した話を戻すと、小さな地雷はどうしようもありません。ただ、マンゴーくらいの大きさの地雷になってくると、ヒットすると洒落になりません。なので、沢筋のコースを降るときは、デブリの通り道である流心を極力避ける。そして、雪面の上の微妙な盛り上がりを見逃さないようにする。不安があれば、徹底的に減速して、ヒットした時のショックを減らすようにしてください。

滑るコースが東向きならスキーヤーズレフト、西向きならスキーヤーズライトが地雷原になっている可能性が高いです。理由はさっき書いたけど、雪崩が出やすいのは南向き斜面だから、ですね。

では、皆さんご安全に。おしまい

注1 ここでの危険度とは、「発生する確率」×「遭遇したときの被害」であると考えてください。発生する確率が高く(頻繁に起こり)、尚且つ遭遇した場合の被害が深刻なのが最大の危険度ということ。どちらかがゼロなら、掛け算なので、危険度ゼロ。

注2 真新しい落石の場合は、すぐ脇の雪面に、落ちてきた時にできた窪みがあったりする。落石そのものをよく見ると、割れたところの断面は色が違うことがわかる。そこだけ苔や草がついていなかったり、酸化していなかったりするからね。

2021年4月8日木曜日

なにはなくとも自力下山、ヘルメットしようぜ

*警告* ヘルメットは重要な安全装備です。正しい情報はメーカーやプロショップから得るようにしてください。このブログの内容は、非専門家による、個人的な感想です。

僕はゲレンデでもBCでも、スノーボード のときは必ずヘルメットをする。スノーボードの魅力の一つはスピードで、原付バイクぐらいスピードが出る遊びだから。

ちょっと言いにくいけど、ヘルメットしてなかったらヤバかったって転倒は…何回もある(ゲレンデです、BCではありません)。ヘルメットを忘れたとしたら、ゲレンデだろうが、BCだろうが、滑らずに帰っちゃうかもしれない。

もちろん人によって考え方は違う。ヘルメットを被らない、持っていない人もいるし、僕は人にかぶるように強制したりはしない。

ただ、谷川岳とか、八方尾根周辺とか、富士山とか、斜度があって滑落のリスクがあるとか、落石が多いとか、そんなところに出かける場合はヘルメットの着用を強く推奨する。特に少人数の場合、誰かが怪我すると限られた人数でのレスキューになる。その人一人の問題じゃなくて、パーティ全体のリスクがあがっちゃうからね。

この投稿では、スノーボード に求められるヘルメットの性能について考える(注1)。そして「他のスポーツ用ヘルメットを流用することは可能なのか?」ってことも、僕の考えを書いてみる。

スノーボード 用ヘルメット
1 耐衝撃性 (全方向)      ◎
2 対貫通性能           ◎
3 耐久性(反復する衝撃の吸収)  ◎
4 重量              △

スノーボードでは、あらゆる方向に転倒する可能性があるし、回転しながら滑落することもある。だからすべての方向の衝撃を吸収できるようになっている。フィールドには岩や木などの尖った物もあるので、それらが容易に貫通しないような対策もされている。斜面で転倒した場合、一度だけでなく繰り返し衝撃を受ける可能性があるけれど、その場合でもある程度は耐えるようになっている(注2)。安全に振った設計なので、重量はそれなりに嵩む。

下の写真で僕はスノーボード用のヘルメットをかぶっている。このときは単独行で、同行者のレスキューを期待できない。だから絶対に行動不能になってはいけない。たとえ重量がかさんでも、ハイクアップで邪魔になろうとも、もちろんスノーボード 用ヘルメットを携行です。

Shibakurasawa, Mt. Tanigawa


クライミング用ヘルメット(スチロール)
1 耐衝撃性 (全方向)      △
2 対貫通性能(上のみ)      ◯
3 耐久性(反復する衝撃の吸収)  △
4 重量              ◎

