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2025年12月18日木曜日

クィックエントリー・バインディング購入 (Bataleon FASE)

最近はクィックエントリー・バインディングが流行りだ。

ボクはもともとBurton SIバインディングを使っていた。そして、Accubrade で痛い目にあって、ストラップバインディングに乗り換えた。正直…Unionのストラップバインディングになんの不満もない(Union推しな理由はこちら)。

そんなボクだが、最近のクィックエントリー・バインディングの進化を見て、もう一度試したくなった。ゲレンデ用に、楽で便利で、多少ルーズなやつがあってもいい気がした。

もちろん、使えるならBCでも使いたい。脱いだり履いたりが必要なルート、川場のS沢、N沢、谷川の湯檜曽川沿い、岩鞍のK沢とかで楽ができたらいいなと。

Bataleon の FASEシステム

ボクがFASEを選んだ一番大きな理由は固定方式だ。リリースレバーワンプッシュのシステムは、誤解放が怖い。さらにリリースレバーを「上から押す」仕組みだと、BCでの危険性がさらに高まる。

BCでは、デブリやアイスブロック、ブレーカブルクラストの破片が板の上に溜まることがある。特にブレーカブルクラストの破片が厄介で、コンクリート平板みたいなやつとか、エッジが立った棒みたいなやつは、引っかかりが多いのでお互いに絡み合い、なんらかのはずみでレバーを押してしまう。非常に稀ではあるけれど、実際に起こった事例をボクは知っている(その人はワンフット転倒で膝の靱帯断裂)。

これがわかっているBurtonとAccubradeのリリースレバーは、引き上げ開放。そしてBurton の Step On は、リリースレバーの位置を高くして、crud snow (腐れ雪)に覆われないようにしている。Accubradeはレバー位置が低いのだが、ノブを回転させるとロックがかけられた。

そんなこんなを観察していくと、Burton Step-Onはかなりイケてるように見えるのだが…ボクはSalomonのブーツがお気に入り。今更他のブランドで冒険するつもりもない。だから ブーツとバインがセットのシステムになる Step On はチョイスから外れた。

気に入っているブーツがそのまま使える、 Nidecker Supermatic はリリースレバーが押し下げなのと、後述するけどヒールカップがボリューミーなので選択肢から外れた。

年齢的に、怪我をしたら治りが遅いボクは誤解放が起こらない、ラチェット方式にこだわりたい。ラチェットは、何かのはずみでリリース用の爪が引かれても、一段、二段ずれて止まるだけ。「引き続けない限り」開放しないという信頼感はやはり大きいのだ。

で、FASE登場までは、ラチェット式のクィックエントリーは…SPとかFLOW。ユーヤパイセンもSPを好んで長く使っていた。だが、スリッパタイプは雪が詰まるとスリップインがとても困難になるみたいだし、SPは時々マイナートラブルの話を聞く。

普通のストラップバインは、少しぐらい雪がソールについていようが構わず履けるし、スペアパーツも携行しやすいし、山で応急修理もできるから…って考えると、SPやFlowに移行しようというモチベーションが湧きにくい。見た目も重そうだし

スペア・パーツと言えば、Bataleon は最初から消耗部品の予備が付いてきた。これは嬉しい。他社のスペアパーツは結構な値段がする。納期も遅かったり、廃盤になってたりもするし、バインのモデルチェンジがあると、買い置きの予備パーツが適合しなくなってゴミになったりもする。

最初からついてくるスペア・パーツ

クィックエントリーのシステムは傍に置いて、Bataleon のバインディングとしての性能はどんな感じなのだろうか?その辺りを書いてみよう。

Bataleon のボードをボクは好んで乗りついでいる。その理由は、ちょうどいいホドホド感を感じるからだ。なんというか、雪面が荒れてきたり、コンディションが悪くなってきた時にイジワルをしない。コブとか入るとよくわかるけど、変なエッジの引っ掛かりが無い。

コブに脱力して入りボードを自由にしてあげると、ノーズがスルスル動いて一番いいポイントに適当に入っていく。乗り手は、ちょうどいいところでエッジを入れてやるだけで、スピードコントロールとバランスが取れる。コブで乗りやすいボードは大体がBCでも乗りやすい。スプーンカット、流水痕、ブレーカブル…BCでは斜面のコンディションもさまざまで、そんなところをうまくイナせる相棒がBataleonのボード。そんなブランドがチューニングしたバインに興味があったのだ。

パッと見てわかるのはミニディスク。ボクが初めて履いたストラップバインは、Genesis の Re-Flex だった。ボードのフレックスを活かすために、柔らかいセンターディスクを使っていた。ガチガチのAccubradeから乗り換えた時は、頼りないフラフラ感にめまいがしたが、慣れたらその自由さに目が醒めた。ミニディスクもボードのフレックスを活かすための仕組みで、Re-Flex特有のネガも無いから興味を持っていた。

ミニディスク

ミニディスクと言えば、UnionのContact Pro。買おうかと真剣に悩んだことがあった。結局はAtlasにしたのだけれど、ミニディスクはボードフレックスを活かせるのはいいがセンタリングができないのだ。

センタリングはできない

Bataleon のミニディスクもそうだけれど、ディスクのスリットを前後方向に向けるのがデフォルトだ。つまり、スタンス幅は変えられる。ディスクを90度回転されられないので、トウ・ヒール方向の調整(センタリング)は、ディスクではできない。

