2000年代のある時期、このブランドの近いところにいたので、いろいろな話を聞くことができた。
当時、カスタムというモデルがブランドアイコンだった。ディレクショナルながらスイッチもできて、パークでもフリーライドでも、なんでもできる板だった。で、サイジングはライダーのサイズや、いろいろな用途に対応するように、140cm台から160cm台まであった。
B●TNの凄いところは、どの長さを乗っても、ちゃんとカスタムなところ。意味がわからない?カスタムはカスタムだろって?
スノーボードの開発 って、例えば156cmを基本サイズにしてサンプルを作る。そんで、それを手直ししながら「これがカスタムだよね」って味付けにする。
普通のブランドは基本サイズのディメンションをそのまま縮小・拡大してサイズバリエーションを作る。ところが、短くすると剛性が上がって硬く感じるし、長くするとふにゃふにゃになってしまう。単純に縮小・拡大コピーしたのでは、絶対に同じ乗り味にはならないんだ。
B●TNは…全てのサイズで試乗サンプルを作って、どのサイズを乗っても、たとえ目隠しして乗っても、「あ、これは短いカスタムだ」とか、「サイズは長いけど、カスタムだね」ってわかるように作るんだそうだ。
もちろん、味付けにあたってはデータを活用する。コアとか、ラミネートする素材を、どの部分でどのように調整すると、乗り心地はどう変化するのか、可変要素を可能な限り吸い上げて、データ化していた。そして長いモデルは剛性をあげるように、短いモデルは剛性を下げるようにアジャストして、結果としてどのサイズでも同じ乗り味になるようにしていた。
なぜそこまでするのか?それは、カスタムがアイコンであり、他のモデルの基準だから。カスタムが確立されているからこそ、クルーザーができる。カスタムXも、ドラゴンもできる。アウトラインが全然違うFishだって、カスタムのディメンションと構造を元にして、アレンジして作っていた。
手間も時間もかかるかもしれないけれども、カスタムというしっかりした軸があることで、他のモデルの開発が短縮できるんだね。
他のメーカーもこんなことしてるの?そう聞いたら、「サイジングのバリエーションを一つ一つ乗ってみれば、当たりと外れがあるブランドは、あるよね」と、笑いながら言った。
まぁその、R●MEというブランドが立ち上がった時…あそこが拘っていたのは、汎用性が高く、数が売れて、他のモデルのベースになるモデルを確立させることだった。そこを立ち上げたのは、ある有名ブランドのアイコン開発チームに所属していた人…たち…ということを風の噂で聞いたことがある。