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2023年11月11日土曜日

RIDE31BRM1111田人200km完走

本格的に冬に突入する前に、できるだけ自転車で走っておきたいと考えた。

悪天候の場合はDNS (Did Not Start 出走見送り)すればイイか、そう考えてめぼしいブルベにエントリー。今日は栃木の団体が主催するブルベイベントに参加した。

那須近辺からスタートして、太平洋に出て戻ってくる200km。
先週のルートとはちょうど逆方向になる。
マリンタワー
先週の二関巡りは、コンディションも良かったせいか余力を持って走り切れた。今日のコースの獲得標高は、先週よりも200mほど低いし、多分大丈夫。

懸念点はいくつかあって、
1 ペース配分
行きは下り&追い風で楽ちん…帰りはずっと登り&向かい風
2 低温
今シーズンの最強寒波が来ている
3 レスト不足
三崎公園、いいところ
今回はいつにも増して写真が無い。

なぜなら、往路で貯金を60分しか作れなかったから…

往路は追い風のはずなんだけど、風が巻いていて気持ちよく走れるパートが思ったよりない。さらにまずいことに、昨晩は荒れたようで、道路に落ち葉やら枯れ枝やらが散乱・堆積しているのだ。スピード出せないじゃん…

コーナーで油分の多い落ち葉(松葉とかイチョウとか)踏むと、スリップの危険がある。落ち葉が堆積していたら、その下に枝とか石とか、舗装の繋ぎ目が隠れているかもしれない。そこに突っ込んだらパンクするし、最悪リムが壊れる。

そんなこんなで、安全運転で坂を下るのだから貯金なんてなかなか貯まらない。
証拠写真
もともとの目論見では、往路で2時間、できれば2.5時間程度の貯金を作る。ほんでもって、いわきとか小名浜あたりで海鮮丼とか食べたいと願っていた。

AJP楢葉とかで海沿い来てるのに、海鮮食べたことないんだもんなぁ、遅すぎて。

それが貯金60分…

これから向かい風&登坂なので、エネルギーは必要だが…海鮮…

すきやでチーズカレー牛大盛りになりました…
大盛りだバカヤロー

帰りはねぇ…

寒冷前線通過して、凍えるような寒さ。
ここはグンマーか?みたいな、強烈な向かい風。

なんでもない登坂なのに、風強すぎてウルトラローギアで時速8km でジリジリ前進する。
山陰の風裏に入ったらすかさず22km位まで上げて、トータルで帳尻を合わせる。

ゴール手前の白河とほぼ同じの標高300m位のところに、チェックポイントがある。そこは足切り時間が設定してあり、超えてしまったら…タイムオーバー
到着したところで、貯金は20分、足切り設定タイムまで20分…アブねぇ

そこから白河までも向かい風と低温に悩まされた。シューズカバーしててもつま先は痺れてくるし、モンベルの防風グローブしてても、指先は寒さでかじかむ。

斜度がなくなったのがせめてもの救い。貯金20分では、なにかあったらアウトなので、少しずつ貯金を積み上げる。

最後の最後、白河からスタート・ゴール地点まで戻るところが、追い風のボーナスタイムになっていた。

結局 12:40くらいで完走…制限時間13:30なので貯金50分…

毎回毎回、ハラハラドキドキなんでそれはそれで楽しいのだが…
もうちょっとゆとりのある、余裕のある走りをしたいものです、オトナなんだしネ

さ、また遠路はるばる運転して帰るとしましょうか。
おしまい

ログはこんな感じ

2023年11月7日火曜日

学生寮の話(新歓サバイバル・入塾のご挨拶に参りました)

前回説明したとおり、僕は大声出すことに抵抗はなかったので、自己紹介はすんなりマスターした。

自己紹介が「正しく」できるようになったら、部屋回りの練習が始まる。

部屋回りとは…所属する寮の先輩にご挨拶してまわることだ。
学生寮なのに立派な講堂があった

目当ての先輩の部屋に行き、ドアを「3回」ノックして、こう言う。

失礼しまぁす!
入塾のご挨拶にぃ参りましたぁ!

