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2025年8月22日金曜日

学生寮の話: 西寮の無頼漢・タテカンタンカ (2/2)

西寮の先輩らしからぬ、柔和で笑顔が素敵なJun先輩から、ナベちゃんとお酒に誘われた話を続けよう。

「Junさんって欠点って無いの?」そう聞いたら、ナベちゃんは腕組みしてしばらく瞑目し…

酒癖は悪いかも…

ボクはビビってさらに聞く。

酒癖が悪いって…殴るとか?
ん?いや?武道の有段者だから、それは無い。
なんかね、幸せになっちゃうんだよね…ずっとニコニコしながら飲んでる。
それは…別に…酒癖悪く無いと思うが?
んーーーー表現が難しいなぁ…
あの人、いい人じゃん?で、周囲に悪人がいるってこと忘れるくらいにハッピーになっちゃうんだよね。そんで、ニコニコしながら際限なく呑んで、しまいには寝ちゃうんだよ…
で、起こすと殴られるんだ?
いや、だからそれは無いって。

なんか、そんなに心配するほど酒癖悪くなさそうで一安心。ボクは話題を変える。

そもそもだな…なんでJun先輩にお酒誘われたの?
あぁ、今度、彼女とスキーに行くんだって。
どこのスキー場がオススメか教えて欲しいって言われてんの。

なるほど…

当時はスキーブームの真っ只中だった。
ボクはグンマー出身、ナベちゃんは東北出身、スキーの足前には自信があった。オススメのスキー用品や、スキー場や、スキーバスツアーや、色々相談されることもあった。

谷川岳天神平のゲレンデサイド

リフト待ちがとにかく酷かったし、レストハウスも満席があたり前だった。だから、デイパックにランチを入れておいて、ゲレンデサイドで休憩したり。

天神峠のお社

周囲で一番高い場所にある鳥居の下から、なぜか湧き水が溢れ出してるとか、そんなマメ知識が割と役に立つ時代だった。

で、ボクとナベちゃんは、風呂を済ませてから Jun 先輩の部屋を訪問した。

入塾のご挨拶や、自己紹介で散々やらされた作法通りドアノックを3回して、返事を待って入室する。

マメで几帳面で、キチンとしている、そんな性格通りの整った部屋。

シワのないベッドと、4人が座れるラグにクッションがある。ちゃぶ台に、ウィスキーボトルとビールに、ガラス製のコップが並んでいる(洗うのが面倒だし、割れるので、ガラスのビールグラスを使っている人は珍しかった)。

おー入って入って〜良く来たね〜
ヒデオと呑むのは久しぶりだね、今日は色々教えてよ〜
キミと呑むのは初めてだよね?名前は?なんて呼んだらいいの?ヒデオと親しいの?W大?

Jun 先輩は、朗らかに声をかけながらビールを開けて、ツマミを勧めてくれる。なんていい人…  

ふと…なんとなく…違和感を感じて、壁を見るとベニヤ板が立てかけてある。良く見ると、1寸角の杉の角材で畳ぐらいの枠を作り、そこにサブロク(3尺x6尺)のベニヤが向こう側から張られている。和室の襖(ふすま)の、襖紙を貼っていない押入れ側を見ているような感じだ、それが壁に立てかけてある。

それは、演劇部の大道具の一部みたいに見えた。

Jun 先輩… 演劇とかやるんですか?

ボクが聞くと、Jun 先輩は照れくさそうに「裏側を見てごらん」という。ベニヤ板を壁から離して、裏側(本来の表側)を覗き込んで…ボクの呼吸が止まる。

学費値上げ反対!
革◯ル、中◯派、セクト主義粉砕!
大学当局の横暴を許すな!

赤とか黄色とかの原色で書きなぐられた…これは…アカン、アカンやつや…なぜここに?
Jun 先輩は、いつもの温厚な笑顔で続ける。

本当は返しに行かないとなんだけど、ヒデオがやめろって言うから…

そのファーストネームヒデオ、ラストネームナベちゃんが続ける。

Jun 先輩交えて馬場で飲むとさぁ、近いって油断があるのか、いっつも飲みすぎるんだ。早◯田まではなんとか帰って来るんだけどさぁ、◯学部の前あたりでいつも寝ちゃうんだよ。無理やり起こすと、「そこの立て看で運んで」って言うんだぜ。いや、タテ看はやばいっすよって言うんだけど、「ボクはT大だし、普段はここにいないから大丈夫、大丈夫!」って。

ヒデオ〜いっつも飲みすぎるって、それは言い過ぎだろう?
いや…3回ありましたよね?