スポーツクライミング用のヘルメットは、上からの衝撃と耐貫通性能が最優先されている。理由はもちろん落石対策。それ以外の保護は、モデルによって違うものの犠牲にされることが多い。特徴として、上部には通気口が開けられない。開口するとそこから落石やデブリが侵入しちゃうからね。で、蒸れを防ぐための通気孔は側面に取る。だから、側面の強度は落ちてしまう。

このタイプは、「万が一の落石」に備えるためのもの。もし一発くらったら、そのまま撤退するって感じだから、反復する衝撃に耐えることは想定していない。重力と戦うクライミングというスポーツの性質上、軽量で携行は楽なモデルが多いかな。

欠点を理解の上で、軽量化が鍵なハードなBCで、落石が最大のリスク…みたいな場所で使うならアリでしょうね。谷川岳の芝倉沢とかね。
 
Climber: Tetsuya, Black Rock (Lion Rock, Komochi) 

クライミングヘルメットにはハードシェル型ってのもある。これは、落石が頻発するところとか、一発くらって撤退するのに何日もかかるから、その間になんども落石食らう可能性があるとか。それか、沢登みたいに、そもそもゴツンゴツンぶつけながら進むの前提。

耐久性(反復する衝撃に耐える)を最大限重視するかわりに、軽量性は犠牲になる。椅子にもなるくらい丈夫だしw、便利といえば便利。

Ishidera3, Black Rock-Komochi


バイク(スポーツサイクル)用ヘルメット
1 耐衝撃性 (全方向)      ◯
2 対貫通性能           ×
3 耐久性(反復する衝撃の吸収)  △
4 重量              ◎

ロードバイクやクロスカントリーMTB用のヘルメットは、前方への転倒が多いので、前面(おでこ)の保護が中心だけど、それ以外もそこそこ保護されている。

対象とするスポーツは運動量が多く、発汗対策が重要なので、通気孔が多く開いている。通気孔のせいで対貫通性能は非常にプアだ。このタイプのヘルメットを登山やBCに流用する場合は、落石対策としては無意味であることを理解しておくこと(注3)。

Rider Yohichi, Mt. Akagi Single track

スポーツサイクル用でも、MTBダウンヒル用はチンガードがあって、保護機能はさらに充実している。岩角や木の枝など鋭利なものへの衝撃も考慮されているので、安全性も高い…けど、スノーボードで使っている人はほとんど見ないね ←あたりまえw

Rider: Kei & Yuta / Location: Fujimi Panorama resort

まとめ

スノースポーツ用のヘルメット買いましょうね。日本製・米国製・EU製の中から選ぶこと。そして、Mips対応が最低条件(注4)、GIROとかBolle とかが安い割によくできてると思う。上手に探すと、1万円くらいでちゃんとしたの買えるし。

中華製品はやめようね。Ama●onとかで、激安商品が出品されてるけど…気がついたら死んでたって、嫌でしょ?

まぁその、万全の準備をするとそれ以外のところを怪我するんだけどね。

ヒジが痛いヨ〜 Rider Thomas F.

スポーツクライミングのヘルメットを一つ持っておくと、いろいろ(スノーボードでは欠点もあるけど)使い道があるかもね。MTBライドでも、コースによっては使えるし。

Rider Jibe, Usui single track.



大事なことが最後になっちゃったけど、
MTBライドで、タンクトップとショートパンツはヤメような。
約束だよ!


おしまい



注1 長くなるので端折ったけど、ゴーグルとの相性や、保温と通気のバランスもウインタースポーツでは重要。暖かいだけじゃなくて、春先にはイヤーマフ(耳当て)が外れるようになってて涼しいとかね。

注2 メーカーは、一回でも衝撃を受けたら廃棄しろって言ってます。でも、そもそもの想定しているリスクがどうなってるかって話です。内側の衝撃吸収材が、一発で砕ける最低限なのか、複数回は耐えられそうなのかって話。

注3 タウンサイクル用のヘルメットには、柵とか車とか、街中にある障害物の貫通対策を施したものがある。通気孔を減らし、表面にポリカーボネートなどを使うことで、異物が貫通するのを防いでくれる。ただし、通勤や通学などの比較的短時間の使用を前提にしているので、重量面で不利だったり蒸れることもあるようだ。

注4 Mipsの効果がどれほどあるのかは正直わからない(実験では有効性が証明されている)。ただ、こうした先端技術があるのに、それを積極的に取り入れていない製品は信用できないと思いませんか?

