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2022年3月16日水曜日

スノーボードのソールリペア(リペアキャンドル編)

スノーボードやスキーのソールを傷つけた時のリペア(補修)のコツなどを書いてみる。

ソールリペアとは、簡単に言えば、

 傷や穴を補修剤で埋めて、余分な分を削り取って平らにする。

これだけ。

で、素人が手に入れられる補修剤には、「リペアキャンドル」と「ポリスティック」の2種類がある。リペア・キャンドルのほうが、作業がシンプルなので、まずはそれを使った説明から。
ソールの状態をよく観察する
最初にソールを綺麗にする。

ワックスリムーバーをたっぷりと吹きかけて、汚れが浮いてくるのを待ち、ショップタオルなど綺麗なウェスで拭き取る。
傷の横にマーキング
この写真は、Jones Snowboards の Hovercraft だけれど、白地に透明のソールは傷がどこにあるかわかりにくい。埋めるべき傷の横に、マスキングテープを貼って、マジックで印を付けておく。
クリーナー的なものいろいろ
接着とか、補修とかのコツは、くっ付け合わせるモノ同士を綺麗にしておくこと。特に、油分と水分が大敵。上の写真は、左から、アルコール(イソプロピルアルコール配合)、シリコンリムーバー、そして、ワックスリムーバー。

普通にワックスリムーバーでいいのだけれど、ボクはシリコーンリムーバーも使っている。以前使ったリムーバーが、「ソール保護のために?」よくわからない油分を残してしまうタイプのやつだった。そんな油分もこれなら落とせる。

そして、名前の通り、シリコーンとか、フッ素とか、滑走性を高めるために添加されていて落としにくいようなやつも、これなら落とせる。

穴埋めに使うリペア・キャンドルだけれど、使い方については、説明書を良く読んでください。キャンドルがどのような組成になっているのかは知らない。多分…(適当)補修剤の本体であるポリエチレンと、キャンドル(ロウソク)のミックスだと思われる。で、それに火をつけて、ポリエチレンとキャンドルが入り混じった溶解物を垂らして傷を埋める。
傷の上に盛り上げるように垂らす
コツを書いておくと、

 消化用の水を用意しておくこと
 火を点けて、溶けた「ロウソク」と「ポリエチレン」のミックスを垂らすわけだけれど、うっかり燃えやすいモノの上に垂れるとそこで火がついちゃう。ティッシュとか、ペーパータオルとか、リムーバーの染み込んだウェスとかあると最悪。
 バケツに水、そして、たっぷり水を含ませたウェスとかを、ボードの下に広げておくと安心できる。垂れたキャンドルが、水の上でジュッて消えるようにね。
 暖かい部屋でやる
 ソールが冷え切った状態だと、キャンドルとの温度差が激しすぎるせいかうまく溶着しない。
 キャンドルとソールはできるだけ近い位置で
 熱いキャンドルがそのままソールに乗っかるようにする。キャンドルの炎でソールを温めながら、流し込むようにするとちょうどいい。

傷よりも盛り上げるように垂らしておいて、余分を削り落とす。マニュアルでは、メタルスクレーパーとか、カッターを使うって書いてあると思う。

僕のおすすめは「波目ファイル」。ファイルとは「ヤスリ」のことで、切れ味の良いやすりは、まさしく刃物なので、革手袋などを着用すること。
波目ファイル
ファイルには、キレる方向があるので、向きを確認してスーッと撫でるだけでキャンドルが削れていく。
フラット出し完了
キャンドルが冷え切らないうちにカットしたほうが、柔らかいので簡単にフラットが出る。しかし、それが冷えていくと、充填物(この場合はキャンドル)が少し痩せて凹む。

これは滑走性には全く影響がないので、自分のいたなら気にしないのだけれど…

このボードは預かり物。光にすかしてみると、傷が埋まりきっていないみたいで、ちょっと格好が悪い。
もう一回薄付け
もう一回キャンドルを流す。

仕上げなので、量はごく僅かで済む。だから、室温に冷えて馴染むのも早い。
完成
一つ一つ、補修跡を確認して、小さなディンプルを探す(自分のならやらないケドw)
横にマスキングテープ貼ってマーキング
ここにこんなディンプル(埋まりきっていない小さな凹み)があるというのを、印をつける。ここには、左から小さな点状、1cmくらいの縦溝、滲んだような凹みがあるという印。
完成
リペアキャンドルは簡単で便利なんだけど、柔らかい。波目ファイルを動かしていると、手応えでわかるけど、ソール材はPTEXとかで固い。ロウソクが混ざっているからあたりまえなんだけどね。

