「バートンって、ハーフサイズごとに、全部アウターとインナーを別に作ってるよね。すごいなって思うんだけど、正直大変じゃない?」って聞いたんだ。いいこと言うねーって感じで、それが話が盛り上がるきっかけだった。
僕はもともとはスキーヤーで、結構真剣に(素人としては、だけどネ)やってたので、スキーブーツについてそれなりに知っていた。で、アウターブーツとインナーブーツをどうやって設計するかってのは、ブランドごとに異なっている、ということも知っていた。
一つの方法は、ドッカンて大きい(バルキー)アウターを作って、その中を分厚いクッションのインナーで埋める方法。スキーブーツならコフラックとか、ライケルがこれだった。で、フォーミングやサーモインナーを好んで導入するのもこうしたブランドだった。
対して、足にできるだけ近い形で、攻めたアウターを作って、その中に最小限のパッドがついたインナーが入る方法。ラングとか、ダハシュタインとかがこれだった。
どちらにも、メリットデメリットがある。ただ、技術的に難しいけれど、ダイレクト感やレスポンスからは、僕は後者のほうが好みだった。
そして、ブーツの原価を下げる方法の一つは、アウターのサイジングを1cm刻みにするということ。インナーは0.5cm刻みで作るのだが、アウターは1cm刻み。つまり、26cm と26.5cm はインナーはちがうのだけど、アウターは26.5cm のワンサイズ。
こうすることで、アウターの各サイズの生産量が倍になり、在庫管理の手間は半分になる。しかし、同時に、ジャストフィットのアウター+インナーの組み合わせと、ちょっとだけ中に隙間がある、ダイレクト感に劣る組み合わせが生まれると言うことだ。
でも、スキーブーツメーカーも、スノーボードブーツメーカーも結構この方法を積極的に取り入れる会社はあった。そして、そうしたブランドは、前者、つまり、バルキーなアウターに厚めのパディングのインナーを組み合わせていた。もしくは成形インナー。
「パッと見でコストが高い、低いってのはあんまり意味がないんじゃないかな。確かに、生産管理する種類は減るよ。でもね、出荷準備の時に、アウターとインナーは組み合わせておかなければならない。箱に入れてね。つまり、生産段階だけの合理化で、組み合わせた後の在庫管理は、どっちにしても同じだよ。それにね、ベストでない製品が半分できるってのは、俺は嫌だな。どうしてもコストを下げなければいけないってことなら…そうだな、いい製品を作って、継続モデル化していくってのが、結果的にコストダウンになるんじゃないかな。」
「サイズをカットしてコストダウンするなら、俺ならカラーバリエーションとか、モデル数を整理してコストを見直しするな。やっぱり、その、フィットがブーツの命だよ。お前もそう思うだろう?」
そう言って、そんなの当たり前だろって顔で彼は僕のほうをみた。
SLXインナー(緑)とDriver Xインナー(グレー)
最近Driver Xから、Sal●monの Malamute に入れ替えた
Driver X を離れる理由はまた今度書いてみる