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2023年10月23日月曜日

Hike4 西黒尾根からオキノ耳往復

近くて良い山、谷川岳。
通い始めたのが20代の後半だから、かれこれ30年の付き合いになる。

残雪期登山と山スキー、初夏の縦走、真夏の川遊び、秋の紅葉…
四季折々の変化や、ルートによって異なる展望に惹かれて何度も行った山。

最近は、自分の山力を測るベンチマークとして、西黒尾根を登ることが多くなった。

ボトムからトマ耳までの時間
疲労感
足の捌き
高度感 
バランス

谷川馬蹄形や主脈縦走、妙義山稜線縦走とか、平ヶ岳や皇海山日帰り…心身ともに負荷が高いルートがある。そうしたルートに自分が入る資格があるのか?答えを出してくれるのが西黒尾根の登山だと、僕は思っている。
登山口
今回の目的は、登山感覚のリハビリと、大腿四頭筋(太ももの前にある筋群)のトレーニング。サイクリングは、大臀筋とハムストリングは鍛えられるのだが、四頭筋の負荷はあまり無い。立ち漕ぎとか、スプリントすれば話は別だが…
白毛門、朝日岳方面
登山、特に降りは、四頭筋を効率よく鍛えられるのだ。段差を降りて、グッて太腿で堪えるでしょ?あれヨ
ラクダのコルから上部には着雪
一般登山者の僕が、谷川岳登山で一番難しいと思うのが初冬。

もちろん…登山として考えると、厳冬期がもっとも困難であることは間違いない。でも、その時期は「一般登山者」は立ち入りができない。

僕らが立ち入りを許される、厳冬期を除く残雪期から初冬までで考えると、初冬の今が一番ハイリスクだと思っている。
トマミミに突き上げる

残雪期は足元が安定しているし、その時期に入る登山者はクランポンやアックス、ヘルメットとかちゃんと装備しているから無問題。

日光白根、皇海山の遠望

春先は雪解け水で水場が枯れる心配もないし、陽は長いし、気温も下がらないから無問題。
西黒の懺悔岩
盛夏は…一昔前はもっとも安全だったんだけど、最近は変わってきた。

谷川連峰は、最高峰である茂倉岳ですら2,000mに届いていない、それぐらいこのエリアは標高が低いのだ。標高が低いと残雪が早く消え、水場は枯れる。

標高が低いと暑いので、熱中症のリスクが高まる。
ガスの向こうにトマ耳
秋は…イイ時期なんだけれど、ひとつ間違えたら冬になるリスクがある。
そして、そのリスク…「軽いハイキングのつもりだったら冬山」…に、備えていない人突っ込みがちである、それが最大のリスクなんだ。
肩の広場に出ると道標
初冬のリスクは降雪。
主脈への縦走路と俎嵒
下界は秋晴れでポカポカ陽気。
そんな時期には、冬山装備(アックス・クランポン・ビバークシェルター)万全で入山する人ってあんまりいない。

足元だって、スニーカーとか、トレランシューズの人もいる。

着雪している斜面は、キックステップでジリジリと前進するしかないわけだけど、それができる冬靴は重いので人気がない。

そんでもって雪が着いた稜線に突っ込んで、足を滑らせて、↓こんなツルッツルの岩盤に着地したら、はいそれまでよ。
氷河跡の滑り台
下降点

ロープウェイから天神尾根経由で谷川岳往復と、ボトムから西黒尾根往復の違いは、鎖場の通過かな。

登りならまだイイ。谷川連邦エリアの登山道整備は行き届いているし、鎖とか、手すりトラロープとかの手入れもちゃんとしている。

ただ…ここから墜ちたらヤバいよねってところで、鎖もロープも無い箇所はいくつもある。
登りでは問題ないんだけれどね。

そうしたところを、危険なシーズンに登っているのだ。

そんな自覚を、自分が見失っていないかどうか?それをチェックするために、ボクは定期定期に西黒尾根を登っている。
ログはこんな感じ

西黒尾根そのものがストラバでセグメントになっていたのを発見。記録を見ると…まぁなんとか体力の維持はできているようで一安心でした。

2023年10月4日水曜日

学生寮の話(四季を感じて・冬)

 「学生寮の話(世間との闘い)」でちらっと書いたのだけれど、寮にはほんのわずかなスペースを除いて冷房は無かった。

暖房はあった。あったのだが、それはセントラルヒーティング。地下にあるボイラーでお湯を沸かし、パイプで送り出す。各部屋には放熱器(ラジエーター)があって、お湯の熱を放出することで…部屋が暖まる、理論的には…
ラジエーター
*画像はwikipediaより*