スタンス幅の微調整はできる

センタリングは、ヒールカップをスライドして前後させることで調整する。これは、Union、Drake、Rideなど、同様の構造をもっているバインに共通する考え方だ。

センタリングはフレームの取り付け位置で調整

このスライド機構はブーツサイズに合わせた調整用だと誤解されているが、実際はセンタリングのためだ、根拠はこちら

左右非対称のレール構造

Bataleonのこのバインは、左右非対称構造が特徴の一つ。その効果はよくわからなかった。ボクが鈍感だったせいもあるかもしれない。他のバインと比べて明らかなのは、前後のバインの間に重心を置くのがすごく楽ということ。これが非対称構造によるものか、後述のカントによるものかはよくわからない。

全面ブッシングで母指球下だけ固い

このバインはベースプレートの裏側全面が厚いブッシングで覆われている。多分感覚はルーズになるのだろうけど、荒れた雪面ではとても有効だろうと期待していた。実際に履いてみると、ルーズさはほとんど感じない。エッジの噛みも普通に良いし、それでいながら不快な振動はカットしている感が強い。

2度のカント

ベースプレートには2度のカントが入っている。そのせいか、ボードのノーズ〜テール方向のバランスが取りやすい。

ボクは重心を、前後バインディングのディスクセンター内側に維持して滑ろうとしている。前乗りしても、重心はフロントバインのディスクセンターを超えないし、後ろも同様だ。で、実際に滑っていると、外乱の影響で体の位置が想定よりも前後することがある。そんな時でも我慢して堪えていると、重心がなんとなくwセンターに戻ってくる。

ブーツソールとのフィッティングはガスペダルで

ガスペダルはなんの変哲もない。ただ、表面の溝が縦方向に切ってあるのが良い。ガスペダルに溜まった雪を、トウ側とヒール側に払う時に何の抵抗もない。ガスペダルのデザインが凝っていると、ここに微妙に雪が凍りついて不快な感覚になる。Genesisのガスペダルとか、もう

フォワードリーンは2段階

Contact Pro を買わなかった理由にはもう一つあった。それは、フォワードリーン。調整が2段階しかなくて、あんまり前傾入れられそうに無かった。前述の通り、ミニディスクのバインはセンタリングの調整幅が少なくなる。それに加えてハイバックリーンが入れられないと、バックサイドでキレるターンを作れないような気がしてやめた。買ってから気がついたけど、Bataleonのこれも2段階しかなかったw

実際に履いてみて分かったけど、元々のハイバック角度が適切なら、調整は2段階で不満なかった。荒れてて固い人工雪バーンで、強いバックサイドターンを作ろうとすると、流石に工夫が必要になるけど、それ以外のシチュエーションでは、まったく不自由がない。

Bataleon のこのバインディングをまとめると、Union の Contact Pro をクィックエントリーにした感じ?で、このバインディングを履いてみて、Contact Proに持っていたネガティブなイメージは払拭された。で…ボクが次に買うBC用のバインは、きっと Union の Contact Proだなw

まとめると、バインディングの基本性能ではなんの不満もない。バックサイドターンはハイバックで倒すというよりは、踵で押し込む感じになる。トウサイドも面で踏み込むのだが、アンクルストラップのサポート力が強くてレバレッジが効く。だからアンクルストラップをあんまり締め込まなくても済む。ベースプレートのカントのためかセンターに乗りやすい。ブッシングとミニディスクのおかげか、ジャガイモ畑やアイスバーンでも振動がカットされて疲れにくい。期待以上に、滑走性能のバランスが良かった。

クィックエントリー・バインディングとしてみると、ちょっと微妙ではある。トウストラップの位置が一発で決まらないので、微調整が必要になる。そして、踏み込んだだけではロックされない仕組みなので、エントリーして、アンクルストラップのラチェットをスライドさせて、2アクションくらい巻き上げ操作する必要がある。踏み込んでからラチェット操作するまでの間、後ろ足の荷重はカカトになるから、滑りながらの装着はチョット難易度が高い。でも、普通のバインに比べると、装着のスピードは確実に速い。

そんなわけで、ゲレンデで使うにはかなりおすすめできる。

BCではどうか?ちょっと微妙なところがある。

ハイバックを畳んだ時、ヒールカップからジョイントバーが突き出すのだ。ヒール側で蹴ってスケーティングする人(ボク)にとっては、このバーがスネに刺さりそうで怖い。実際は面取りがされていて、スネは無事なのだがあまりいい感じはしない。

畳めるハイバック、突き出すジョイントバー

BCではワンフットでの移動がわりと発生する。そんな時に、ヒール側に転倒したら、このバーは雪面にブッ刺さる。そこが、ちょうどバーが刺さるくらいのブレーカブルクラストだったらどうだろうか。何かしら壊れそうな予感がする。

ドラグしやすさについても書いておこう。BCで良くあるのが、高度を下げたくないトラバースだ。高度を維持するために、速度を維持する必要があるのだが、このとき表面が柔らかい crud snow だと問題がおこる。FASEのトウストラップは、表面形状(深いメッシュ状ラバーパネル)がドラグしやいので、湿雪やブレーカブルクラストでは強いブレーキになる。

