青春時代はスキーバブル、そんな世代である僕が育ったのはスノーボードが無い時代。30代半ばでスノーボード を始めるまでは、スキーにどっぷり嵌っていました。モーグル、競技、ゲレンデスキーはほぼやり尽くして…今で言うバックカントリー(BC)テレマークを始めます。スキー歴が長くなり、状況が悪いところでも安全に滑る方法や、状況判断についても学びました。
例えば、ホワイトアウト(注1)になった時にどうするか。定石では、動かないことが重要です。視界が悪い状態では、進行方向に雪庇や崖、シュルンドやクラック、ツリーホールがあったときに回避できなくなります。また、方向感覚が狂いますから、地形が入り組んでいて迷う恐れがある場合も同様です。
しかし、動かざるをえない時、動いたほうがリスクを回避できる場合もあります。
例えば、天候が悪化することが間違いない時。日暮れが近づいている時(注2)。現在地が地形的に危険である時。例えば、現在地が狭い沢筋で、上部からの雪崩、岩壁からの落石などのリスクがあるなどです。このような場合は、安全地帯まで降りるべきでしょう。
繰り返しになりますが、進路上に致命的な地形上の罠が存在せず、くだっていけば目的地周辺に確実に出られること。そして、その場で留まることが危険な場合に限っての話です。
ホワイトアウトの危険は2つ。まずはスピード感が無くなること。そして平衡感覚を失うことです。
スピード感の喪失とは、どれくらいの速さで滑走しているのかわかりにくくなること。また、停止しているつもりが滑り出していることすらあります。コツは、停止している時は必ずストックを斜面に刺しておくこと。そして、滑走中もストックを斜面に軽く押し付けておくことです。
普段なら、ターンのきっかけでストックを突き、ターン中ストックリングは意識から消えているはず。ホワイトアウトの時は、ストックをついた後にリングを斜面にかるく引きずりながら押し付けていきます。リングから伝わってくる振動で、どれだけ速度が出ているかを把握できます。
平衡感覚についても同様です。リングが押し上げられるような感覚があれば、体が内倒を始めています。ある程度急な斜面なら、ダブルストック(両手でストックを突いて、両方とも雪面に押し付けたままターンする)を使えば、斜面と自分の体の位置関係を確認しながら滑ることができるのです。
(注1)ホワイトアウト(whiteout)は、雪や雲などによって視界が白一色となり、方向・高度・地形の起伏が識別不能となる現象。 出典はウィキペディアです
(注2)そもそもそんな状態に陥らないように、組み立てを考えるべきです。しかし、BCではいろいろなことが起こります。トラブルに対する時間的な余裕を使い果たした時、冷静に考えて確実に突破できるなら進む。さもなければ守りに入る、見極めが重要だと思っています。突破といってももちろん準備が必要、イチカバチカのトライはだいたいにおいて裏目に出ます。
準備とは、体力と技術。いざとなれば、走って下山できれば余裕が生まれます。特殊な条件下でも確実に前進できる技術。両面を磨いておくということです。