先輩が答える

オウ、入れぇ

素早くドアを開けて入室し、半歩横に避けてドアを閉め、気をつけの姿勢になる。

腰から90度のお辞儀をする。
体を起こしながら腹式呼吸で息を吸う。
直立したところで先輩の目を見ながら「自己紹介」をする。

じこしょーかいさせていただきます!!! 
しめい!!  古川太郎ぅ!!
学籍ッ!!  早稲田大学ぅ文学部ぅ!!
しゅっしんちーー!!  奈良県!!!
しゅっしんこー!!! 
ハアハアハア
 
私立おーみ兄弟社こーとーがっこうですぅ!!!
どうぞよろしくぅ!!! おねがいいたします!!!!

再び腰から90度のお辞儀をし、哀愁を漂わせつつ再び気をつけに、戻る。
写真は本文と関係なさそうなありそうな…

そう、「部屋回り」とはご挨拶回り…

全ての先輩の部屋を回って自己紹介をする

というイベントなのだ。アヒャヒャヒャヒャヒャ

当時寮生は総勢300人弱。こいつら1箇所にまとめると危険すぎるので、北・南・西寮の3棟に分かれて住んでいた。

各寮100人、1年生は25人くらい…70人以上の先輩の居室を…ひとつひとつ回りつつ…自己紹介を繰り返すのだ。

この…部屋回りのプロシージャーとコンセプトを理解したところで、2割くらいの新入塾生の目から…本格的に光が消える…

先輩…これ、何のためにやってるんですか?
そうだなぁ…顔と名前が一致したほうがいいだろう?お互いに
それにしたって、他にやり方ありますよね?時間もかかるし…

そうなのだ、3月中旬から末にかけて入寮し、4月に大学の入学式がある。履修科目の申請とか教科書の手配とか、サークル選びとか…ドタバタしている中で部屋周りをしなければならない。

しかも、寮の新歓コンパが確か…5月頭にあった。部屋周りはそれまでに終わらせる。まれに…終わらない奴が出て…当日は地獄を見るらしい。

先輩…なんでこんな理不尽なことやらされるんですか?
そうだなぁ…社会に出ると、いろいろと理不尽なことがあるだろう?
その時になぁ、「アレに比べたら大したことないな」
そう思える奴が強いんだよ。

先輩…
ん?

先輩…まだ学生だし…社会に出たこと…ないですよね…

いやー、そこ、気がついちゃった? ← 適当かよ
ア、それと、新歓コンパでは、皆さんの
「一芸披露」があるのでよろしくね❤️

その夜、寮のピンク電話から、人目を忍びつつ電話をする新入生の姿がある。

電話の横に積み上げられた10円玉の山が高い。電話料金の高い、遠いところに電話しているのだろう、実家か??

その翌週くらいに、ふと在寮生ボード見ると、あったはずの名札が何枚か消えて空室が増えている。

そんなこんながありながら、鈍感な忍耐強い僕らは残り、部屋周りをコツコツと進めていく。なんというか、個別にあんなことあった、こんなことあったとか書き出すとやばい話ばかりキリがないので省略するが…

確かに理不尽なことを言う上級生もいた。でも、ふと「ん?この人たちもしかして、ワルモノ芝居してる?」と感じることも多々あったのだ。

ある先輩は、なにげなく「今どれくらい回ったの〜?リスト見せて」とおっしゃった。
僕がリストを取り出すと、先輩は眉間に皺を寄せて、静かにこう言った。

回った人の名前をそうやって横棒で消すんだね。
ボクの部屋を出た後、君はボクの名前もこうやって横棒で消すの?

僕は…返答に困ってしまった。
先輩はメガネの奥から僕のほうを静かにまっすぐ見つめていた。

申し訳ありませんでした!
考えが足りませんでした!
すぐに改めます!