ん? ボクは壁に立てかけてあるタテ看の裏を見た。そこには…確かに…横倒しで立てかけられたタテカンがあと2枚…あった。

ボクの背中をちょっと嫌な汗が流れる。

バレてないの?

誰かが取ってったことは気づいてる、あたり前だけど。
翌週見に行ったら、「タテカン返せ!」って書いてあるタテカンが立ってたし…

えっ?なにそれ面白い!
タテカン返せってタテカン?面白い!

ちょっと黙っててもらっていいですか?

ナベちゃんと今後どうしたらいいか相談した結論は、とりあえずほとぼりが冷めるまでこのまま。いつかタイミング見計らって、解体して粗大ゴミで捨てるしかないか…

ふと振り向いたら、Jun 先輩は横倒しになって寝ていた。
スヤスヤと寝息を立てて…なんか、寝顔もニコニコしていて…ちょっとだけイラッとした

2023年11月17日金曜日

学生寮の話(古川先輩ィお電話です!・2/2)

エンドウ君が仁王立ちになって、気が◯れたのかと思うような呼び出しをする。

きたりょぉぉおおおおおーーーーーー!!!!!
ふぅるかわっ先輩ぃぃぃ!!! ハアハアハア
お電話でぇぇっすううぅうぅーーーーー!!!!! 

エンドウ君というか、学生寮の名誉のために言っておくとさぁ、仕方ないんですよね。

各寮鉄筋コンクリートの4階建で高さがある。横幅も、そうだなぁ、50mプールより長いので75m位?奥行きもね、建物の中心に廊下が走ってて、両側に居室が並んでいる刑務所みたい団地みたいな建物なんですよね。建物の北側にある中庭から、4階端の、中庭の反対側である南側居室まで声を届かせようとしたら…本気で腹から叫ばないと、ダメなのよ。

で、この呼び出しは、2回繰り返す。

え?なんで2回かって?

一回では聞き取れないことがあるでしょう?音楽聞いてるとか、話してるとかね。

1回目は、最悪、「北寮の呼び出しだ」ってことを伝えればいい。注意喚起ですね。
2回目で、「誰を呼んでるのか」ってことを「正確に」伝える、そんな感じ。

名前の最初の「フル」が聞き取れず、後半の「カワ」だけしか聞こえないと…
ヨシカワ・アラカワ・キッカワとか、わからないでしょう?

フルカワならまだいい…「〇〇トウ」とかだとさらに紛らわしい。
イトウ・ゴトウ・エンドウ・サイトウ・エトウ・カトウ…
誰を呼び出してるのかわからなくなる。

ガラガラって窓があいて、誰か叫ぶ。

だれぇぇ?だれを呼んでるのぉを??

面倒臭いよね?だから2回呼び出しをする。

古川くんが誰かの部屋にいてダベっているとしよう。

きたりょぉぉおおおーー!!

ここで北寮のみんなは、会話を止めて聞き耳を立てる。ラジオ(テレビは禁止されていた)付けてる場合はボリュームを下げる。

ふぅるかわっ先輩ぃぃ!! ハアハアハア
おぉう、俺だ俺だ!

古川くんは窓をガラガラって開けて、中庭に向けて叫ぶ。

お電話でぇっすううぅぅーー!! 
はぁあぁあーーーいいい!!

古川くんの絶叫系の返事が聞こえたら、エンドウ君は呼吸を整えて受話器を取り、先方様にお伝えする。

古川、おりましたので、呼び出しました。ハァハァハァ 
恐れ入りますが、もう少々お待ちくださいませ、オス

受話器を取って、カウンターの上に置きっぱなしにしただけで呼び出ししているわけだ。

別に通話口を塞いでるわけでもないから、先様には「何が起きているかは定かではないが、そこらじゅうで誰かが絶叫している」ところ…

電話を受けてくれた奴は、なぜか「ハアハア」いってる…なんで?

