Gentemstick(ゲンテン)というスノーボードブランドをご存知だろうか。99-00くらいのシーズンに立ち上がった日本のブランドで、先がとんがっていて、テールが燕の尻尾のように割れていて、単色使いのトップシートと言うと、なんとなくイメージがつくんじゃないかな。
ゲンテンには根強いファンと、アンチと両方が存在する。僕の周囲にはアンチはいない。ファンか、興味はあるけど高くて手が出ない人が多いかな。
そう、このブランドは値段がとても高い。ボトムで10万円は超えてくるし、ミドルレンジで15万円くらいする。先行予約の分+ミニマムしか生産しないから、流通在庫が過剰になることもなく、だからこそクリアランスや値引きも基本的にない。
「アンチ」って人は周囲にはいないけど、ちらほらと聞こえる声を拾うと「高すぎる」「仕上げとカッコ優先の見てくればかり」「特別感漂う信者がキモい」みたいな感じ?なのかな。ひどい言い草だよねw
見てくれだけの床の間ボードだったら、ブランドとして認知され続けるってことありえない。良く言われるのは、国産ボードとしての品質。オガサ○スキー製作所謹製という、技術力と品質管理によって、素晴らしい仕上げと耐久性と乗り味を持っているということ。
で、僕はこの投稿では、そのあたりの一般的に言われている魅力からちょっと離れた話をしたい。それは、ゲンテンが持つユニークなシェイプと、それがパウダーライディングの世界を広げた理由について、みたいな。
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デブリと落石だらけの斜面を高価なゲンテンで滑るユーヤ、漢だね |
ここ最近はパウダーボードというコンセプトが一般化してきた。ただ、ゲンテンが立ち上がった99-00当時は、パウダーライディングやBCと言うと一部の上級者だけが親しんでいる、そんなイメージが一般的だった。
BC・パウダーライドのレジェンドだったクレイグ・ケリーのシグネチャーボード、スーパーモデルの話を前に紹介した。ただ、このモデルもBC・パウダーライド用として使われていたかというと、ちょっと疑問がある。前に書いたことの繰り返しになるけれど、小足・小柄・体重軽めの日本人にぴったりのディメンションであることが人気のベース。海外ブランドの、所有欲を満たすトップモデルの中で、「たまたま」日本人に使いやすいから人気が出た、そんなところが現実だったのではないだろうか。
当時、パウダーライドを楽しんでいたのは上級者が中心だったと言った。パウダーの敷居を高くしていた理由は大きく分けて2つある。一つは浮力、もう一つはスピードコントロールの問題だ。
ノーマルボードでパウダーを滑る場合は、浮力が不足する。ノーズを雪面から浮かせるためには、ポジションは後ろ足荷重になる。そうすると、後ろ足がパンパンに張ってきて、すぐに疲れてしまう。これを防ぐには、セットバックを最大にするか…加速するくらいしか方法が無い。スピードが上がれば、浮力は増すから。
バランス取れるポイントは狭くて、ターンの切り返しで前足に荷重しすぎればノーズが食われて前転。つまり、パウダーライディングは、狭いバランスを維持しつつ、斜面と雪質の変化に対応しつつ、スピードを殺さずに滑れる、そんな上級者だけの物だったというわけ。
そこまで練習できないよって場合は、道具に頼る方法もある。だが当時だと、パウダーの浮力を重視するなら、長め・太めサイズを選ぶしかない。ボードの底面積が大きければ、浮力も増す。しかし、長くて太いということは、ノーズだけじゃなくて、テールも大きくなる。テールが大きいと、深い雪でも走るようにはなるのだが暴走しやすい。
下の写真の真ん中は Jones Hovercraft というパウダーボード。極太なシェイプはパウダーで無敵の突進力と加速力、安定性を誇る。面ツルで深いパウダーは天国です。しかし、テールがワイドで張りが強いので、テールを沈めて減速しようとした時、沈まずに暴走することがある(僕が下手なだけですがw)。
右側はYES. PYLで、一般的にはパウダーライドが得意なフリーライドモデルとされている。しかし、僕が乗った経験では、どちらかというと氷河みたいな硬くてオープンなバーンをかっ飛ばすのがきもちいい。パウダーも滑れるくらいの浮力はあるし、加速も十分だけど、スピードコントロールはライダー次第という難しさはある。こちらもテールが結構ボリューミーで、減速よりは加速優先って感じ。
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パウダーに強いと謳うモデルにも、それぞれ個性がある |
ゲンテンのパウダーボードは、細身で長めなのだが、浮力はノーズの長さで稼いでいた。細身なので全体としての浮力は控えめなのだが、絶対にノーズ食われないくらいに長いノーズを持っていた。これならターンの切り替えごとに前足に乗れるので、後ろ足を休ませられる。こうすることで、前後位置のバランス感覚をさほど練習しなくても、パウダーライディングを楽しめるようになった。
それと同時に、ゲンテンはテールをぶった切った。そうすることで、ターン弧で速度の調整ができなくても、テールを沈めれば減速できるので無問題!的なシェイプを作った。そんで、それをスワローテールとかのネーミングを付けて、サーフィン的な味付けで呼ぶことで、差別化をしていった。
気がついただろうか? ゲンテンのこうした特徴は、スーパーモデルの長所をさらに伸ばし、コントロールが難しいところを解消したものだということ。日本人の体格にベストマッチするフレックスとトーション、細くてクイックな動きができて、しかもBC・パウダーという特別感のあるフィールドへの敷居を下げてくれた。
僕は、これこそがゲンテンが地歩を固めていった理由なんじゃないかなって思う。「乗って楽しい」って価値が無ければ、ゲンテン買う人はいなくなったはずだしね。
じゃぁなんで僕はゲンテン履かないのかって?
だって、高くて手が出ないよw
*この投稿もブログ主の妄想に基づく単なるフィクションです*