常設のページ

2021年4月6日火曜日

BCのことを中心に考えて滑る、僕の場合

テレマークスキーを処分してしまったので、僕の雪山遊びと言えばBCスノーボード(注1)。で、僕の滑りはBCに合わせたもので、それが個性だと思っている。

下の写真は、乗鞍岳の富士見沢を滑る僕。いくつか特徴を上げると「前向き」「脱力」「高い姿勢」「背骨を立てる」。

それと、静止画ではわからないけど、僕は「上半身をブロック」して滑っている(ボードの進行方向に対して、腰と上半身の向きがほとんど変わらないようにしているということ)。

Location: Fujimizawa, Mt. Norikura

なんでそうしているのかを説明してみる。

視界の確保

BCでもっとも重要なのは、視界の確保だと僕は思っている。ゲレンデと違って、斜面にはいろんな障害物がある。そしてパトロールが、注意喚起のネットを張ったり、旗竿を立てたりなんてことはない。スノーボード の場合はコース取りも重要だ。斜面の途中で失速して止まっちゃうって事がないように、それでいながら無理のないラインを引きながらライドしなければいけないしね。

横乗りのスノーボード は、バックサイドターンの視野がどうしても狭くなる。でも、進んでいく方向を「両目で見る」ことはとても重要だ。両目で見ないと距離感が掴めないから、左肩の上に顎が乗っかるくらいに顔を前に向けてやる(注2)。

そして、遠い位置の危険を見つけるために姿勢を高く保つ。深いカービングターンで低い姿勢になっていると、少し先の、ちょっとした斜面の盛り上がりの向こうに、どんなトラップが隠れているか分からないからね(注3)。

楽に滑る

バックパックを背負ってハイクして滑る、それがBCスノーボード。先日行った谷川岳芝倉沢なんかそうだけど、滑る前に脚力使い切ってたら帰って来れないから。だから、ハイクアップも滑走も「疲れない」ことが重要になってくる。

高い姿勢を維持して滑ると、視界も確保できるし疲れにくくなる。腰の位置が高くなる≒腿の角度が立つと、筋力を使わずに滑れる。膝を曲げて沈み込んだり、抱え込んだり、ようするに腿の角度が寝るたびに少しずつ脚力は削られていく。

疲れていても確実に滑れるように練習することも大事かな。整備されていない斜面を滑るのだから、クラストとかストップスノーとか、狭い急斜面とか、そんなところも、確実に減速して滑れなければダメってこと。疲れてくると暴走する、そんな人は山に入ってはいけません。

バックパックの荷重と腰痛対策

上半身をブロックする理由の一つは、バックパックの重さで体が振られないようにすること。振られるとバランスが崩れるために、体幹がよじれて疲れてしまう。

もう一つの理由は、振られなければ視線がブレないから。視線が安定していなければ、白一色の積雪期で、わずかな陰影で危険を見つけることは不可能だしね。

上半身を安定させることで、バックパックを背負ういいポイントもわかってくる。僕は、ゆったりした動きの中で、背骨と骨盤を立てて滑るのが腰と背中に優しいと思うようになった。

実際のフィールドで

写真を見ながらいくつか説明をしてみる。

Fujimizawa, Mt. Norikura

真っ白で広い斜面で、楽しそう?このときはうっすらと雪が積もった後で、新雪はストップスノーに変わりつつあった。そして、沢の中心部は流水の痕がまだらに凍りついていて、数日前の雪崩で出たスノーブロックが隠れている。

雪の色を見て、ここは新雪なのかザラメなのか、それともアイスバーンなのかを判断して滑る。そして、沢の中心部を横切る時には、雪面にわずかに飛び出た突起の下には、アイスブロックが隠れていることを予測して避けて滑るんだ。

Fujimizawa, Mt. Norikura

標高が下がると、雪の中からブッシュが顔を出してきている。地上に現れている樹木は基本避ける。直径3cmくらいの枝でも、まともにヒットするとかなり痛い。ウェアが破けることもあるし、ゴーグルが割れることもある。

植生の状況は結構重要で、森林限界の上なのか、地衣類や灌木だけなのか、ダケカンバなどの落葉樹があるのか、いろいろ観察することで隠れた危険を知ることができる。

カンバ類などの広葉樹がある斜面には、雪の下に、斜面の下に向かって押し倒された幼木が隠れている。そうしたところをトラバースするときは、ノーズを上げておかないといけない。隠れている幼木の、幹の下にノーズが入っちゃったら…ボードか足がぶち折れちゃうかも…幼木をヒットしても、ノーズキックが幹の上に乗り上げるように、なおかつスピードを殺して進むことが必要。

この素晴らしいスノースポーツを、できるだけ長い期間楽しみたい。そのためには、やっぱり安全で確実に滑るってことが大事なんじゃないかな(注4)。

安全がしっかり確保されたゲレンデで(パトロール・降雪・圧雪の皆さんに感謝)、しっかり滑り込むのもとても大事だと思う。疲れが溜まった時でも確実に滑るとか、滑走スピードの限界値を上げておくとか。高い姿勢、低い姿勢をあえて取って滑るとか。腕を前で組んだり後で組んだりしてバランスの対応幅をあえて狭くして滑るとかね。

BCやらない仲間たちと、時々リフトの上とかでBCの滑り方について話すんだ。だけど、ここまで詳細に理由を交えて話すことは無い。ていうか、リフトの上でこれ話されたら、ウザいよねw

でもまぁ、BCスノーボーダーの僕は、こんなことを考えて普段から練習してます。そんなことは、残しておいてもいいのかなって思って書いてみました。

おしまい

*僕がここで書いたことは、BCでテレマークスキーに親しんで得た経験をベースにしています。BCではこんなリスクがある、それに対してスノーボードだとどうすれば安全なのか?そのためにはどうやって滑ればいいのか?そうやって、出来上がった僕の個性。技術論的に正しいとか、正しくないとかを言いたいわけではまったくありません。スキーとスノーボードの両方を経験できたことは、本当にラッキーだったなってしみじみと思います*

注1 積雪期登山とか、単独ではあまりにも困難だし、というかパウダーあるならゲレンデのスノーボードが楽しいしね。アイスクライミングとかも興味あったけど…あれは危険すぎるでしょw

注2 普通の斜面で滑る時、バックサイドターン進行方向は左肩の上を通して見通す。これが左の脇の下を通さないと、先の状況が見えなくなったら、かなりの急斜面ってこと。あ、それと、トランシーバーでイヤホンマイクを使う場合、あなたがレギュラースタンスの場合は右耳に付けてね。バックサイドの耳は開けておいて、聴覚でも情報を掴むべきだと思うから。僕はBCでは耳を塞がないスピーカーマイクを使っています。

注3 何回かギリギリセーフを経験したことがある。間一髪で避けたり、急停止したり、飛び越えたりw。どの場合も、ほんのわずかでも危険に気がつくのが遅れたら、無事では済まなかったかもしれない。

注4 僕はゲレンデでは結構スピードを出して滑る。でも、BCでははっきり言って遅い。というより、BCでは普段の6割くらいの力で滑るようにしている。もっと状況が悪ければ3割とか。で、普段から自分の滑走能力を上げていれば、余裕も増えるし、安全に素早く行動ができると信じている。