かなりヤバいところに電話してしまった、ということは…伝わってしまう。

この呼び出しの破壊力…わかっていただけただろうか?
帝国海軍の旗艦である戦艦長門の41サンチ主砲なみの破壊力なわけだ、一発でも。

あっ、すみません、すみません、ほんとすみません、 
なぜ…私…あやまってるのかわかりませんが、とにかくすみません…

電話をかけただけの相手に、心底申し訳ない気持ちにさせてしまう、恐るべし和敬塾。

でねぇ、これも繰り返し言ってるけど、北寮だけで100人いるんですよね…
今は、鍵置き場になっちゃってる、在寮生ボードがこれ。
この釘一本一本ぎっしり名札が下がってた…

全員がリア充なわけないし、交友関係少なくて電話ほとんどかかってこない奴もいた。でも…そうだなぁ、一人の寮生に1日3本くらい電話がかかってくるとして、300本の入電があるわけですよ。

ソレが、午後…5時位から、門限の夜10時まで、5時間弱に集中する。
1時間に60本、1分に1本かかってくる計算、単純にね。

不在の場合が4割あるとして、残り6割、1時間に30~40回ですよ。
2分に1回、この呼び出しが中庭に響き渡るというわけです、平常時で…

戦艦長門の41サンチ主砲の乱れ撃ち…

本当に重なる時って、黒電話が全て入電で埋まり、呼び出しする寮生が4人か5人、かわるがわる中庭に出て叫んでいる。

で、ふと気がつくのだ。

自己紹介で大声出すのに慣れるってのは、このためだったんだなぁ
部屋周りで顔と名前を一致させるってのも、このためだったんだなぁ

極々一部の例外を除いて、電話応対にはみんな協力的だった。

黒電話が鳴り続けると、一度玄関で電話取ったら、下手したらそこからもう動けなくなる。要件のメモを取って在寮生ボードにぶっさす。受話器を置いた瞬間、その電話機が鳴る。在寮確認を取って中庭に出て、2回呼び出しをする。

そんな状況になると、もうそこから離れられなくなるのだが…そこは流石の連帯感。通りがかった奴が、状況に気が付く。

おう、次の電話からオレ代わるわ

と声をかけてくれるのだ、神?
これは先輩、後輩、同期関係なかった。
あぁ、本当に、いい奴らだなぁ、僕はそんな風に思ってた、一体感。

極一部…電話でみんなドタバタしてるのに…
玄関を避けて裏の窓から出入りしたり、みんなの脇をサササササーーーーって素早く通りすぎたり、電話応対を逃げるような奴も居るにはいた。

そんな奴らへの着信メモは、なぜかブッ刺し方が甘くて風で飛びやすかったり、字が異常に乱れてて読めないという噂もあった…

まぁそれは噂だし、そもそも、もう古い話なので。その噂が本当かどうか、確かめる術もない。

2023年11月7日火曜日

学生寮の話(新歓サバイバル・入塾のご挨拶に参りました)

前回説明したとおり、僕は大声出すことに抵抗はなかったので、自己紹介はすんなりマスターした。

自己紹介が「正しく」できるようになったら、部屋回りの練習が始まる。

部屋回りとは…所属する寮の先輩にご挨拶してまわることだ。
学生寮なのに立派な講堂があった

目当ての先輩の部屋に行き、ドアを「3回」ノックして、こう言う。

失礼しまぁす!
入塾のご挨拶にぃ参りましたぁ!

先輩が答える

オウ、入れぇ

素早くドアを開けて入室し、半歩横に避けてドアを閉め、気をつけの姿勢になる。

腰から90度のお辞儀をする。
体を起こしながら腹式呼吸で息を吸う。
直立したところで先輩の目を見ながら「自己紹介」をする。

じこしょーかいさせていただきます!!! 
しめい!!  古川太郎ぅ!!
学籍ッ!!  早稲田大学ぅ文学部ぅ!!
しゅっしんちーー!!  奈良県!!!
しゅっしんこー!!! 
ハアハアハア
 
私立おーみ兄弟社こーとーがっこうですぅ!!!
どうぞよろしくぅ!!! おねがいいたします!!!!