鉄筋コンクリート造り4階建ての学生寮、冬の住環境がもっとも過酷だったのは、またしても4階だ。単純にボイラー室から一番遠いから、熱湯が上がってこない。しかもボイラーを焚いてくれるのは、日暮から夜10時くらいまでなのだ。

夜ボイラー止まる、夜中から朝まで、ラジエーターから配管から全部冷め切る。

夕方気温が下がってきたところでボイラー焚いて、お湯が配管に出ていって、周辺あっためて、1階あっためて、2階あっためて、3階あっためて、4階…行く頃には夜の10時になってボイラー落ちる。

暖房ぜんぜん効かへんのに、寮費が同じっての納得いかんやん?

4階住人はそんなふうにボヤキ、2階か3階の部屋に避難してタムロするのだ。

1階はどうかというと、ボイラー室から近すぎて、そこは熱帯。

ラジエーターには通水バルブが付いていて、お湯の流入量を調整できるようになっている。バルブを「全閉」にしていても、パイプを伝わってくる熱なのかなんなのか、ラジエーターはチンチンに温まり、部屋は熱帯になる。

北関東出身で寒さに慣れている学生(北海道出身者は意外と寒さに弱い)とかには、1階はあまりにも暑すぎる。寮長さん(寮監・定年退職された管理人さん)に、なんとかならないかと話をした奴もいた。

それくらい温度を上げないと、2階・3階が温まらないから我慢しなさい

そんなわけで、1階の住人は、冬でも部屋の中ではタンクトップかTシャツにトランクス。ただ、↑の通り暑いのはボイラー焚いている間だけで、それ以外の時間は…普通に冬。

暑過ぎてほぼ裸でドア開けっ放しで、うっかり寝落ちして、深夜に目が覚めたら凍死寸前だった奴もいた。

あ、そうそう、セントラルヒーティングの大きな欠点を書き忘れるところだった。

セントラルヒーティングとは、ボイラーが熱源で、そこで温められたお湯というかスチームが館内に張り巡らされたパイプを巡る。巡った先で、ラジエーターで放熱して各所を暖めるというシステムだ。

ヒーティングパイプは建設現場の足場に使われる単管パイプを肉厚にしたような代物で、途中で熱が逃げないように断熱材を巻かれたり、壁や天井裏に埋め込まれたりして隅々まで延ばされている。

ここで問題なのは、鉄でできているヒーティングパイプと、それを壁に取り付けるステー(金具)と、壁の材質である鉄筋コンクリートとか木材とか、全部「熱膨張率が違う」。熱膨張率が違うのに加えて、熱が入るタイミングも違う。

パイプにスチームが入ってくると、パイプが温まって伸びる。ところが取り付け先のコンクリートには、熱がまだ伝わっていないので伸びない。そうなると、パイプとコンクリートの壁をつなぐステーが変なふうに引っ張られて、ズレるのか捩れるのか?音が出る。

単に何かと何かがズレているだけのはずなのに、その音は…単管パイプをハンマーで叩くような音になる。日が沈んで、ボイラーに火が入った後、僕らの部屋ではこんな音がする。

シューーーッ…シュッシューーーーッ (スチームが回り始める音)

カンッ!

カカカカカッカカンカーン……コーン…ココココココカーン…

ガッガガン

コンコンコンシューーーシュシュシュシュカーンコココココーン

ガン

ガォゴンガガガガガッガガアガシュシュコーンガガッガコンコンコンコンカーン

シュバシュバシュバプシューカコンココン

でねぇ、このラジエーターが僕らの部屋ではベッドの脇にある訳ですよ。ベッドに横たわると、枕元1.2mのラジエーターからこの音が30分くらい響きわたる。

ボイラーの火入れならまだいい。夕暮れ時で、みんな起きてるし、その時間はみんな食堂に行ってたり風呂入ってたり、誰かの部屋で飲んでたりするから。

ボイラーの火を落とす時、夜の10時過ぎ、熱膨張率のイタズラは逆方向に働く。熱が徐々に逃げていくのでねぇ、これ、なかなか音が収まらないのよ。1時間ちょっとくらいはこの音が続く。

シュバシュバシュバプシューカコンココン

ガォゴンガガガガガッガガアガシュシュコーンガガッガコンコンコンコンカーン

 

 
カカカカカッカカンカーン……コーン…ココココココカーン…

 

コンコンコンシューーーシュシュシュシュカーンコココココーン

 

シューーーッ…シュッシューーーーッ




ふう、ようやく収まったか、そんなタイミングでいきなり不意打ちが来る








カンッ!

