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2021年10月4日月曜日

Ride34 日光澤温泉へグラベルライド

奥鬼怒温泉郷は、女夫渕温泉跡から奥鬼怒スーパー林道のゲートを超えて、8キロくらい登ったところにある。
女夫渕駐車場のゲート、この先は砂利道の林道

問題は、ゲートから先は一般車通行止めで、自家用車はもちろんオートバイも入れない。僕のかすかな記憶では、以前は路線バスや乗合タクシーも走っていたのだけれど、今は廃止?されている。

温泉郷にあるお宿に泊まる場合は、宿の車で送迎はしてくれる。だが、日帰り客の場合は送迎は無し。(宿泊する人も送迎はしないよ、自力で来い!そんな漢らしい?お宿もあるらしい)

つまり、日帰りで入浴したいと思うならば、歩くか自転車で行くしかない(あ、ちなみに、手白沢温泉は日帰り入浴不可です)。
樹林帯の登りなので夏でも涼しそう

ここでちょっと微妙な問題があって、このスーパー林道は「一般車両通行止め」(注1)。
路盤の状態は良好
僕は以前から、この奥鬼怒スーパー林道を走り抜けたいと願っている。具体的には、グンマーの片品、尾瀬の玄関口である大清水から入る。そしてグンマー&トチギーの国境トンネルを越えて、この奥鬼怒温泉郷に降る。で、そのまま鬼怒川にそって下流に進み、途中から会津に抜けたらきっと楽しい。
谷の向こう側に未踏のスーパー林道が見える
でも、そもそもこの林道を開削する時に、自然保護と開発のせめぎ合いがあって、禍根の残る道でもあったようだ。で、僕の若い頃は、ここを好き勝手に走ってる人たちもいた。それが、僕がサイクリングから離れていた間に、いつの間にかここのゲートは固く閉じられてしまうようになっていた。
加仁湯の脇の橋から先はロストワールド
で、大清水からここ、八丁の湯の橋までは特別管理区域になっている。ここに入るには、グンマーかトチギーの役場に事前に申請して、「許可」を取らなければならない。そして、申請にあたっては「観光」ではダメらしい。
設備の整った加仁湯
八丁の湯に入って見たかったんだけど、橋の手前のゲートが降りていたので日光澤に向かう。ここに来るのは2回目だ。
建物の途中にくりぬかれた穴
ここは登山道をふさぐように建物が建っている。前回来た時は、ここを潜ってグンマーの丸沼湖畔に抜けたのだ。
20年ぶりくらいか?
案内板
この貯水マスは記憶にある
前回は20年近く前に、義理の兄と来た。丸沼高原スキー場に車を止め、ロープウェイで上がって日光白根に登山し、五色沼避難小屋で泊まった。翌日は前白根から金精山、温泉ヶ岳、根名草山と縦走し、ここ日光澤で入湯した(注2)。
タイムスリップしたかのような佇まい
受け付けをして、入湯料500円を払ってドボン。ここには泉質が異なるお湯が2湯ある。
上の浴槽は透明でサラピリ
上の湯はちょっと熱かったので、とりあえず下へ。
下の湯は硫黄の白濁
浴槽にはしきりが入れてあって、流れ出し側はぬるめで長く入っていられる。そこでとりあえずトポンと入って、ストレッチしながら体を慣らす。

出たり入ったり、下の湯でしきりの下流と上流を行ったりきたり。あきたら上の湯でアチチとか言いながら汗出して、また下の湯へ。
1時間以上?入ってたよw
上がり湯で上の湯に入った。ジャバジャバと気持ちいいくらいの源泉掛け流し。
複数のパイプで温度調整がされている
よく見たら、こんな告知が。
地震で泉質が変わりましたとのこと
自然の恵みってすばらしいね。

火照った体を、グラベルダウンヒルで冷まして車に戻り、遅めのランチ場所を探す。山王林道で戦場ヶ原に抜けたかったんだけど、「通り抜け不可」とあったので、霧降高原を抜けることにして鬼怒川の下流へ。
山味さん 初訪問
地元のお蕎麦やさん。ちたけそば(乳茸)があったので、迷わずそれを。
大盛りにしました、そばが別盛りなのは予想外
乳茸
このキノコは、傷をつけると、お乳のような白い汁を出すのだそうだ。ほんでもって、その汁のせいかなんだか、すごいいい出汁が出る。