再び腰から90度のお辞儀をし、哀愁を漂わせつつ再び気をつけに、戻る。
写真は本文と関係なさそうなありそうな…

そう、「部屋回り」とはご挨拶回り…

全ての先輩の部屋を回って自己紹介をする

というイベントなのだ。アヒャヒャヒャヒャヒャ

当時寮生は総勢300人弱。こいつら1箇所にまとめると危険すぎるので、北・南・西寮の3棟に分かれて住んでいた。

各寮100人、1年生は25人くらい…70人以上の先輩の居室を…ひとつひとつ回りつつ…自己紹介を繰り返すのだ。

この…部屋回りのプロシージャーとコンセプトを理解したところで、2割くらいの新入塾生の目から…本格的に光が消える…

先輩…これ、何のためにやってるんですか?
そうだなぁ…顔と名前が一致したほうがいいだろう?お互いに
それにしたって、他にやり方ありますよね?時間もかかるし…

そうなのだ、3月中旬から末にかけて入寮し、4月に大学の入学式がある。履修科目の申請とか教科書の手配とか、サークル選びとか…ドタバタしている中で部屋周りをしなければならない。

しかも、寮の新歓コンパが確か…5月頭にあった。部屋周りはそれまでに終わらせる。まれに…終わらない奴が出て…当日は地獄を見るらしい。

先輩…なんでこんな理不尽なことやらされるんですか?
そうだなぁ…社会に出ると、いろいろと理不尽なことがあるだろう?
その時になぁ、「アレに比べたら大したことないな」
そう思える奴が強いんだよ。

先輩…
ん?

先輩…まだ学生だし…社会に出たこと…ないですよね…

いやー、そこ、気がついちゃった? ← 適当かよ
ア、それと、新歓コンパでは、皆さんの
「一芸披露」があるのでよろしくね❤️

その夜、寮のピンク電話から、人目を忍びつつ電話をする新入生の姿がある。

電話の横に積み上げられた10円玉の山が高い。電話料金の高い、遠いところに電話しているのだろう、実家か??

その翌週くらいに、ふと在寮生ボード見ると、あったはずの名札が何枚か消えて空室が増えている。

そんなこんながありながら、鈍感な忍耐強い僕らは残り、部屋周りをコツコツと進めていく。なんというか、個別にあんなことあった、こんなことあったとか書き出すとやばい話ばかりキリがないので省略するが…

確かに理不尽なことを言う上級生もいた。でも、ふと「ん?この人たちもしかして、ワルモノ芝居してる?」と感じることも多々あったのだ。

ある先輩は、なにげなく「今どれくらい回ったの〜?リスト見せて」とおっしゃった。
僕がリストを取り出すと、先輩は眉間に皺を寄せて、静かにこう言った。

回った人の名前をそうやって横棒で消すんだね。
ボクの部屋を出た後、君はボクの名前もこうやって横棒で消すの?

僕は…返答に困ってしまった。
先輩はメガネの奥から僕のほうを静かにまっすぐ見つめていた。

申し訳ありませんでした!
考えが足りませんでした!
すぐに改めます!

最敬礼する僕に、先輩は「間違いをすぐに認めて謝るのは良い事だ」「自分もこの寮で、先輩からそのように教えてもらった」「あなたも同じように後輩に教えてあげてください」そう、訥々と話してくれたのは覚えている。

本当に底意地が悪かったら、こうはならないよなぁ
もしかして…意地悪な先輩を演じているんじゃないか?

僕は社会に出て、とある求人広告誌の会社に入った。

そこで営業マンとしてクライアント先を訪問していた時、同じようなことが起こった。

僕は…この先輩から、というか代々引き継がれてきたノウハウに、心の底から感謝したことがなんどもあったのだ。

先輩たちがワルモノを演じているのではないか?答えは、新歓コンパの後に出た。新歓コンパの話もやばすぎるので多分書かない(書けない)。

僕の感覚は正しく、コンパの後は、上下の礼儀はそれなりにあるものの、自由で楽しい寮生活が再スタートした。

鬼のような先輩は、普通に気の良い、面倒見の良い人達に変身…と言うか本来の姿に戻った。

結局のところ、新歓コンパまでの期間は、異物となりそうな人物の振り落とし期間であったのだろうなぁ。この学生寮の歴史と伝統を、うまい具合に利用してやろう、そうした人を見つけて自主的に退寮に導く期間、かっこよく言うとセレクション?w