ヒール側のドラグはヒールカップに左右される。装着状態ならば、FASEのヒールカップはノーマルバインと大差がない。トラバースの途中で失速して、後ろ足を外す必要が無ければ問題は無い…が、そんなことが得てしてありうるのがBCの辛いところだ。

BCで遭遇する、「距離は短いけど強烈な傾斜」についても書いておこう。ボクらシロートは、そこをダイレクトに落とすなんてことは無いのだが…そこをトラバースしたり、木の葉で降りないと帰れないみたいなことはある。ゲレンデで超急斜面というとだいたい40度くらい。45度というのが、営業しているリゾートでありうる最大傾斜ってところだろうか。で、バインの設計もだいたい…40度くらいでドラグしないって、そんな目安になっている気がする。

BCでやばい傾斜というのは、40度+α の傾斜で、そこが凍結してたりすると独特のノウハウが必要になる。無造作にヒールサイドエッジでトラバースに入ると、ヒールカップが引っかかってエッジが外れて滑落…こうなると最悪死ぬ。この点で非常に危険なのが Supermatic のボリューミーなヒールカップ。これも大きな理由で、ボクの選択肢から外れた(繰り返すけど、ゲレンデで滑るなら問題はない)。

ちなみに、ボクが経験したやばい斜面というのは、谷川岳西黒沢本谷の落ち込み、谷川岳赤谷川本谷のドウドウノセン・マワットノセンの側壁、上州武尊山剣ヶ峰西方シュート、といったところだろうか。そのあたりだと、斜度で言うと45度前後。滑落防止のアックス持って、トウサイドエッジを使って通過するか、ダブルストック使って早い切り返し(西黒沢本谷の記録に飛びます)でクリアするのが基本になる。

ヒールサイドのドラグ防止に有効なのは、そもそもヒールカップのないFlowやSPだと思う。しかしこの2つについて、ボクには語れるほどの知見が無い。

つらつら書いてきたが、やはりシビアな状況のBCでボクが連れ出すのは、Union の Atlasになるだろう。そして、Atlasを温存するために、Bataleonはゲレンデを中心にフル活躍してもらう。ただ、BCではどうかという視点は、やらない人にはまったく関係がない。なので、ここで書いていることは、参考にしてくれたら嬉しいが、好きなのを選んで使えばいいと思う。

そんな感じで、ボクのクィックエントリーバインディングへの回帰行が始まった。

あ、そうそう、このFASEシステム、履いてみたいという舎員にはどんどん試してもらいたい。ユーヤみたいに、雪面と喧嘩せず、繊細にエッジ角と圧を調整していく…バカっ速なライダーには特に向いているんじゃないかなーとか妄想してます。 オシマイ

2025年12月15日月曜日

流行りのクィックエントリー・バインディング(考察2)

前回の投稿では、BurtonのSIからK2のクリッカーあたりを振り返ってみた。

さて、「安心の日本製で信頼のシマノ」が、満を持して投入したアキュブレードについて書いてみよう。

ヨーイチ師匠とアキュブレードXTR(高級版)

Accubradeを買うかどうしようか迷っていたボクの背中を押してくれたのは、ヨーイチ師匠。師匠はさっそくアキュブレード投入されてたので(さすがです)、どうですか?そう聞いたらこうおっしゃられた。

エントリーしやすいっすね。左右にレールが付いてガイドになるから
ハイバックがあるせいか、すごい反応がクイックっすよ
ハイバックローテーションできるから、前振りでも問題ないっすね
ブーツのインナーハイバックみたいなのがなくなって、軽くなりました
ブーツが固すぎないので動きやすいっす
自転車屋のブーツ?って心配だったけど、超快適で本革でかっこいい

何よりもイイのは…

…なんですか?

値段が高くって、そう簡単に買えないじゃないですか。
人と被らないのがサイコーっすよね ← こればっか

スノーボードの上手い人は、タクジもシンヤもユーヤもカズくんもタカヤンもアメちゃんもみんなそうなのだが、人格的にはやや問題がある人が多いような気がするのだ。

しつこいですが、このブログはフィクションで、登場人物の発言は創作です

で、ボクもAccubrade導入を決めた。
ヨーイチ師匠と被って破門されないように、ボクはセカンドラインを選んだ。

バインは確か2モデルがあり、ベースプレートがカラーアルマイト処理されて、ハイバックもカーボン?強化された高級版のXTR(もちろん師匠はこちら)と…廉価版のXT(ボクはこちら)があったと記憶している。ブーツも同様に、師匠は一番高いやつ(確かイタリア製かなにかの銘柄革)、ボクは本革だけど普通のやつを選んだ。

Shimano Tripper ABブーツ

ちょっと笑ったのは、「Accubrade だけではブーツ開発費の元が取れないのではないか?」そう思ったのかどうか、フツーのソールバージョンも投入されたこと。そんでもって、ソールにクリートが埋め込まれていないフリーソールブーツは…フレックスが絶妙で軽く、スノーボードブーツとしての出来は数段上だったようだ…

ブーツ履き比べた結果…こんないいブーツが、Accubradeのクリートを埋め込むとこうなっちゃうんだ?…って感じて…Accubradeへの移行をやめた人がけっこういた…ダメじゃん

ヨーイチ師匠@至仏山 川上川

そんな感じで、道具としてはかなり頑張って開発されたAccubrade。マーケティング的には割と迷走していたような気がする。と言うか、Burtonがヘタ打って撤退したせいで、クィックエントリーバインの信頼がほぼゼロだったのが大きかった。時代の趨勢には勝てず、華々しくデビューしたAccubradeだが、ほんの数シーズンで撤退が決まった…ナンデヤネン

えっ?ブーツとバインで15マン近くぶっ込んだボクの立場は?

