「ビフテキ」という言葉に反応するのは、多分50代以上だろうね(2021年現在)。
そう、僕らが食べ物の味がわかるようになった昭和40年代、美味しいものを注文すると、親の表情がこわばることに気がついた。そして、それは、美味しいものは値段が高いから…ということを知った。
そんな昭和40年代「ビフテキ」は大ご馳走のうちの一つだった。若人に念のために言っておくと、「ビフテキ」は、Beef Steak の略。Pork Steak は、「ポクテキ」じゃなくて、トンテキになるけど、それはなぜかは聞かないで、知らんからw
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もはや厚切りを通り越してブロック |
そもそも、その頃は流通が発達していなかったので、肉と言えば鳥、ちょっと頑張って豚の時代。すき焼きなんて、年に数回しか食べられず、しかも、すき焼きは鳥か豚肉って信じていた奴もいるくらいの時代だった。で、ビフテキは、漫画の中でたまに出てくるだけの存在。
そんな時代に、初めて「ステーキ宮」に連れて言ってもらった時の衝撃は今でも覚えている。見たことのない、大きくて分厚い牛肉。漫画でよく見る形とは違うけど、まぎれもない牛肉(注1)。噛み締めると、牛肉独特の甘くて濃い肉汁がジュワーっとほとばしる(時もある)。
ステーキ宮のメニューで、当時からあるオリジナルステーキは、「ハンギング・テンダー」と書いてある。ハンギングとは、日本語ではサガリ。で、令和を生きる僕は、なぜあの当時、ステーキ宮がこれをお得な「ステーキ」として売り出したのかがよくわかる。
これは牛の横隔膜で、ハラミの兄弟。詳しくはしらないんだけど、牛を解体する時に正肉とモツの処理工程が途中で別れる。で、ハラミは肉なんだけど、処理の仕分けでモツのほうに流れるんだそうだ。そんなこともあって、正肉を仕入れにくる普通のお肉屋さんとか、お料理屋さんの目にはとまりにくい。
仕入れる人が限られてるので値段が安い。いつも動いている部位なので、サシは少なめだけど、ダイナミックに動く筋肉じゃないので柔らかい。味も濃くて、牛肉食べてる感たっぷりなので、今やハラミは焼肉屋さんで大人気。
牛肉の市場が今ほど大きくなかった時、高価な正肉以外で、味わいがよくて安くて、カットによっては筋も気にならない、そんなハンギングテンダーは素晴らしい選択だったんではないだろうか。
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火を入れた宮のタレの旨さはやっぱり異常 |
で、それをミディアムレアとか、レアで焼いてもらって(注2)、宮のタレをたっぷりかけてもらって食べる幸せ。そんなステーキ宮で牛肉の旨さを知った僕は、自分流でステーキを焼いて食べる。
若い時とは違って、最近は赤身肉が美味しいと感じるようになった。そして、できるだけ厚いカットの肉を選ぶ。必然的に、オーストラリアかアメリカの牛肉になる。
焼く前に、常温に戻しておく。ただ、外気温が25度を超えてくる夏だと、常温に放置する時間が長いと傷んでしまうので、そこまでこだわらない。
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表面から5mm は焼き、その内側はローストビーフ |
旨い具合に暑さが1インチを超えるくらいの赤身肉が手に入ったら、スキレットで焼くのがオススメ(注3)。よく熱したスキレットで、肉の4面に焼き目を付ける。そのあとは思い切り弱火で、スキレットの余熱も利用しながらジワジワと火を通していく。
外気温が低い冬は、焼いてない面が冷めてしまうので、蓋を使って保温しながら火入れする。
で、中心が人肌よりもちょっと熱いくらいになったら、肉を休ませる。この時、肉の表面はアツアツで、中心部はややアツ。これが全体的にちょいアツになるくらいまで、別皿で休ませる(注4)。スキレットをもう一度加熱して、肉汁がフツフツ言い出したところで宮のタレを入れて、全体に火を入れる。そこに休ませた肉を戻して、いただきます。
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パエリアパンで2枚焼きの準備 |
僕は今まで、大事な友人のために、たくさんのステーキを焼いてきた。で、だいたいはうまくできて、たまに失敗してw、たまに会心の一皿になる。
まぁその、どんな料理でも、それを食べる環境と、驚きによって味わいは変わってくる。そんな諸々で、今までのベストステーキの一枚になるだろうってのがこれ。
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避難小屋でステーキかよ❗️ By: Kちゃん |
なんか山のぼりたいよね、そう声をかけてくれたKちゃんUちゃんを、僕のホームグラウンドに案内した。時期的にここは他の登山者は来ないはず、そんな読みが当たって貸切になった小屋で宴会。
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次の獲物を狙う鋭い目 |
まぁその、コロナが落ち着いたら、山で宴会しましょうかね。
おしまい
注1 ステーキと言えば、ニューヨークカットのサーロインが典型的なアイコン。漫画とか、頭の中に浮かんでくるのも多分それだろうね。肉の繊維を切って、食べやすく、おいしく仕上げるカットは部位によって違う。宮のオリジナルステーキは、その部位の特性上、正方形〜長方形で、脂身がほとんど無いので、サーロインのアイコンとは見た目が全く違っていた。
注2 当時は、レアで頼むと内はほとんど生だった。弱火でじわじわと火を通して、そのあと休ませるレアなんて出す店はなかった。というより、レアステーキなんて、ほぼ牛肉のタタキくらいに思ってる店がほとんどだった。ただ、たまに、同じステーキ宮の店で、同じレアなのに、めちゃくちゃ旨いステーキに当たることがあった。それが、僕の、「ステーキって、単に肉を焼くだけじゃなさそうだ」って気がついた原点。
注3 脂身が多い肉はアミというか、グリドルで焼くのがオススメ。余分な脂を落としながら焼く。身がしまって肌理細かい赤身肉は、繊維を壊さないように鉄板で焼くのが美味しいと思う。
注4 焼きたてのステーキにナイフを入れて食べると、確かにアツアツで美味しいと感じていた。最近は、焼きたてで表面の油がジュワジュワ言ってるのが、すこし落ち着いて芯まで均等に火が通った状態(休ませたあと)でカットして食べたほうが、おいしく感じる。理由はわからないけど、僕はそうなので、よかったら両方試して見てください。