実際、ここで四年間の懲役を…間違えた、四年間過ごしたと言うだけで、様々な恩恵はある。そんなに簡単に信じちゃうの?初対面なのに?的な。

それが通じるのは、お互いに、あの新歓サバイバルを切り抜けてきた同志、という基本があるからなんだろうね。

僕はそう理解している。

2023年11月5日日曜日

学生寮の話(新歓サバイバル・自己紹介…させていただきます)

忘れている人もいるかと思うので、念のためにもう一度書くけれど…
このブログはフィクションです、ソコントコヨロシクゥウ

昭和の男子学生寮と聞いただけで、ものすごい封建的で、上下関係に厳しいイメージがあると思う。僕が4年間を過ごした学生寮もそうだった、新歓コンパまでは。

入寮(僕らは「入塾」と呼んでいた)のプロセスはこうなる。

入塾面接(不合格だと入れない)

引越し 

新入塾生オリエンテーション
部屋回り
新歓コンパ
…以下略

とりあえずオリエンテーションの話をしよう。
写真と本文は関係ありそうな無さそうな…

新入塾生を集めて、2年生が学生寮の「しきたり」について説明をする。もっとも基本かつ重要なのが「自己紹介」のやり方だ。まずは2年生の先輩が、お手本を見せてくれる。

じこしょーかいさせていただきます!!!
しめい!!  和敬太郎ぅ!!
学籍ッ!!  馬鹿田大学ぅ商学部ッ!!
しゅっしんちーー!!  群馬県渋川市ぃ!!!
しゅっしんこー!!!

 

            ハアハアハア

 

群馬県立ぅしぶかーわこーとーがっこうですぅ!!!

まるで…この先輩は気が(ピーーー)ってしまったのか?
何か変なものが憑依したのか?
おかしなものを拾って食べたのか??

呆気にとられていると、
息継ぎの後に最後のフレーズを吐き出しながら、腰を90度まげてお辞儀をする。

どうぞよろしくぅ!!! おながいいたします!!!!

この…「お手本」を見せられた段階で…新入塾生の半数くらいの表情は曇り、3割くらいは「ムリ」という死んだ目になる。

残りはというと…

まぁ、あるよねーこーゆーの

と、冷静に受け入れる。

ちょっと話はズレるが、僕は高校で空手部だった。空手部ってものすごい上下関係とか厳しくて(ピーーー)なところがあるって思うでしょう?確かにそーゆー噂のある学校もあった。

でも、僕が通っていた高校はリベラル(「日本的リベラル」ではなくて、真の意味でのリベラルね)な雰囲気だったのだ。そこでは武道系の部活でも上下関係は緩やかで、いじめとかしごきとかも無かった。

ただ、武道なので「気合」の練習はする。
新入部員は声が出ない。

ター
トォー
セィィィ

顧問の先生(殺人術のプロであり、自衛隊で格闘戦教官を勤めたことがある空手八段)は苦笑しながら浅い中段突きをミゾオチに入れてくる。腰が入っているから力が入ってなくても痛い

ほらぁ、腹をギュッと締めて、ヘソの下から気合出すんだよ、わかるだろ?

まがりなりにも進学校とされている高校の、理系科目の先生らしく、わかりやすく理論的なご指導、誠にありがとうございます、押忍

そうやって日々練習していると、だんだんと気合の入った声が出るようになる。

サァアッツ!
タァァッ!
ダァァアッ!!

 

チェェストォオー!! ← これはなぜかダメ出しされた 

 

アチヨ!アチヨオオー!! ← これもやはりダメ出しされた

馬鹿らしいと思うかもしれないが、空手の型演舞では「気合」(声出しね)が採点基準になる。

組手だって、「審判がついつい一本取ってしまうくらいの裂帛の気合」で、実際は極まってなくても、気合いだけで勝ち残るやつもいるくらいだから練習は必須なのだ。

気合いが重要なのは剣道もそうだ。

竹刀がカスリ気味に入っても、気合次第で一本もらえることもある 
(剣道部談)