スノーボード事業を、鼻かんだ後のティッシュみたいにブチ捨てようとしていた「釣具と自転車部品メーカーのShimano」も流石に…そんな怨嗟の声を気にしたのだろうか…

越後の誇り、世界に冠たるテニスとバドミントンラケット!ゴルフクラブ!カーボンオタク!のYonex様が、Accubradeシステムをそのまま引き継ぐことになった。

さすが超一流メーカーのYonex様、バインディングはまったく問題なく引き継ぎを済ませて、ユーザーを救ってくれた。え?Yonex製の…Accubrade ブーツ?まぁいいじゃないですかw

Burton Supermodel と Accubrade

ちなみに、時代感を補足しておこう。上の写真は、今は亡き草津白根山のロープウェイで撮ったもの。

Burton Cascade、Fish(初代)Jones Hovercraft (初代)

ボクは物持ちが良いので、割と古いモデルを大事に乗っていた。まぁ当時はまだスキーのうほうが優先で、シーズン中のスキーとスノーボードは 2:1 くらいだったから、ボードも消耗しなかったし。だいたい…BurtonのFishのトップシートが割れ始めて、ムラスポが日本に Jones Hovercraft を独占初投入したくらいの話だと思って欲しい(かえってわかりにくいw)

そんな Accubrade とボクの別れがやってきた。理由はいろいろある。ブーツが重いこと、どパウや湿雪でハマらず地獄を見ること、これがやっぱり大きかった。

最終的に踏ん切りがついたのが誤解放…からの怪我だった

その日、ボクは北軽井沢のスキー場で滑っていた。人工降雪機の固く締まったバーンは、エッジも良く噛みスピードが乗って滑りやすかった。リフト降り場も良く踏み固められていたから、降りてそのままステップインがやりやすい。リフト降りる、ステップイン、バックサイドターンしながらカカト押し込んでロック、そこそこの斜面に飛び込む、みたいなのを繰り返していた。

10時くらいになったのだろうか、リフト降り場の雪がちょっと緩んできていた。んで、リフトから降りてステップインした時に…なんとなく…緩んだ雪が挟まって…カカトのロックが甘いような…気がした。でもまぁちょっとの雪ならバックサイドターンで踏み込めばハマるので、そのまま斜面に向かったら…そこに人がいた。人を避けるためにターンを切り替えてフロントサイドターンに入って、荷重がトウに移ったところで後ろ足が誤解放した…

この斜面は北向きで、雪は締まったままだった。エッジはしっかり噛んでしまって、ずらすことができない。ワンフットのトウサイドターンでやばい加速を決めたボクは、コース脇のグリーンネットを薙ぎ倒して…コース外の土の上に背中から転げ落ちた…

コースは人工降雪機の雪で覆われているけれど、コース外の地面とは段差が50cmくらいあった。「ワンフットでこの段差を落ちたら、ボードが変なふうに持って行かれて膝がモゲる」そんな恐怖があったので、あえてボードを宙に浮かせたままこの段差を、結構なスピードで落ちたのだ。

後頭部も強く打って、意識が少し遠のいたけれど、ヘルメットをかぶっていたので大丈夫だった。それより、背中を打って息ができなくなり、仰向けのボクは抜けるような青空を見上げながら…これで死ぬのか?と思った。

何分か空を見上げて苦痛にうめいていたら、ようやく呼吸が戻ってきた。ボクはボードを外し、コースに復帰した。肋骨が刺すように痛み(肋骨ヒビ&肋軟骨損傷)、屈むことが難しかったが、固くしまったコースをつぼ足で降りることができなかったので、とりあえず左足だけステップインした。肋骨の痛みで右足は嵌められなかった。

リフトの上から一部始終を見ていたスキーヤーの何人かが、パトロールを呼ぼうか?と声をかけていただいたが…斜度と雪面の固さからモービル搬送は難しそうだった。ボート搬送を頼むのも申し訳ないし、なんとか動けたので自力で降りる決断をした。

斜面の下を向いて座り、尻で滑り、左足のヒールエッジでスピードコントロールしながらボトムまでなんとか降りられた。

そもそもこの日、普段行かないこのスキー場に来たのは、「使い残したリフト券」を使い切るためだった。シーズンが終わろうかというタイミングで、残った早割りリフト券を使うために来て怪我をしたのは…不幸中の幸いだったのか?ボクのそのシーズンはそれで終わり。

そして…いいところもあったし、愛着はあったけど、最後まで100%の信頼を置けなかったアキュブレードに…ボクはサヨナラをすることにした。

13-14 Burton SL & Genesis(初代)Re-Flex  

そして、Burtonのストラップバインディングに乗り換えて10年…再びクィックエントリー・バインディングを、装備に加えることにした。クィックエントリーの便利さと怖さを知るボクが選んだのは FASEシステム。そしてブランドは、Bataleon…

正直…クィックエントリーの便利さだけを考えたら、他のシステムの方が優れていることはわかっている。バートンのブーツで問題ないならStep On、ブーツにこだわりがあるならNidecker の Supermatic が多分一番いい。でも、ボクがFASEを選んだのは、少しくらい便利さを犠牲にしても信頼できるシステムを選びたいから。そのあたりは次の投稿で説明したいと思います、長っ!