2021年4月7日水曜日

Hierarchy in Boardriding

スノーボードの世界で、Snow Surf とかサーフカルチャーにインスパイアとかって聞くよね。ボードの乗り味がスケートライクな〜とか、パークアイテム(レールとかね)やハーフパイプのトリックはもともとはスケートボードから来てたりする。同じ横ノリスポーツだから、そんなコラボレーションはあるよね。

じゃぁさ、逆の方向で、サーフィンとかスケートボードで、「スノーボードに影響を受けたぜ」ってムーブメント…あるんかね???

それはね、多分、無い…

ボードライディングの世界はヒエラルキーが存在する。一番はサーフ、次が sk8 (スケートボーディング)、そして… スノーボーディング

Surf  >>>>>  sk8  >>>>>   .....超えられない壁...... snow

えっ?そんなわけない?じゃぁさ、ちょっと考えてよ。

サーファーじゃなくても、サーフブランドのTシャツ着る。
スケートしなくても、スケートブランドのTシャツ着る。

スノーボーダーじゃない人が、スノーボードのTシャツ着る?
胸に Burton Snowboards ってプリントしてあるTシャツ。
Union とか、GNU とか、BTMとか、Lib Tech…とかは?
Gentemstick ってステッカーが車に貼ってあったら、あ、「スノーボード好き」なんだねって思われて終了でしょ。

あるスポーツがメジャーになって成長できるかどうかって、「そのスポーツをしない人が、喜んで身につけるくらいの、ブランドアイデンティティを作れるかどうか」にかかっているらしいんだ。

Jake はこう言ったそうだ…

Air Jordan履いてる人、バスケしてないよね?アディダスのクロスカントリーなんて、野山を走るためのシューズなんだぜ。普通の人は野山走らないだろ。
 
コアなファンは、もちろん重要だ。だけど、一般の人、そのスポーツをやったことない人、やってるけど下手な人たち、そうした人たちをもっと大事にしようぜ。俺たちのロゴがプリントされたアパレルやシューズ、バッグやアクセサリーが、普通にストリートに溢れるようにしようぜ。

問題は…横ノリの中で、スノーボードのポジショニングがどうやっても上がらないこと。ハーフパイプやビッグエアーなんかのイベントは盛り上がって、 スノーボードバブル盛り上がって、ショーン・Wとかはアホほど稼いでる。

でも、サーファーのケリー・Sが年間で稼ぐ金額は、桁が違う。

で、いろいろなことをやったけど、結局のところ、スノーボードのハイラーキーが上がることは無かった。

ほんで、Jakeと彼の愉快な仲間たちは Gra●is というスケートオリエンティッドなブランドを立ち上げた。そのストーリーを聞いて、僕はこう思った。

いっそのこと、サーフブランド立ち上げれば良かったのに…

その後僕はサーフ・スケート・スノーに加えて、フリースタイルスキーとかもやってるブランドに転職した。で、僕はそれまで交流したことのないタイプの人たちと出会えた。スケート馬鹿、サーフ馬鹿と話して理解したんだけど、Jakeがサーフブランドに行かなかったのは正解だったなって思う。

会社のイベントで、SK8のトップライダーである U●A 君と意気投合した。品●駅かどこかの構内で彼のスケートで遊んだ。僕はスケート乗れないからパドリングして、駅の硬くて走るタイルの上で最高のスピード感を楽しんだりしてた。