最敬礼する僕に、先輩は「間違いをすぐに認めて謝るのは良い事だ」「自分もこの寮で、先輩からそのように教えてもらった」「あなたも同じように後輩に教えてあげてください」そう、訥々と話してくれたのは覚えている。

本当に底意地が悪かったら、こうはならないよなぁ
もしかして…意地悪な先輩を演じているんじゃないか?

僕は社会に出て、とある求人広告誌の会社に入った。

そこで営業マンとしてクライアント先を訪問していた時、同じようなことが起こった。

僕は…この先輩から、というか代々引き継がれてきたノウハウに、心の底から感謝したことがなんどもあったのだ。

先輩たちがワルモノを演じているのではないか?答えは、新歓コンパの後に出た。新歓コンパの話もやばすぎるので多分書かない(書けない)。

僕の感覚は正しく、コンパの後は、上下の礼儀はそれなりにあるものの、自由で楽しい寮生活が再スタートした。

鬼のような先輩は、普通に気の良い、面倒見の良い人達に変身…と言うか本来の姿に戻った。

結局のところ、新歓コンパまでの期間は、異物となりそうな人物の振り落とし期間であったのだろうなぁ。この学生寮の歴史と伝統を、うまい具合に利用してやろう、そうした人を見つけて自主的に退寮に導く期間、かっこよく言うとセレクション?w

実際、ここで四年間の懲役を…間違えた、四年間過ごしたと言うだけで、様々な恩恵はある。そんなに簡単に信じちゃうの?初対面なのに?的な。

それが通じるのは、お互いに、あの新歓サバイバルを切り抜けてきた同志、という基本があるからなんだろうね。

僕はそう理解している。

2023年11月5日日曜日

学生寮の話(新歓サバイバル・自己紹介…させていただきます)

忘れている人もいるかと思うので、念のためにもう一度書くけれど…
このブログはフィクションです、ソコントコヨロシクゥウ

昭和の男子学生寮と聞いただけで、ものすごい封建的で、上下関係に厳しいイメージがあると思う。僕が4年間を過ごした学生寮もそうだった、新歓コンパまでは。

入寮(僕らは「入塾」と呼んでいた)のプロセスはこうなる。

入塾面接(不合格だと入れない)

引越し 

新入塾生オリエンテーション
部屋回り
新歓コンパ
…以下略

とりあえずオリエンテーションの話をしよう。
写真と本文は関係ありそうな無さそうな…

新入塾生を集めて、2年生が学生寮の「しきたり」について説明をする。もっとも基本かつ重要なのが「自己紹介」のやり方だ。まずは2年生の先輩が、お手本を見せてくれる。

じこしょーかいさせていただきます!!!
しめい!!  和敬太郎ぅ!!
学籍ッ!!  馬鹿田大学ぅ商学部ッ!!
しゅっしんちーー!!  群馬県渋川市ぃ!!!
しゅっしんこー!!!

 

            ハアハアハア

 

群馬県立ぅしぶかーわこーとーがっこうですぅ!!!

まるで…この先輩は気が(ピーーー)ってしまったのか?
何か変なものが憑依したのか?
おかしなものを拾って食べたのか??

呆気にとられていると、
息継ぎの後に最後のフレーズを吐き出しながら、腰を90度まげてお辞儀をする。

どうぞよろしくぅ!!! おながいいたします!!!!

この…「お手本」を見せられた段階で…新入塾生の半数くらいの表情は曇り、3割くらいは「ムリ」という死んだ目になる。

残りはというと…

まぁ、あるよねーこーゆーの

と、冷静に受け入れる。

ちょっと話はズレるが、僕は高校で空手部だった。空手部ってものすごい上下関係とか厳しくて(ピーーー)なところがあるって思うでしょう?確かにそーゆー噂のある学校もあった。

でも、僕が通っていた高校はリベラル(「日本的リベラル」ではなくて、真の意味でのリベラルね)な雰囲気だったのだ。そこでは武道系の部活でも上下関係は緩やかで、いじめとかしごきとかも無かった。

ただ、武道なので「気合」の練習はする。
新入部員は声が出ない。

ター
トォー
セィィィ

顧問の先生(殺人術のプロであり、自衛隊で格闘戦教官を勤めたことがある空手八段)は苦笑しながら浅い中段突きをミゾオチに入れてくる。腰が入っているから力が入ってなくても痛い

ほらぁ、腹をギュッと締めて、ヘソの下から気合出すんだよ、わかるだろ?