2025年12月12日金曜日

流行りのクィックエントリー・バインディング(考察1)

最近はクィックエントリー・バインディングが流行りだ。

ボクもクィックエントリー・バインでスノーボードを始めた。その後紆余曲折を経て見切りをつけ、ノーマル(ストラップバイン)に乗り換えた。両方を経験したボクの、超個人的な考察を書いてみようと思う。

ボクはBurtonのSIでスノーボードを始めた。

Carbon highbackのSIとスプリットボード

クィックエントリー・バインディングは、はっきり言って初心者向きでは無い。装着・脱着いずれのシーンでも、「フロントフット1本で完全にバランスを取る」瞬間が発生するからだ。そして、初心者にとって、片足で立って静止するのはとっても無理ゲー。

でも、もともとスキーヤーだったボクは、いちいち座ってバインをセットするなんてイヤだった。だからスノーボード初日からSIでスタートした。SIは、ソールに雪が付いているとハマりにくかったけど、一度ハマったら誤開放は無かったし、反応が速くてなかなか良いシステムだった。

ところが、Burtonは迷走を始めてステップ・インから撤退を決めた。鳴りモノ入りで投入したPSIがトンデモないトラブルメイカーだったのだ。

業界最大手のBurtonがステップ・インから撤退する…これは参入のチャンスと考えたのか、Salomonが新システムを開発した。プロダクトリリースと予約まで終えた段階で…そちらも販売取りやめになった。

同じタイミングで、Rossignol のバインを受託生産していた某イタリアのバインメーカーも…開発を途中で投げ出したという噂を聞いた。BurtonがPSI初年度でトラブって、2年目でも解決できず傷が深くなり、そーとーヤバイ額の赤字出したって聞いて、みんなビビったんだと思う。腰抜けめ

そんなわけで、アメリカ人とフランス人とイタリア人がビビりまくって、ステップ・インの火が消えたのかというとそうでもない。

日本の…Kissmark これは、鋼鉄製のバーがブーツソールに埋め込まれていて、それを完全フラットなバインディングにブッ刺して(説明が難しい)固定する。歴史は十分にあって、システムの安全性は確認されていた。

真ん中がKissmarkのフラットバイン

だが、バインにハイバックが無いため、ブーツにインナーハイバック的な構造が施されていた。加えて前述の「鋼鉄のバー」なんだからブーツがギプスみたいに重く…なによりもネーミングがダサいダサいダサすぎた…

左のストラップレスがKissmark

アメリカのK2 クリッカー。フラットで超シンプルなバインに、ブーツソールに埋め込まれたクリートをはめ込んで固定する。ボクのスノーボードの師匠であるヨーイチ先生が愛用されていたので、使い勝手を聞いてみた…

ヨーイチ先生

えっ?クリッカーの使い勝手?
まぁカッコイイですよね、ブーツも含めて。

欠点?それはまぁありますよ。バインが小さいのはいいけど、ソールの裏側に隠れちゃうんですよね。だから、嵌める場所が分かんなくなるんですよ。ほら、クリートも足裏にあるでしょ?ふつうはブーツのここと、バインここの位置を合わせて踏めばハマるとか、なんか目印を考えると思うんですけど…そーゆーのが無いんすよね。リフト降り場で滑りながら嵌めようとして、空振りしてすっ転ぶのはだいたいそれです。

それと、ソールとバインがフラットに「密着」する構造なんですよ。遊びとか逃げがないんで、すこしでも雪や氷がついているとハマらないし、そもそも雪や氷がつまりやすいんすよねー。

特にブーツソールは氷付くと最悪です。湿雪の時期や、どパウで埋まって外したりするとまさに地獄って感じです。なんとかならないのって聞いたら、アメリカって湿雪がないから想定してないって言われて…そんなわけねーだろって…

あ、それとブーツが超重いし、システムがバカ高いっす。

ほっとくと止まりそうに無いので、ボクが介入する。

…師匠…なんでそんなのわざわざ選んで使ってるんですか?

んとねー…人と被らないから!
カッコいいから!
値段が高くてマウント取れるから!
ヤフオクで最後高く売れるから!

全身アークテリクスで決めたヨーイチ先生は、朗らかにそうおっしゃられた。

ボクは師匠ほど人間ができていないので、クリッカーに帰依するのはやめた。だって修行いやだもん、修行無しに救われたいじゃん?ビバ大乗仏教。

ただ、アメリカの皆さんって楽をすることに関してはとっても貪欲で、なるほどって思わされるようなギミックもあった。手持ちのスノーシューにつけることで、ワンタッチでつけ外しができるアタッチメントとか。これは後のアキュブレードにも引き継がれた。

そのかーし、アメリカ人…お金はしっかりとる。たしか、インターフェースアタッチメントだけで5マンくらいしたはず。

クリッカーインターフェースとアトラススノーシュー

でまぁ、K2クリッカーがなんとなくうやむやに、日本から消えていきつつある時に、ShimanoがK2のパテント受けて?クリッカーを始め…独自のシステムへ移行した。それがAccubrade。