しまいには、警備員の人が本気で追いかけて来た

おひらきになるときに、彼が僕にそのスケートをくれた。

おっさんだから怪我するとヤバイすけど、練習して上達したら一緒に遊びましょうよ。

怪我が怖くてディスプレイ化してしまったスケート…スマヌ

この時は本当に贅沢なイベントで、U●A君や、スノーボードのライダーのI川・A君とか、サーフのx君とかも来ていた。そんで、よし、今度はみんなで波乗りしようとか、どこどこのスケートパークで練習だとか、「やったことないけど」スノーボードにも行ってみたいとかで盛り上がっていた。

結局のところ、サーファーとかスケーターは、スノーボードをやったことないんだ。

理由は良くわからない。だけど、サーフとかSk8のイメージを「横取りして」成長しようとしても、うまく行かないんじゃ無いかなって思う。パンチアウトされて終わり。

Jakeが言った通り、初心者とか、下手な人とか、コアじゃ無いけどシンパシーを感じてくれる人たちをどれだけ周囲につくっていけるのかが、肝心なんじゃないかなって思う。排他的になって衰退したスポーツってたくさんあるしね。ス●ーバブルってあったけど(略)

で、微力ながら、スノーボーディングの発展に貢献しようと僕は、次のお休みもお山に行く。そして、スノーボーディングって楽しいんだよってことを、身体全部使って表現する。そんで、(今はコロナでできないけど、)リフトとかゴンドラで乗り合わせた人とフレンドリーに挨拶する。

スノーボードの発展のためには仕方ないけど、シーズン終了まで頑張って滑ろう、そんな風に決意を新たにするわけです。

あー、スノーボード のためとは言え、つらいなーしんどいなー wwwwww

ずっと冬ならいいのにね。

おしまい

2021年4月6日火曜日

BCのことを中心に考えて滑る、僕の場合

テレマークスキーを処分してしまったので、僕の雪山遊びと言えばBCスノーボード(注1)。で、僕の滑りはBCに合わせたもので、それが個性だと思っている。

下の写真は、乗鞍岳の富士見沢を滑る僕。いくつか特徴を上げると「前向き」「脱力」「高い姿勢」「背骨を立てる」。

それと、静止画ではわからないけど、僕は「上半身をブロック」して滑っている(ボードの進行方向に対して、腰と上半身の向きがほとんど変わらないようにしているということ)。

Location: Fujimizawa, Mt. Norikura

なんでそうしているのかを説明してみる。

視界の確保

BCでもっとも重要なのは、視界の確保だと僕は思っている。ゲレンデと違って、斜面にはいろんな障害物がある。そしてパトロールが、注意喚起のネットを張ったり、旗竿を立てたりなんてことはない。スノーボード の場合はコース取りも重要だ。斜面の途中で失速して止まっちゃうって事がないように、それでいながら無理のないラインを引きながらライドしなければいけないしね。

横乗りのスノーボード は、バックサイドターンの視野がどうしても狭くなる。でも、進んでいく方向を「両目で見る」ことはとても重要だ。両目で見ないと距離感が掴めないから、左肩の上に顎が乗っかるくらいに顔を前に向けてやる(注2)。

そして、遠い位置の危険を見つけるために姿勢を高く保つ。深いカービングターンで低い姿勢になっていると、少し先の、ちょっとした斜面の盛り上がりの向こうに、どんなトラップが隠れているか分からないからね(注3)。

楽に滑る

バックパックを背負ってハイクして滑る、それがBCスノーボード。先日行った谷川岳芝倉沢なんかそうだけど、滑る前に脚力使い切ってたら帰って来れないから。だから、ハイクアップも滑走も「疲れない」ことが重要になってくる。

高い姿勢を維持して滑ると、視界も確保できるし疲れにくくなる。腰の位置が高くなる≒腿の角度が立つと、筋力を使わずに滑れる。膝を曲げて沈み込んだり、抱え込んだり、ようするに腿の角度が寝るたびに少しずつ脚力は削られていく。

疲れていても確実に滑れるように練習することも大事かな。整備されていない斜面を滑るのだから、クラストとかストップスノーとか、狭い急斜面とか、そんなところも、確実に減速して滑れなければダメってこと。疲れてくると暴走する、そんな人は山に入ってはいけません。