柔道部はちょっと違って、「お前らなんで気合かけないの?」って聞いたら、

うっかり舌噛んじゃったら死んじゃうから

…それは…そうだよね…口開けられないよねって納得した。

柔道やってる奴って絞め技で落とされて、脳細胞やられてる感じなのに、論理的でちょっと意外だった。

弓道部は…まぁいいや…

一射毎に「セィイイィイィィーー!」とか気合入れてたら、周囲から一斉射されそうだもんね。

キングダムの弓隊に狙われた歩兵かよ…

話を戻して…

元塾生という人に「自己紹介やって見せてください」とか、冗談でも言わないように。

奴ら、やるから、マジで
そこがザギンだろうが、ギロッポンだろうが
チャンネェのいるクラブだろうが、高級ホテルのラウンジだろうがやるから奴ら

「自己紹介」というワンフレーズを聞いた瞬間に、肺が空気を取り込み始め、横隔膜はアップを始める、それくらいにココでは「自己紹介」を叩き込まれるのであった。

就職活動の面接で「自己紹介」を披露して内定もらったとか、
それを真似して役員面接でフルパワー自己紹介やって落とされたりとか、

人生を左右するくらいインパクトのある自己紹介、それが和敬塾流の自己紹介。

2021年7月18日日曜日

BIKE & HIKE のススメ 妙義山縦走

表妙義縦走について、詳しく書いてみよう。山頂稜線の上級者向け岩綾コースは、どんな感じなのか、参考になればなによりです。

BIKE & HIKE の紹介で書いたことの復習、こちらが概念図。

赤線が縦走路、右から入って左に抜ける

妙義神社のすぐ上にある「大」の字

完全に稜線通しに抜ける「表妙義縦走コース」、ガイドブックには「上級」とか、「危険」と書いてある。

正しい表現をすると、技術的には難しいところはないので、「上級」かどうかは意見が別れるだろう。ただし、「国内一般登山道最難関」とか、「一般登山者の立ち入りをゆるしているのが間違い」と言われるのは伊達では無い。

クライミング経験が無くても、基礎体力があって、三点確保や、腕力に頼らず足に乗るとか、すれ違いなどの状況判断だったり…が身に付いていれば技術としては十分。

問題は、それらを…「一発間違えたら即死」という環境で、ひたすら延々と、一日中繰り返す事ができるかどうかということ。

こんな地形の連続

上の写真は縦走路にある下降点。鎖の先はまったく見えない。しゃがみこんで、鎖を手に取り、身を乗り出して下降する。鞍部に着いたら登り返して、その先に白く続く土の踏み跡を辿って進む。

身を乗り出すとは、つまりはこういう事。

恐怖心をコントロールしながら足場を探す

えっ?ムリムリ!って感じるなら、止めておいた方がいいです。

写真を撮る時とか、対向者とすれ違う時はセルフビレイ(自己確保)があったほうがいいですね。つまり、ハーネスとかカラビナとか、スリングを使った、安全確保のノウハウがあったほうが良い。

セルフビレイを取る

ちなみに、僕は高所恐怖症です(爆)

足を滑らせたら一発でアウトな稜線

高所恐怖症なので、ここに行く度に後悔します。なんで来ちゃったんだろう、こえ〜よ。

鎖場の下が見えない箇所が頻繁に現れる

焦って手順を間違えたり、足を滑らせたら本当にやばいので、急ぐことはできません。淡々と、一歩一歩を確実に進んでいきます。歩きながら写真を撮るのもダメ、絶対。

しゃがんだり、立ち上がったりするとき、ふと立ちくらみっぽくなること、ありませんか?ここではそんなちょっとしたことが、死亡事故の原因になりえます。

死角になる場所では必ずコールすること

鎖場の通過では、アンカーとアンカーの間に複数の登山者が入らないように配慮します。一人がバランスを崩して、鎖を揺らしたら?アンカーとアンカーの間にある、同じセクションは掴んでいたら、振り落とされるかもしれません。

死角になっていて見えない場合は、「気配」を感じるようにしましょう。

「気配」と聞いた時に、ピンと来ない人、透視とかの超能力?って思った人は、このエリアには行かないほうがいいかもしれません。

さっきから時々ちらちらと見える、対向登山者はそのペースから考えてそろそろすれ違いになるはず、そんな風に、同じエリアにいる他の登山者の現在地を大まかに把握しておくことも大事でしょう。先が見えなくても、目の前の鎖を見ます。鎖が小刻みに揺れていれば、誰かがその先で鎖を使っています。もちろん耳を澄ませて、コールが無いかどうかも確認します。それが、「気配」を感じるということ。