Accubradeは、前述のクリッカーの欠点を十分に考慮し、解決したって売り文句だったから、ボクはAccubradeに乗り換えた。何しろ、安心の日本製、信頼のSHIMANOが作るんだから、安心しかないよね ← フラグ

つづく

2025年12月6日土曜日

インソールはSIDAS(個人の感想です)

初めてSIDAS社のインソールを使ったのは、ボクが20代のころだった。

そのころ僕はスキーにどハマりしていた。

どれぐらいハマっていたかというと…スキー場のオープン前から、クローズ後まで滑っていた ← バカ

当時はライブカメラどころか、インターネットすらない。スキー場のオープン情報は、新聞やテレビなどで知るしか無い。

そんな時代だから、まだ営業してないと分かっていてもスキー場に行って…えっ!まだやってなかったんですか!?」とガッカリして見せる。そんでもって、「スキー担いで登って滑ってもいいですか?」と聞けば、大体は面白がってOKしてくれた。 ← バカ

そんなやり方で公式オープン前から、つぼ足でゲレンデをハイクアップして滑っていた。

シーズン中だって、朝イチのリフトが動くのを待ちきれず、スキー担いで登って一本滑ったりする。 ← ほんとバカ

そんなことをやってると、索道のスタッフさんとかに顔を覚えられる。そうなれば…ゲレンデがクローズした後に行って…「残ってる雪…登って滑っていいですか?」と聞けば、大体は面白がってOKしてくれた。 ←  リアルバカ

手前から新・古・古古

いよいよゲレンデに雪が無くなったら、雪渓を滑る。当時の職場で連休は基本無く日帰りだから、富士山や乗鞍岳、白馬あたりは遠すぎる。そんなボクのチョイスは谷川岳マチガ沢。5月から6月頭くらいまでは、そこそこ良いコンディションで、雪の多い年なら7月まで滑ることができた。

だが、春の雨が続くと、雪渓はスプーンカットで覆われる。スプーンカットはスキーが暴れるし、エッジのかかりが一定でないので甚だしく滑りにくい。

同じ斜面に、地元G大学のスキー部がポールを張って練習していることもあった。ポールをセットして、デラかけて、削りきれないところは、平スコップで均してまたデラかけて…滑っていた。ボクはいつも一人だったので、デラかけとかできない。一人でスキーを背負って、スプーンカットをあるがままに滑っていた。それはそれで、良い練習にはなった。

そんなスキーバカなボクは、高崎にあったICI石井スポーツでスキー関連ギアを買っていた。お金の無かったボクは、あんまり買い物をしない。というか、レーシングスキーが10万、バインが5万、ブーツが7万とかするから、それを数年おきに買うだけで金欠になる。

そこまで良いお客さんでは無かったこともあり、基本的に店員さんは無愛想だった。でも、何かの時にボクが「マチが沢を登って滑っている」と言った時、その人はニヤリと口髭を曲げ、何も言わずに笑ってウンウンと頷いていた。なんか言えよ、とボクは思った。

ウインタープラス・プロ

ある日、ボクはその石井スポーツに出向いて、シダスのコンフォーマブル・インソールを作ってもらった。これは、当時最先端だった「熱可塑性樹脂を使ったオーダーメイドインソール」だ。専用オーブンで熱が入って柔らかくなったインソールを、柔軟性のあるゴムスポンジの上に置く。その上に位置を合わせながら足を乗せ、横の手すりを持ってバランスをとりながらインソールをムギューーっと踏み込む。そのままインソールが冷めるのを待てば、自分の足裏の形がそのままインソールに残される、というわけ。

確か当時の値段で、2万円くらいした。高価だったし、良い点も欠点もあったけれど、ボクには合っていた。クラックが入って捨てるまで、5シーズンくらいは持ったと思う。

シーズン前の最終チェック

ボクは、土踏まずが盛り上がっているタイプのインソールを好んで使っている。土踏まずと踵の位置が固定されるので、ブーツの中で足がずれにくい。だから普段はブーツを緩めに履けるし、ブーツのままで舗装路を歩いたり、固い雪面にキックステップを刻むこともまぁまぁ苦にならない。

そしていざという時には、しっかりブーツを締めれば、悪いコンディションに対応しやすい。

スプーンカットや流水痕、腐れ雪やクラスト、蒼氷の急斜面…板の暴れをコントロールして滑ることができる。

そう、マチが沢のハイクアップと、スプーンカット斜面での安定感。あの時以来、ボクのインソールはSIDAS…

2025年12月2日火曜日

板鼻舘のタルタルカツ丼(ソースカツ丼+タルタル)

自転車で色々なところを走っていると、良く通るコースというのができる。そうしたコースは大体は昔の街道筋だったところが多い。昔の街道筋というのは、その地域で最初に拓かれた道。重機も無く土木技術も今ほど優れていないので、無理やり地形を変えることはしない。むしろ地形の弱点を辿り、平坦で距離が短く、合理的なラインを選んで道が拓かれる。

ただ…それが人馬や軽車両の通行しか想定されない時代だったりすると、現在の感覚では道幅が狭い。そしてそうした旧街道の横には、バイパスが新たに整備される。

旧街道、旧国道だったところが、バイパスができて県道に区分変更された、そうしたコースは自転車にとっては走りやすい。

グンマー國も各地域を結ぶ旧街道が残り、その一つの「中仙道」はサイクリストにとって良く知られたコースになる。

板鼻舘

中仙道に面した「板鼻舘」は以前から気になっていた。軽井沢への往復でここを通るし、高崎発のブルベでもこの前は何度も通っている。

旧街道は道が狭く、商店や民家は道のギリギリに建てられている(というか、道を無理やり拡幅したので、建物の道路側が削られたというのが正しいが…)。だから店前に駐車場が無い。