バックパックの荷重と腰痛対策

上半身をブロックする理由の一つは、バックパックの重さで体が振られないようにすること。振られるとバランスが崩れるために、体幹がよじれて疲れてしまう。

もう一つの理由は、振られなければ視線がブレないから。視線が安定していなければ、白一色の積雪期で、わずかな陰影で危険を見つけることは不可能だしね。

上半身を安定させることで、バックパックを背負ういいポイントもわかってくる。僕は、ゆったりした動きの中で、背骨と骨盤を立てて滑るのが腰と背中に優しいと思うようになった。

実際のフィールドで

写真を見ながらいくつか説明をしてみる。

Fujimizawa, Mt. Norikura

真っ白で広い斜面で、楽しそう?このときはうっすらと雪が積もった後で、新雪はストップスノーに変わりつつあった。そして、沢の中心部は流水の痕がまだらに凍りついていて、数日前の雪崩で出たスノーブロックが隠れている。

雪の色を見て、ここは新雪なのかザラメなのか、それともアイスバーンなのかを判断して滑る。そして、沢の中心部を横切る時には、雪面にわずかに飛び出た突起の下には、アイスブロックが隠れていることを予測して避けて滑るんだ。

Fujimizawa, Mt. Norikura

標高が下がると、雪の中からブッシュが顔を出してきている。地上に現れている樹木は基本避ける。直径3cmくらいの枝でも、まともにヒットするとかなり痛い。ウェアが破けることもあるし、ゴーグルが割れることもある。

植生の状況は結構重要で、森林限界の上なのか、地衣類や灌木だけなのか、ダケカンバなどの落葉樹があるのか、いろいろ観察することで隠れた危険を知ることができる。

カンバ類などの広葉樹がある斜面には、雪の下に、斜面の下に向かって押し倒された幼木が隠れている。そうしたところをトラバースするときは、ノーズを上げておかないといけない。隠れている幼木の、幹の下にノーズが入っちゃったら…ボードか足がぶち折れちゃうかも…幼木をヒットしても、ノーズキックが幹の上に乗り上げるように、なおかつスピードを殺して進むことが必要。

この素晴らしいスノースポーツを、できるだけ長い期間楽しみたい。そのためには、やっぱり安全で確実に滑るってことが大事なんじゃないかな(注4)。

安全がしっかり確保されたゲレンデで(パトロール・降雪・圧雪の皆さんに感謝)、しっかり滑り込むのもとても大事だと思う。疲れが溜まった時でも確実に滑るとか、滑走スピードの限界値を上げておくとか。高い姿勢、低い姿勢をあえて取って滑るとか。腕を前で組んだり後で組んだりしてバランスの対応幅をあえて狭くして滑るとかね。

BCやらない仲間たちと、時々リフトの上とかでBCの滑り方について話すんだ。だけど、ここまで詳細に理由を交えて話すことは無い。ていうか、リフトの上でこれ話されたら、ウザいよねw

でもまぁ、BCスノーボーダーの僕は、こんなことを考えて普段から練習してます。そんなことは、残しておいてもいいのかなって思って書いてみました。

おしまい

*僕がここで書いたことは、BCでテレマークスキーに親しんで得た経験をベースにしています。BCではこんなリスクがある、それに対してスノーボードだとどうすれば安全なのか?そのためにはどうやって滑ればいいのか?そうやって、出来上がった僕の個性。技術論的に正しいとか、正しくないとかを言いたいわけではまったくありません。スキーとスノーボードの両方を経験できたことは、本当にラッキーだったなってしみじみと思います*

注1 積雪期登山とか、単独ではあまりにも困難だし、というかパウダーあるならゲレンデのスノーボードが楽しいしね。アイスクライミングとかも興味あったけど…あれは危険すぎるでしょw

注2 普通の斜面で滑る時、バックサイドターン進行方向は左肩の上を通して見通す。これが左の脇の下を通さないと、先の状況が見えなくなったら、かなりの急斜面ってこと。あ、それと、トランシーバーでイヤホンマイクを使う場合、あなたがレギュラースタンスの場合は右耳に付けてね。バックサイドの耳は開けておいて、聴覚でも情報を掴むべきだと思うから。僕はBCでは耳を塞がないスピーカーマイクを使っています。

