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2021年3月15日月曜日

ポールを活用して安全に滑る 1/2(ホワイトアウト)

青春時代はスキーバブル、そんな世代である僕が育ったのはスノーボードが無い時代。30代半ばでスノーボード を始めるまでは、スキーにどっぷり嵌っていました。モーグル、競技、ゲレンデスキーはほぼやり尽くして…今で言うバックカントリー(BC)テレマークを始めます。スキー歴が長くなり、状況が悪いところでも安全に滑る方法や、状況判断についても学びました。

例えば、ホワイトアウト(注1)になった時にどうするか。定石では、動かないことが重要です。視界が悪い状態では、進行方向に雪庇や崖、シュルンドやクラック、ツリーホールがあったときに回避できなくなります。また、方向感覚が狂いますから、地形が入り組んでいて迷う恐れがある場合も同様です。

しかし、動かざるをえない時、動いたほうがリスクを回避できる場合もあります。

例えば、天候が悪化することが間違いない時。日暮れが近づいている時(注2)。現在地が地形的に危険である時。例えば、現在地が狭い沢筋で、上部からの雪崩、岩壁からの落石などのリスクがあるなどです。このような場合は、安全地帯まで降りるべきでしょう。

繰り返しになりますが、進路上に致命的な地形上の罠が存在せず、くだっていけば目的地周辺に確実に出られること。そして、その場で留まることが危険な場合に限っての話です。

ホワイトアウトの危険は2つ。まずはスピード感が無くなること。そして平衡感覚を失うことです。

スピード感の喪失とは、どれくらいの速さで滑走しているのかわかりにくくなること。また、停止しているつもりが滑り出していることすらあります。コツは、停止している時は必ずストックを斜面に刺しておくこと。そして、滑走中もストックを斜面に軽く押し付けておくことです。

普段なら、ターンのきっかけでストックを突き、ターン中ストックリングは意識から消えているはず。ホワイトアウトの時は、ストックをついた後にリングを斜面にかるく引きずりながら押し付けていきます。リングから伝わってくる振動で、どれだけ速度が出ているかを把握できます。

平衡感覚についても同様です。リングが押し上げられるような感覚があれば、体が内倒を始めています。ある程度急な斜面なら、ダブルストック(両手でストックを突いて、両方とも雪面に押し付けたままターンする)を使えば、斜面と自分の体の位置関係を確認しながら滑ることができるのです。

まとめます。
ホワイトアウトの時スピードの確認
ホワイトアウトの時バランスの補助

ポールには、この2つの機能があること。そして、あなたがBCスノーボーダーであれば、バックパックにセットしてあるポールを滑走時にも活用することで、安全になりますよ、というお話でした。もちろん、たまにはポール滑走の練習もしたほうがいいですよ、ゲレンデでね。

スノーボーダーなのにストック?かっこ悪っ!って言われるかもしれませんが、カッコイイ死に方って無いですから。

では、みなさんどうぞご安全に。

つづく

八方池の脇に思わぬ嬉しい吹き溜まり photo by Ogawa-san

BCスノーボーダーはポールが友達 たかやん

(注1)ホワイトアウト(whiteout)は、雪や雲などによって視界が白一色となり、方向・高度・地形の起伏が識別不能となる現象。 出典はウィキペディアです

(注2)そもそもそんな状態に陥らないように、組み立てを考えるべきです。しかし、BCではいろいろなことが起こります。トラブルに対する時間的な余裕を使い果たした時、冷静に考えて確実に突破できるなら進む。さもなければ守りに入る、見極めが重要だと思っています。突破といってももちろん準備が必要、イチカバチカのトライはだいたいにおいて裏目に出ます。
準備とは、体力と技術。いざとなれば、走って下山できれば余裕が生まれます。特殊な条件下でも確実に前進できる技術。両面を磨いておくということです。

2021年3月14日日曜日

機関車トーマス

SNS友のチップさんがこんなポストをあげていた。

今日は僕の来日記念日。今日で28年経ちました

彼はアメリカ人で、英語教師として来日し、日本で結婚して幸せな家庭を築いている。

で、ふと、もう一人のアメリカ人の友人のことを思い出した。プライバシーに配慮して、トーマスと呼ぼうか、彼も英語教師として赴任した。来日してすぐはかなり苦労したらしい。

アメリカで基本的な日本語はベンキョーしたけど、やっぱり全然違ったね。
特に、書いたり読んだりする言葉と、話す言葉が全然違うでしょう?