白暖簾に灯油ランプ

道の反対側に、無理すれば3台くらい止められそうなスペースはある。でも、そこはいつ見ても空いていない。そして店前には行列ができていることが多い。そんなわけで、いつか行ってみたいと思いながらも実現できていなかったのだ。

自分で混ぜて準備するタルタルソース

ところがひょんなことから、板鼻舘専用の広い駐車場があることを知った。板鼻舘正面に向かって左側に、ちょっと不安になるような狭い市道がある。そこを奥に入ると、道の左右にいた鼻舘の駐車場があるのだ。

なら行ってみようか…

レトロな店内

ここの名物はタルタルカツ丼とラーメン。

着丼…ドンブリも素敵

肉質の違うのカツが3枚乗っかっている、卵とじ無しのカツ丼。そこに、タルタルを味変で加えていただくのだ。タルタルに合わせるゆで卵は、輪切りの状態で事前に提供される。そこで卵の砕き具合は自分で調整しながら準備する。

トンカツ屋さんで、胡麻を擦りながら待つのと同じようなモノ…かもしれない。

肉3枚ドーン

カツに味はしっかりついている。肉は厚すぎも薄すぎもしない、存在感がしっかりある昔ながらのトンカツ。タルタルをつけずに一口…と思って食べたら3口ぐらい箸が進んだ、そんな感じでしっかりした味わい。

タルタルでマイルドに…

そのまま食べ終わったら、タルタルの立場は??ってなる。彼のメンツを立てて、しっかりタルタルカツ丼としておいしくいただきました。

地元の消防団の人たちが、ミニタルタルカツ丼とラーメンのセットを食べていた。今度はラーメンも食べたいな…

おしまい

2025年11月28日金曜日

リベンジ表妙義 後半: タルワキのコル〜相馬岳〜金洞山〜中間道下山

前回の記事の続き、表妙義稜線縦走の後半です。

天狗岳からタルワキのコルに下って縦走の前半が終わる。ここから相馬岳までは、割と平和な登り返し。振り返ると、天狗岳の東面が見える。

天狗岳を振り返る

木の根や灌木など手がかり足掛かりが豊富なので、さほど苦労せずに山頂へ到着。

相馬岳

山頂でタルワキから登ってきたというカップルの登山者に出会った。ここまではちょっと物足りなかったと言い、どうしようか相談しながらこちらを見た。迂闊なことは絶対に言えないので、タルワキまで戻ってから天狗岳ピストンが無難であることを伝える。

それ以上は言えないよね…そして、天狗岳から妙義神社までは難路なので、先には進まないほうがいいと言っておいた。

これから行く金洞山山塊

相馬岳から先は再び高度を大きく下げる。木の根や岩角を支えに下降するのだが、ここはスリップに要注意。妙義山は標高が低く、岩場以外は雑木や草の茂みで覆われる低山だ。低山独特の落ち葉や赤土で覆われた岩場は、うっかり足を置くといきなりズルッと来て肝が冷える。

ホッキリへの嫌な下り

いい加減うんざりする下降が終わると、茨尾根が始まりホッキリ(堀切)のコルに着く。

休憩をとり行動食を摂る

後ろからハイカーが近づいてきて、追い越して行った。岩慣れした人のようで、トラバースも安定していて速い。

鷹戻しの頭が近くなる

茨尾根もようやく終わり、岩壁の基部からいよいよ鷹戻しが始まる。

2連のハシゴ

国内一般登山道最難関とも言われる表妙義稜線縦走路、中でも核心とされるのがこの鷹戻し(一部では「鷹返し」とも)。

ただ…ハシゴが設置されていたりよく整備されており、ルートも分かりやすい。鎖の流れに沿って、しっかりと足場に体重をかけて登れば良い。

鎖場の抜け口を上から覗く

ボクがこの場所で気をつけているのは2つある。一つ目は「人的リスク」、二つ目は「疲労」だ。鷹戻しは怖いもの見たさの登山者を惹きつける。それもあって、「本来はココに来るべきでない」人たちも呼び寄せる。そうした人たちが岩場で行き詰まったり、通過に異常な時間をかけたりして渋滞を引き起こす。

並列にかかる鎖

すれ違いや追い抜きで使えるように、鎖が並列にかかっている場所もある。だが、岩場の1ピッチに入るのは1人だけの原則は守った方がいい。進退極まったハイカーがしがみついてくる、なんてこともありえないとは言い切れないからだ。

ボクがここに入る時は、必ずヘルメットを着用し、ハーネスにはセルフビレイ用のスリングとロッキングカラビナを装着する。それは、不意の落石や、すれ違い時の事故を防ぐためだ。

二つ目の「疲労」だが、妙義神社から縦走してくるとここから終盤になる。そして鷹戻しから中之岳までこそがこのルートの核心…ここで前腕がパンプしているようでは進退極まるので、冷静に自分の体調を観察することが求められる。