注3 何回かギリギリセーフを経験したことがある。間一髪で避けたり、急停止したり、飛び越えたりw。どの場合も、ほんのわずかでも危険に気がつくのが遅れたら、無事では済まなかったかもしれない。

注4 僕はゲレンデでは結構スピードを出して滑る。でも、BCでははっきり言って遅い。というより、BCでは普段の6割くらいの力で滑るようにしている。もっと状況が悪ければ3割とか。で、普段から自分の滑走能力を上げていれば、余裕も増えるし、安全に素早く行動ができると信じている。

2021年4月5日月曜日

DAY37 丸沼でゴンドラ回し

谷川岳芝倉沢から、一日挟んで丸沼高原に出動。

さすが標高高くて降雪機に投資しているだけあって、メインになる斜面はバッチリ。朝イチから…朝ヨンくらいまでは雪もしまっててとても快適でした。

ただまぁ、芝倉沢BCの疲労度が思ったよりも残ってたのと、なんというか、ゲレンデで普通に滑るのは、もう十分かなって気持ちにもなった。そんなこんなで2時間で早上がり。帰宅して、BC用のボード2枚をホットワックスして、ギアの整理をする。


至仏の様子を見たかったんだけど、残念ながらガス

ロープウェイ山頂駅から、スキーヤーズライトに出るとこんな感じ。

黄砂は飛んでるけど、走る雪

日光白根山も残念ながらガスの中。西面の大ガリーはちょっとだけ見えたけど、もう真っ黒で雪はなさそうでした。


シルバーコースのコブは、丸沼の上級者が育ててるだけあって、滑りやすい。


丸沼も岩鞍も、上手い人が育てるコブは粒ぞろい

とりあえず、オープンしているコースは全部回ったので早上がり。


帰宅してから、A-Oneのホットワックスを仕上げ。これは、一昨日、谷川岳芝倉沢BCから帰宅して、ワクシングだけしてあった。それをもういっかい熱入れて、汚れを取り、スクレーピング&ブラッシング。

次は神楽か乗鞍か、至仏かね?

2021BBQシーズン開始

いろんな雑事(庭仕事とか)済ませている間に、強かった北風も収まってきた。そこで、今年初のBBQというか、お庭でちょっとなんか焼くかってレジャーを開始。

今年はお友達をたくさん呼んで、焼いたり蒸したり炙ったりしたいなぁ。

おしまい

2021年4月4日日曜日

Gentemstickが、スーパーモデルのポジションをテイクオーバーしたワケ

Gentemstick(ゲンテン)というスノーボードブランドをご存知だろうか。99-00くらいのシーズンに立ち上がった日本のブランドで、先がとんがっていて、テールが燕の尻尾のように割れていて、単色使いのトップシートと言うと、なんとなくイメージがつくんじゃないかな。

ゲンテンには根強いファンと、アンチと両方が存在する。僕の周囲にはアンチはいない。ファンか、興味はあるけど高くて手が出ない人が多いかな。

そう、このブランドは値段がとても高い。ボトムで10万円は超えてくるし、ミドルレンジで15万円くらいする。先行予約の分+ミニマムしか生産しないから、流通在庫が過剰になることもなく、だからこそクリアランスや値引きも基本的にない。

「アンチ」って人は周囲にはいないけど、ちらほらと聞こえる声を拾うと「高すぎる」「仕上げとカッコ優先の見てくればかり」「特別感漂う信者がキモい」みたいな感じ?なのかな。ひどい言い草だよねw

見てくれだけの床の間ボードだったら、ブランドとして認知され続けるってことありえない。良く言われるのは、国産ボードとしての品質。オガサ○スキー製作所謹製という、技術力と品質管理によって、素晴らしい仕上げと耐久性と乗り味を持っているということ。