2022年3月10日木曜日

ゴーグルのメンテナンスというか修理

冬山で使うゴーグルは、曇らないように通気口が設けてある。そこが素通しだと、雪がどんどん入ってきて凍りついてしまうので、空気だけ通って雪は通さないように、スポンジが貼ってある。そのスポンジの修理について。

そもそもゴーグルの寿命をどう考えるかだけれども、僕はダブルレンズの「間」に湿気が入って曇るようになったら問答無用で捨てる。このトラブルは山で起きたら対処しようがないからね。(注1)

レンズが無事な場合は、ストラップがヘロヘロになって固定が甘くなったら捨てる。そのタイミングで、大体顔へのフィット感も低下してくるし、ダブルレンズの防水も甘くなって、レンズの間が曇るようなことも起こるからだ。
スポンジに氷が付着してそれを取ったらスポンジに穴があいた

そもそも僕は、スペアレンズ付きで1万円以内縛りでゴーグルを買っている。で、BCで使うメインのゴーグルとバックアップ用を2つ持っておいて、一つは曇天用、もう一つは晴天用のレンズを付けておく。

多分わかると思うけど、BC用が少し古くなってきたら、それをバックアップ用としてゲレンデで使う。ゲレンデ用が寿命を迎えたら、BC用をゲレンデ用にして、新品を買って、それをBC用に温存する。そのサイクルがだいたい3年くらい。
ホムセンのゴムとかのコーナーで売ってるスポンジ
スポンジの一部に穴が開いた!だけなら、自分で直すこともある。
道具もろもろ

まず、接着剤が付かないようにレンズを外す。この時、ダブルレンズの、内側のレンズを押さないこと。2枚のレンズは、薄いスポンジを介して隙間を作って接着してある。ここがものすごい弱い。レンズの間を圧縮してしまうと、中の空気が抜け、圧縮が解けた時に周囲の空気を吸い込んでしまう。これがレンズの間の曇りにつながる。レンズの内側が濡れたり、汚れたりした場合も、クリーニングクロスで「拭く」というより「軽く押さえる」ようにすることが大事。
ダブルレンズを持つ時はフチをこうやって
手指の皮脂がつくとレンズが曇るから、手袋をする。ニトリル系の手袋の場合は、「粉なし」を選ぶこと。そして、手袋をしてから、アルコールを吹いてクリーニングしてやれば完璧。
スポンジとグルー(接着剤)を剥がす
穴があいたスポンジを取り去る。カスがついていたらそれは綺麗に取る。スッポン・ピンセットという、リバースアクションピンセット(手を離すとクリップし、握ると外れる)があると、何かと便利。
ブレちゃったw
空気孔にマスキングテープを貼って、マジックでグリグリってやって形を転写する。ほんで、それを使って交換するスポンジを作る
スポンジにペタン
マスキングテープごとスポンジを切るのだけれど、気持ち大きめにするほうがいい。
型取り完了
接着がうまくいくかは、「接着面の清掃」と「動かないように圧力をかけて押さえる」にかかっている。満遍なく、圧力がかかるように、「押さえ子」を作る。というかなんでもいいので、スポンジの周囲がゴーグルに密着するような形の物を身の回りから探すだけ。
オーブンペーパーでクルリンちょと巻く
押さえると、接着剤がはみ出してくるわけなので、それを取り去りやすくする&押さえ子が汚れないように養生をする。ここではオーブンペーパー(クッキングシート)を使っているけれど、マスキングテープとか、養生テープでもOK。
マスキングテープをペタンとな
もちろんゴーグル本体にも養生を施す。
ヘラにもペタンとな
接着剤を延ばすヘラにもマスキング。こうすると後のお掃除が簡単です。
ほんで、接着剤を塗る前に、ゴーグルのフレーム接着面をアルコールなどで拭いて「脱脂」清掃しましょうね。
接着剤はムラなく多めにね
スポンジ(フィルター)のアミアミの中に入り込んで固定させなければいけないので、接着剤はすこし盛り上がるように塗る(注2)。
インシュロックでムギュッと固定
注2で書いた条件で接着剤を選ぶと、多分、「瞬間接着剤」は候補にならないと思う。大体硬化に3時間以上はかかるはずなので、一晩放置。
固定解除
ちゃんと着いているか確認しながら、押さえ子を外し、マスキングテープを剥がす。
カスやテープの端切れを除去
ちゃんと接着されていれば、ゴーグルのフレームを捩ったり、スポンジをつまんでも剥がれてこないはず。
治りました
右側、マスキングテープの細ーいカスを残してあるほうが補修後。純正よりもちょっとだけ目が荒いスポンジで補修したら、空気の通りがよくなって曇りにくくなりました。ラッキー