そういう意味もろもろを含めて、状況判断(山の総合力)が試されるルートです。

腕に頼り切りでは危険、足場をしっかりと見て体重を乗せていく

あ、そうそう、時々ですが、鎖の長さがたりない場合があるんですよね…

僕はこれを八海山の鎖場で経験しました。後ろ向きで下降していて、あと30cm で地面。そこで鎖が終わって手がすっぽ抜ける。

冷や汗と、声にならない絶叫。「あ、俺、今…死んだ」そう思いました。

そこは、畳半畳くらいの狭くて、よく踏まれた土の鞍部になっていました。
僕はタタラを踏んで、後ろ向きに尻餅を着いただけで、滑落はしませんでした。ラッキー!w

それ以来、鎖の残り部分の長さと、次の安定した足場までの距離は一歩ごとに確認しながら下降するようにしています。

超えても超えても岩綾が連続する

エスケープルートはいくつかあります。ムリだと思ったら、撤退が吉。

長い梯子

ここの怖いところは、「誰が見ても危険な場所」での滑落事故はさほど無いらしい。

有名な難所で、「鷹返し」(または「鷹戻し」)と呼ばれるところがあります。ほぼ垂直の鎖場が3段、小さいテラスでつながっています。動けなくなった人が詰まっていたり、すれ違いがテラス上で発生するなど、緊張感の連続。ところが、ここの核心部では、転滑落事故はそんなに無いらしい。(核心部で落ちる人は、行き詰まって握力がなくなって落ちる、中高年の女性など)。

急な岩場を通過した後が危険

それよりも、この難所を登りきって、岩棚に出る。あー良かったと、一歩・二歩踏み出したところで…岩棚の一部が崩落していて狭くなっていて、そこにハラリと乗った枯葉を踏み抜いて墜ちる。そうした事故が多いらしい。

歩いているとき、体を動かしているときはリラックスできないということでもあります。

小さなテラスで、すれ違い待ち待機

一般登山道は、緊張する岩場と、安心して歩ける場所があります。その配分は、1:9 くらいでしょうか。難コースと言われるところでも、2:8 くらい?

ここは、山頂稜線に出てからは、ずっと緊張を解くことが許されません。休むときはセルフビレイを取って、立ち止まってが鉄則。

鎖が複数かかっている場所

古い鎖・新しい鎖が複数かかっているところもあります。鎖が複数あるからといって、同時に何人かが行動できるというわけではありません。誰かが足を滑らせたり、落石を起こしたりしたら、周囲の人が危険に晒されるからです。

腕力2 脚力8 のバランスで登下降

鎖を降っていくと、地面に着く手前がオーバーハングになっていて、足が壁から離れてしまうところがあったりもします。この場合は、腕力だけで残りの2mくらいを下降しなければならない、とか。

いざというときに、余力を残せるような歩き方、行動を続けていくことも重要ですね。


ここに来る人は基本ヘルメット着用

大岩壁を振り返る

言い忘れるところだった、岩場の途中で雷さまが来ちゃったりするとマジ最悪。周囲の雲の流れにはいつでも気を配ってください。ふと冷たい風が吹いてきて、変な色の雲が湧いてきている…それくらいの兆候でも、逃げた方がいいと、僕は思うなぁ。

そんな意味で、雷&夕立&猛暑で脱水リスクのある夏はお勧めしない。日が長くて天候が安定している梅雨入り前か、紅葉が始まったくらいがいいんじゃないかな。

真夏は暑すぎるので紅葉か新緑の時期がオススメ

そんな苦労を繰り返して、石門エリアに到着。ここは中之嶽神社駐車場から、アスレチック的なハイキングコースが通っています。地元の小中学校の遠足コースにもなっているくらいのレベル感。岩場って楽しいと思うことでしょう。

石門エリアまで来ればそこは遊歩道

カニのタテバイ

石門の厚みはこれくらいしかない

石門の中に大砲岩が見える

実際のところ、石門エリアをのんびりと周遊するだけでも十分に楽しいと思います。体を動かしたかったら、お中道もいいでしょう。

お中道の岩場潜り

繰り返しになりますが、お中道も簡単なコースではありません。距離も長いので、挑戦するなら十分に準備をしてからね。

下山口になる中之嶽と神社駐車場

さあ、こんな思いをして下山してきました。朝7時くらいに入山したとして、順調に進んだとして、お昼も行動食だけで済ませても、多分3時は回っていることでしょう。

で、ここから2時間近く車道を歩くのか…駐車場にデポしてある自転車で、シャーーっと15分で下るのか…

大きな違いですよ…やっぱ BIKE & HIKE でしょ?