で、僕はこの投稿では、そのあたりの一般的に言われている魅力からちょっと離れた話をしたい。それは、ゲンテンが持つユニークなシェイプと、それがパウダーライディングの世界を広げた理由について、みたいな。

デブリと落石だらけの斜面を高価なゲンテンで滑るユーヤ、漢だね

ここ最近はパウダーボードというコンセプトが一般化してきた。ただ、ゲンテンが立ち上がった99-00当時は、パウダーライディングやBCと言うと一部の上級者だけが親しんでいる、そんなイメージが一般的だった。

BC・パウダーライドのレジェンドだったクレイグ・ケリーのシグネチャーボード、スーパーモデルの話を前に紹介した。ただ、このモデルもBC・パウダーライド用として使われていたかというと、ちょっと疑問がある。前に書いたことの繰り返しになるけれど、小足・小柄・体重軽めの日本人にぴったりのディメンションであることが人気のベース。海外ブランドの、所有欲を満たすトップモデルの中で、「たまたま」日本人に使いやすいから人気が出た、そんなところが現実だったのではないだろうか。

当時、パウダーライドを楽しんでいたのは上級者が中心だったと言った。パウダーの敷居を高くしていた理由は大きく分けて2つある。一つは浮力、もう一つはスピードコントロールの問題だ。

ノーマルボードでパウダーを滑る場合は、浮力が不足する。ノーズを雪面から浮かせるためには、ポジションは後ろ足荷重になる。そうすると、後ろ足がパンパンに張ってきて、すぐに疲れてしまう。これを防ぐには、セットバックを最大にするか…加速するくらいしか方法が無い。スピードが上がれば、浮力は増すから。

バランス取れるポイントは狭くて、ターンの切り返しで前足に荷重しすぎればノーズが食われて前転。つまり、パウダーライディングは、狭いバランスを維持しつつ、斜面と雪質の変化に対応しつつ、スピードを殺さずに滑れる、そんな上級者だけの物だったというわけ。

そこまで練習できないよって場合は、道具に頼る方法もある。だが当時だと、パウダーの浮力を重視するなら、長め・太めサイズを選ぶしかない。ボードの底面積が大きければ、浮力も増す。しかし、長くて太いということは、ノーズだけじゃなくて、テールも大きくなる。テールが大きいと、深い雪でも走るようにはなるのだが暴走しやすい。

下の写真の真ん中は Jones Hovercraft というパウダーボード。極太なシェイプはパウダーで無敵の突進力と加速力、安定性を誇る。面ツルで深いパウダーは天国です。しかし、テールがワイドで張りが強いので、テールを沈めて減速しようとした時、沈まずに暴走することがある(僕が下手なだけですがw)。

右側はYES. PYLで、一般的にはパウダーライドが得意なフリーライドモデルとされている。しかし、僕が乗った経験では、どちらかというと氷河みたいな硬くてオープンなバーンをかっ飛ばすのがきもちいい。パウダーも滑れるくらいの浮力はあるし、加速も十分だけど、スピードコントロールはライダー次第という難しさはある。こちらもテールが結構ボリューミーで、減速よりは加速優先って感じ。

パウダーに強いと謳うモデルにも、それぞれ個性がある

ゲンテンのパウダーボードは、細身で長めなのだが、浮力はノーズの長さで稼いでいた。細身なので全体としての浮力は控えめなのだが、絶対にノーズ食われないくらいに長いノーズを持っていた。これならターンの切り替えごとに前足に乗れるので、後ろ足を休ませられる。こうすることで、前後位置のバランス感覚をさほど練習しなくても、パウダーライディングを楽しめるようになった。

それと同時に、ゲンテンはテールをぶった切った。そうすることで、ターン弧で速度の調整ができなくても、テールを沈めれば減速できるので無問題!的なシェイプを作った。そんで、それをスワローテールとかのネーミングを付けて、サーフィン的な味付けで呼ぶことで、差別化をしていった。