注1 ゴーグルブランドは数多あるけれど、実際に作っているメーカーは割と限られている。いわゆるOEMってやつで、製造受託元は、山◯光学、S◯ith が多い。他は…ここ数年買収とか工場統合があったらしく、知らんw  ちなみに、この、レンズの間に湿気が入って曇るトラブルはSの工場で作っている奴に多い気がする。Sとか、ブランドで言うとB社のAとかね。山なんとかのOEMは、その辺りのトラブルはほとんど皆無、やるな白鳥。(すべて私見と偏見です)

注2 接着剤をホムセンとかで選ぶときには、次の条件をチェックしてください。(用途)軟質プラスチック、ゴム用。PUとか、ウレタンとかを接着できること(軟質)硬化した後も柔軟性を保てること、そうでないとパリパリって剥がれちゃうからね(耐候性)熱・水・紫外線耐性があること、低温でも硬化しないこと。

2022年3月5日土曜日

DAY27/BC7新ルート開拓

DAY27はスキー場で1時間だけアップ。
そして、新しいルートを開拓しに車で移動。

ここは初見なので、事前に地形図とグーグルアースで念入りに検討した(注1)。
2箇所、ちょっといやらしい場所がある(注2)。

1箇所は、砂防堰堤の上にあるような地形。砂防堰堤で堰き止められて、土砂が溜まった広場みたいな場所。こういった場所は大体そこに、砂防ダムのような滝がある。行って見たらビンゴ。

その滝の下流300m くらいは、ゴルジュになっていそうなタイトな沢。

そこを初見で突っ込んで、脱出できなくなると詰んじゃうので、ボトムからハイクアップして確認することにした。(注3)
ストリートビューで確認しておいた
車を邪魔にならないところに駐車する。この周辺は道路が狭く、積雪期は往来が大変なところも多い。地元の皆さんに迷惑をかけないように、場所選びは慎重にした。
入山前に道路からお参り
駐車した場所から入山地点までは、坂道を歩いて30分くらい。
ハイクアップも好き
締まって潜らない雪の上を、スノーシューでハイクアップするのは楽しい。
林道を登っていく
斜度のない林道をハイクアップしていく。ここの下りはストック滑走になるだろう。横の沢筋は雪で埋まっているけれど、斜度がないので滑れない(スキーなら可能)。
トラップ
倒木が3箇所。どちらを通れば良いか観察しながら進む。
沢筋が狭くなっていく
いくつもの枝沢が左右から流れ落ちている。上流に向かうにつれて、本流の川幅は狭くなり、両脇の崖はキツくなる。
トラップ
今年は雪が多いので埋まっているが、普段の年はどうだろうか…
耳を澄ますと流水の流れる音がする。
伏流水の上にできた溝
大きめの枝沢からの流れ込みには深い溝ができている。落ち込んだら嫌なので、スノーブリッジを探して回り込む。
この辺から降ってくるのも楽しいかも
少しヤブはうるさいけれど、いくつか下降したら楽しそうな枝沢もある。
ゴルジュ帯を抜ける
雪が薄そうな場所を歩く時、そこに動物の足跡があれば、そこをたどるとだいたい間違いはない。ウサギ、カモシカ、狐、いろいろな動物の通り道は、自然の落とし穴を上手に避けてたどられている。
滝を見上げる
地形図で想定していた場所、ドンピシャの位置にやはり滝があった。沢が大きく屈曲していて、すぐ下に来るまで全貌は見えない。