まがりなりにも進学校とされている高校の、理系科目の先生らしく、わかりやすく理論的なご指導、誠にありがとうございます、押忍

そうやって日々練習していると、だんだんと気合の入った声が出るようになる。

サァアッツ!
タァァッ!
ダァァアッ!!

 

チェェストォオー!! ← これはなぜかダメ出しされた 

 

アチヨ!アチヨオオー!! ← これもやはりダメ出しされた

馬鹿らしいと思うかもしれないが、空手の型演舞では「気合」(声出しね)が採点基準になる。

組手だって、「審判がついつい一本取ってしまうくらいの裂帛の気合」で、実際は極まってなくても、気合いだけで勝ち残るやつもいるくらいだから練習は必須なのだ。

気合いが重要なのは剣道もそうだ。

竹刀がカスリ気味に入っても、気合次第で一本もらえることもある 
(剣道部談)

柔道部はちょっと違って、「お前らなんで気合かけないの?」って聞いたら、

うっかり舌噛んじゃったら死んじゃうから

…それは…そうだよね…口開けられないよねって納得した。

柔道やってる奴って絞め技で落とされて、脳細胞やられてる感じなのに、論理的でちょっと意外だった。

弓道部は…まぁいいや…

一射毎に「セィイイィイィィーー!」とか気合入れてたら、周囲から一斉射されそうだもんね。

キングダムの弓隊に狙われた歩兵かよ…

話を戻して…

元塾生という人に「自己紹介やって見せてください」とか、冗談でも言わないように。

奴ら、やるから、マジで
そこがザギンだろうが、ギロッポンだろうが
チャンネェのいるクラブだろうが、高級ホテルのラウンジだろうがやるから奴ら

「自己紹介」というワンフレーズを聞いた瞬間に、肺が空気を取り込み始め、横隔膜はアップを始める、それくらいにココでは「自己紹介」を叩き込まれるのであった。

就職活動の面接で「自己紹介」を披露して内定もらったとか、
それを真似して役員面接でフルパワー自己紹介やって落とされたりとか、

人生を左右するくらいインパクトのある自己紹介、それが和敬塾流の自己紹介。

2023年11月4日土曜日

RIDE30BRM1104二関巡り200km

今回のブルベで驚いたこと。
完走した後、他の参加者と、どこから来たかという話になった。

いやーグンマーからの参加なんで、片道270kmもあるんです。 
これからまた帰るかって考えると、気持ち萎えますヨ…

そう、僕が言うと、相手は真剣な顔でこう言った。

自走ですかぁ、それは大変ですね

お前は何を言ってるんだ??

片道270kmを自転車で自走で来て、200km のブルベ走って、また自走で帰るって、この人的には普通にあり得る話しなんだ…?

いやいやいや、そりゃ当然車でくるだろ??

ブルベに出る人たちって…ブルベそのものよりも…会場までの往復自走のほうがはるかに距離長くても…オカシクないんだ。

いや、そう考える人がおかしいだろ???
オレは間違ってない、絶対に…

ボクだけはこんな変態さんにならないようにしよう、そう思いました。
受付完了!
ブルベの参加は3回目、ようやく流れがわかって慌てなくなってきた。
本日のスタート&ゴール
初めて来たけど、こんないい施設があるんですね。
お隣には宿泊もできる温泉施設があって、走った後入浴もできるとのこと。イイね
相変わらず荷物多め
11月にロングライドするなんて、寒すぎるんじゃ無いか?そう思いつつエントリーしたけれど、暖冬。今日も朝夕は冷えるけど、昼間は25度予想。