まぁ、そうだね。書き言葉と話し言葉は違うよね。

数年かかって環境に馴染み、不自由ない程度に日本語を覚えたトーマスは…ちょっと日本を見て回ろうと考えた。そして!ついに東京へ!

いやー東京の方言には参ったよね、全然日本語が通じないんだもんね。
新宿まで電車でどうやって行くの?」これ聞くだけで30分以上かかった。

……ちょっとまて…トーマス… 今、なんっつった??

トーマスはお茶目な顔で笑って言った。

&&%*+#)”_?!%*+&&%*+#)”_?!%*+#)”_?!#&%*+#)”_?!”_?!

なに?なに?

僕がね、一所懸命勉強して喋れるようになったのはね、青森の方言、「津軽弁」なの。
おっかしいなーってずっと思ってたんだよね。同じ意味の言葉なのに、本とか辞書に出てないんだもん。それに、テレビのアナウンサーの話してる言葉と全然ちがうでしょ?

お、おう、そ、それは…大変だったね❤️

で、トーマスは津軽で、べっぴんで、気立てが良く、何よりも津軽弁と東京弁(標準語)の通訳ができる、働き者な奥さんを見つけた。そして、東京に出てきて幸せな家庭を築いている。

東京でガチな津軽弁わかる人ってすごく少ないから、奥さんと内緒話するのに便利なんだよね〜(注)

そんなトーマスくんともずいぶん会ってないな。
コロナの馬鹿…

(注)僕の奥さんは宮城出身で、「肩車」のことを「猿コバッパ」と言う人なのだ。だが、彼女から言わせても、津軽弁は別格ですごいらしい。

2021年3月13日土曜日

DAY29 大荒れ予想だが、意外と快適な尾瀬岩鞍

雪山宴会部のゆーやが、ご友人二人を伴って出撃するとの情報。よし、グンマー帝國の誇りをかけて、迎えてやるべい。しかし、天気予報は雨というか、豪雨、暴風、雷、むーん。

に、新潟方面に逃げるなら? 田代全面クローズ決定、神楽上部もクローズ、標高低いところは全部雨。というか、南風はいるので、雪になるわけないw ダメだこりゃ。

よし、雨覚悟でゴンドラかフード付きリフトのあるところだ!

丸沼の天気予報では、標高1,500~1,600予報で風速30m の南風。ん?3m?えっ?30m???  いや、これはさすがに、動かないっしょ!

んで、これらの情報をゆーやに送って、最後に「見送りすっか?まあ、あえて行くなら岩鞍でゴンドラ回しかな…」

前日の夜に、ゆーやから直メ

「オススメどおり、多分岩鞍にしますけど、明日6時に最終的に決めて連絡しまーす」

お、おう、行くんだ?????wwwww

マジ??????

まぁ、結果的には、岩鞍だけ光がさしたり、雨も小雨が降ったりやんだり。ゴンドラも止まることなく、快適に滑ることができましたとさ。

やって来ました岩鞍、微風、ちょい晴れ間、小雨降ったりやんだり

先に到着してゲストを待つ
雨が強まったら、弾みで帰宅しそうなので
エナジードリンクを注入して、覚悟を決める

ユニクロパーカー 1,980円 処分品

Volc◯m パンツ2シーズン落ちで購入
1x,xxx円 値段の割にちゃんとしてるのはさすが

ゆーやたちが到着するまでにウォームアップでゴンドラ3本
雨のせいでがら空き

せっかくだから、いい温泉に入ってもらいたい
で、X-tele のJSさんが、ささの湯入ってたなと探して行ったら良かったです
大人650円、源泉掛け流し、加水加温循環無し