終盤のトラバース

鷹戻しの頭に抜けたところで、東海方面から来た2人組の女性ハイカーに出会った。一人は「いつか鷹戻しを登りたい」とずっと思っていて、「他の山でいろいろ練習」をして、「ついに今日来れた」、そんな話をしてくれた。

もう一人は…「まだ山を始めたばかりなのに、こんなところ連れてこられて、びっくりして笑いが止まりません」と言いながらケラケラ笑っていたw

二人は中之岳から中間道を降り、ホッキリに上がり、鷹戻しを登ったところだという。ここから中之岳へ戻るのは、ボクと同じ。ここから2箇所厳しい鎖場があることを説明したりしながら、下降に備えて休憩を取る。

そして、ボクが先行して鷹戻しの頭からの下降に入る。ここは二段ルンゼと呼ばれる難所で、個人的には鷹戻しよりも1グレード上に感じる。

正面岩塔中央のV字が二段ルンゼ

上段は左右からの圧迫感がある、ほぼ垂直のチムニー状。スタンスは豊富なのでよく見て下れば問題ない。

上段とテラスに女性2人ハイカーが見える

下段は降り口から先が見えない。しっかりと身を乗り出すと、大きなスタンスが見えるのだけれど、切り立った岩壁で虚空を見下ろす恐怖…

鎖を手に空中に乗り出してから身体を返して、出っ張ったスタンスに立つ。体勢を整えたら下降を始め、鎖の流れに逆らって右に逃げる。鎖の左側は傾斜がキツく、一部はハング状になっていて、スタンスも小さい。体のバランスをとり、振られないようにしながら、右側にルートを探す。

東岳直前で振り返る

無事に降りて、鞍部で単独行のハイカーとすれ違った。

東岳へ登り返す直前で、左に第4石門へのエスケープルートが降っている。そこをちょうど降り始めた3〜4人のグループが居た。そのうちの数人が、トレッキングポールを出していた。エスケープルートにはロープ辿る場所もあり、傾斜もあるのでポールは使わないほうがいいように思った。ただ、パーティそれぞれの判断もあるので、何も言わずに見送った。この人たちには、後で大砲岩あたりで再会する。

エスケープルート分岐を過ぎて東岳への登路が始まる。二段ハングの下降でアドレナリンが出ているせいか、恐怖感は薄れてサクサク登る。

拡大

後続の女性2人組は、二段ハングの途中にいた。先ほどの単独行ハイカーとのすれ違いで時間をとったのだろうか。

東岳頂上直前からコール

東岳のピーク直前で振り返ったら、ちょうどこの2人組が、二段ルンゼの基部に降りたところだった。間に遮るものがないので、声がよく通る。コールして、無事を喜び、またどこかで再会をと伝えて別れた。

東岳のピーク

東岳のピークからは最後の中之岳と、入山できない金洞山と星穴岳が見える。

左が中之岳

東岳のピークには短い鎖で登り、反対側を鎖で降る。そこから滑りやすい岩と土混じりを降ると…最後の難所の東岳からの下降。

東岳山頂の短い鎖

ここの東岳から降る長い鎖は、下部が少しオーバーハングしている。ここと二段ルンゼが表妙義最難関なんじゃないかな?と個人的には思う。

ここも鎖の流れに逆らって、左右に逃げて傾斜を逃す。そうでないと、壁から足が離れて宙吊りになるので、腕力の弱い人にはかなり厳しい下降になる。しかもここで落ちると止まらず、遥か下の沢まで吸い込まれてしまう。

基部に降り立って安心したせいか、ここの写真を撮るのを忘れた。もういい加減疲れていて、カメラを取り出すのも面倒くさくなるw

金鶏山とぐるりと回る車道

冠雪した浅間山

中之岳手前で浅間山の写真を撮り、山頂の祠にここまでの無事を感謝する。

中之岳山頂

星穴岳と浅間山

中之岳からの下降は、長い鎖場もあるが、ここまでのルートから比較すると難易度は低い。疲労で集中力が失われないように、手順を考え足場をしっかりと見ながら降る。

第4石門の広場に抜け、中間道に入る。

第4石門

大砲岩の岩場で、先ほど第4石門エスケープルートに入ったグループと出会った。メンバーの一人が、二段ルンゼ下降の最後の最後で足を滑らせ、アキレス腱を怪我したそうだ。

それで、トレッキングポールを出していたのか…

最後の最後で良かったですね、そう言ったら、「確かに!」と笑いが出た。

転落せずに基部まで降りてなによりだったし、そこからなら登り返しなしにエスケープルートに入れた。大砲岩からは自然歩道になるので、難場も無い。

中之岳神社の駐車場まで、どう降ったら良いか尋ねられた。登り返しの無い、最短ルートを考え、石門ルートから分岐する、「石門を通らない」下山道をお知らせした。児童の遠足などで石門ルートを登りに使った場合、下りに使われる程度の難易度で、道も整備されている。足を怪我した人が下山するには、一番良いと。

グループと分かれて、中間道の下山を続ける。思った通り、コースタイムよりもだいぶ早く、2時間程度で妙義神社に戻れた。今日の無事を感謝し、そこから道の駅を突っ切って、登山者専用駐車場に戻り荷物を下ろす。

稜線上では、もう2度と来るもんかと思っていたのだが…
今度はユーヤを誘ってみようかと考える自分がいて、思わず苦笑いしながらエンジンをかけて帰路についた。