とりあえず夏のウェアに、レッグウォーマーとアームウォーマー、登山用のウィンドブレークベストを装備。昼間の暑さに備えてダブルボトル。

スタートして海岸線を走る。ここはAJ宇都宮のパーマネントコースと一部重なっていて、なんとなく地理感がある。
勿来の関
最初のフォトチェックは勿来の関。
勿来の関2
勿来の関から白河の関までは、登り基調。途中で700mくらいの峠を越える。
キンヒュン橋
自転車乗りにとっては、手すりが低すぎる気がする橋を越える。
白河関
フォトチェック2箇所目は白河関。AJP那珂川で一度通りかかったことがあるので、チェックの場所もすぐにわかった。ここの斜め向かいに、やたべさんという白河ラーメンの名店があると聞いていて、ちらっと覗いてみた。なんと、AJP那珂川走った時に偶然食べた店だったよ。

ログはこんな感じ

グロス時間10:45
帰路は下り基調と説明があったけれど、事前にチェックしたところ3箇所ほど小さな峠があるのはわかっていた。余力を残すために、今日も休憩は最低限で、白河ラーメンも我慢してゴール。

時間的には、ラーメン食べても良かったな…

明日も仕事なので、温泉入ってとっとと帰りましょうかネ

おしまい

2023年10月23日月曜日

Hike4 西黒尾根からオキノ耳往復

近くて良い山、谷川岳。
通い始めたのが20代の後半だから、かれこれ30年の付き合いになる。

残雪期登山と山スキー、初夏の縦走、真夏の川遊び、秋の紅葉…
四季折々の変化や、ルートによって異なる展望に惹かれて何度も行った山。

最近は、自分の山力を測るベンチマークとして、西黒尾根を登ることが多くなった。

ボトムからトマ耳までの時間
疲労感
足の捌き
高度感 
バランス

谷川馬蹄形や主脈縦走、妙義山稜線縦走とか、平ヶ岳や皇海山日帰り…心身ともに負荷が高いルートがある。そうしたルートに自分が入る資格があるのか?答えを出してくれるのが西黒尾根の登山だと、僕は思っている。
登山口
今回の目的は、登山感覚のリハビリと、大腿四頭筋(太ももの前にある筋群)のトレーニング。サイクリングは、大臀筋とハムストリングは鍛えられるのだが、四頭筋の負荷はあまり無い。立ち漕ぎとか、スプリントすれば話は別だが…
白毛門、朝日岳方面
登山、特に降りは、四頭筋を効率よく鍛えられるのだ。段差を降りて、グッて太腿で堪えるでしょ?あれヨ
ラクダのコルから上部には着雪
一般登山者の僕が、谷川岳登山で一番難しいと思うのが初冬。

もちろん…登山として考えると、厳冬期がもっとも困難であることは間違いない。でも、その時期は「一般登山者」は立ち入りができない。

僕らが立ち入りを許される、厳冬期を除く残雪期から初冬までで考えると、初冬の今が一番ハイリスクだと思っている。
トマミミに突き上げる

残雪期は足元が安定しているし、その時期に入る登山者はクランポンやアックス、ヘルメットとかちゃんと装備しているから無問題。

日光白根、皇海山の遠望

春先は雪解け水で水場が枯れる心配もないし、陽は長いし、気温も下がらないから無問題。
西黒の懺悔岩
盛夏は…一昔前はもっとも安全だったんだけど、最近は変わってきた。

谷川連峰は、最高峰である茂倉岳ですら2,000mに届いていない、それぐらいこのエリアは標高が低いのだ。標高が低いと残雪が早く消え、水場は枯れる。

標高が低いと暑いので、熱中症のリスクが高まる。
ガスの向こうにトマ耳
秋は…イイ時期なんだけれど、ひとつ間違えたら冬になるリスクがある。
そして、そのリスク…「軽いハイキングのつもりだったら冬山」…に、備えていない人突っ込みがちである、それが最大のリスクなんだ。
肩の広場に出ると道標
初冬のリスクは降雪。
主脈への縦走路と俎嵒
下界は秋晴れでポカポカ陽気。
そんな時期には、冬山装備(アックス・クランポン・ビバークシェルター)万全で入山する人ってあんまりいない。