チャネルとESTでBRTNは何を失ったか

バートンのチャネルボードに、他社製のバインディングを付けることはできます。ほとんどのブランドのセンターディスクには、チャネル用のビス穴があるか、専用のセンターディスクが付属しています。

ですから、BRTNのチャネルボード+FLUXとか、Union とかの組み合わせもできます(快適に滑れるとは言っていない)。

Unionのバイン、青い手袋の指先がチャネル用ビス穴
チャネルは2本留めなので穴が2つ、4x4に比べると太い

BRTNのESTバインディングは、チャネル専用で4x4ボードには付けられない。他のブランドの板と、時々は付け替えて乗りたいって人はESTバインは使えないことになる。こうした人たちを、むざむざ他のバインディングに取られることは避けたかったらしく、BRTNはバインディングをESTと、Re-Flexの2つのシリーズに分割した。そして、Re-Frexは、他社のバインディングと同じ様に、センターディスクを変えれば、チャネルにも、4x4にもつけることができる。

BRTN Re-Flexバインのセンターディスク 上が4x4、下がチャネル

これで、全部うまくいく!わけではなかったのだ。

まず、チャネルボード+ESTバインは天国だ。多分、間違いない。使ったことないけど。

では、チャネルボードに、他社製バインまたはRe-Flexを付けてみよう。
対応センターディスクをセットしてと…チャネルでスライドするから、セットバックもスタンスアングルも、スタンス幅も自由に決められるね!あれ???センタリングの微調整ができないじゃん?
Re-Flexの場合は…ディスクに3つの選択穴が開いていてそこでやる。上中下、松竹梅、的な。フロントフットのセンタリングは、すごく微妙で、3mm 動かすだけでフィーリングが大きく変化する。なのに3段階、6mmくらいの幅で大雑把にしか調整できないって、3Dより退化してるじゃん。

出典: amazon.co.jp

この写真は3D用のセンターディスクだが、5段階に調整穴が空いている。センターからトウもヒールも、2段階、微妙にずらせるのがわかるだろう。

じゃぁ、UNIONはどうかというと、上の写真で見るとわかる通り、チャネル対応ディスクの穴は2個しか無い。で、センタリング 不可!かというとそうではなく、ヒールカップの位置を前中後の3段階にずらしてセンタリング をすることになる。(注1)

ヒールカップをスライドさせて、3ノッチの調整ができるUnion

さぁ、では、他社製ボードの4x4に、Re-Flexバインディングを付けてみようか。この場合も、センタリング の幅は3段階…怒

で、ですね、僕の場合はもともとは、BRTNの3Dシステムボードと、他社製4x4ボード(ROME)を履いてました。だから、BRTNがチャネル&ESTに完全シフトして、3D用バインディングをやめたとき、Re-Flexを買いました。BRTN好きだったしね。でもですね、3段階センタリング で一番かかとよりにしても、もう3mmか6mm、ヒールに寄せたかったんです。多分練習すれば、この違和感は消えるんだろうなって努力したんですが、どうしてもダメで、Unionに乗り換えたら一発でセンター出て、笑いました。数シーズンをRe-Flexに付き合ったせいで、無駄にしたなと。

もともとBRTNは他社の4x4を尻目に、互換性のない3Dをずっと使ってきて、そして今はチャンネル+EST…なんというか、うちの組み合わせが最高なんだから、それ選べ。それ以外選ぶのは勝手だけど、まぁ、好きにしろ。くらいの天上天下唯我独尊。

中の人にしてみれば、チャネル+ESTという、スノーボード 史上最高のシステムができたんだぜ!これさえあれば、他のものなんていらないんだよ!なんで別の選ぶんだよ!って感じなのかも。

でもね、チャネル+ESTにBRTNが完全移行して、そっちに行かない人たちには、Re-Flexを置いてった。で、Re-Flexはセンタリングが大雑把に3段階に劣化した。まぁ、それはいいだろう。しかし、なんで他のブランドも、3段階劣化版に合わせにいくかな?

