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2023年10月4日水曜日

学生寮の話(四季を感じて・冬)

 「学生寮の話(世間との闘い)」でちらっと書いたのだけれど、寮にはほんのわずかなスペースを除いて冷房は無かった。

暖房はあった。あったのだが、それはセントラルヒーティング。地下にあるボイラーでお湯を沸かし、パイプで送り出す。各部屋には放熱器(ラジエーター)があって、お湯の熱を放出することで…部屋が暖まる、理論的には…
ラジエーター
*画像はwikipediaより*

鉄筋コンクリート造り4階建ての学生寮、冬の住環境がもっとも過酷だったのは、またしても4階だ。単純にボイラー室から一番遠いから、熱湯が上がってこない。しかもボイラーを焚いてくれるのは、日暮から夜10時くらいまでなのだ。

夜ボイラー止まる、夜中から朝まで、ラジエーターから配管から全部冷め切る。

夕方気温が下がってきたところでボイラー焚いて、お湯が配管に出ていって、周辺あっためて、1階あっためて、2階あっためて、3階あっためて、4階…行く頃には夜の10時になってボイラー落ちる。

暖房ぜんぜん効かへんのに、寮費が同じっての納得いかんやん?

4階住人はそんなふうにボヤキ、2階か3階の部屋に避難してタムロするのだ。

1階はどうかというと、ボイラー室から近すぎて、そこは熱帯。

ラジエーターには通水バルブが付いていて、お湯の流入量を調整できるようになっている。バルブを「全閉」にしていても、パイプを伝わってくる熱なのかなんなのか、ラジエーターはチンチンに温まり、部屋は熱帯になる。

北関東出身で寒さに慣れている学生(北海道出身者は意外と寒さに弱い)とかには、1階はあまりにも暑すぎる。寮長さん(寮監・定年退職された管理人さん)に、なんとかならないかと話をした奴もいた。

それくらい温度を上げないと、2階・3階が温まらないから我慢しなさい

そんなわけで、1階の住人は、冬でも部屋の中ではタンクトップかTシャツにトランクス。ただ、↑の通り暑いのはボイラー焚いている間だけで、それ以外の時間は…普通に冬。

暑過ぎてほぼ裸でドア開けっ放しで、うっかり寝落ちして、深夜に目が覚めたら凍死寸前だった奴もいた。

あ、そうそう、セントラルヒーティングの大きな欠点を書き忘れるところだった。

セントラルヒーティングとは、ボイラーが熱源で、そこで温められたお湯というかスチームが館内に張り巡らされたパイプを巡る。巡った先で、ラジエーターで放熱して各所を暖めるというシステムだ。

ヒーティングパイプは建設現場の足場に使われる単管パイプを肉厚にしたような代物で、途中で熱が逃げないように断熱材を巻かれたり、壁や天井裏に埋め込まれたりして隅々まで延ばされている。

ここで問題なのは、鉄でできているヒーティングパイプと、それを壁に取り付けるステー(金具)と、壁の材質である鉄筋コンクリートとか木材とか、全部「熱膨張率が違う」。熱膨張率が違うのに加えて、熱が入るタイミングも違う。

パイプにスチームが入ってくると、パイプが温まって伸びる。ところが取り付け先のコンクリートには、熱がまだ伝わっていないので伸びない。そうなると、パイプとコンクリートの壁をつなぐステーが変なふうに引っ張られて、ズレるのか捩れるのか?音が出る。

単に何かと何かがズレているだけのはずなのに、その音は…単管パイプをハンマーで叩くような音になる。日が沈んで、ボイラーに火が入った後、僕らの部屋ではこんな音がする。

シューーーッ…シュッシューーーーッ (スチームが回り始める音)

カンッ!

カカカカカッカカンカーン……コーン…ココココココカーン…

ガッガガン

コンコンコンシューーーシュシュシュシュカーンコココココーン

ガン

ガォゴンガガガガガッガガアガシュシュコーンガガッガコンコンコンコンカーン

シュバシュバシュバプシューカコンココン

でねぇ、このラジエーターが僕らの部屋ではベッドの脇にある訳ですよ。ベッドに横たわると、枕元1.2mのラジエーターからこの音が30分くらい響きわたる。

ボイラーの火入れならまだいい。夕暮れ時で、みんな起きてるし、その時間はみんな食堂に行ってたり風呂入ってたり、誰かの部屋で飲んでたりするから。

ボイラーの火を落とす時、夜の10時過ぎ、熱膨張率のイタズラは逆方向に働く。熱が徐々に逃げていくのでねぇ、これ、なかなか音が収まらないのよ。1時間ちょっとくらいはこの音が続く。

シュバシュバシュバプシューカコンココン

ガォゴンガガガガガッガガアガシュシュコーンガガッガコンコンコンコンカーン

 

 
カカカカカッカカンカーン……コーン…ココココココカーン…

 

コンコンコンシューーーシュシュシュシュカーンコココココーン

 

シューーーッ…シュッシューーーーッ




ふう、ようやく収まったか、そんなタイミングでいきなり不意打ちが来る








カンッ!

 

シュシュシューーー




パイプを伝わってきてラジエーターで放出されるこの音は、不思議なことに1階でも4階でも大した違いは無かった。

気の毒なのは、4階の住人で、セントラルヒーティングの恩恵にはほぼ与れないのに、この騒音問題は等しく影響を受けていたのだ。

まぁそんなわけで、夏に引き続き冬も、4階建の学生寮でもっとも不人気だったのは4階、僅差で1階だった。

えっ?僕?

僕は、入寮時2階、3年次の部屋替もうまく立ち回って2階。

上手くやったなー! だって?

まぁね…

夏も冬も、1階と4階の住人が避難してきてタムロしてることを除けば、ラッキーだったかもね www