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2021年3月3日水曜日

B●TNスノーボードのすごいところ(その5)

その4で、ジェイクはスノーボードのソールやトップシートの仕上げには、あまりこだわらない、そんなふうに取られそうなことを書いた。だが、もうちょっと正確に言うと、「必要以上には」見かけにこだわらないと言う意味なのだ。
工業製品は、歩留まり率が下がる(オシャカ率、不良品発生率が上がる)と、原価が上がって儲からなくなる。このレベルまでは良品、ここからここはB品、これ以下は廃棄、みたいなレベルをどこに引くかによって原価が変わってくる。見かけについて、ジェイクの意見はこうだ。

トップシートに、そうだな、セサミシードくらいの傷があったとしよう。ショップではもしかしたら気になるかもしれない。でもね、1日、2日、3日と滑っていると、ボードには傷がつく。ショップで見て気になった小さな傷なんて、もう、どこにあったのかわからなくなる。代わりに、楽しい思い出とリンクした傷が増えていく。この傷は、あの斜面でパウダーの下に隠れていた切り株で擦った跡とか、このサイドウォールの傷は、ジムがレールですっ転んで、突っ込んできてついた跡とか、一つ一つの傷が、思い出に変わっていくんだ。コスメティック(見かけ)って、パーフェクトを目指すときりがないし、やりすぎて原価が上がって、一般の人が買えない値段になる…それよりも、妥協が必要だよ。

ジェイクは、道具としてのスノーボード、その本質的な価値を大事にしていた。

ワクワクして買ったボードが、わずか数日のライドで折れたり、曲がったりしたらどう思う?さっき言った通り、一つ一つの傷が思い出に変わる、そんなことが起こる前に、ボードがゴミに変わったら?ツアーに行ってるところで、ボードが壊れたら?台無しだと思わないか?

ビジュアルで国産(日本製)のボードに負けるってことに関しては、こだわらなかった(その4参照)のに、耐久性や乗り味に関してはまったく妥協しなかった。そこで生まれたのがインフィニットライド(永遠に乗り続けられる)という技術だ。

スノーボードは使っているとヘタってくる。反発が減って、剛性感が落ち、のったりした乗り心地になってしまう。スピードを出したら安定せず、硬い雪面ではエッジがうまく食い込まなくなる。ブランドやモデルによって違うのだが、新品の時のベストなフィーリングがどれだけ保てるのか、これは各ブランドのノウハウで、購入者の満足感も大きく左右する。

で、B●TNでは、ヘタリについて詳しくしらべた。結果、初期のヘタリはすぐに発生して、どんどん進行し…あるレベルまでいくと止まることがわかった。そして、そのまま、ヘタリは進行しないですむ。

じゃぁさ、最初に、ヘタる分の反発と剛性を強化しておけばいいんじゃね?
そんなことしたら鉄板みたいなフィールになって、硬すぎてとても乗れないよ。
いや、だからさ、それを出荷前に事前にヘタらせておくんだよ。
なるほど、そうすれば、それ以上ヘタリは進行しないかも、しれない?ね?

で、このテクノロジーの鉄板ボードは、製造工程の最後で馴染み出し用のロボットに入り、あんなことやこんなことをされ、まるでもう1シーズン使ったかのような疲弊具合で出てくる。で、鉄板ボードが、丁度いいトーションとフレックスになっていて…それ以上ヘタルことが無く、「インフィニット(永遠に)ライド」できるのだ。

と、書くと、素晴らしい技術のようだが…不良品発生率が高い。ロボットから出てきたときに、狂いが出ていたり、鉄板のままだったり、設計より柔らかかったり…折れてしまうのもあった。コスメティックの問題で不良率を議論していたのが馬鹿らしいくらいに、不良が出る。
ジェイクは平然として言った。

スキースロープの上で折れたら、スノーボードの体験が台無しになる。それより、ここで、出荷前に折れるほうがいいだろう?

見かけが美しいボードももちろん大事だが、耐久性に優れて、長く楽しくライドできるボードのほうがいい。それがジェイクにとっての本質的な価値だった。

神楽峰手前で ライダーはゆーや



*このポストも伝聞や噂を元にしたフィクションであり、実在の人物やブランドとは関係ありません。