国内設計で、日本人ライダーの体格とか体力にあったバインディングを作ることにこだわります!って言ってた FL◯X …  確か…以前は…前2、後ろ2の5段階調節できるビス穴があるセンターディスクだった。この間見たら、3つ穴で、前・中・後の3段階に劣化してる。なんで?BRTNが3段階だから、それでいいやって思ったの???

センタリングが大雑把にしかできなくなったことで、最高のライドフィールを失ったライダーは僕を含めて沢山いるはず。そして、なんで今、うまく滑れないんだろう?って思っている人も結構いるんじゃないかな?だから、あえて言おう。

Union最高! (注2)

(注1)Unionの可動式ヒールカップを、「ブーツサイズに合わせて調整するためのもの」って説明しているショップあるみたいですが、嘘ですから。それがホントなら、サイズMのバインに、サイズ下限のUS7ブーツセットしたら、ヒールカップ一番前にださないとガバガバになるよね。そんな風にぜったにならないから!トウストラップが前後で位置調整できるのも、ヒールカップでのセンタリングに合わせて、前後移動させるためのものだから!

(注2)可動ヒールカップで6mm単位で大きくセンタリング して、ディスクのノッチ3mmで微調整できるのがいいよね。そして、ヒールカップで3段階のセンタリングできれば大丈夫!ってラッキーな人は、ディスクを横向きに使ってスタンス幅を調整できる。そんな自由度が高いのが、Unionのいいところ。さすがバインディング専門のメーカーって感じ。
機会があれば書くけど、日本人(アジア系)の足の小さいライダーが、欧米メーカーのボードを乗りこなすには、センタリング が鍵になる気がする。BRTNのライダーがどんどんUnionに移っているように見えるのは、このあたりが原因なような気がするなぁ。国●君とかね。

2021年3月12日金曜日

チャネルとESTがBRTNに何をもたらしたか

このブログの内容はすべて創作です

確か2003年ごろ、Forum Snowboards の経営がヤバいという話が流れた。どうなるんだろうと思っていたら、社内メールでジェイクからのメッセージが流された。要約すると、

ForumがBRTNにジョインするぜ!めっちゃ興奮してるぜ。
コアなスノーボード ブランドを、スキーメーカーが吸収する流れはもうウンザリだ。
だから、一緒にやることにした!みんなも興奮してくれ。 
きっといい科学反応が起こるはずだぜ Yeah!

…ジェイク…興奮しすぎだ…

で、Forumはスライダーシステムを持っていて、それがバートンにチャネルをもたらした。

スノーボード のバインは、センターディスクでセンタリング 「か」スタンス幅を微調整できる。「か」がポイントで、センタリング をすると、スタンス幅は調整できないし、スタンス幅を調整すると、センタリング は調整できない。これは、センターディスクを0度か90度のどちらかの向きで使って調整をするからだ。

Union のベースプレートとセンターディスク

上の写真はUnion だが、縦に細長く2列に溝がある。この溝のどの位置でバインをボードに固定するかによって、写真でいうと上下方向に微調整ができる。この場合、ボードに対してつま先よりにするか、かかとよりにするかの位置調整ができ、この調整方法をセンタリングという。

で、中心にある円形のセンターディスクを、90度回転させると、溝が前後方向になる。で、この場合は固定位置を前後方向に微調整できて、バインディング間の幅(スタンス幅)を調整することができる。

で、Forum は、ボードの取り付け穴を前後自由にずらせれば、スタンス幅が自由になるよね。じゃぁ、レール2本埋め込んで、スライダー入れて、4x4のバインなら自由に前後動かせるようにしようぜ。んで、センターディスクはセンタリング 方向の調整に専念な。てことを始めた。

Forum Snowboards でググって、画像見てもらえれば大体のことはわかると思う。

生産はかなり大変だったようだ。

だってさ、バインがすっぽ抜けないような強度のある、金属製のレールを2本、ボードのセンターに入れるんだよ。フレックス、カッチカチやで。

剛性が上がりすぎない様にレールを細くすれば、曲がるし壊れる。それと、ボードの中の構造で非連続面があると、そこのつなぎ目で折れやすくなる。レールをボードの中のどこからどこまで入れて、どんな風に終わらせるか…

