ハイシーズンのパウダースノーを滑るのは楽しい。ただ、雪が深いと結構大変な時もある。密なツリーとか、タイトターンを確実に作らないと、木に激突!みたいなのは嫌だ。
パウダーライディングで、重要なのはノーズの浮力。これが十分でないと、バックサイドターンでノーズ食われて前転して雪まみれ。はたまた緩斜面で失速して、ズブズブと沈んで途方にくれたりする。
ノーズの浮力を増やすには、面積を増やせば良い。面積を増やすには、ノーズを長く伸ばすか、横に広げて太くするか。
春の湿雪やザラメの雪が重い時期も、浮力のあるノーズはよく働いてくれる。ただ、この時期がハイシーズンとちょっと違うのは、テールの抜けがイイかどうかが結構重要だということ。
Bataleon の比較: 上 Thunder 下CT |
バタレオンの Thunder と CT は、どちらもカービングがちゃんとできるパウダーボード。Thunderのほうがちょっとだけ張りが強くて、反発が早いけれど、ノーズ部分はほとんど一緒。違いはテール部分にある。
Thunder のテールは、3BTのスプーン形状で、ノーズと同じような形をしている。これは、スイッチスタンスで滑る人にとってはありがたいことだろう。テールはノーズに比べるとボリュームが小さいので、スイッチで滑ると浮力が足りない。それを補うために、キックを大きく、3BTの3D形状も浮力を稼ぐようになっている。
上がThunder 、下がCT |
ここでちょっと考えなければいけないのは、Thunderの形状だと、上に溜まった雪が落ちにくい。CTの場合は、キックが小さくて、しかもテールが2つに分かれていて、真ん中は低く、そこからスラッシュが抜けていくようになっている。
YES. 420 PH のアプローチはまたちょっと変わっていて、 Powder Hull という3D 形状の凹みをノーズとテールに作っている。
真ん中が窪んでいたら、板を横に振りにくくなるんじゃないかなと思うだろう。でも、このノーズでパウダーに入ると、くぼみに雪が集まって圧縮される。で、ノーズが押し上げられるのと、ノーズに溜まった雪がソールと一体化して、「仮想コンベックスソール」みたいな乗り味になるのだ。
これが結構独特で、パウダーをまっすぐ落としている時、ノーズはぐぐっと浮いて来て、エッジが存在しないかのようにスルスルと左右に向きを変える。でも、ターンをはじめると、スッと(過剰な)浮力がおさまり、ずれのないカーブを雪面に残していく。
で、今のはノーズ側の話で、テール側のPHは逆に働く。つまり、圧縮された雪をここで解放する。その結果、テールの浮力が減って沈みやすくなるということ。
YES. 420PH の Powder Hull(ノーズ側) |
スイッチで滑る時には、テール側のPHは雪を集めるように働くので、それで浮力が稼げる。ということは、キックで浮力を稼ぐ必要が薄いので、小さくて、抵抗が少ないテールでも構わないということになる。この結果、420PHはパウダーでアホみたいに浮いて、テール抜けがいいというキャラクターを手に入れた。
そもそもスイッチしないよ…だって?
だったらテールそのものを切っちゃえばいい。
ただ、もちろんそれは簡単なことではなくて、短くて不安定になるボードを、どうやってちゃんと乗れる製品に仕上げるかというのは、メーカーの腕の見せ所ということでしょうか。
Rossignol SUSHI |
それがこれ。
テールが引っかかる?切っちゃえそんなん! |
スティープな斜面でタイトツリー、だったら僕のチョイスは、間違いなく SUSHI
悪いコンディションで、できるだけ減速させたくない緩斜面がある、だったら Thunder かな
そうやって、コンディションを予想しながら、どのボードで出動するかを悩んで準備する。それもスノーボーディングの楽しみの一つ。