ログはこんな感じになりました。

朝晩は寒く、日も短くなり、登山も長距離サイクリングも、山間部のヒルクライムも、そろそろシーズンオフが近そうです。

注1 自転車も車両なんですよね…一般じゃないって切り分けで、環境へのインパクトも小さくて、ほぼ歩行者みたいなもんだから、ゴニョゴニョって感じで今までは見逃されていました。ただ、今日聞いた話では、自転車については解決に向かっている?みたいです。詳しくはアナウンスが出るみたいです。本来は森林と自然環境の管理と、保全を目的とした道路なのです。地元の人、林業ほか保全工事の皆さん最優先であることを忘れずに利用させてもらいましょう。デイタイム・ランニングライトは前後つけておき、狭いところの離合は先方を優先するようにいたしましょう。

注2 これ…実はとても大変な山行になった。日光澤で温泉に浸かって体がめちゃくちゃほぐれたあと…峠を越えて丸沼の湖畔に出たんだよね。そしたら、路線バスが廃止になったか、運行期間を過ぎていたかで、ドツボにはまってしまった。丸沼湖畔から丸沼高原スキー場まで、歩いたら2時間はかかる。そんな僕らを見て、気の毒に思ったのか湖畔のお宿の方が、スキー場まで車で送ってくれた。お礼をいいに、泊まりに行きたいと思いつついまだに果たせていないのが心苦しい。

気をつけないと…バレちゃうよ?

僕は彼女が何を言っているのかわからなかった。
数秒後、やっと意味を理解した時には、彼女はもう向こうを向いてスタスタと歩いていた。

彼女は、廊下の角を曲がる前にこちらを見てにっこり笑った。そして、彼女が階段をタタタタと駆け降りる音が、殺風景なクリーム色をした10号館の廊下にリズミカルに響いていた。

彼女のショートカットの髪が、元気よく跳ねる様子が僕には見えた気がした。

僕は友達と話をしていた。当然のことながら、話題は彼女のことになる。

おい、なんだ、知り合いなのか?
いや、語学で一緒になったことはあるけど。 
あの娘、なんかいい感じなんだよな。 
そうそう、2年なんだよ、俺らと同級だね。

廊下は教室の北側に続いていた。対面にある法学部の、窓に反射した陽の光が差し込んでいる。廊下を舞う細かい埃が渦を巻いていて、彼女が放した羽毛がその光の中を漂っている。

あんな子いたっけ?本キャンに?
めずらしいタイプだよね、文キャンならいそうだけど。

僕の母校は学部によって、キャンパスがバラけている。理工学部はほぼ男。文学部は半々。そして、僕がいる政治経済法律商学教育の本部キャンパスは、90%以上が男。教育学部は少々女性の比率が高いのだけれど、それを均して出る比率で9割以上が男。

新入生は、選択した外国語によってクラス分けがされる。僕は中国語を選択したのだけれど、同じクラスに60人がいて、そのうち3人が女子だった。

そして、他のクラスの同級生からは、「お前らのクラスは女子の比率が高くていいな」と、羨ましがられた。他のクラスは比率というか…ゼロか二人。それくらい、ほぼ男子大学だった。不思議とクラスに女子が一人というパターンはあんまりなかったような気もする。それはなんらかの配慮だったのかもしれない。

僕は1年目の中国語で「不可」を取り、再履修となった。そして、同じように再履修になったらしい彼女と、何度か近い席に座った。大多数は新入生で、履修1年目。その中で、不可くらって再履修組は、自然に近い距離感で集まっていた。

彼女は、なんというか、人目を惹くタイプだった。

というか周囲が男ばかりなので、女性がただそこにいるだけで人目を惹くのだが…彼女が発する雰囲気というかオーラというか、わずかなシャンプー?の芳香だけで、僕らはなんとなく落ち着きを無くしてしまう。

で、そそっかしいらしい彼女は、時々ペンとか消しゴムを落とす。僕らはそれを拾って彼女に渡す。

図々しい奴等は、それを機会に彼女と連絡先を交換しようとか、お昼を一緒に食べようとか、そんなアプローチをしていたらしい。そして、みんな玉砕していた。

僕は男子校から、この「ほぼ」男子だけの大学に進み、数百人の男子学生が住む学生寮から通学していた。

寮生のみんなは知的能力に優れ、人間的にも素晴らしい奴等ばかりだった。だが、思春期の男子生徒が数百人も棲むという破壊力は甚だしい。通りの反対側をちょっと入ったところにあるN女子大の寮では、新入生のオリエンテーションで「あそこの学生には関わるな」と言われているとも聞いた。

まぁ、その、周囲が男ばかりの環境で育ち、男ばかりの大学に通い、男ばかりの学生寮で毎晩呑んだくれているという…関わらない方がいい集団…ではあった。

僕は、幸いにも姉がいた。幼い頃から、姉たちが僕をいろいろな意味で躾けてくれたおかげで、僕は女性と相対しても普通に話ができた。というか、「女性」という存在に、過大な期待も持たず、さりとて劣位に見て自分の価値を相対的に高めるみたいな、そんなクダラナイところから離れることができていた。