で、BRTNにForumが合流してから、4x4スライダー(名前忘れたw)は、チャネルシステムになった。違いは、レール一本、以上。

Forum は、一般的な4x4バインディングで使える様に、片方のバインを4本のビスで固定していた。だから、レールが2本必要だった。

BRTNはこう考えた。うち、バインもトップブランドだから、専用のシステム作っちゃえば無問題!こうして生まれたのが EST!BRTN の黒歴史Aura以来の2本締めシステム!

ESTリリース直後はM5ビスで、固定が緩むって問題もあったみたいだけど、M6にアップデートされて、締結トルクあげられるようになってから問題はなさそうだ。

Forum のスライダーがそうだったように、EST&チャネルのシステムで、スタンス幅もアングルも、セットバックも、シームレスに変更できるようになった。しかも、センタリング も細かく調整ができる。これはほぼ無敵のセットアップと言っていい。BRTNボードとBRTNバインのセットアップがサイコーで問題ない!というかそれ以外ない!というライダーにとっては、最高の自由がもたらされた。

ボードかバインのどちらかを、他社ブランドにするとクソになる可能性がある、そんな不自由さと引き換えに。

つづく

センタリング?ヨユーっしょ By: takuji

滑落したらどうなるか、常に考える

厳冬期のBC(Backcountry)スノーボーディングは、敷居が高すぎる。春からがBCシーズンだ、そんな風に思う人も多いでしょう。何を隠そう僕もですw。
ただ、春特有のリスクもあるよなって思うんですよね… 滑落リスク

最近、クランポンとかアックス(注1)とかの装備は随分良くなりました。でも、ちょっとそれどうなの?って思うことがあるので注意喚起を。

BCは大抵の場合ハイクアップから始まります。次のような組み合わせが一般的かな。

スノーボードの場合
アルパインスノーシュー(注2) + ポール

 スキーの場合

ツボ足+ポール (キックステップが効く堅雪で、階段状のトレースがある)
クライミングスキン + ポール

しかし、下の写真のようなコンディションが待ち構えているなら、どこかのタイミングで滑落防止対策が必要です。稜線直下は風に磨かれたスケートリンクみたいになってるからです。

乗鞍岳本峰 テランテランに蒼く光るアイスバーン

言うまでもなく、滑落防止でベストなのは アックス&クランポンです
ただ、スタート時点がポール+スノーシューかシールなんで、こんな風に迷うわけです。

「クランポンが先か、アックスが先か?」

「ポールをアックスに変える」または、「スノーシューやスキーから、クランポンに変える」このどちらが安全で快適なのでしょうか?

わりとよく見るのが、まずクランポンを履くけど、手元はポールのまま。

ちょっと考えて欲しいんですが…足元が硬くなって「登りにくなるから」クランポンを履くんですよね?登るのに苦労する氷結した斜面で転倒したら…どうやって滑落停止するの??

ポールとアックスって、どちらも手に持ってますけど、役割が全然違います。

ポール = バランス保持、登高・前進の推進力を得る
アックス = バランス保持、ステップカット確保支点滑落停止

滑落停止に使えるのは、アックスです

だから、まずアックスを出すべきだし、これから進む斜面の状況次第ではアックス+クランポンに早めに変更するべきです。

で、そこで考えて欲しいんですよね。
アックス+クランポンでなければ登れないような斜面で、滑って楽しいの?

