ただ、春特有のリスクもあるよなって思うんですよね… 滑落リスク
最近、クランポンとかアックス(注1)とかの装備は随分良くなりました。でも、ちょっとそれどうなの?って思うことがあるので注意喚起を。
BCは大抵の場合ハイクアップから始まります。次のような組み合わせが一般的かな。
スノーボードの場合
言うまでもなく、滑落防止でベストなのは アックス&クランポンです
「ポールをアックスに変える」または、「スノーシューやスキーから、クランポンに変える」このどちらが安全で快適なのでしょうか?
スノーボードの場合
アルパインスノーシュー(注2) + ポール
スキーの場合
ツボ足+ポール (キックステップが効く堅雪で、階段状のトレースがある)クライミングスキン + ポール
しかし、下の写真のようなコンディションが待ち構えているなら、どこかのタイミングで滑落防止対策が必要です。稜線直下は風に磨かれたスケートリンクみたいになってるからです。
乗鞍岳本峰 テランテランに蒼く光るアイスバーン
ただ、スタート時点がポール+スノーシューかシールなんで、こんな風に迷うわけです。
「クランポンが先か、アックスが先か?」
わりとよく見るのが、まずクランポンを履くけど、手元はポールのまま。
ちょっと考えて欲しいんですが…足元が硬くなって「登りにくなるから」クランポンを履くんですよね?登るのに苦労する氷結した斜面で転倒したら…どうやって滑落停止するの??
ポールとアックスって、どちらも手に持ってますけど、役割が全然違います。
ポール = バランス保持、登高・前進の推進力を得る
アックス = バランス保持、ステップカット、確保支点、滑落停止
滑落停止に使えるのは、アックスです
だから、まずアックスを出すべきだし、これから進む斜面の状況次第ではアックス+クランポンに早めに変更するべきです。
で、そこで考えて欲しいんですよね。
アックス+クランポンでなければ登れないような斜面で、滑って楽しいの?
春富士の5月なら、八合か八合五尺までしか上がらないことって普通じゃないですか?その辺まで登ると、雪が硬くなりますから。山頂まで行きたいなら、6月まで待てば良いのです。
八合で早めにアックスとクランポンに変更
谷川岳BCも年ごとに人気が増えているようです。しかし、天神尾根〜茂倉岳までの稜線を例に取ると、東側は雪庇&絶壁の連続で、そちら側に落ちたら助かりません。
熊穴小屋から先の傾斜が上がるところ、肩の広場も要注意。滑落したら、西黒沢本谷の急斜面に吸い込まれて、シュルンドに突っ込むか岩壁でズタズタになっておしまいです。
意外と盲点なのが、なだらかな一ノ倉岳への取り付き点。ぱっと見、夏道通しで問題ないように見えるんです。しかし、夏道は一度右にカーブしています。夏なら一ノ倉沢を覗き見ることができる、展望台。しかし、そこで滑落すると一ノ倉沢にダイレクトダイブ…左に巻いて登るのが正解かと。
地形を良く見て、万が一スリップしても大事にならないように考える。そして、絶対にスリップできない状況なら、滑落停止できる装備を出す、自信がなければ引き返す。それやらないと、いつか死にます。
下の写真は雪山宴会部のクスミックス 。
稜線直下で、クランポンにポールじゃないか!?滑落停止は!?
ここは僕んちの裏山なんですよ BY: KUSUMIX
クスミックス のスキーポールには、滑落停止のできる、ピックが付いています。ピックは鋭利な刃物ですから、登高スタートした時はカバーが付いています。足元は山スキーにクライミングスキン。雪が硬めなら、クトー(スキーアイゼン)もつけます。
で、そろそろアックスを出すようにみんなに言おうかな、そんなタイミングで彼を見ると、ピックカバーが外されています。そして、彼と視線が合う。
彼は、周囲を良く観察して何がリスクか判断しています。そして、どんな対策が必要なのかを常に考えています。稜線に出るか止めるか、出るなら直登か巻くか、巻くならどこからか。アックス出すか、クランポン出すか。
僕は彼を見て、ピックカバーが外されていることと、その意味を理解します。「このまま直登するならアックスですね?」彼は僕の様子を観察して、彼の意図を僕が理解していることを確認します。
「右かね?」「左がいいかな、昨夜は風が強かったんで」
短いやり取りですが…
「直登なら確かにアックス&クランポン。でも、稜線まで標高差50m くらいで、そこから先は岩混じりの平坦だから滑落のリスクなし。巻いて行けるならこのまま行きたい、斜度の落ちる右からはどう?」「昨夜は北風が吹いて冷えたので、右側の北面は氷結してますよ。むしろ左から巻いたほうが、吹き溜りになってるので、万一滑落してもクッションがありますよ。」
こんなふうな確認をしています。
この時は、私とクスミックスがちょっと先行して、他のメンバーが追いつくのを待ちながらコンディションのチェックをしていたのでした。で、南側から巻いて、風裏になるドロップインポイントに着き、無事にBCを楽しんで帰りました。
皆様もどうぞご安全に。
富士山のお釜(噴火口)を滑る、この登り返しがキツイ
(注1)山屋さんが言うピッケルとアイゼン、BCスノーボードでは、アックスとクランポンと呼ぶことが最近増えているようです。どっちでもいいんですが、ネ