足元だって、スニーカーとか、トレランシューズの人もいる。

着雪している斜面は、キックステップでジリジリと前進するしかないわけだけど、それができる冬靴は重いので人気がない。

そんでもって雪が着いた稜線に突っ込んで、足を滑らせて、↓こんなツルッツルの岩盤に着地したら、はいそれまでよ。
氷河跡の滑り台
下降点

ロープウェイから天神尾根経由で谷川岳往復と、ボトムから西黒尾根往復の違いは、鎖場の通過かな。

登りならまだイイ。谷川連邦エリアの登山道整備は行き届いているし、鎖とか、手すりトラロープとかの手入れもちゃんとしている。

ただ…ここから墜ちたらヤバいよねってところで、鎖もロープも無い箇所はいくつもある。
登りでは問題ないんだけれどね。

そうしたところを、危険なシーズンに登っているのだ。

そんな自覚を、自分が見失っていないかどうか?それをチェックするために、ボクは定期定期に西黒尾根を登っている。
ログはこんな感じ

西黒尾根そのものがストラバでセグメントになっていたのを発見。記録を見ると…まぁなんとか体力の維持はできているようで一安心でした。

2023年10月20日金曜日

学生寮の話(フェニックス矢島・2/2)

3階の窓から飛び降りたのだ、無事である筈がない。

とにかく命だけは助かりますようように、その一心で階段を駆け下りた。

寮の正面入り口は夜間施錠されているので、裏側の窓から外に出て回り込む。

植え込みに、矢島さんが倒れて…いない…

いない?

植え込みが押しつぶされていた。
見上げると、へし折れた木の枝がぶら下がっている。そして、本人がいない。

矢島さんの同級生の先輩が、周囲の植え込みをかき分けながら何度も何度も叫ぶ。

矢島ーーー!
どこ行ったーーー!
大丈夫かーーー??

中庭を隔てて向かい合う南寮の窓がいくつかガラガラと開き、怒鳴る声が聞こえる。

やかましわ!!
もう夜ぅねんで、早よ寝い!!

先輩が、これこれこうで、と説明すると、

ホンマか?
早よ探して救急車呼びぃ…飲み過ぎやでホンマ…

と心配そうな声が返ってくる。

南寮は、僕ら北寮と血で血を洗う抗争を何度も起こしているのだが、基本的には気のいい奴らなのだ。

中庭だけでなく、グランドまで探したけれど、矢島さんはいない。
とりあえず落ち着こうと3階の部屋に戻った。

神隠しか?誘拐か?失踪か?
とりあえず救急呼んどいたほうがいいか? 
いや…でも…本人いないし?
それとも警察か?

誰かが心配そうに言う。

西寮で先々週…2回救急呼んでましたよね?
先週は本館前に…パトカー停まっとったなぁ、しかも2台も…
消防も警察も…あんまり呼ぶと…怒られますよね…

そーゆー問題じゃぁないだろう!!
警察に連絡する前に、一応、矢島さんの部屋を見てみようということになった。

上級生の部屋(机・ベッド・作り付け本棚・ロッカーがある)

矢島さんは…ベッドで寝ていた…スヤスヤと…寝息を立てて…
枕元には、ナンバースリーじゃないコンビニの袋に入ったビールがあった。

おい!矢島!大丈夫か?!

先輩は安堵のあまり半泣きで、矢島さんを揺すり起こす。
矢島さんはキョトンとした顔で起き、こう言った。

なんだよ、みんなひどいなぁ、せっかく買い出し行ったのに、帰ってきたら誰もいないんだもんな。

話をまとめるとこうなる。

矢島さん、自分の部屋(1階)で飲んでいると思い込む
3階から飛翔する
植え込みに着地する
サンダルがなぜか見当たらない、裸足で買い出しに行く
ナンバースリーが閉まっていた
遅くまでやっているちょっと遠いコンビニに行く、裸足で
帰ってきて自分の部屋(1階)に窓から入る、誰もいない
えぇぇ、せっかく買ってきたのに、お開きかよとスネる
ふて寝する ← イマココ