春富士の5月なら、八合か八合五尺までしか上がらないことって普通じゃないですか?その辺まで登ると、雪が硬くなりますから。山頂まで行きたいなら、6月まで待てば良いのです。
八合で早めにアックスとクランポンに変更

谷川岳BCも年ごとに人気が増えているようです。しかし、天神尾根〜茂倉岳までの稜線を例に取ると、東側は雪庇&絶壁の連続で、そちら側に落ちたら助かりません。

熊穴小屋から先の傾斜が上がるところ、肩の広場も要注意。滑落したら、西黒沢本谷の急斜面に吸い込まれて、シュルンドに突っ込むか岩壁でズタズタになっておしまいです。

意外と盲点なのが、なだらかな一ノ倉岳への取り付き点。ぱっと見、夏道通しで問題ないように見えるんです。しかし、夏道は一度右にカーブしています。夏なら一ノ倉沢を覗き見ることができる、展望台。しかし、そこで滑落すると一ノ倉沢にダイレクトダイブ…左に巻いて登るのが正解かと。

地形を良く見て、万が一スリップしても大事にならないように考える。そして、絶対にスリップできない状況なら、滑落停止できる装備を出す、自信がなければ引き返す。それやらないと、いつか死にます。

下の写真は雪山宴会部のクスミックス 。
稜線直下で、クランポンにポールじゃないか!?滑落停止は!?

ここは僕んちの裏山なんですよ BY: KUSUMIX

クスミックス のスキーポールには、滑落停止のできる、ピックが付いています。ピックは鋭利な刃物ですから、登高スタートした時はカバーが付いています。足元は山スキーにクライミングスキン。雪が硬めなら、クトー(スキーアイゼン)もつけます。

で、そろそろアックスを出すようにみんなに言おうかな、そんなタイミングで彼を見ると、ピックカバーが外されています。そして、彼と視線が合う。

彼は、周囲を良く観察して何がリスクか判断しています。そして、どんな対策が必要なのかを常に考えています。稜線に出るか止めるか、出るなら直登か巻くか、巻くならどこからか。アックス出すか、クランポン出すか。

僕は彼を見て、ピックカバーが外されていることと、その意味を理解します。「このまま直登するならアックスですね?」彼は僕の様子を観察して、彼の意図を僕が理解していることを確認します。

「右かね?」
「左がいいかな、昨夜は風が強かったんで」

短いやり取りですが…
 
「直登なら確かにアックス&クランポン。でも、稜線まで標高差50m くらいで、そこから先は岩混じりの平坦だから滑落のリスクなし。巻いて行けるならこのまま行きたい、斜度の落ちる右からはどう?」

「昨夜は北風が吹いて冷えたので、右側の北面は氷結してますよ。むしろ左から巻いたほうが、吹き溜りになってるので、万一滑落してもクッションがありますよ。」

こんなふうな確認をしています。

この時は、私とクスミックスがちょっと先行して、他のメンバーが追いつくのを待ちながらコンディションのチェックをしていたのでした。で、南側から巻いて、風裏になるドロップインポイントに着き、無事にBCを楽しんで帰りました。

皆様もどうぞご安全に。

富士山のお釜(噴火口)を滑る、この登り返しがキツイ

(注1)山屋さんが言うピッケルとアイゼン、BCスノーボードでは、アックスとクランポンと呼ぶことが最近増えているようです。どっちでもいいんですが、ネ

(注2)スキーブーツなら、キックステップが使えますが、スノーボードブーツはあまりにも無防備。なので、何かしらの滑り止めをつけないと行動が困難です、特に春雪では。中途半端なクランポンや平地用のスノーシューを買うぐらいなら、山岳対応タイプのスノーシューを選んでください。10本以上の、前爪がある本格的なクランポンは必要ですかって?そんな質問をするあなたは、シビアなコンディションで行動する資格が無いと思います。そんな状況になったら引き返すこと。

2021年3月11日木曜日

「良い」ソールの定義 2/2 (加工技術)

最初に、一般論から。

ボードの加工で重要なのは、各パーツのつなぎ目に隙間がないことです。雪上の低温下で、ボードの各パーツは縮みます。特に金属パーツは熱膨張率が高い(大きく伸縮する)ので、それを見越してエッジとソールのつなぎ目はきっちり塞がっていなければなりません。

