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脇腹に小さな包みを抱えている。
俺の方を見て、ちょっと引き攣ったような声を出すと、通りの先を歩き出す。男が出てきた路地の奥から、ヒイッという女の声、そして、助けて!誰か!と、別の女が叫んだ。
そちらの方向から、「なんだなんだ!どこだ!どうした!」と、数人の呼び合う声。
前方の男は心なしか足を速めて、通りを進んでいる。男の先には街灯が途切れて暗闇が広がっている。
路地の女性は、誰かが助けに向かっていると判断した俺は、男を追う。男は背中を丸めて、今や小走りで進みながら、尻のポケットから何かを手にした。
オイっ!ちょっと!待て!
俺は声をかけると走り出す。俺の足音のリズムが変わったことに気がついたのか、男はこちらを見ずに走り出す。
包みを抱えた男の速度は上がらず、俺は男に追いついた。男はいきなり振り向いて、俺に何かを向けてグイと押し出してくる。
俺は止まろうしたが、スピードが乗っていて止まらず、思わず男の手を足で蹴り上げていた。
カンフー映画のようにはいかずに、俺のスネを何かかがチクンと刺した。その瞬間、飛び蹴りモドキが決まり、男の手から何かが吹き飛び、奴は後ろ向きにひっくり返った。
スネに触ると、ちょっとヌルッとした手触りを感じ、俺はヤバいと思って、うずくまるとスネを強く抑えた。男の姿は消えて、通りには奴が持っていた包みが転がり、後ろからバタバタと走ってきた人たちに俺は囲まれていた。