周囲を見渡すと、右岸に横滑りで降りた跡がある。
皆さんが横滑りで下降した跡
タイトでスティープで、腐れ雪で、ツリーホールだらけのところを埋まりながら登る。
見下ろしたところ
滝の落ち口は見えない
滝の上に出ると、傾斜の落ちた広場になっている。
北斜面は乾いた雪が残っている
トラバース気味に沢床におりた。北斜面の新雪を滑るために、左岸に渡ってさらに登る。だいぶ気温が上がってきて、日の当たる左岸は粘りつくような雪に変わっている。
雪が良ければ楽しそう
メローな沢状というか、緩やかにうねる広い河原を登って本日の最終到達点へ。
ここのドン詰まりの斜面からドロップ予定
計画しているドロップポイントが見えた。あそこからここの尾根状までが一番美味しいところだろうね。
見下ろすとこんな感じ
見上げるとこんな感じ
尾根をハイクアップして、スティープでオープンな斜面にドロップ。斜度は徐々に落ちて、沢はうねりながら続いていく。そして、パッと開けた場所に出る。

その先はメローな沢地形が500m くらい穏やかにウネっている。

本番で来る時は、そんなふうなイメージなのだろう。
馬の背で休憩
本日の最高到達点は2つの沢が合流するところの、尾根状。ここならどちらかの沢から雪崩てもまず大丈夫。
こっちの沢からドロップするのも良さそう
一休みして、行動食をとったら下降を始める。ハイクアップには時間がかかったけど、滑り降りるのはあっという間だった。

滝の落ち口直前まで滑って、そこからの右岸高巻きは標高差5〜6mなので、つぼ足のまま乗り越える。木の葉で下降するポイントは雪が本格的に腐って、ボードごとツリーホールを踏み抜いて結構苦労した。
滑れるのはゴルジュ帯の下まで
斜度が落ちたところで、ポールを出してストック滑走に入る。
妖怪発生中
木陰はまだいいけれど、日の当たる場所は妖怪板掴みのせいでスピードが出ない。春雪用のストラクチャー入れた A-One で来たからまだいいけど、普通のボードで来ちゃうと結構大変かもね。

地図読みで想定していた地形がそのまま現れると、山屋の端くれとしては嬉しい。そんなBC7でした。次回は上から下れるな、誰か一緒に行こうよ。

おしまい


注1 ひと昔前は、地形図って国土地理院の 2.5万分の1地図がデフォルトだった。で、これが大きい書店とか、規模の大きい山道具屋に行かないと手に入らない。しかも確か1枚250円くらいするんだけれど、広い山域だと4枚くらい買って、付き合わせないと必要なエリアをカバーできなかった。そんな苦労を思うと、今のネット環境で地形図見放題、印刷簡単というのは夢のようです。

注2 地形図2.5万は高いし、手に入りにくい。しかし、ハイキングガイドブックとか、山渓の山域ガイドマップみたいな5万分の1だと、大雑把すぎてBCには向いていない。細かい地形変化が読めないし、行って見たら滝だったりとかで、怖い思いをする。現代の、ネットで参照できる地形図だと、Strava、コンパス、山渓オンライン、YAMAPなどを使っている。どれも昔に比べると格段の変化です。

注3 今回のルートはガイドさん付けて降ったほうがいいと思います。だから、具体的な場所とかは書きません。

2021年8月26日木曜日

山力(ヤマヂカラ) その3 カメちゃん

*写真と本文は関係ありません*

少し上の斜面で転んだカメちゃんが、クラスト斜面を横滑りしながら僕の脇まで降りて来てこう言った。

部長、足やっちゃったかも…
え?マジ?
はい…折れた、と、思います、すみません。
足のどこだ?どんな感じで折れた?
足首のちょっと上です。転んだら、スキー取られて… 
ブーツの中で「バシッ」って音がしました。

僕らは草津芳ヶ平でBC合宿をして、下山を始めたところだった。最終日もハイクアップして滑ろうと思っていたのだけれど、あいにくこのシーズンは暖冬で小雪。しかも数日かけて緩んだ雪面がこの日は寒気が入って、2cmくらいのブレーカブルクラストになっていた。

で、こんな状態では滑ってもつまらないだろうということで、とっとと下山して温泉でも行こうかということになった。
富士宮口五号目でハイクの準備

ヒュッテのご夫婦や犬たちに見送られて、夏道を降り始めた。そして5分ほど降ってトラバースを過ぎ、傾斜が増してちょっと広くなった斜面の途中でカメちゃんが転んだ。

至仏山に向かう

ここは、ここ数日の間に下山した人たちのシュプールが、そのままの形で凍りついていた。表面はガリンガリンのボコンボコンで、板をズラすことが難しい。で、仕方なしにプルークで減速するのだけれども、テールでクラストを踏み抜くと板がロックされて、前に発射されてもんどり打って転ぶという、地獄のような悪雪だった。