では、みなさんご安全に。


2021年7月3日土曜日

備えよ常に: サイクルツーリング

 僕がサイクリングに出かける時の荷物は、正直ちょっと多すぎると思う。

ただ、僕は単独で走ることが多い。そして、山があれば山に行くし、グラベルがあればそこに入る。単独で行くのも、山に入るのも自分の勝手であり、結果は自己責任。だから、基本的なトラブルなら、自力で帰ってこれるように備えている。

グラベルに入る時は、超軽量チューブの Tubolite を入れたクリンチャータイヤを履いている。基本的なグッズはこんな感じで、基本はパンクからどうやって復帰するか。

ツールボトルにツメツメに入れる

左上から、スペアチューブ、tubolite専用のパンク修理パッチ、虫除けジェルとムヒの小分けボトル、タイヤが裂けた時の補強シール、ブチルチューブ用の修理キット、小型のアーミーナイフ(ハサミ付き)、9機能のマルチツール、そして真ん中がチェーン切り。

Tubolite はウレタン製で、普通のパンク修理キットは使えないから、専用のパッチを持つ。バルブ周辺とか、パッチでどうしようもないトラブルなった時を考えて、通常のブチルチューブも持つ。そして、もし、交換したチューブがパンクした場合を考えて、通常の修理キットを持つ。行き先がもし、やばいところなら、もう一本通常タイプのチューブを持つかも。

ダートはほとんど入らない場合は、チューブレスタイヤの軽量ホイールを選ぶ。その場合は、Tubolite 用のパッチと、パンク修理キットは持たない。で、下のこれを入れる。

チューブレス用組み合わせ

CO2ボンベは通常2本持っているのだけれど、予備をさらに1本追加。そして、チューブレスの場合は、CO2ボンベから確実に空気を入れる必要性が高くなるので、信頼できるバルブ。ガソリンスタンドとかでエアをもらえるように、仏 →  米式 バルブコンバーター。そして、チューブレス用のパンク修理キット。これは、車のチューブレス用修理キットと同じやつで、穴にラバースティックをグリグリねじ込んで無理やり漏れを止める奴。

ちょっとしたパンクなら、チューブレスはシーリング剤を入れているので自然に修復される。今まで自然修復されなかったのは、2〜3mmのカットで、これはさすがにシーラーでも止まらなかった。ただ、エアを補充すれば、20km くらいは走れたので、ボンベ2本使えばほぼ間違いなく街までは下れる計算。

それで間に合わなければ、グリグリ補修キットの出動。で、それでも止まらなければ、一本持っているスペアチューブを入れて、チューブドクリンチャーとして走行する。j

それと、僕は基本的に輪行袋は持って出かける。自力解決ができないくらい最悪の場合、公共交通機関で帰れるようにね。問題は、グラベルロードはタイヤが太いので、ホイールがかさばる。だから、それがちゃんと収納できる輪行袋は、大きめサイズでかさばる奴。

僕のバイクはツーリングバイクなので、ボトルケージが3箇所ある。一番下はツールボトルで、上で紹介した修理関連のツールが全部ここに入る。のこりの2箇所でドリンクボトルと輪行袋の組み合わせ。

軽快感皆無…

CO2のボンベ2本と、空気入れ兼インフレーターがここに付いている。

ふと入ったプロショップで見つけたボントレガーのポンプツール

やっぱり道具が多すぎるかもねw
前はもっと多かったwww

日本一周とかなら…持って行くかも?

若い時は、とにかくいろんなものが付いているツールが欲しくて、こんなのも買った。でも、結局、通常の整備をちゃんとして入れば、携帯ツールは本当に基本的なものがあればいいことが分かった。

そうだ、言い忘れた…

ここまでで説明したのは、あくまでも、バイクのトラブルに関わる持ち物の話。人間が怪我した時の備えとか、ブユ避けとか、クマ避けとか、その辺りはまた別の機会にね(続くんかいw)

では、皆様ご安全に!