でまぁ、矢島さんの怪我は、ほっぺたと肘膝の擦り傷と、軽い突き指で済んだ。

それはそれでめでたいのだが…

3階の窓から飛び降りて(ほぼ)無傷で立ち上がる…ターミネーターかよ
全身の擦り傷から血を滲ませながら…ニコニコペタシ歩く。
木の枝や葉っぱまみれのTシャツでニコニコ歩く。 
機動隊員が日夜守る元総理の家の前を…ペタシニコニコ歩いて通り過ぎる
コンビニ袋をぶら下げて帰って来て…元総理の家の前を通って帰る

どう見ても不審者なのに、機動隊大丈夫か?

そんな矢島さんには、いつしか不死鳥(空を翔んでるし)の矢島、フェニックスの矢島という二つ名がつくようになった。

おしまい

2023年10月17日火曜日

学生寮の話(フェニックス矢島・1/2)

伝説になっていた矢島先輩(仮名)の話。

寮では空き部屋が出ると、希望を取って抽選が行われる。2階と3階は人気があって、競争が激しい、そんな状況で、矢島さんは自ら望んでずっと1階に住んでいた。

俺は…別にこだわらないからいいや…

そうニコニコしながら言い、1階に住み続けていた。

そんなふうに、屈託がなかったし、相手によって態度を変えず、いつもニコニコしている矢島さんは人望があった。
今は3階建の北寮と中庭
*この投稿の写真2枚は最近撮影されたもので。僕がいた寮、現在は4階部分が取り壊されて、人は住んでいないということです

夏と冬を除いて、矢島さんの部屋には誰かしら来て酒を飲んでいた。

酒が切れかけると、矢島さんはおもむろに立ち上がって窓を開け、中庭に降りる。中庭は庭石やら植木やらが散在し、池もあり、虫も多い。筋金入りの1階住人、矢島さんは気にせずに中庭に出る。草むらに隠し置いた便所サンダルを、つま先でヒョイとつっかけて酒を買いに行くのだ。

矢島さんが1階を好んだ理由は、門限(一応あった)が過ぎても、窓から自由に出入りできるからなのだ。
中庭の池

寮の正門を出て右に30歩行くと、Number3(ナンバースリー)というコンビニがあった。24時間営業ではなかったが、セブンイレブンだって名前の由来どおり、朝7時から夜11時までの営業が中心だったし、そもそもコンビニ自体が少なかったのでみんな便利に使っていた。

矢島さんはビールとか、安いウイスキーを買って来てくれる。みんな口々にお礼を言い、一応お金を出そうとするのだが、矢島さんは受け取らない。

イイヨイイヨー 
今日はイイヨー

「今日はいいよ」といいながら、いつも矢島さんと、他の先輩が酒代を払ってくれる。矢島さんのことを嫌いな人なんて、いるわけが無いのだ。

ある日の夜、矢島さんを交えて3階の部屋で飲み会が始まった。いつもいつも矢島さんの部屋だと申し訳ないから、そんな理由だった。

車座の真ん中にちゃぶ台があって、空きビンや空き缶がだいぶ増えてきたなぁ、そんなタイミングだった。

矢島さんは立ち上がると窓際に行き、ガラリと窓を開けて虚空へと飛び出した。

その場にいた面々は、一瞬何が起こったかわからず呆然とした。

シューー
バキバキボキ
ボスンッ!

何かが地面に叩きつけられた音を聞き、みんなは現実に戻った。

えっ?矢島?
馬鹿やらろう!!何やってんだあいつ!
矢島sなん、ここ自分のへやだと勘ちぎがいして!
となかく!下だ、した、 
あいつ、死ぬなよ!死ぬなよやじあぁま!

みんなは叫びながら、階段を転がり落ちるように走った。
矢島さんを失う恐怖で、一気に酔いは冷めていた。

背筋を冷たい汗が、スーーーっと降りていった。

つづく