カメちゃんアオちゃん

カメちゃんの顔は心なしか青白い。部員がみんな周囲に集まる。

ブーツ外して圧迫固定するか? 
交代で背負ってヒュッテまで戻るか?(注1)
いや、ブーツ外したら2度と履けないと思います、降ります。
とりあえず荷物降ろそうか、降るにしても戻るにしても、空身でなければ無理だろう。
ありがとうございます、お願いします。

僕らはカメちゃんの荷物をそれぞれに振り分けた。合宿の最終日だったので、バックパックには多少の余裕ができていたのが不幸中の幸いだった。そして、空になったカメちゃんのバックパックは、僕が体の前に横向きにして抱えた(注2)。

Blackdiamond Megamid を張る

カメちゃんは僕らの心配そうな視線に気がついた。

休んでいると動けなくなりそうなので、降ります。
解った、じゃぁ、他のメンバーでデラ(注3)かけて、整地しながら降る。その後をついて来てくれ。
わかりました、ありがとうございます。

で、僕が先頭になって、プルークからデラパージュ、プルークで向きを変えてデラパージュと、整地を試みながら降る。表面の凸凹はほとんど削れないのだけれど、一人、二人、三人と同じようにデラがけしながら進むと多少は滑りやすい雪面が後に残る。

骨折したほうの足首に力を入れられないカメちゃんは、ずっと同じ方向を向いたままの横滑り下山になる。疲れて息が上がると少し休み、夏道が平坦になったり少し上り坂になると、他の部員がすっと近づいて歩行を助ける。

下山路を半分くらい降ったところで、ようやくブレーカブルクラストも緩んで、そこからは重いけれども、デラが良くかかるザラメ斜面になっていた。
湯河原幕岩でアナザガールを登るカメちゃん

その先記憶がちょっと飛んでいて、次に覚えているのは医務室からケンケンしながら出てくるカメちゃんの姿。ゲレンデボトムにパトロール小屋があり、その隣に医務室があった。そこで応急処置をしてもらって、カメちゃんは足首をシーネ固定してもらった。

みんなは車に戻って、すぐに最寄りの病院に行けるように撤収準備をしている。で、医務室の外には、僕ともう一人の部員がカメちゃんに肩を貸せるように待っていた。

なんだって?
多分、いや、ほぼ間違いなく折れてるそうです。
ブーツの中だったからまだ良かったけど、1箇所か2箇所か折れてるみたいです。
そうか…良く頑張ったね。
次にこんなことになったら、自力下山せずに助けを呼ぶようにと言われました。
次回は…無いようにしたいね
ですねw

カメちゃんの口から、クスッと笑い声が出て、僕らは下山できたことに感謝した。

僕は思う、やっぱりあの時、僕はリーダーとして、自力下山を止めるべきだったんだろう。

ただ、「山力」とは、そもそもなんだろうか?とも考える。

カメちゃんは自分の怪我の状態と、天候や雪の状態を冷静に判断して、自力下山を選択した。そして、部員のサポートを得ながらそれを成し遂げたし、部員のみんなは何も言われなくても、カメちゃんの下山をサポートした。

山力とは結局のところ、自力で登山を完結できる力なんじゃないかな。そう考えると、カメちゃんの山力ってスゲーなと思う。

あれから15年と少し経ったけど、カメちゃんは相変わらずBCテレマークを続けている。東北の山で、楽しそうに登って滑っている姿をSNSで見る。

で、そんな投稿見ると、カメちゃんが「降ります」と言った横顔を思い出す。引き締まって、血の気の引いた唇と、青白い頬を思い出して、つい口に出すのだ。

やっぱスゲーよ、カメちゃん…

つづく

注1 本来なら、ヒュッテに戻って荷運び用のモービルかヘリを頼むのがベストだったと思う。この時は降り切ることができたけれど、僕の判断は間違えていたと今でも思う。

注2 怪我人がもう一人出たら、自力下山がさらに困難になっただろう。不要不急の荷物はマーキングしてデポし、全員が最低限の負荷で降るべきだったか?と思う。

注3 デラパージュ(横滑り)は、斜面に対して横向きになり、板を横に滑らせていく技術。板のエッジが雪面を均しながら進むことができる。