姉達を見ていれば、性別に関係なく人間は人間なんだということが良く分かったから。

で、そんな僕のことを、彼女はちょっと安心して見ていてくれたようだ。

教室に入るときに、彼女と出くわす。僕は譲る。

10号館の入り口は重い両開き戸になっていた。鉄製の枠に分厚いガラスが入っている扉を肩で押開けて入り、振り向く。時々、そのタイミングで彼女がいた。で、僕は扉が閉まらないように抑え、彼女はあかるく「サンキュー」と言いながら通り過ぎる。

そんなことが何回かあって、「紳士だね」とか、「やさしいね」とか言われたこともあった。

で僕は、「姉ちゃん達に怒られるからね」と、シスコン的な返しをしていた。

でもまぁ、情けないことに、彼女の顔はまったく記憶にない。僕もなんだかんだ言って、彼女のことは意識していたのかもしれない。意識していたからこそ、あえて彼女をじっと見ることもなかった。かすかに覚えているのは、彼女の大きくて、ちょっと薄い茶色の瞳くらいか。

で、だいぶ冷え込んできた冬の日、僕は廊下で友達と話をしていた。

彼女が後ろから近づいてきて、僕のダウンジャケットの肩を優しく触って何か言った。

「え?」 僕は何を言われたのかわからなくて、聞き返した。

彼女は僕のダウンジャケットを触った指先に、白い羽毛を摘んで僕を見つめた。

この太い指は僕のです

子供のたわいないイタズラを見つけてやさしく叱る、母親のような口調で言った。

気をつけないと…バレちゃうよ…?
何が…? バレちゃうって? 
 
天使だってことが…バレちゃうよ。

そして彼女はいつも通りスタスタと廊下を歩き去り、僕の友達は…

おい、なんだ、知り合いなのか?
いや、語学で一緒になったことはあるけど。 
名前は? 
?いや?知らんけど? 
なんだよ!勿体無い!聞けよ! 
そうそう、2年なんだよ、俺らと同級。

的なことを僕に言い募る。

すぐに年末が来て年が明け、ゼミの選考をくぐり抜け、サークルの雑事も増え、合間を縫ってバイトをこなす。そんな日々を過ごしていたせいか、彼女と再会することも、会話することも無く終わった。

彼女の顔は記憶の彼方に去り、僕の風貌は随分変わった。再会してもお互いに気がつかないのではないか?

冬に備えて出したダウンのブランケット、そこから飛び出した小さな羽毛。それを摘んで眺めていたら、30年近く前の思い出が、記憶の襞の奥からぽっかりと浮かび上がって来た。

もし、彼女に再会することがあれば…聞いて見たい。

僕の背中には、まだ、天使の羽が生えているだろうか?

2021年10月2日土曜日

Hike3 ユーヤと日光白根山 東面偵察

しばらく前から、BCスノーボードで日光白根山の東面を滑りたいと思っている。そんな話をしていたら、ユーヤもそこ行きたいと思ってた、ということで偵察に。

日光白根山は好きな山で、若い頃は結構頻繁に訪れていた。クーラーバッグにビールを詰め込んで、五色沼のほとりの岩の上で日光浴したり。

それが、丸沼高原スキー場のロープウェイ山頂駅ができて、そこからの登山道が拓かれ、混雑するようになって足が向かなくなった。

今日は菅沼登山口で待ち合わせ。

6:30スタート
瞑想の路と呼ばれる、樹林帯の中の登山道を辿る。尾根が近くなって、鞍部のコーナーを回ると弥陀が池に出る。
この瞬間が好き
樹林帯からパッと視界がひらけて、池の幻想的な水面と、その奥に日光白根の山体がそびえる。この、静寂からのドラマがあるから、僕はこのコースが好き。
紅葉には1〜2週間遅かった
このコースは健脚のハイカーが多く、みなさん荷物が多いのにタッタカタッタカ登っていく。僕らは今日はぐるっと七色平に向かう。

というのも、BCで東面を滑ると五色沼に出る。そこから弥陀が池を経由して、七色平まで、白根山を反時計回りに周回しながら丸沼高原まで戻るのだ。そのルートを今のうちに歩いておこうと考えた。

特にユーヤは日光白根山初めてなのだ。わりと複雑な山なので、地形を覚えておくのも大事なので。
七色平、避難小屋は老朽化で立ち入り禁止

そしてロープウェイ山頂駅からの登山道と合流し、樹林帯の中を再び高度を上げていく。白根山の西面は、爆裂火口と、そこから崩れ落ちる大きな岩溝が走っている。ここは頻繁に落石があるし、その横には雪崩の走路があるので、地形を確認しながら標高を上げていく。

