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2022年3月20日日曜日

春雪ストラクチャー加工

ブログで何度か「春雪用ストラクチャー」って書いたけど、「なんのこっちゃ?」って思った人も多いだろうね。

「ストラクチャー」という言葉を知っていても、「自分ではできない」と思っている人も多いはず。高価なストーングラインド仕上げのマシンに、専用の器具を入れて、初めて加工ができると、チューニングショップの広告にも書いてある。

高齢者である僕は知っている、ストラクチャーのアイデアがどこから来たか。

今から40年以上前の話だけれど、スキーのソールは、ラッカー塗装仕上げの物がまだまだ多かった。ソールがポリエチレン製なら、高級品の証だった。

スキーヤーは買ってきた板のソールに、ワックス(キャンドル・蝋燭)を溶かして、はけ塗りする。アイロン(コテ)塗りする人も居て、繰り返しそうやってると、ワックスが染み込んで良く水を弾き、滑走性がよくなる、と言われていた(注1)。

使い込まれたスキーのソールは、それが単に木にラッカー塗って、蝋燭を磨き込んだだけとは思えないくらいに、「ピカピカに光って」いた。

ソールがポリエチレンに移っていっても、「ピカピカ」「ツルツル」ほど「エライ」という…毛根がやや機能不全な、ハ◯の人が羨ましく思うようなのが常識だった。

ホットワックスして、スクレイプし、最後は「コルク」のブロックで磨き込むのが当時のワクシングだった。そして、光にかざして見て、ピカピカ加減にうっとりする。
左:加工済み 右:加工前
しかし、ここで不都合な事実がある、春の悪雪、湿り雪、ストップスノー、いわゆる「妖怪板掴み」(注2)が生息するような雪で、ピカツルソールは無力化される。
左は細かい縦溝が入っている
実際のところ、ソールの傷に無頓着なスキーヤーが、涼しい顔で滑り降りている横で、ツルピカースキーヤーが、モンドリ打って前転してるみたいな光景は普通だった。

 なんでこうなるの?

で、ある日、スキー雑誌に「ストラクチャー」という話題が掲載されたのだ。

曰く、

 平滑すぎるソールでは、水分の逃げ場がない
 2枚のガラスを合わせて、間に水を入れると剥がれなくなる、アレ
 雪面とソールの間に水が入って張り付くのがストップスノー
 雨の日に溝が減ったタイヤがスリップする、ハイドロプレーニングと同じ
 つまり、水を逃す溝を掘れば良い。

ほんで、「溝」といっても、大きいのを何本も掘る必要はなく、細かいのを沢山掘ればいいということだった。一番滑走性が低下するのが、ツルピカソールだと。

で、滑走性が勝負のマジ◯チ真剣なスキーヤーたちは、こぞってソールに傷をつけ始めた。

この間まで

 ツルピカサイコー!
 ソールが光れば全てヨシ!
 ソールを鏡がわりにして、毎朝ヒゲを剃ってます!

そう言っていた人たちが、

 時代はストラクチャーだよね、ツルピカ?プッ…

思いっきり手のひらを返して、転向したのだ。

その時、僕は「大人って信用できないな」と思った。
電ドルに回転ワイヤーブラシ
僕は、自分でストラクチャーを掘っている。

数シーズン前から、いろいろなやり方を試してみた。YES. PYLには、結構大胆に入れてみたけれど、目で見てわかる程度の細かい傷でも、効果にはあまり差がないことが分かったので、今はあまり大きいのは入れていない。

が、目で見てわかる傷、ではあるので、見かけは正直あんまり良くないかも。

個人的な感覚だけど、滑走性はこんな感じ。

ノーマルソール
 100 レーシングバーン、人工雪の圧雪
   80 コーデュロイ、乾燥した粉雪、トップシーズンの圧雪
   60 降雨後のシャバ雪、ザラメ
   50 普通のシャバ雪、汚れたザラメ
   20 黄砂・花粉で汚れたザラメ
    5 ストップスノー

DIY加工ストラクチャーソール
   90 レーシングバーン、人工雪の圧雪
   75 コーデュロイ、乾燥した粉雪、トップシーズンの圧雪
   60 降雨後のシャバ雪、ザラメ
   55 普通のシャバ雪、汚れたザラメ
   35 黄砂・花粉で汚れたザラメ
   15 ストップスノー

トップシーズンなら、「ツルン」が「シュルン」に落ちる。その代わりに、最悪のコンディションで、「グググッ」が「ズズズッ」に「ビタッ」が「ジリジリ」に改善する。

BCで妖怪に捕まると、ものすごい体力を消耗させられる。僕はそう思っているので、手持ちの板で、BCに持っていく可能性のある奴には、全部春雪用ストラクチャーを入れている。

あくまでも僕の場合は、ということなんだけどね…

注1 ホットワックスを繰り返すほど、ソールにワックスが染み込んで滑走性が高まるって言われている。僕は、その話はここから来ているんじゃないかなって思う。ラッカー仕上げの木のソールは、確かにワックスを吸収しいていたと思う。でもさー、今のソールってポリエチレンだよ。ワックス…染み込まないよね。表面の細かい凹凸に染み込む、それはあるだろう。でもさー、何度も何度もホットワクシング繰り返したら、「奥まで浸透する」ってことは無いように思うんだけどなぁ。

注2 滑っていると、いきなり板が雪面に張り付いてしまって、前方に放り出されて転んでしまうような雪のこと。雪の中にいる妖怪が、板を掴んで離さないみたい、というところから来ている。