ソール表面はフラットに仕上がって、用途や対象となるライダーに合わせたベベル角が入っている(注1)こと。ストラクチャーが適切に施されていることが基本です。

表面仕上げには、「やすり」や「刃物」(ファイル)、「砥石」などを使います。たまにですが、P-TEXが変質していてワックスの吸い込みが悪いソールを見かけます。シンタードソールのはずなのに、妙にワックスを弾いてしまう。原因はよくわかりません。

割と見かけるのが、エッジよりソールが凹んで段になっていること。エッジ全体に渡ってそんなふうになっていることは流石にないですが、ソールとエッジの境目に指先を滑らせていくと、ほんのわずかひっかかる部分があるみたいな。多分、ベベル(注2)加工で発生するんじゃないかな。ベベル加工は回転する砥石で、エッジとソールを同時に削って角度をいれるのです。金属のエッジとソールは、硬度も粘りも異なります。どうしてもP-TEXのソールのほうが早く削れてしまうことがあり、部分的にソールがエッジよりも凹むんじゃないなと思っています。

裏返しにした時、エッジよりソールが窪んでいるということは、雪上に置くと、エッジが雪面に食い込むことになります。これ、ほんのわずかな段差でも、人工雪などのパックバーンではひっかかりが気になります。切れ味の良い波目ファイルなどで、段差の部分のエッジをカットしてやるといいでしょう。手作業で丁寧にカットすれば(波目やすりは、やすりと言うよりもナイフみたいなものです。鉄も切れるナイフ。)エッジとソールを同じようにカットできるので、段差ができることはありません。

次にダイカットソールの場合についてです

Salomon のAssassin のソールは複雑なダイカットです。ベースのソールに穴を開けておいて、黒いソールから切り出したパーツをはめ込んで、熱圧着加工で一体化させるています。ソールをカットする時に精度が出ていないと、一体にする時に隙間ができてしまいます。また、フラット出しの時に、ダイカットのつなぎ目に段差ができていることもあります。多分ですが、ソールのカラーによってほんのわずかに硬度が異なるのではないかと思っています。柔らかいパーツと硬いパーツを組み合わせて、サンディングすれば、柔らかいほうが先に削れますので。

複雑なダイカットソールだが、綺麗にフラットで段差なし
さすがやね、サロモン


ダイカットソールの注意点ですが、ボードとソールの貼り付け強度は、接着剤の「接着力」と「接着面積」に左右されます。ですので、あまり細かい線をダイカットで作ると、接着面積が不足して、剥がれやすくなります。

Bataleon のロゴマークは幅が非常に狭いので
剥離のリスクはちょっと高め



最後に、コストダウンと品質のバランスについて。

良いソールに仕上げたいなら、いいファクトリーに頼みたい。でも、いいファクトリーは加工賃がお高め。で、シンプルな加工方法で工数を減らせば少しは安くなります。

ダイカットをやめて、一枚ソールにすれば工数は減らせます。一枚ソールならつなぎ目も減るので、浸水リスク(エッジのサビ、芯材の膨張・剥離)も減らせます。

ソールのデザインがカッチョいいと、気持ちが上がるんですよね。その点は大事にしたいけど、パークとかに全く入らない僕にとっては、ギャラリーに見せるわけでもないので…シンプルで滑走性のいいソールを優先したいなぁ。


(注1)ボードのセンターがわずかに凹んでいる(コンベックス)になっていても、実際の滑走ではさほど影響はありません。ボードでターンを連続している時、雪面に接するのはエッジと、そこから2~3cm程度のソールにしかすぎません。ですので、全体としてコンベックスでも、エッジとその脇のソールがフラットで、適切なベベル角が入っていることが重要です。そもそも常温でフラットなボードは、雪上ではだいたいコンベックス(中心がわずかに凹む)になっていることが多いのです。

(注2)ベベル角とは、ソール表面に対して、ソールエッジの角度を1~2度逃す加工方法です。これにより、ソールがフラットに接地した時に、ほんの少しエッジが浮き上がるようになります。1度が基本で、大きくなると安定感は減りますが逆エッジになりにくく、パークのアイテムで遊ぶ時に操作性が上がります。