気がついただろうか? ゲンテンのこうした特徴は、スーパーモデルの長所をさらに伸ばし、コントロールが難しいところを解消したものだということ。日本人の体格にベストマッチするフレックスとトーション、細くてクイックな動きができて、しかもBC・パウダーという特別感のあるフィールドへの敷居を下げてくれた。

僕は、これこそがゲンテンが地歩を固めていった理由なんじゃないかなって思う。「乗って楽しい」って価値が無ければ、ゲンテン買う人はいなくなったはずだしね。

じゃぁなんで僕はゲンテン履かないのかって?
だって、高くて手が出ないよw

*この投稿もブログ主の妄想に基づく単なるフィクションです*

2021年4月3日土曜日

DAY36BC4 デブリーランドもいとおかし 芝倉沢

谷川岳のBCと言えば、一般的なのは田尻沢〜熊穴沢。

その次あたりに来るのが芝倉沢かな。芝倉は技術的には難しく無い。雪崩と落石、雪の中に隠れているデブリのヒット、シュルンドへの転落とかさえ気をつければ。

そして、トマオキから延々と続く踏み抜き地獄。いいかげん腿の筋肉が終了したところで、一ノ倉岳への登り返しに耐えられる持久力。

そんで、湯檜曽川に降りてからのルートファインディングと、延々と続くスケーティングとストック滑走に耐える体力だけあればいい。簡単だね?

正直、先週の大雨で、芝倉沢のというか、谷川全域のBC賞味期限は終わったろうって感じ。

Rider: Yuya  Location: Debris-paradise Shibakurasawa

で、ユーヤ先生曰く

「デブリが出まくってるってことは、落ちるやつが落ちちゃったから、それ以上雪崩がないってことですよね」

「……お、おう、そう…だよねなんか違う気もするけど

天神尾根を登る

天神平に向かう途中はずっと雨。水上は雨は降ってないけどガスガス。まぁ、天気図上でも、予報でも、天候は回復傾向のはずなので出動。


熊穴沢避難小屋、この1週間でかなり融雪が進んでる気がする

今日の僕は、軽量化のためスノーシューはやめて、6本ヅメのクランポン+アックスのコンビネーション。ユーヤはダブルポールにスノーシュー。

Rider: Yuya  Location: Okimimi, Mt. Tanigawa

肩の広場も、トマ耳もずっとガスガス。奇跡的にオキ耳で晴れ間が出たので記念写真。

奥の院

ハイク中はずっとガスガスで、一ノ倉岳の先のドロップポイントでもガスガス。しばらく天候回復を待ったけど、どうしようもなさそうなので、諦めて滑走開始。

まず一人が滑る。そんで、シュルンドや落石の状況を確認する。で、状況を無線で連絡して、後続はそれに合った滑りで下降するって感じ。このエリアは、道迷いの恐れはない。だけど、スキーヤーズレフトからはデブリが、ライトからは落石のリスクがいつもあるところ。慎重かつ、迅速に通過する。

ガスガスの下に出るとずっと、ひたすら、デブリーランド

右岸がつながっているという情報を得ていた

スノーボードを一回も脱がずに降りられたが、ここにBC初級者連れてきてたら、泣かれちゃうねw


つながっているという右岸をご覧ください

ほんで、なんとか湯檜曽川まで下降して、あとはダルダルで下山する。毎年のように「川坊主」と出会える芝倉沢&旧国道出会も順調に通過。ここは夏は結構大きい滝になっている。

画面中央から右上に斜めに出ているのが旧国道

一ノ倉沢出合のユーヤ
これからずっとハイクね〜ってポイントでエナジードリンク

体を鍛えるには、いいコースだったね。帰宅して体重計乗ったら、体重増えてたけど。朝ごはんも、昼ごはんも、行動食で、夕飯食べる前だったのに体重増えてたけどw



スキートラックスのログ

芝倉沢は3年ぶりくらい?最後にきたのは単独だったので、仲間と一緒の安心感はやっぱりありがたい。今度はもうちょっと早めの、滑りが楽しい時期に来たいと思いました。

おしまい