森林限界を超えて、山頂直下のザレた急登を登る。ここから風が直接当たるようになり、シェルを羽織る。
良く晴れているが、強風
とりあえず山頂へ。そこの裏側の急斜面を15mくらい下降すると東面ルンゼの入り口になる。
100名山だけあって山頂は混雑していた

入れ替わり立ち替わりハイカーが来る山頂で、あまり身を乗り出して下をみると危険。なので、弥陀が池側に少し下降する。
人が2人いるのが山頂の岩塊

上の写真の、右上から左下に走る、斜めの急斜面がドロップインポイントになる。ここはコンディションによってはかなり…厳しそうなので、もうちょっと斜度のゆるいところを探す。だが、取り付きの傾斜が緩いところは、30m くらいドロップしたところで急激に落ち込んでいる。やはり、この写真の場所しかなさそうだ。

急傾斜をなんとかこなせれば、そのあとは直線的にルンゼは延びていく。で、300m くらい先で極端にルンゼの幅が狭まっている。これだけ狭ければ、まぁ、雪でギャップが埋まるから滑ることはできるだろうけど…ちょっと落石が心配かな
東面ルンゼ 先に行くと超狭い

東面ダイレクトの入り口も確認できた。ルンゼの岩が溜まっている先で、斜度が緩んで、スキーヤーズレフトの尾根への出口ができている。

ドロップインポイントがはっきりしたので、もう少し先に行って、弥陀が池方面の景色を楽しむ。

弥陀が池、菅沼、丸沼
戻りながら今度は五色沼方面を見る。
五色沼の向こうに女峰山

山頂の祠

今日の五色沼はエメラルド
標高を下げ、葉の落ちたダケカンバの樹林を過ぎる。おり切ってなだらかな谷状地形。ここを北西方向に進むと、ロープウェイ山頂駅の脇の谷に繋がる。
軽やかに降るユーヤ
予定していた計画よりも、かなり早いペースで降りて来てしまった。
これ、咲いてたら綺麗でしょうねーと、ユーヤ

のんびりと降ると、五色沼避難小屋。
赤い屋根の小屋が見えて来た
冬用の入り口にハシゴ
広い土間
中は一部2階がある
ここには何度か泊めさせてもらったことがある。水場は五色沼まで降りなければ無いし、トイレも無いのだがとても快適だった。ここには、地元のU大学で森林系の研究に勤しむ学生さんが篭っていたりする。

東面ルンゼ出口を偵察

今日の目的である、下降コースの出口を確認する。五色沼から見るとこんもりした尾根状があって、その裏側に切り立った崖に挟まれたルンゼが続いている。その出口からは斜度が落ちた樹林帯を降りれば五色沼へと出る。

東面ダイレクトも見えた。
植生が変化する境が下降コース
手前に色が薄い樹林帯がある。その先で黒い岩肌があるけれど、ここが東面ダイレクト。斜度が一定で、幅は50m程度はあるのだろうか。大きな岩がゴロゴロしているので、積雪量が十分ないと厳しいかもしれない。

正面の岩溝が東面ダイレクト

偵察の目的はこれで完了。ふと横を見ると、懐かしい岩がある。20代最後ころの僕は、この岩の絶妙なくぼみにマットをしいて、風を感じて昼寝していた。ビールを飲んで…裸で。

最初は上半身だけ裸だったんだけれど、僕が登るのは平日で、当時は全然人がいなかった。で、次第に脱ぐ範囲が広がって、ついには全裸…危険地帯だけ、畳んだ手ぬぐいを乗せて寝る。
睾丸の紅顔の美青年はアシカになりました

で、ある時、ふと気がついた、やけに山頂稜線に登山者が多いことを。丸沼高原ロープウェイの夏期営業と、登山者の増加により、僕の「全身ムラなく日焼けするよプロジェクト」は終わりを告げた。
ぶちょ、頭大丈夫ですか?と、ユーヤ

名残惜しいけど五色沼を後にして、弥陀が池へと戻る。
あばよ五色沼
この登り返し、中途半端に雪が残っていると踏み抜きで地獄を見る。今日は夏道なので、さらっと帰ってこれた。
本日2回目の弥陀が池
予定よりも早く下山したので、とりあえず温泉。
源泉ジャバジャバ掛け流し
そして片品グルメで、釜飯を。
人生2回目の竹屋さん
ユーヤは五目釜飯、僕は鳥釜飯、二人とも大盛り。
photo by ユーヤ

ログはこんな感じでした。山頂ピストンだと物足りないけど、ぐるっと回ることで充実した山行になったかな。
今年の冬も安全にスノーボードが楽しめるように、そんな気持ちで帰って来ました。ゆーや、ありがとう。