 

シュシュシューーー




パイプを伝わってきてラジエーターで放出されるこの音は、不思議なことに1階でも4階でも大した違いは無かった。

気の毒なのは、4階の住人で、セントラルヒーティングの恩恵にはほぼ与れないのに、この騒音問題は等しく影響を受けていたのだ。

まぁそんなわけで、夏に引き続き冬も、4階建の学生寮でもっとも不人気だったのは4階、僅差で1階だった。

えっ?僕?

僕は、入寮時2階、3年次の部屋替もうまく立ち回って2階。

上手くやったなー! だって?

まぁね…

夏も冬も、1階と4階の住人が避難してきてタムロしてることを除けば、ラッキーだったかもね www

2023年9月27日水曜日

学生寮の話 (四季を感じて・夏)

「学生寮の話(世間との闘い)」でちらっと書いたのだけれど、寮には空調設備が無かった。

僕が住んでいた学生寮は、硬派(死語)を気取っていた。

硬派であるとは、暑いとか寒いとかゴタゴタ言わずに、質実剛健、豪放無頼、人生適当を旨とするのである。

寒くて死ぬやつはいるが、暑くて死ぬやつはいない

帝国陸軍のような考えのもと、冷房は共用スペースのごく一部にしか無かった


いらすとや様よりお借りしました

そんな環境に住んでいると、季節の移ろいを肌身で感じるようになる。

学生寮は鉄筋コンクリート造りの4階建てだった。

住環境的にもっとも過酷だったのは4階だ。夏の日射に照らされて、屋上のコンクリートスラブは裸足で歩けないくらいに熱くなる。それが4階の天井になるわけだから、昼間はもちろん熱伝導で暑い。

夜になったら涼しいかというと、そんなことはない。夜風が一番通るのは確かに4階だ。けれども、そもそもコンクリートは蓄熱性に優れている。昼間たっぷり太陽に炙られて蓄熱した天井は、夜になるとジワジワジワジワ室内に向かって放熱する。

あれなぁ、天井一面に電気ストーブ埋め込まれてるようなもんやで

4階住人はそんなふうにボヤキ、2階か3階の部屋に避難してタムロするのだ。

1階はどうかというと、日射の影響は少ないが、そこは虫地獄。僕らの北寮と南寮の間には緑豊かな中庭があり、そこには数多の昆虫類と、それを狙う両生類、爬虫類の皆々様が生息していた。

寮の窓には網戸が付いていなかった。いや、付いていたのかもしれないが、きちんとメンテナンスされて機能を果たしている網戸はほぼ存在していなかった。

1階の部屋でタムロして飲む時は、横に置いてある蚊取り線香の火で、お気に入りのトランクスに穴を開けないように気を付ける必要があったものだ。寮生どうしすれ違う時、金鳥のうずまきの臭いがすると、だいたい1階の学生だった。

開放的な1階の窓から藪蚊が入ってくる、 プーーーん
藪蚊を追いかけてカエルが入ってくる、 ピョーン
カエルを追いかけてトカゲが入ってくる、 サワサワ
トカゲを追いかけて蛇が入ってくる、 ニョロニョロ

そんな食物連鎖のピラミッド構造を、ベッドから横目で見るだけで学べるのが1階だった。

僕ら寮生は、地方出身者が多かった。田舎で生まれ育った寮生は虫には慣れているので、1階の虫地獄は基本無問題だった。しかし、一部関西都市圏出身者、大阪・神戸・奈良とか?にとって、1階はかなり過酷な環境だった筈だ。

あ、そうそう、中庭にはゴキちゃんも多数生息していた。

ある友人は、机の上にうっかり食べ物を置いて寝てしまった。翌朝、ふと見たら…机の上が茶色くワサワサ波打っていて、良くみたらそれが小さめのゴキちゃんだった…

別の友人は、ベッドで飯を食いながら寝落ちした。ふと気がついたら枕やシーツにこぼれ落ちた食べ物のカスを狙って、ヤツラが目の前10cmで集結しているのを見てしまった。

あれは相当のトラウマだとぼやく友人に、横から誰かが慰めるように言う。

あいつら基本落ち葉しか食うてへんから、 
街のゴキちゃんちごうて清潔なんやで

まぁでもだからと言って、その誰かが積極的に1階の部屋を選ぶかと言ったらそれは無いのだが。4階建の学生寮でもっとも人気だったのは2階、次が3階であったのはそんな理由だった。